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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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処理課の議題

今月中に4章を終わらせたいんですけどね。難しいか…?

スカイツリーで引き起こされた事件から13時間後、東京支部第一部ビル50階にある処理課のフロア、そこに所属する処理課一課の全員が集められた。


「こうやって集まるのはいつ以来でしたっけ。あいの風の歓迎会以来?」


そう話し始めたのは“宵闇(よいやみ)”あいの風の歓迎会で彼女に紅茶を出した経験を持つ男で、比較的処理課の中でもマトモの部類に属する能力者(人物)だ。


そのルックスから組織内で女性のファンが多いが、浮いた話は全くと言っていいほど出て来ない。


これは余談だが、一部の腐った婦人達からは男性が好きなのでは……?と噂されている。宵闇の相手は同じ処理課の男性陣を想定して良く妄想を婦人達の間で繰り広げられていたりするが、れっきとした人権侵害である。


「そうかもしれませんね。最近は忙しくて集まれる機会がありませんでしたから。」


宵闇に答えるのは“薬降る”彼女は相変わらず姿勢良く紅茶を楽しみながらチラッとだけ周りを見回す。


「本当は理華……“天の川”の歓迎会をして集まりたかったんだけどね。」


テーブルに肘を付いて気怠げそうに話しているのは天狼。その様子から誰が見ても徹夜明けだという事が分かる。彼女が昨日から動き回っていたのは周知の事実だ。


しかし天狼がこういう気怠げな、普段仕事をしていない時の素の態度を取るのは、昔から彼女の事を知っている者しか居ない処理課だからこそである。子供の頃に悪ガキだった事やアイドルに傾倒している事も知られているので天狼は処理課の人達の前では素で話す事にしている。例え理華が隣に居てもだ。


「い、いえ。今の情勢は分かっているので気にしないでください天狼さん。」


処理課が召集されたという事は三船理華もここに呼ばれた事になる。彼女が処理課に所属したタイミングは海外の敵対組織を殲滅する計画が進められていた時だったので彼女の歓迎会は死神一派で集まった鍋パーティーの時だけだった。


「ここも平均年齢が低くなってきたね〜。オジサン肩身狭くて仕方ないよ〜ねえ?」


「若い層が育って来たのは良い事だ。私達のような年寄りがのさばっているより大分健全だ。」


この処理課の中でも最も年齢が高い2人、“蟄虫咸俯(ちつちゅうみなふ)す”と“蜃気楼(しんきろう)”は落ち着いた雰囲気で彼女達の話に花を咲かせる。その様子はもはや親戚の叔父さん達のようだった。


「チッ……またガキが増えやがった。」


「炎天様……。」


処理課に若い者が増える事に憤る“炎天”とそれを察して悲しむ“初雷(はついなひがり)


彼らは外見と言動から勘違いされやすいが若い者が前線に出ることを嫌い、特に死んでしまう事……それ自体をとても嫌悪している。


一度あいの風が処理課に所属する事が正式に決まり歓迎会をした時、炎天が彼女を処理課から追い出そうとした事がある。それは死神の意向に逆らう事だったが、彼は自身の信念に従い、例え嫌われものになろうともそれを実行したのだ。


その事を知っている初雷も彼に同調して協力したが、彼は炎天がそうしたいから協力したというスタンスで、彼自身があいの風を思って行動したのではない。


だが別にあいの風の事をどうでもいいと考えている訳でもない。彼も若い者が前線に出ることは間違っていると考えている。


「はぁ……さっさと始めたいんだけど。」


初凪(はつなぎ)”は腕時計で時間を確認し空いている席に視線を向ける。この青年は大学生のように見える所から分かる様に処理課の男性陣の中で最年少である。


組織の者の中では彼を不真面目だと評価する者も多いが、実績を上げる事で処理課に所属する事が出来た実力者という一面を持っている能力者だ。


「でもあいの風さんがまだ来ていませんからもう少し待ちませんか?」


対面に座っている“竜田姫(たつたひめ)”が初凪にもう少し待とうと言い聞かせる。彼女も昨日から天狼と動き回っていたので疲労が顔に浮かんでいた。なのでその彼女がもう少し待とうと言うのなら誰もそれに反対はしない。


功労者に敬意を払うのが処理課の掟だからだ。


「……竜田姫さんがそう言うなら待ちますよ自分は。」


「ありがとうね初凪。」


「……ウィッス。」


少し頬を赤らめて目線を背ける様子から初凪が竜田姫に対し少なからず好意を持っている事が伺えた。その様子を見ながら美味しそうに紅茶を流し込む者がチラほらと居るのでその事実は割と周囲にバレている。


「青春だね〜。」


「あまりからかうなよ。難しい年頃だ。」


このオッサン2人、完全に親戚の叔父さん達だった。子供達の行く末を肴にする厄介なオジサン達である。


「遅れました!」


遅れてやってきたのはあいの風、片目には眼帯を付けて指先には包帯を巻いた痛々しい様子の彼女に処理課の皆が同じ事を思った。


どうやったらアイツに怪我を負わせられるんだ。……と。


「……きたきた。問題児が来ましたよ。そろそろ始めましょうか。」


「……そうだな。あいの風、怪我の方は大丈夫か?」


今回の議長を務める蜃気楼があいの風の心配をする。ミューファミウムの襲撃をも退けた彼女だが、重体で第二部ビルに運び込まれたと聞いた時は蜃気楼は自分の耳を疑った。しかしこうやって痛々しい姿で現れたからにはそれは本当の事だったのだと認識させられる。


「ええ、薬降るさんの治療のおかげです。薬降るさん、改めてありがとうございました。本当に助かりました。」


「搬送中に意識を失って心臓も止まったと聞いた時は本当に生きた心地がしませんでしたよ。でも助かって良かったです。あなたを担当した医療スタッフが頑張ってくれたおかげですね。」


あいの風は搬送している車の中で意識を失い心肺停止状態になったが、彼女が直前に話した自身の状態を医師と薬降るに伝えたおかげでスムーズに治療を行なえた事が彼女の命を救う事に繋がったのだ。


それに搬送中にあいの風を担当した医療スタッフの尽力な治療も多大な貢献をしている。あいの風の脳に酸素を送り込む事を優先したおかげで脳死には至らず障害も残らなかった。


彼女がこうやって自分の足で歩けているのも色んな人が協力し合ったからであり、あいの風はその事にとても感謝している。……脱走はしたが。


「はい。改めてお礼と謝罪に行きます。病棟から抜け出してきたので。」


「……アホだ。アホが居る。」


「まあいいじゃないか元気そうで。」


彼女が重体だとここに居る皆が聞いていたので、今回の召集には集まらないと思っていたのだが、本人から直接ここに来ると連絡が入った時は流石に皆が驚き、そして頭を抱えた。話し合いの途中でブッ倒れるんじゃないかと。


「あいの風、ここに座りなさい。」


なので薬降るの隣に座らせて何かあった時は彼女に一任する形を取った。それがここに来る事への最低条件だ。


「はい。失礼します。」


「……良し。では始めよう。今回の議論は……」


(……無理をしてでもここに来ないといけなかった。)


薬降るさんの治療で生命の維持に必要な臓器は治った。でも手先の血管や体内に溜まった血液は治療し終わっていない。薬降るさんの治療でも完全には治らなかったのだ。それぐらい怪我の範囲が広く優先順位をつけて治療するしか無かったから片目と指先は後回しにしてもらった。


「……プリテイシアの今後の扱い方、つまり……」


その後の言葉は誰もが分かっていた。私達は“処理課”。わざわざ私達が集まって話す事なんて決まっている。


「処理するかしないかですよね蜃気楼。」


天狼さんが言う事でこの話し合いは始まる。みんなが天狼さんの事を心配して口にしなかった事を彼女自身が口にする事でやっとみんながそれに触れられる。


天狼さん、私が言うべきだったのに……。

処理課の全員を書くのは本当に久しぶりなのでえらい緊張しました。

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