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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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一筋の解決法

ルート分岐です。

五十嵐さんの急な変化に追い付けない。私いま変なことをしたのかな…。


「あ、あの……。」


「んー良くないね。」


「へ?」


この展開ってまさか、余命宣告される……?話しただけで余命宣告される女子高校生って私ぐらいじゃない?


「あいの風さん、ここに何をしにきたの?カウンセリングだよね。そこで変に遠慮するところが良くないよ。」


……余命宣告で無かったのは良かったけど、別に良いことでもない。カウンセリングに来たのだから話さないといけないのは理屈としては分かる。でも、それって結局は勝手な理屈だし遠慮するに決まってる。


初めて会った人に対して遠慮しがちなのは極当たり前な自然な反応だと思うけどね。


「言いましたよね。守秘義務だって。」


「分かっているよそんな事は。だからこそここで言わないとなんだよ。だって家族には悩みを言えないでしょう?」


ドクンと心臓がザワつく。家族というワードに反応したんだと思うけど、なんでそのワードに反応したのか自分でも不思議に思う。


「ここに来る人はね、みんな悩みを誰にも言えなくて来るの。家族はもちろん友人にも言えない。能力の事は一般人には話せないからね。」


そう言われるとそうだ。私が抱えている悩みは人に話す事が出来ないものばかり。


「ここはね、悩みを話せるのは同僚だけの人が多いの。だから組織に所属している人は同僚を大切にする。仲間達との絆が家族愛より強く結びついたり、恋人よりも深くだったりね。」


「…そうなんですね。」


確かに組織って思っていたより人間関係が良好な人達が多い気がする。もっと殺伐とした職場かなって思っていたから、掲示板とか見るとそのギャップに驚く。みんな仲が良いし一人だけの人が居ないイメージ。


「でもさ、あいの風さんは組織の仲間にも話さないよね。見てて分かるんだ〜。あいの風さんは人に頼ることが悪いことだ〜って思ってるでしょう?」


「…そうですけれども。でもですよ。それがおかしい事なんですか?」


「な〜んにもおかしくないね。でも正しさだけで生きていけるほど能力者も進化出来ていないからね〜。」


また子供っぽい雰囲気に戻った。でも言ってることは子供っぽくない。子供に言い聞かせる大人…というか学校の先生?もしくは親戚のお姉ちゃん。


私の親戚にこんなお姉ちゃん居ないけれども。


「家族にも話せない。仲間にも話せない。カウンセラーにも話せない。じゃああいの風さんは誰になら話せるのかな?」


誰になら話せるか…私の事を話したり聞いたりしてくれる人は居る。でもその人達にもう迷惑はかけられない。


「…居ません。話しちゃ…いけないと思ってますから。あとその理由も話せないです。」


「な~るほ〜どね〜。あいの風さんは真面目系だったか。噂とは違うね〜。結構可愛い所あるじゃん。」


私の噂とか聞きたいような聞きたくないような…。


「だから悪夢を見るんですかね。正直私一人じゃ抱えきれなくて……。」


「なら話せる相手を見つけることですね。同僚さん達は駄目なんですか?処理課の人達は信頼出来ませんか?」


「私マトモに名前を覚えていない人が居るレベルなんですけど…。」


「あははっボッチだ〜!」


こんのっ…!ボッチを笑いやがったなっ!?バカにしやがって…っ!!


「いや〜ごめんごめん!なるほどね〜意外だけど面白いわ。」


そんな事まで書かなくていいですから!この人ちょっとおかしいよ!


「ならご家族は?」


「いや守秘義務が…。」


「私にはあいの風さんの情報は噂以上のものは入ってこないんですけど、ご家族は組織の事を知らないのですか?」


「知らないです。みんなただの一般人ですから。」


「へーそうなんだ。結構血筋が物を言う業界で結果出してるからご両親も能力者だと思ってたよ〜。」


私の両親が能力者ならもっとヤバい家だったろうな…。それなら誠も能力者になるのかな。それは…なんか嫌だな。


「はっはっはー八方塞がりだね〜。ならその頭を使ってみないとね〜。あいの風さんは誰に話したら良いのかな?」


私の頭を鉛筆で指差して考えろと言うけれど、考えた結果がカウンセリングだ。カウンセラーが自分で考えろと言ったら終わりじゃない?


「カウンセラーに話すのはあり得ないですね。他に候補は…。」


「あちゃ~嫌われてら〜!」


いい笑顔だな…。嫌われてるって言っている風には見えない。


「…やっぱり居ません。私にはもう頼る人は…」


「ん〜そこで人を思いやれるのはとても良い事だけど……もう?もうって事は前には居たのかい?」


五十嵐さんが私の発言に興味を示した。でもそれは過去の事で今はもう居ない。


「…お母さんなら、私の話を聞いてくれたと思いますけどもう亡くなったので。それにもし生きていても一般人ですし結局の所話せませんから。」


お母さんなら絶対に相談していたと思う。だって私のお母さんなんだもん。娘の悩みを聞いてくれるとても優しい人だった。


「そっか…それは悪いことを聞いちゃったね。じゃあお詫びに悪いことを教えてしんぜよう〜。」


悪いことを教えるカウンセラーとか、五十嵐さん悪い人だね。私好みだ。


「ちょ〜と耳貸してみそっ。」


「は〜い♪」


私は耳を差し出す。…あ、良い匂い。香水の香りがほんのりして大人を感じさせる。


「え〜とね。実は〜自分の家族や大切な友人には特別に話している人は結構居るんだよ。例え相手が一般人でもね。」


「それって…!」


「しぃ〜。フフフ…ここだけの秘密だからね。」


人差し指を唇に当ててウィンクする五十嵐さんは良い大人には見えなかったけど、悪い大人にも見えなかった。


「…組織に言わなくて良いんですか?この仕事についているのなら義務がありますよね。」


「患者の守秘義務を守るのが私の義務だからね〜。それに暗黙の了解ってやつもあるわけ。精神を病んでしまってはどうもこうにもならないでしょう?特にこの組織って能力者が所属しているんだからさ。」


…そういうのならそれで良いけど、思っていたより悪い人だ五十嵐さん。こんな人を紹介する薬降るさんも悪い人ってことになるよね。


でも、薬降るさんがこの人を優秀なカウンセラーと紹介した理由は分かった気がする。この人はあくまでカウンセラーとして組織に所属しているんだ。


「この業界でさ〜組織を辞める人ってどんな理由が多いと思う?殉職だと思うかい?実は精神を病んで入院する人が1番多いんだよ。怪我をして入院する人よりもね。」


「…分からないでも無いです。ストレスの多い職場ですし。」


「うんうん。だからちょ〜っとルールを破るのは別におかしくないし珍しくもない。私が今日きみにカウンセラーとして言えるのはそれぐらいかな〜。……うん、時間もいい頃合いだし今日は終わろうか。」


五十嵐は最後に何かを書き終えてカウンセリングを終了させた。不思議と惜しいと感じてしまう時間だった。人と話せるだけで気持ちが落ち着くと五十嵐さんとのカウンセリングで知れたのは良い収穫だったかな。


「次は予約してからおいで。これでも君が来るかもって思って毎日遅くまで待ってたんだから。」


「それは…どうもご迷惑をおかけしました。」


「違うよ。ここは謝罪じゃなくてお礼を言うの。それにね、迷惑をかけられるのが私の役割だから。」


そう言って五十嵐さんは笑いながら私を見送ってくれた。第二部ビルを出る頃には辺りはすっかり暗くなり肌寒い風が吹いている。でもここに来た時より身体と心が軽くなったような気がする。


「…話せる相手、ねえ…。」


先生なら私の話を全て話しても良いと思う。でも今は先生に会うこと自体がフラッシュバックに繋がってしまう気がする。だってどうしてもあの記憶と結びついてしまうから。


他に話せる相手と言ったら…理華か天狼さん。…ハーパーも聞いてくれるよね。でも先生の根本的な能力(部分)に触れてしまうかもしれないしこれ以上迷惑は掛けたくない。


あの前回の時みたいに天狼さんが私の為に凍えて傷付いてしまうのはもう沢山だ。理華にもハーパーにも傷ついて欲しくない。


残る候補は……


「……………お母さん。」


空を見上げる美世の目には今までにない程の青い光が宿り、その光はまるで彼女そのものを蝕んでいるようだった。

いつも読んで下さりありがとうございます。

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