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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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善意から為る

美世ママは蘇芳レベルでヤベーやつです。

美世から聞かされた内容は信じられない内容で、私は目の前が真っ暗になるような感覚に襲われる。


能力が大きく向上した?それで母親を生き返らせた?しかも死神が消息を絶ったのは美世のせい?しかも母親の監視下に置かれてて身動き取れない?でもその原因は美世ッ!?


「…どんなもの食べて育ったらそんな事が出来るの?」


「…そう言ってくれるのは理華ぐらいだよ。最悪殺されるかと思ってた。」


「組織に所属してる身としたらそうするべきなのかもしれないけど……そもそも出来るの?」


本当に美世の言っている通りなら殺せないよね?


「もし私を殺そうとしたらお母さんが理華を殺すと思うよ。私はお母さんの射程圏内に居るから。」


もしそれが本当なら怖いママさんだ。正にモンスターペアレント。


「唯一ここだけが美世のプライベート空間って訳ね…。お母さんって能力者じゃなかった筈だよね?」


「私とお母さんは存在自体がとても親しいものになっててパスも繋がっているから。でも、具体的にどんな事が出来るかは私は知らない。」


うん……今までの話をまとめると私に出来ることは何もなさそうに感じる。


「先ずさ、美世はこれからどうするの?お母さんの事を隠し通せると思う?もし8年前の人を生き返らせたと知られたらみんなが美世とお母さんを狙うよ…。間違いなくね。」


「だからみんなから探知出来ないようにしてるんだよ。それぐらいは分かってるから。」


ああ…そういう事か。美世の能力はお母さんの為に能力を行使し続けているんだね。


「分かってないよね。そんな能力をずっと行使し続けていたら脳が潰れるよ。」


こんな能力が継続的に行使出来るわけ無い。組織は世界規模で捜索している。つまり美世の能力の射程距離は世界規模に行使されてるという事になる。


「それはね。ネットを経由して能力を行使しているからだよ。プリテイシアの件で出来るってのは分かっていたから。」


「…いったいどんなもの食べて育ったらそんな事が出来るの?」


美世の能力に対する感覚は本当に凄まじい。初めて行使する能力に対してもすぐに対応して使いこなす。


「まあ…どうだろう。…本当にどうなるんだろうねこれから。」


「美世…。」


その顔は酷く疲れていて不安を隠せていない。人形のようなその仮面が剥がれて一人のただの女の子がそこに座っている。


(私が…何か行動に出ないと。)


美世のやった事はとてもじゃないけど褒められたものじゃない。でも、彼女が今までやってきた事はみんなから褒められるべきものだ。いったい彼女に救われた人達が何人居るだろう。今度は彼女が救われる番だと私は考える。


「美世、私…私ねっ。」


コンコンッとドアをノックした音が部屋の中に響き、私はその続きを口にする事が出来なかった。


(気配…無かったよね今の。)


私も様々な修羅場をくぐり抜けて来たから人の気配には敏感だと自負している。だけど美世のお母さんが近付いて来た事に気付かなかった。ていうか今の足音した?


「もうご飯出来たから食べましょう。」


ドア越しに聞こえる美世のお母さんの声に私達は反応をしない。…美世が反応しない?


「うん。今すぐ行くね。」


そう言った美世の顔はまた綺麗に造られた人形の仮面が貼り付いていた。 


「今日はごちそうさまでした。」


「来てくれてありがとうね理華。」


「これから隣同士だしいつでも来てね。美世のお友達なんだから。」


「はい。またお邪魔させてもらいます。ではおやすみなさい。」


美世と美世のお母さんと一緒にご飯を食べたあと、私は2人に玄関で見送られて部屋をあとにした。


「…」


私の部屋はすぐ隣だけど私はそのまま下の階へと降りて夜の道へと進んでいく。とても帰る気にはなれなかったから。私は近くの公園まで向かう。


「はぁ……」


吐く息が白い。もうずいぶん寒くなってきた。夏休みの出来事がつい最近のように感じるのに、時間はもう結構過ぎてしまった。


あの時は楽しかったな……。美世とハーパーとオリオンさんとで世界中を飛び回って……色んな任務を熟したっけ。


最近はハーパーも忙しそうで話せていないし、昼間なんて先生としての仕事もやってるから本当に大変そう。それに比べて私は何をしているのだろう…。


目標であった処理課に所属出来たけど、それからは特にこれといってものは出来ていない。別に燻ぶっているわけじゃないけど今の私にとって任務がそこまで難しいものじゃないから1人で淡々とこなしているのが現状。


なんの面白みもない無いけどやり甲斐はある。ちゃんと世のため人のためになっていると思うから。


だけど事態は私の知らない所でとんでもない事になっていた。私はその事態に対してかなり近い所に居る。その事態の中心は美世とそのお母さんの2人。この2人の状況を正しく理解出来ているのはもしかして世界で私1人なのかもしれない。


「…みんなを召集するしかない。」


私だけでは事態に対処出来ない。天狼さんと直接会って話を……


「誰っ!?」


突然後ろからペタペタッと足音がした気がした。この足音には聴き覚えがある。美世の部屋の廊下で聴いたあの足音だった。それは間違いない。


でもなんでこんな街中であの足音が…?ここは廊下じゃない。夜であってもここの公園を利用する人は多く居るのに……


そこで私は辺りを見渡して気付いた。私の視界に人の姿は居ない。公園の照明器具が照らしてくれるから結構遠くまで見渡せるのに人が居ないのだ。まだそんなに遅い時間じゃないのに。


「まただ…ふざけるなよ夜に出てくるなよ怖いじゃない…!」


人が居ないのなら街中でも能力を行使出来る。外灯はそこらにある。私の周りに光を集めていつでも攻撃出来るように準備を済まして迎撃の体勢に入った。


「夜の公園でこの足音は聴きたくないよ……」


最初に言っておく。裸の美世の軌道が歩いてきたら私はちびる。だからここは逃げさせてもらうよっ!


私は公園の外に出ようと振り返って走り出そうとした。その時……


「三船さん。」


「わッ!?」


振り返った目の前に美世が居た。いや違う。目が青い。だからこの人は美世のお母さんだ。


「ウフフ…帰らないで何をしているか気になったから来ちゃった。」


「え、あ、そうなんですね…。」


いや世間話なんかをしている場合じゃない。またこの人が近付いてきた事が分からなかった。見渡した時は人影なんて無かったのにどうやって……。というか私は玄関を出た時ドアは閉まっていたから私の行く先なんて見ていない筈。


この人からは凄く嫌な感じがする。


「ねえ…誰を集めるのかな?」


聞かれてた!つまりその時にはもう近くに居たっ!?この人何者なのっ!?


「あの…あなたは一体何者なん…」


「質問を質問で返さないで。」


ピリッと空気が引き締まる。さっきから悪寒が止まらない。外気の寒さからじゃない。この人…いや、足音がした時からだ。


「…私の知り合いです。」


「ああ、天狼とハーパーと淡雪と朧ね。」


知っている…!?…美世が話したの?


「それで何を企んでいるのかな〜?私をどうにかしようと考えているのかな〜?」


この人…とても怖い人だ。美世の母親だと納得がいく。美世に悪意を足したらこうなるって悪い例がいま私の目の前に居る…。この恐怖はなんて表現したらいいのか分からない。コズミックホラーのような意味不明な存在に対する畏怖をこの人に感じている。


「あなたは美世をどうしよ……」


「だから質問を質問で返すなって言ったよね。」


美世の母親の青い目が更に青く輝き殺気が放たれる。


(殺される……)


私はこの人にそう感じて反射的に能力を行使してしまった。もうキャンセルは出来ない。複数の光球から美世のお母さんに向かって光線を放つ。


「しまっ…!」


私の周りにある光が美世の母親の身体を貫く。複数の光の線が確実に彼女の身体を貫通した。しかし美世のお母さんはそのままの姿勢のまま私を見下していた。


「あ〜あ、やっぱり聞き分けのない子だったのね……あなた。」


この言葉…この声色…!まさかそんなっ!


「軌道…あなたはあの時、廊下に居た軌道かっ!?」


私の【熱光量(サーマル)】は美世の母親の身体を貫いていなかった。光の線は軌道をすり抜けていただけで干渉していない。この人は生き物と軌道が組み合わさった存在なんだっ!


「はあ……。さっきから質問ばかり。美世のお友達としてはちょっと頭が足りないわねあなた。」


美世と瓜二つの顔から見たこともない憎悪と無関心の表情へと変わり、私を見上げるように首を傾けて睨みつけてくる。……絶対にこの人は良い母親なんかじゃない。美世から聞かされた人と同一人物とは到底思えない。


こんな母親に育てられていた美世って、一体何者なの…?

明日はストック作りつつ執筆しようと思います。

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