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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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京都交戦 ①

戦闘パート再び。

1人の能力者がそこに居た。その彼女は周りの注目を集めながらも悠々と歩き、そのせいで更に人の視線を集める事になる。だがそれは仕方のない事だ。彼女は余りにも目立つ容姿をしているからだ。


(……うっぜ。)


昔からこの街が好きじゃない。何故ならこの京都は昔ながらの景観を残そうとしているが、実際は防災の観点と財政の問題から近代化が進んだり停滞を繰り返している。生まれからずっと京都に住んでいる私からするとアホか、そうとしか言う他がない。


どっちつかずの現状を変えようともしない京都人の矜持なんて捨ててしまえと、老人共と政治家共に吐き捨ててやりたい。電柱を全部地中に埋めるだとか、それだと災害時の復旧に時間が掛かるだとか、それよりもこの外国人の量をどうにかして欲しい。


別に差別発言じゃない。国際化?とかの考え方もまあ分からなくもない。でも外国に合わせて自分達の暮らしを変えてしまうのは如何なものかと考えてしまう私は異端なのだろうか。


別に今までしていた暮らしで問題なく暮らせていたのに、海外はこうしているから私達もそうしようとか無理に合わせる必要性を私は感じない。絶対に地球の反対側に住んでいる人達なんて京都の人がどう暮らしているか気にしていない。


私もブラジルとかの外国の人が日本の暮らしや在り方を意識して生活様式変えましたとか言われても困る。みんなそうじゃない?


「ありあとあっしたー。」


「あーさみー…。」


コンビニでホットココアを買って店の前で飲む。私みたいなデカい女がコンビニに居ると邪魔になるから外で飲むしかない。


(見世物じゃねえぞっと…。)


歩行者達が私をチラッと見て過ぎて行く。中学校…いや小学校の高学年の頃からこうだった。まるで大人がランドセルを背負っているみたいだからすれ違う人みんなに嫌な視線を向けられたっけか。


多分そういう細かいストレスや家族との関係性のストレスが私をここまでの能力者に仕上げたんだろうなぁ…。そう考えると美世も相当なストレスを感じていたに違いない。


「…今はどういう状況なんだろうな。」


スマホを開いてオリオンからのメール画面を表示するとそこには文字化けした文面がつらつらと続いているだけで内容が全く分からない。一斉送信で理華や淡雪達にも送られていたから大事な内容だったはず。


しかしこの送信から特に音沙汰もなくこちらから連絡しようとしても電波が立たなくなるといった事象に見舞われる。つまり美世絡み。それはみんなが分かっていると思う。


「連絡取れず、状況は見えず、私は昼間からココアを飲んでる………このまま平和にならないかな。」


今日は完全にオフ。東京から京都へ向かう新幹線のレールが昨日の竜巻で壊れたらしいから今日は観光客が少ない気がする。


こうやって外に出てるのは家に居ても息苦しいだけだし、平日だから稽古をつける相手も居ない。久々の休日でも美世の事を考えると寝てるのもな〜と思い、色々と考えた末がコンビニとは……私も結構つまらない人間だな。


「……さっむ。」


温かいココアを飲んでても身体は冷えていく。流石にこの格好だと冷える季節になってきた。


上は黒いレザージャケットとその下に白字に適当な横のラインが入ったシャツ。下は丈が膝下まである緑のアシンメトリースカートで足は黒いブーツ。このファッションなら素足は出ないし寒くないやろと思ってこれを着たけど完全に秋用の防寒性だったわ。


髪も面倒臭いから下の方で軽くヘアゴムでまとめただけだし、今の姿は知り合いには見せられない。ていうか出会いたくない。


「帰るか…。」


外に出ててもやる事は無い。なら自室でプリテイシアのライブDVDを見てあの頃を懐かしむとしよう。あれ私の身長が高くて目立ってたから普通に引きの絵に映ってたんだよね。あのDVDは私の宝物だ。


「あら、もう帰っちゃうの?」


後ろから声が掛けられたけど私はすぐには振り返らなかった。その声があまりにも知り合いに似ていて、あまりにも知り合いとはかけ離れた声だったからだ。


似過ぎているのにあまりに他人…こんな奇妙な相手に背後を取られてしまったのは、私が油断をし過ぎていたからだろう。常に気を引き締めないと貴重な休日を潰してしまうことになる。こんな感じでね。


「…せっかく京都に来たんだから観光でもしていったらどうです?」


私はゆっくりとその場で振り返る。するとそこには美世とそっくりな他人が立っていた。見た目だけは美世そのものなのに、そいつから発せられる雰囲気があまりにも異質過ぎる。


……コイツが美世の母親か。死神があれだけ警戒する訳だ。


上から下を見てそんな感想が出てくるぐらいには彼女は邪悪だった。


笑っているのにその目は狂気に染まっている。美世と初めて組み手をした時、私が道場で見たあの青い光そのものだ。あの目をしている奴がマトモなわけない。


「そうね…全て終わったら美世と旅行に来ましょうか。家族水入らずでね。」


そう言う彼女は母親の姿そのものだけど、その格好はいただけない。まるで影を纏った彼女の姿はあまりにも刺激的な格好で身体のラインが全部出てしまっている。一児の母とは到底思えない。良く引き締まっていて出る所が出ている。男どころか女まで狂わせてしまう色気があった。


「……死神とは来ていないの?」


これはなんとなく口から出た質問だった。言ってから質問の内容を理解した程だ。昨日起こった事件は彼女と死神が戦った際の余波だろうとここで気付いた。


「あー…。先生は美世を連れてどこかへ行っちゃったわ。」


…仕留めきれなかった?…いや、コイツを仕留めるよりも美世の安全を優先したのだろう。死神ならそうするか。あいつも大概だが美世に依存している。コイツよりは健全そうだけど。


「なら次は私って訳か。……まさかここで殺り会おうとか言わないよね?」


ここは昼間の京都のコンビニ前。歩行者は沢山居るし監視カメラだってある。まさかとは思うけど人に見られていても殺る気なのか?


……あり得る。あの目を見れば殺りかねないと分かる。私は歩道のど真ん中にまで歩き、手に持ったココアの容器を捨てた。そんな私の行動を道行く人達が怪訝な目で見てくるけど、私の顔を見てみんなが目を反らして通り過ぎて行く。


今の私は多分かなり恐い表情をしているのだろう。だが奴は私とは正反対に穏やかな表情を浮かべて道の真ん中に立っている。そして誰の目にも入っていない。


その姿はあまりにも刺激的な格好で影を纏ったような服は普通なら誰の目にも止まってしまうものなのに、道行く人々は誰も気にしていない。どうやら認識しているのは私だけのようだ。道行く人々は彼女に触れる事も視認する事も出来ず透過して過ぎて行く。


「私ね。ここまで来る間に能力者を9人殺して来たの。」


そのなんてこと無い事を言ったような態度に私はブチギレた。私から殺意が放たれそれに気付いた歩行者達は私を遠巻きにしながら歩みを止めた。


「京都って能力者が多いのね。子供の能力者まで居るんだもん。」


「きさまッ…!」


血が沸騰したように熱い。身体中に血が巡り回って目がチカチカしてくる。身体の奥底が信じられないぐらいに煮え滾って今にも爆発してしまいそうだった。


この京都には子供の能力者が大勢居るが、私は全員の顔を知っている。私の家は権力があって京都の能力者全員が私の家に挨拶に来るからだ。だからコイツに殺された子供達は全員私の知り合いになる。


コイツは必ずここで殺さないといけないッ!


「ふふっ。人が居るのに物騒なんだから。」


その顔は挑発が上手くいってご機嫌な表情だった。人を心底馬鹿にしたようなその顔は到底美世の母とは思えず、私の頭の中から美世の事や彼女が死神ですら殺し切れず放置している事が抜け落ちていた。


「初めて見た時から何故かあなたの事が気に食わなかったの。でも最近になってその理由が分かった……だから美世のお姉さん面はしないでよね。」


「うるせえよ…!」


彼女は邪悪そのもの。この世にあってはならない存在だ。


「黙るのは貴方よ。永遠とね。」


1人の能力者と1つの災いが衝突した。その日、京都に災いが降りかかる事になる。それは後に“令和の都落(みやこお)ち”と呼ばれ、世界中に衝撃を与える事になったのだった。

天狼と美代との戦いです。この2人、実は因縁のある関係なのですがもし分かったのなら凄いです。

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