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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
2.死神の猟犬
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愛の告白

遅くなってすいません。

ふー…そろそろここを離れよう。警察や民間人が来たら厄介だし。


(えーとこういう時は電話するんだっけ?)


起き上がるとパラパラとガラスの破片が落ちるので軽く頭を振る。それでも落ちきらないので車から降りて軽くジャンプして残りの破片を落とす。


髪の毛にもよく分からない欠片が付いてて気持ち悪いし身体から埃が舞って煙っぽい。せっかくの服が台無しだ。


服に付いた汚れを叩いて落としているとシワやキズが付いていない事に気付いた。凄い素材だ。


確かこのジャケットは衝撃吸収の素材を仕込んであるって言ってたし私が無事だったのはそのおかげかも、和裁士さんありがとう!あなた達は命の恩人だよ!


ポケットからソマホとスマホを取り出す。ソマホはキズ一つなく電源も入ることを確認出来たけど、スマホはヒビだらけで電源が入らない…逝ってしまったー!!!連続ログインボーナスがぁ!!!!!サービス開始時からずっとログインし続けていたのクッソーー!宮沢みゆきテメーは絶対に許さねえ!お前の現実連続ログイン日数の記録を今日でお終いにしてやる!


一人で勝手にキレながらソマホで電話をかける。


「はい。こちら“処理三課”ご要件は?」


「処理班の伊藤美世ですが、対象と接敵して戦闘行為に移りましたので建物が破損しました。現場の処理をお願いします。」


処理三課は現場に残った証拠の隠滅から遺体の回収までを業務にしている掃除屋さんだ。


「承りました。場所は伊藤さんが居る現在地、及び対象のアパートで宜しいでしょうか?」


私の位置はGPSで組織に把握されているから説明しなくても大丈夫なのかな?それとも何かの能力で私の行動を把握していたり?


「はい大丈夫です。あと、人には見られていないと思うのですけど…」


「でしたら“ゲスト”の追加で対処致しますのでご安心を。」


多分ゲストは“処理二課”の人達の事だろう。この人達は記憶の操作を行ない現場を目撃した一般人の記憶をデトックスをする課で、それ以外にも買収やら色んな手段を使って何も無かった事にしてくれる優しい人達だとか。


「ありがとうございます。」


「では良い一日をお過ごし下さい。」


私は電話の通話を切り、肩に入った力を抜いて一呼吸つく。


「は~~緊張した〜。」


ではゲストが来る前に先生を呼ぼうかな。


私は先生との間に繋がるパスに意識を集中させて応答を待つ。お願いします来てくださ〜い!


『ーーーミヨか どうした?今日は初任務だっただろう?』


先生の再現された姿を見た瞬間表情が強張ってしまった。さっき私が居た場所に再現してしまった影響で先生が仰向けで車に寝ている状態に…え、ちょっと待ってどうしようどうしよう!ダサい!…いやいや違うけどね!?先生がダサい訳じゃなくて軽自動車のフロントガラスに倒れた私を客観的に見たら痛々しくてダサい!


まるで最初からめり込んでいたみたいに倒れてるのに無駄に良い服着た私がダサ過ぎて泣けてきた。もしかして宮沢みゆきの視点からも私ダサく見えてのかな?


もしそうなら軽く死にたくなってきた…私あんな体勢で交渉してたの?????馬鹿なの?????はああああああああ(クソデカ溜め息)


『ーーーミヨよどうしたのだ 黙り込んでは分からないぞ』


その体勢のまま喋らないでください!シュール過ぎます!ヤバい私の軌道を再現しただけなのに先生が不憫に見えてきた…この展開を予想出来なかったわたくしをお許しください。


『先生すいませんが車から降りてもらえませんか?』


『ーーー何故こんな体勢で再現されているのだ?』


すいませんすいませんすいませんすいませんすいません!ごめんなさい!!!!


『本当にすいませんでした。色々理由が…』


『いや問題無い 軌道を視て状況を確認する』


先生は車から降りて2階のベランダに視線を向けて軌道を読む。


『ーーー理解した 歩きながら話そう』


今までにない険しい表情をした先生が私に視線を向けながらそう告げた。


私が先頭を歩きながらアパートを離れる。その間お互いに無言で気まずい空気が流れていたが先に沈黙を破ったのは険しい表情を続けた先生だった。


『何故あの場で殺さなかった』


『相手の能力を甘く考えていました。思わぬ反撃を貰いましたので一度状況を整理したく思いあの場は話し合いで終わらせました。』


『そういう事を聞いているのではない お前なら殺せたはずだ!』


私の声なのに迫力が凄い…自然と背筋が伸びる。ここで返答を間違えると最悪殺されるかもしれない。


『そうですね。反撃を貰った後も左手は動いたので銃を使えたと思いますしあの距離なら外すことは考えられません。』


『…ならどうしてだ?』


『最初に言った通りです。()()()()()()()()()()()()()()()。自分の能力に自惚(うぬぼ)れていたんです。』


爪が手袋を無視して皮膚に食い込む程に左手に力が入る。


『私は先生に指導を受けて能力と身体能力の成長は出来ました。しかし内面は成長出来ずにクソガキのままです。』


宮沢みゆきを殺せなかったのは念動が強かったからではない。私が弱かったからだ。私の判断も行動も駄目で相手に反撃させる要因を作り出してしまった。


『だから私はもっと成長しないといけないんです。一度負けた相手に真正面から殺し合いをしないとこれ以上の成長は見込めない。』


殺すのは簡単だ。私の能力は暗殺向けで私以上の暗殺者は居ないと思う。でも私は殺し屋にならないといけない。ちゃんと相手の能力と人格や性格はもちろん行動パターンまでを知り尽くして立ち回らないと殺し屋なんて名乗れない。


『あそこで殺してしまったら私はそれを成功パターンとして疑問もなく繰り返すでしょう。それじゃあ駄目なんです!』


私は先生に振り返って自分の思いをぶつける。


『何故駄目なのか教えてくれるか?』


先生は何かを期待するように私に質問を投げる。


『先生の隣に居たいからです!先生を後ろから追いかけるだけじゃない!先生に後ろから見守られるような存在でもない!あなたの隣に立てるようなパートナーになりたいんです!』


予想外の回答に私の姿を再現した見た目の先生が驚きの表情で固まる。


『ーーーそれはワタシと対等の立場になりたいという事か?』


『ちょっと先生の思っている関係性とは違うと思いますけどそんな感じです。』


『ーーーなるほど話は分かった これはミヨ自身の成長の為に必要な通過儀礼のようなものか』


『やっぱり分かっていないですね!でも必要な通過儀礼の所は合っています!流石先生!』


先生のこういう鈍いのに理解が早いところが好きだし私と同じ見た目で同じ声だけど全然私と違うところが大好きだ!


『よし!ここはミヨの為に人肌脱ぐとしよう』


先生は得意げな表情で私に微笑みかけてくれる。この顔はお母さんが良くしていた笑顔と似ていて私は思わず顔に触れようと至近距離まで近づく。しかし触れる事は叶わずに私の左手は先生の顔を透過してその顔を歪ませる。


『どうした?ワタシの軌道に問題があったか?』


先生は自分の身体と私の身体を見比べながら軌道を描く。


こんなに近くに居て声を聞けられるのに…ああ、こんなにも途方も無く遠い。これから先もこの距離が縮まることは無いのかもしれない。でも私はそれで構わない。実際に隣に立ちたいんじゃない。隣に居ても邪魔にならないような先生にとって頼りになる存在で良い。

次回は戦闘回かも?

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