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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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嵐の前の静けさ

静けさは一瞬のことです。

最近理華の様子がおかしい。いやこの表現は正しくないか。彼女はいつだっておかしかったと思うから、こう言うのが正しいかな。


余所余所しい。


この一言に尽きる。前より距離感が微妙になったような気がする。それは理華だけじゃなくてハーパーもだ。ハーパーは車の免許を取っているので休日に時間が合えばドライブとか、たまに行っていたりしたけど最近はめっきり連絡が来ない。それは私の効果範囲外だから誘う事自体は可能なのに。


…でも丁度いいかもしれない。私に近付くことはお母さんに近づくことにも繋がる。だから向こうから距離を取ってくれたのは僥倖と言っていいだろう。


それに最近はみんなとの距離感も分からなくなってきたし、前みたいにボッチに戻っても大丈夫。私にはお母さんが憑いている。だから寂しくはない。ちょっと悲しいだけ。


今日も1人寂しく学校の帰りを堪能しますかね。


(ん、この反応は…)


いつも帰り道の途中、私に近付く命知らずの若者を私は認識した。この反応は間違いない……彼女だ。


「ミヨヨ〜〜!!」


このふざけた呼び名を使う奴はこの世界に一人しか居ない。外でその呼び名をつかわないでほしい。


「お久しぶりだね佐々木さん。」


私に声を掛けてきたのは佐々木真央。通称マオマオ。(動物界,脊椎動物門,哺乳綱,霊長目,ヒト科,ヒト属,ヒト種。)に属し、私と同じ高校に通う女子高生。


前にマリナ様達とカラオケに行った事がある。あの時の空気が死んでいて、感受性豊かな私のメンタルも影響され、死んでいた。


「マオマオだよ〜ミヨヨ〜〜☆てか既読スルーすんなっ☆」


ああ…この感じ懐かしい。いきなりチョコレートパフェを口の中に突っ込まれたような息苦しさとカロリーの重さを感じるよ。


「それ私の標準装備だから気にしないで。…佐々木さん珍しいね。()()()()()。」


私は彼女にピンをつけているから射程圏内に居る限り動向を探れる。いつも彼女は寄り道をしてから帰宅している筈なのでこのタイミングで私と同じ帰路につくのは大変珍しい。


(タイミングが悪い…。)


多分彼女はお母さんが嫌いなタイプだ。彼女がもし私にとって不愉快な言動を取った場合、帰りの途中で不幸な事故に合うかもしれない……。バッドタイミング過ぎる。


「でしょでしょっ!な〜んかビビッと来てねっ。それで直帰していたらミヨヨ見つけたから声掛けちゃった☆」


多少イラッとする言動だけど彼女はなんの罪もない一般人。帰り道をエスコートしてあげるぐらいの器量を見せないとね。


「なら途中まで帰りませんか?」


「うっそーー!私から誘おうと思っていたのに良いのっ!?絶対に嫌がると思ってたのにっ!絶対に断られると思ってたのにっ!」


へーそういう人の機敏とか鈍いと思っていたけどね。分かっててこのテンションなら彼女、天然でウザいのか。


「ほら、最近中々会えていなかったし良い機会だったから。……最近どう?何か変わった事ある?」


そのベルガー粒子とかさ。能力者でもないのにベルガー粒子量が多くて感情に左右されて動き出したりする。能力者のなりかけと私は睨んでいるけど特に進行している感じは見受けられない。


「変わったこと?う〜〜んとねーー………特にないよ☆」


…溜めたなー今の間。それをさっと言ってくれれば良かったのに。


「じゃあさ、次は……」


私はマオマオを送りながら彼女について知ろうと色々な質問をした。彼女の家族構成とか周りに居る人達の事を重点的にね。彼女のご両親が能力者の可能性もあるから今の内に調べておきたい。多分組織とは関係のないご家庭だし。


もし組織絡みだったとしたら理華辺りが知っている筈。でもそんな事を聞いた記憶は無いからフリーかまたは別の勢力に与しているのか……


いや……考えすぎかな。正直頭足りてなさそうだもんこの子。最近色々考えることが多くて勘繰り過ぎかな。神経質になってるな〜わたし。う〜ん良くない。


「でねでね!ミヨヨはさ!好きな人おんの〜?言うてみ言うてみ☆」


好きな人か………私の好きな人って誰だろう。


「え?」


私は自分の考えに驚いてしまった。昔なら、少し前までならすぐに思い付いたのに今はパッと出なくなっている。少し前までなら先生って答えた。それより前ならお母さんだって。


でも今のわたしの好きな人って誰なんだろう。誰が好きで誰が嫌いかも分からなくなっている。……なんで思春期の学生にありがちな悩みを真面目に考えているんだ私は。今はそんな事はどうだっていいじゃんか。


「……ミヨヨ?どうした?お腹痛い?」


「…どこもかしこも痛々しくてしょうもないです。薬で痛み治りますかね?」


「う〜〜ん……分かんない☆」


あぁ…人生楽しそうな答え方だなぁ。私もこういう風に人生楽しめたらラクなのかもしれない。


「あ、ていうかミヨヨ家こっちなの?今まで1度も会ったことないよね☆」


私の家か…どっちが私の家なのかな。どっちも私の家って言えるんだけど最近はマンションの方が多めかな。


「そうだね。いつかまた一緒に帰れると良いね。」


私達は駅へと向かい電車に乗って移動した。このルートは彼女がいつも使っている帰る時の道順で結構高校から遠い。駅を5つも移動している。この周辺にも色々な高校があるのになんで彼女はどこにでもあるような平凡な高校を選んだのかな……学力?


「あれ?ミヨヨもこっちなの?」


「うーーん、ちょい違うけどもうちょっと話したいからさ。もう少し一緒に居ていい?」


彼女を送り届けるのが今日の私の役割だと決めている。今日の私は送り狼だ。あ、これは駄目だ。駄目な使い方をしてしまった。えっと…送り……犬?送迎犬?


「嬉しいっ!ミヨヨ私と帰れて嬉しいんだっ!えへへ☆」


守りたいこの笑顔。こんな純粋な感情を向けられるのは久しぶりな気がする。マオマオは一緒に居て適当に過ごせるから今の私には丁度いいかも。私も馬鹿になろうっと。


「あ!あれ私の家だよ☆」


マオマオが指差した方向には超のつく高層マンションが立っていた。多分東京の中でも一二を争う高さのマンションだと思う。…マオマオの家は金持ちだったのか。だからこの残念な頭でも生きていけるんだね。(ど偏見)


「へー!おっきいねっ。」


私はあそこ辺りは行ったことがないからマッピングされていない。だからここ辺りまでしか彼女の動向は認識出来ていなかった。ピンをつけていても射程圏外に行かれると私は認識出来なくなる。


(…これ以上彼女の生活圏は侵せないな。)


だからこそお母さんから逃げられる。


「………ごめん。私用事あったの思い出しちゃった。今日は帰るね。」


「えっ……う、うん。また…ね。」


ざ、罪悪感がすんごい。あれだけテンションがバグってた佐々木さんが急にしゅんとなるのは心に来る。ギャップがね、こんな姿見せられたら優しくしてあげたいと思っちゃうよ。


「絶対に今日ライン送るから。それで今週また一緒に帰ろっ。」


捨てられた子犬みたいな佐々木さんが顔を上げてパーっと笑顔に変わる。


「うんっ!」


私はその場で佐々木さんと別れて自宅へと向かった。本当に用事があったというか出来たから急いで自宅に戻らないといけない。あの路地入ってテレポートしよう。


「【再発(リカー)】act.瞬間移動(テレポート)


私の身体はベルガー粒子に保存されていきこの世界から一時的に消失する。身体が構築されるのは……あと2秒後。……1……2…………。


伊藤美世の身体が徐々に構築されてこの世界に出現した。場所は上空500メートルの空の上。私の身体は重力に引かれて落ちていく。私は手につけていた()()()()()()()()()()()()()()()


するとブレスレットだけが落ちて行き誰の目にも留まらなくなる。小さ過ぎて視認する事も難しいからだ。そんなブレスレットが自宅の玄関先に落ちて……そのまま影の中へと音も無く沈み込んでいった。


そして影の中から私は這い出てすぐに玄関のドアを開く。すぐにリビングに行かないといけないからこんな無茶をしたけど、本当に見られていないか心配……多分大丈夫だと思うけど…。


「ただいま。」


玄関から廊下を抜けてリビングへと入る。


「おかえり。今日は早かったな。」


すると少し嫌味っぽく言う父の姿と…


「おかえり美世。早かったわね。」


青い目をしたお母さんが父を見下ろしながら私を出迎えてくれた。

マオマオは久しぶりの出番ですね。もう覚えている人居ない説ある。

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