生存戦略
気が付いたらもう300話まであと一歩です。実はこの物語を書く前、200話ぐらいで完結すんべ。と甘い見込みのまま見切り発車で始めました。馬鹿ですね。
しかし5話辺りで、これは……終わんねえ。と思い1話ごとの文章量を増やしたりしましたが、それが原因で自身の首を絞める事に繋がりました。アホですね。
しかも私は飽き性であるので、毎日書かないと多分続かないと考えて毎日投稿する事にしました。ドMかな?
こんな投稿者ですが最後までお付き合いお願い致します。
1年後の未来ではたった1人に私達は敗北した。つまり私や天狼さん、死神でも抵抗むなしく殺されたという事になる。それだけ怪異点が異常な性質を持っているという事だ。
「その…怪異点が私達を殺そうとする動機ってなんですか?美世ちゃんのお母様って美世ちゃん本人から聞いていた感じと違うので。」
私も雪さんと同じ事を考えていた。美世から聞かされた話ではとても優しく良い母親だったという印象を受ける。でも実際は私を殺そうとするなど狂暴性が高い。美世やイビルジョ○より狂暴な生き物を初めて見た。
「能力者に殺されたから能力者を恨んでいるんですよ。それが動機です。分かりやすいでしょう?復讐ですよ復讐。」
それは…とても分かりやすい動機だ。人を殺そうと思う動機なんてあらかた限られてくる。その中でも復讐はポピュラーな動機のひとつだ。
「…私達能力者を恨んでいるって事だよね。…普通そうだよね。自分を殺した相手を憎まない人なんて居ないもの…。」
「それと美世のお母様は、母親としては良い母親だったのかもしれませんが人としては善人ではありません。美世が言っているのはあくまで彼女の主観でありその人の本質を話しているわけではありません。会えば分かりますよ。ねえ三船さん。」
ここで私に振るのか…。
「…私は初めて会った初日に殺されかけました。」
私が言葉を言い終えると同時にテーブルが叩かれる音がして、音がした方向を見ると天狼さんが怒っているような驚いているような表情で立ち上がっていた。
「なんでそんな大事な事を言わないんだっ!」
「誰かに今すぐ言いたかったですよ…。でも連絡が取れないのでこうやって直接会ってから話そうと思っていたんです。…ごめんなさい。」
天狼さんは私に怒っているんじゃないし謝罪が欲しい訳でもない。それは分かる。この様子だととても心配させてしまったみたい。…本当に悪いことをしたな。
「…いや今のは私が悪い。こっちこそごめん。」
ちょっとだけ気まずい空気が流れたけど、その流れを蘇芳さんがぶった切る。
「ああそれはですね。美世がネットを経由して連絡を取れないようにしているからですよ。」
「ネット?」
あ、そうが。ハーパーはもしかしたらネットを利用して能力の射程を伸ばせる事自体知らないのかも。あの話し合いには参加していなかったし。
「美世と怪異点の情報は厳重に美世の能力で拡散されないようにしています。因果律を弄ってね。」
「それで美世が見つけられなくなったのか…。」
天狼さん達は納得した様な表情でソファーに座り直し、蘇芳の話の続きに耳を傾ける。
「見つかるという結果を削除しているというより…そもそも結果が出ないと言ったほうが適切でしょうか。そこの所はどうなのですか死神。」
蘇芳が残りの説明を死神に投げる。
(蘇芳って死神の能力を良く知らない…?)
もしそうなら蘇芳が死神を警戒している理由も美世を引き入れようとしているのも納得がいく。蘇芳の射程に死神と美世は居ないんだ。
「いまワタシの能力でこの部屋から誰も出られないようにしている。この性質を利用しているのだろう。一種の結界能力だ。」
京都の味付け並みにあっさりとした言い方だけど!!ちょい待ってッ!いま私達を閉じ込めているって言わなかった!?
「この結界内ではワタシが因果律をコントロールし、ワタシ以外の者はこの結界内から出るという因果が起こらない。ミヨの場合は効果範囲を縮小して能力を行使しているのだろう。例えば自分に関する情報のやり取りの因果を発生させない…とかな。でないと継続的に行使はし続けられないからな。」
何故かちょっとだけ楽しそうに語る死神を呆れた表情で皆が見ていた。能力の話だと楽しそうに話すんだね。
「…脱出する事が出来ないのは分かった。ついでに言うと能力も行使出来なくなっているな。」
天狼さんは自分の手を見ながら何かを確認したように告げる。私も能力を行使しようとしたけど…出来ない。天狼さんの言う通り能力が使えない。…死神ってそんな事も出来ちゃうの!?
「本当だ…」
「私も使えませんっ。」
「俺は……分からねえな。能力無いし…。」
「私は使えてますね。」
えッ!?皆が蘇芳を見る。彼女は能力を使えているらしい。
「ワタシが許可しているから使える。必要だからな。」
対象を選択する事も出来るのか…無敵だ。死神1人で美世のお母様である怪異点に勝てるんじゃ…
「聞きたくないんだけどよ…何を話してるわけよ。」
ボーちゃんがまた肩を叩いてきて話の内容を聞いてきたけど、この流れさっき見たな…。どうせ最後まで聞かないでしょうがあなた達は。
「死神の能力でこの部屋の中だと能力は使えないし出ることも出来ない。でも彼女…蘇芳だけは死神の許可を得て能力を行使出来るみたいな感じです。」
「あぁ…アレか。私達も死神に閉じ込められたっけ。」
「思い出したくもないわね…死神って結局の所、私達に何をして欲しいの?もうその辺の話はしているの?」
ルイス…さんとラァミィさんから質問を受ける。だけど彼女達ってそもそもどういう経緯でここに来たんだろう…。話を聞いている限りオリオンさんが死神とは知らなかったぽいし、美世に呼ばれて来たわけでもない…何気にこの中では謎の立ち位置だ。
「死神…私達に何をして欲しいのか聞いて欲しいと魔女たちから言われたのですが…。」
「お前達にはワタシと一緒に戦ってほしい。戦力が居る。」
…死神フランス語話せたのか。だったら私の翻訳いらないじゃん。……あ、蘇芳も話せたじゃんか!2人も翻訳出来る奴が居るんだからさ…!
(でもお願いし辛い2人だから無理だよね…)
「拒否した瞬間に拳銃を眉間に突き付けられる未来が見える…。」
「分かっているじゃないか。死にたくなければ協力しろ。」
彼女達は達観とした面持ちで死神に協力すると約束した。
「しかし我々のような能力者では戦力にもならないと思うがな。能力を封じられて閉じ込められたら一般人とそこまで変わらん。」
「俺は能力者ですらないからっ!戦力に入れないで!」
「私も戦闘向けの能力ではないので!」
死神に協力して戦うとしてもみんなが同じ懸念を抱いている。死神と同等のことをやってのける美世の存在がとても厄介であり、それに加えて怪異点も居る。
この2人に勝てるビジョンが見えない。この2人と戦うとか悪い冗談にしか聞こえない。
「そこを解決する方法がある。ワタシとミヨのパスを一時的に解除すれば美世は時間操作型因果律系能力を行使出来なくなる。そうすれば美世の戦闘力は大きく落ちるだろう。君達には美世の相手をしてもらいたい。」
「私…達がですか?」
「そうだ。怪異点はワタシが相手にする。なんせ未知数の相手だ。最悪の場合を想定するとワタシ以外太刀打ち出来ないだろう。」
「怪異点が非接触型探知系能力や時間操作型因果律系能力を行使出来るかもしれないと考えているのか?」
…考えたくないけど、もし天狼さんの言う通りなら怪異点は美世と同等以上の危険な能力者だ。…しかもその可能性は非常に高い。蘇芳の言うには1年後には私達は殺されている。つまりそれだけの能力を持っているという事になるからだ。
そうすると美世のお母さんが行使するであろう能力の候補として上がるのは1つしか思い当たらない。
「スオウ、そこの所どうなんだ。今のミヨと怪異点の能力について分かる事を言うんだ。」
今の蘇芳は聞かれた事を答えるだけの置き物と化している。因みにだが、報酬は茶菓子と玉露茶でなんでも答えてくれるという優れもの。さっきから黙々と食べている。細いのに良く入る。
「怪異点の能力の詳細に関しては知りません。でも能力が使える事は分かります。」
「…おい。」
(この殺気はっ…!!)
部屋の空気が鉛のように重くのしかかってくるようだ。自分に向けられた訳では無いのに身体がすくみ上がって動けない…!
こんなものを直接向けられたらひとたまりもないよっ。ましてや中学生ぐらいの女の子に耐えられるわけが…
「アレは能力というシステ厶上のバグ、エラーみたいなものです。システムが有効的に働いている私達能力者のシステムでは読み取る事は叶いません。そこは諦めてください。」
なんと蘇芳はさっきまでと同じ態度で断りを入れた。心臓に毛が生えているとかの次元じゃない。心臓が無いんじゃないか彼女は。
「ーーーチッ。これぐらいでは脅しにならないか。」
「はい。所詮脅しは脅し。実害が無ければなんの問題もありませんから。」
……この2人のやり取りを見て思ったのは、一周回って2人仲が良いんじゃないかって事かな。
「ですがここで話しておかないと私もアレに殺されてしまいますから話しましょうか。今現在の美世と怪異点の能力の詳細についてお話します。」
次回辺りで会話パートを終わらせようと思います。長いとダレますから。
 




