表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
308/602

父親との時間

あと10話以内で4章を終わらせようと思います。最後までお付き合いください。

初めてこの男と会った時は天狼さんに連れられた時。そして会ったのはこれで2回目だけど、正直こいつから何かを聞く気もパパと呼ぶ気にもなれない。


こいつをそう呼んだのは私が事情を知っていることを知らせる為。自分が何をして何故私がここに来たのかをこいつに理解してもらう為だ。


「お母さんの悪口は止めて。」


「悪口…?何を言っている?彼女に対しての正当な評価を口に出しただけなのに。」


…顔を見て分かった。本当にこの男はそう思っている。お母さんの事を悪く言うつもりで言ったのではなく、お母さんという存在に対しての印象を口にしただけ…。


「まさかそれを言いにここに来たのかい?」


ああ…なるほど。私という生き物がなんでこんなにも駄目でクズで終わっているのかが分かった。こいつと血が繋がっているからだ。私の内面はこいつに似てしまったのだろう。


そう考えると天狼さんは母親似なんだろうね。私とは違って真っ直ぐ育ったんだ。彼女みたいな人こそ世界に必要な存在だと思う。身を以て自覚出来た気がする。


「…いや、終わらせに来たの。始めたのは私では無かったけど、お母さんの為にもここで終わりにする。」


「そうか。…で?どうしたい?一応は父親として娘のワガママには付き合ってやらないとね。」


そう言って男はソファーに背中を預けて座った。話を聞く姿勢を私に見せているんだと思う。だけど正直もう話したくはない。でもここでしか聞けないと思うから私も斜め前に置かれたソファーへ腰掛けて座る。


「お母さんとはどういう関係だったの。」


私は最後にお母さんからパスを通じて情報を受け取った。その情報の中にこいつとお母さんとの会話もあり、そこで私の本当の父親の存在を知った。


「ディープな内容になるが聞きたいのか?伊弉冉はそういうのを聞きたがらないからな。新鮮な反応だ。」


これだけでお母さんとこいつとの関係性は分かる。聞きたくないし興味もまるでない。ただ知っておかなければならないと思うから…。


「聞かせてよ。」


男はグラスに酒を注ぎ口にする。話しやすくするために喉を少し潤わせてから男は語りだした。


「どこから話したものか。まあ有り体に言えば私はお前の父親であの女が母親。つまり私達の間には肉体関係にあったという訳だ。」


「…っ。」


そうだろうとは分かっていたつもりだけど、実際にそうだと言われるのは正直堪える。お母さんのそんな一面は知らなかったし、私にはそういうところは見せないようにしていたんだと思う。だって私の能力はその場に私が居なくても分かってしまう。


私と居ない時間はお母さんはいつも家に居るか近所のスーパーに買い物に行っているか、昔から交流がある澪さんの所へ行っていた。夜も私をずっと抱き締めて一緒にいたから深夜遅くに出掛けていたこともない。


「言っておくが向こうから声を掛けてきたからな。まあ、その誘いに乗ったのは私の汚点だったけどね。知ってるかい?あの女の本性を。」


…さっきから言いたい放題言ってくれる。お母さんの事を悪く言わないで…っ!


無意識に握り拳をしていたせいで手が痺れる。この感情を抑えておく事が馬鹿らしくて、今すぐに爆発させ解放したい衝動に駆られる。


「君があの女からどこまで聞いたのかは分からない。…いや待て。君はどうやって知ったんだ?あの女が死んだのは随分前の事だろう?」


知っているという事は初めて会ったときにそれなりの反応を示す筈だ。しかし思い出す限りあいの風にそういった反応は無かった。その時は私が父親とは気付いていなかっただけで、最近私が父親と気付いたのか?


「だからお母さんに教えてもらったの。それにそんなのはどうでも良いでしょう?私とお母さんとの関係なんて興味無かったんだから。」


じゃないと私を8年以上もの間放置した理由がない。自分の血が入った子供を、特に能力者になるかもしれない子供をこいつは放置するだろうか。


「…まあそうだね。ここは君の言うとおりそれで納得してあげるよ。」


無性に癇に障る言い方をさっきからする。私とこいつとでは相性が悪過ぎるようだ。良すぎるよりは1億倍良いけど。


「あの女は筋金入りの色狂い。幼い頃から売春婦をして何百人もの男女と関係を持ったメスだった。そんな女を抱いたと分かった時は酷く後悔したよ。」


目の前が真っ暗になるとはこういうことだ。こいつの言った内容がまるで理解出来なくて…いや、理解出来てるからこそこいつの言った内容を拒絶しているのか。


「…嘘だ。お母さんがそんなことを…」


「ここで嘘を言ってどうなる?覆せない事実だよ。君はあの女の両親、つまり祖父と祖母に会ったことがあるかい?」


「…会ったことはないですけど、亡くなったと聞きました。」


お母さんの話では亡くなったと聞いていた。お母さんか高校生の頃には一人だったと教えてもらった記憶がある。


「あの女は父親と母親とも関係を持っていたらしい。昔に身元調査で報告書を読んだ限りではまだ生きていた。まだ存命かもしれないな。」


そこまでお母さんの事を調べていたの…?というかお母さんが両親とも、その…関係を持っていたなんて…信じられないし…私には受け止めきれない。


「援助交際の胴元をやっていたとも記憶している。本当に淫乱な女だったらしい。学校の教師、クラスメートとも関係を持って噂になっていたとか。調べれば調べるほどに情報が集まるものだから相当なものだ。君はそういう風にならなくて良かったよ。」


………………………うるさい。


お母さんの事を悪く言うけどお前も大差ないじゃないか。私はお前の事は良く知らない。でもあの天狼さんが人の事を悪く言った相手なんてお前ぐらいだ。お前だって散々女と関係を持っているのにお母さんの事をまるで汚いと言って…ッ!


「…じゃあ似た者同士だったんですね。お母さんとあなたは。だってそうでしょう?この部屋にも女を連れ込んでるくせに。」


ゴミ箱にそれらしき物が捨てられている。昨日の夜にもお盛んにヤッていたんだろう。


「私はちゃんと使命があって関係を持っているんだよ。」


男は笑顔で語り出す。自分の使命と自分の価値を。


「私には能力者を増やし組織の地位を向上させる使命があるんだよ。だから君はここに居られるし伊弉冉とも仲良く出来ただろう?」


「…何を、言ってるの…?」


本当に何を良いことのように言っているんだこいつは…。そういう話では無いでしょう…?そんな理屈が通るわけない…!お前のそのくだらない理屈で私みたいな存在が生み出してしまった。だから絶対に良いことの筈がない。そんな理屈わたしは認めない。


「これまで関係を築いてきた相手にはそれなりの誠意を見せているし、ちゃんとお互いに了承した上で関係を持っている。…もしかしたらまだ君に姉か兄が居るかもしれないね。」


「ーーーが…」


彼女が何か口にしたがか細くて良く聞こえない。ちょっとこの頃の女の子には刺激が強すぎたか?あの女の娘とは思えないな。見た目は瓜二つなんだがな。


「ん?聞こえない…もう一度言ってくれないか?」


「先生が、言ってた…。お母さんはこの世界に存在しちゃいけない。イレギュラーだって。」


先生…というのは死神の事か?確か彼女は死神をそう呼んで慕っていると聞いている。


「良いことを言うじゃないか。そのとおりだよ。あの女は君を産み出すだけの存在だったんだ。それ以外は悪にしかならない。」


ここであいの風を言い包められたら伊弉冉とは違う父娘関係を築けるかもな。…もしかしたら実の娘を抱けるかもしれない。顔はあの女そっくりで体型も私好み。


しかもあの女とは違って恐らく経験は無いか…あっても一人二人ぐらいだろう。私ほどになれば女を見るだけで分かる。


…そう考えると自然と身体の一部が熱くなる。まだその時ではないが、どうしても期待してしまう。高校生で実の娘…なんて甘美な響きだ。彼女ならいい母体になるだろう。いくらでも優秀な能力者を産んでくれそうだ。


「ーーーでもそれは違った。……悪なのは私で、その元凶はあなただったみたい。」

この父親あっての主人公。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ