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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
2.死神の猟犬
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主人公交代?

今日は早いです。

私と宮沢みゆきとの間には2メートル以上の間隔が空いていた筈なのに私の身体は外に投げ出されていた。


…組織の報告に間違いがあった?可能性としては否定は出来ないけど探知系能力者も居るし彼らはプロだ。そんなうっかりミスするだろうか。


考えられる別の可能性として彼女が爪を隠し続けていたとか?いや可能性が低いな。話していて分かったけど彼女はそこまでの計画性は無い。


考えられる可能性として1番高いのは“成長”かな。先生がストレスは良くも悪くも能力に影響を及ぼして成長させるって言っていた。組織に追われるストレスなんて凄まじかっただろう。そこに私というやべー女が加わった結果が射程距離の延長。


これは結果論だけどやっぱり後ろから撃つべきだった。変に考え過ぎた結果がこの地面へのダイブだ。………そうだよ私、落下中じゃん。


(あれ?長くね?もしかしてこれ走馬灯みたいな…)


背中と後頭部に強い衝撃を受けたと同時に私の視界がチカチカと光って、2階から落ちたんだなと認識した。


「ゲホゲホッ…ケホッ」


心臓の鼓動はうるさく感じる位に激しく動き身体中の神経から脳に正常な信号を送ってくる。つまり痛覚から信号が流れてくる…痛ってえ。後頭部思っきしぶつけたよ。


(これ地面じゃなくて車のフロントガラスの上だ。)


念動の衝撃と2階から車にダイブした衝撃のダメージで意識こそ失わなかったけど、背中からフロントガラスに着地した私はその場を動けずにいた。


(マズい。肺の空気が全部吐き出されて上手く呼吸が出来ない。)


【探求】(リサーチ)で対象を視認すると彼女はベランダまで移動しているようだ。恐らく私の生死を確認してここから逃げ出す為だ。


私はすぐに動く事はせずに呼吸を整える事に集中する。殺しの呼吸!


「し、死んだ?」


「…こんな事でくたばらないよ。」


私は左手の中指を立てて反論する。


「しゃべれるんだ…凄い。」


「彼氏さんはこれで死んだかもしれないけど私には通じないから。」


虚勢を張ってダメージの回復に努める。少しでも時間が欲しい。


「えっと…私行くね?音、出し過ぎたし。」


それはマズイ!ここで逃がすともう追えないかもしれない!何とか相手の興味を惹いて交渉に持っていきたい!


私は対象に話し掛ける。


「宮沢さんリベンジさせてくれない?」


「え?え〜〜嫌、かな。」


「宮沢さんの850万は私達が持ってるよ。」


宮沢みゆきの肩がビクッと反応した。やっぱりこのアパートに戻って来た理由はこれね。


「私に勝ったら返してあげるし、この先宮沢みゆきさんを害する事はしないって約束するよ。」


動揺が顔に出てるよ宮沢さん。フフフ…おー揺れておる揺れておる。つい最近までただの一般人だった彼女にはこの提案は魅力的に見えるはず。


「あ、あなたにそんな権限あるの!?」


「私ね、結構偉い立場らしいし1番偉い人と仲が良いんだよね。」


信用しきれないって顔だね。ここで信用を勝ち取る交渉は無理かな?うーん宮沢みゆきの中で葛藤が起きている事は見てて分かるけど後ひと押し出来る材料が私には無い。だったら攻め方を変えますかね。


「私と戦ったら面白いよ。」


オドオドしていた雰囲気から好戦的な雰囲気に変わり目線をこちらに向ける。残念だけどコイツは私と似てる。バトルジャンキーで自分の能力を使いたくて仕方ないタイプ。


「彼氏さんはすぐに壊れたけど私はこの通り頑丈だよ?宮沢さんが能力をいくら使っても耐えてみせる。」


宮沢みゆきの口元が少しだけにやけ始めた。


私は組織の資料には宮沢みゆきの詳細なデータ、ネットの検索履歴を思い出す。


「宮沢さんアニメとかマンガ好きでしょ?やってみたくない?能力者同士のガチンコバトル。」


お互いにゴクリと唾を飲み込む。


「ここで逃げてもストレスの貯まる逃亡生活が待っているだけだよ?警察だって宮沢さんを探そうとするしテレビにだって宮沢さんの事が取り上げられる。」


…後ひと押し。


「言っとくけど能力者なんてそんな数居ないからね?多分隠れながらだったら一生出会えないと思うなー。人生なんて1回きりなんだから思いっきり能力をぶつけられる機会を逃すなんてもったいないよ!」


「で、でも!アナタが仲間を呼んで私を殺そうとする可能性だってあるじゃない!」


「宮沢みゆき。あなたは強い。私もかなり強い部類だけど銃を防がれたのも相手にダメージを与えられなかったのも初めてだよ。」


あの念動の力、バリアみたいに使う事も出来るんだね。クッションみたいに衝撃を吸収して本体にはノーダメージって本当に万能な能力だ。


「そ、そう?私って強いの…かな?」


「うん。だからもう一度手合わせしたいの。お互いまだまだ本気出せてないでしょ?やろうよ異能バトル。」


悩んでる時点で興味があるのは確定してる。あともうちょっとでこっちのペースに持っていける。


「でもやっぱり嫌かも…アナタそんなに悪い人に見えないし殺したくない、かな。」


…おっ?もう勝っている気でいるよコイツ。死にたいのかな?天然で煽るとか絶対女性の友達居ないでしょ?殺すよ?


「いや分からないよ〜?私が奥の手を隠している可能性だってある訳じゃん?」


「それでも私の力は無敵だけどね。」


コイツ本当にムカつく!弱者に向ける目だよそれ!もう自分が勝ったみたいな空気出してる。


(ヤル気にさせないとマズい…コイツの中では決着がついてしまっている。)


宮沢みゆきは能力に対してはかなりの自信がついてしまっている…ここを揺さぶっても微動だにしないだろう。それなら別の所を揺さぶるべき!


「ねえ宮沢さんの最終学歴って中卒だよね?高校は中退しちゃったんだよね?私ね、宮沢さんが高校辞めちゃった理由知ってるよ?クラスの女子にイジメられたんでしょ?」


「な、なんで知ってるのよ!?い、いい今はそんなこと関係ないでしょ!!!」


「いやいや関係あるよ。私女子高生だもん!」


「!?」


恐ろしい形相でベランダから上半身を投げ出しそうになりながら私の話の続きを聞こうとする。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


女子高生(わたし)を殺す事に価値を付ける事で交渉を試みる。


(あなたがここで私の提案に乗ってくれないとここで殺さないといけなくなる。)


「いいわ…その提案に乗ってあげる。どうする今やるの?」


ヨシヨシヨシ!


「いや今は止めておきましょう。人目が付くしここではお互いに本気出せないでしょう?」


宮沢みゆきは少しだけ思案した表情を見せたけどそのまま私の話を聞く姿勢を維持した。


「場所はこの近くの自然公園で良い?人目が付かないし見渡しが良いから私が一人で居る事も分かりやすい。」


「確かにあそこは良い所ね。」


「時間は…夜の7時で良いかな?閉園してるから人が居ないし車が走っている時間帯のほうが音を気にしなくて済みそうじゃない?」


「ええ問題ないわ。」


「じゃあそういう事で!首洗って待ってな!」


「アナタはまず顔を洗ったほうがいいわよ。」


本当にコイツ言ってくるようになったなー。でもコッチが素っぽいよね。家庭環境や元彼(元は彼氏の形をしていた何か)の影響でオドオドとした性格に変えられたのが能力の開花で矯正されたかな。


「最初のオドオドした話し方よりハッキリと毒を吐く方が私好きだよ。」


「えっとありがとう?アナタの言葉本当に嬉しいわ!うふふ楽しい殺し合いをしましょうね!」


ヒステリーが入った幸薄そうで薄暗い表情の彼女はもうそこには居なかった。居るのはそれは楽しそうに笑う明るくて綺麗な女性。


「その綺麗な笑顔を悲痛に歪む顔にしてやるからな。」


完全に悪役になった伊藤美世ちゃんを置いて主人公として覚醒した宮沢みゆきは空に帰るように飛翔した。

早かったです。

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