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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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事後処理

今年は毎日投稿(無敗神話)で行きたいと思います。

半壊したカフェ店内には処理2課、処理3課の人達がそれぞれ仕事をこなしていた。天狼さんも色々と指示を出しながら動き回って現場を回している。ああ見ると天狼さんってやっぱり頼りにされているというか、偉い立場なんだなぁって再認識させられる。


「あ、痛っ……」


「良く痛いで済みますね……手先と腕の血管なんてズタズタですよ。どんな事があったらこんな事に……」


私は天狼さんには悪いけど横になりながら第二部の職員に軽い診断をしてもらっている。もう立つのは無理だ。力が入らなくなってきた。


「……能力者と殺り合ったらこんなもんですよ。」


「あいの風様はあまりお怪我をしない人と聞いていたので。……これは第二部ビルで入院してもらわないとですね。内蔵の方の血管もこれなら死んでしまいます。ていうかなんで生きているんですかなんで意識あるんですかヤバいですよ。」


最後の方は一呼吸で言い切ったね。そんなにヤバいのか私の状態って。


「入院はちょっと……」


「……あ、佐々木です。あいの風様が重傷を負っているので受け入れの準備をしておいてください。あとすぐにテレポーターを呼んで……あいの風様をテレポート出来る能力者が居ない?だったら……」


私の目の前に居るこの女性、佐々木さんは私の意思を無視して第二部に連絡を取り色々と手配をしてくれた。


薬降るさんもそうだったけど医療関係の人って結構()が強い人多いよね。……嫌いじゃない。信念があるって感じで。


「……はい。それでお願いします。出来るだけ早くお願いしますね。あいの風に何かあれば……()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


あの御方って先生の事かな。……先生と言えばあの時、私を過去(ここ)に送ってきたのは先生、だったよね……。時間が無くて考える暇も無かったけど今なら先生の能力について考えられる。


あの能力って、やっぱり時間を巻き戻す能力なのかな。時間旅行でも色々とあるけど、確か精神だけ時間を移動するのがタイムリープで、私自身が過去に行ったらタイムスリップだよね。全部アニメやマンガの知識だから自信はないけど。


もし私が体験したのがタイムリープかタイムスリップなら……私が体験したのはタイムリープかな。身体の状態も戻っていたし記憶以外は全て元の状態だった。先生に直接聞いてみたい気持ちもあるけど……聞きたくないって気持ちもある。


私はあの時の先生を思い出す。


あの時の先生はいつもの先生じゃなかったな。何か機械的な……まるでプログラムで動いているような印象を受けた。だからなのかな……。これ以上踏み込むのが恐い。ずっと私は先生の隣に立ちたいって思っていたけど、今では先生に近づく事がとても恐いことだと感じてしまう。


はっきり言って先生ってその存在が明らかにこの世界の(ことわり)から逸脱している。先生を知れば知るほど……ううん。私が先生に近付けば近付くほどある感情を抱くようになってきた。……こういう感覚ってなんて言い表したら良いんだろう。


……宇宙的恐怖(コズミックホラー)、かな?これが1番近い感情……かも。超常的な存在に遭遇した時の恐怖を、私は先生に感じている。


それにあの光景。光の濁流に飲まれた時に私は私という存在を保てなかった。だけど先生は先生としてあの空間に存在し続けていた。


……あれは能力者(私達)とは違う存在だ。


本当に私は先生と同じ能力を使えているのか疑問を感じてしまう。……あれって時間操作型因果律能力なの?なら私もいずれは出来てしまう……のか?想像もつかない。もしも……出来てしまった時点で私は人間でも能力者でもない。


それこそ別の存在……“死神”になっているだろう。


…………それも良い、のかな?私も人間をやめるぞジョジョーッ!!って言えるし、ちょっと面白そう。人外になれる機会なんて普通無いしね。せっかくの機会だから目指してみるのも面白いかもしれない。


……あれ、それなら先生に聞いてもよくない?別に恐がる必要が無いじゃんか私。後で時間を見つけて先生に……


「……の風さん!あいの風さん!」


「えっ、は、はい!」


考え事してて全然気付かなかった。佐々木さん私の事を結構呼んでいたっぽい。


「意識の混濁が……。」


「あ、考え事していただけです。意識はバリバリあります。痛みで気を失えないですから。」


身体の至る所が痛い。内側からパンパンに腫れ上がったみたいで熱っぽいし嘔吐感と酩酊感もある。ぶっちゃっけると、私これ死ぬんじゃないかって思えるぐらいには体調が悪い。


まあ割と生命の危機を感じてるからこうやって佐々木さんに診てもらってる訳だしね。


「あいの風の容態は?」


指示を出し終えた天狼さんが来てくれた。


「かなり悪いです。いま生きているのが不思議なぐらいで今すぐ搬送させないといけません。手配はしたのでもう少しで来るかと。」


それを聞いて天狼さんは少しの間考え込んでから…


「……なら薬降るに依頼するしかないな。彼女にあいの風の治療をお願いしてもらおう。」


薬降るさんならこの怪我を治せると踏んで天狼さんは佐々木さんに薬降るさんに頼むよう指示を出した。


「……申し訳ありませんが私には処理課にご依頼する権限はありませんので……その、天狼様から処理課同士で依頼を出す方向でお願いしたいのですが……」


「ああ、それはもちろん。こちらから手配するのでそれまでの間あいの風を頼む。出来るだけ延命させててくれ。」


「ぷっふふ。あ、すいません。」


最後の方を私の方を見ながら冗談交じりに言うもんだから佐々木さんが少し吹いてしまった。でも本当にそうなるかもしれないからこっちは笑えない。


「……任せっきりになってしまうのは申し訳ないんですけど後は頼みます。」


「年下が心配するなって。……………早く戻って来いよあいの風。お前の助けが必要だ。」


その真剣な目に私はこれから起こる展開を理解して天狼さんに答える。


「彼女達は私も守りたいですから、必ず戻って来ます。」


天狼さんにそう伝えて10分ぐらいした後、エレベーターから担架を持って降りて来た人達が私は担架に乗せて下の階へと運ぶ。そのあとスカイツリーを降りる為にエレベーターに乗った時に私達以外にも同乗した者が居た。


「あ……」


エレベーターから降りたあと搬送用の車に私以外にもその同乗者の2人が乗せられる。……雨女と白雪姫だった。彼女達は全身が入るような特殊な袋に入れられて私と一緒に第二部ビルにへと搬送される。


……恨まないでよ。いま私達がこうやって車に運ばれていられるのもお前達を殺したからだし、周りにはいつも通りの日常を過ごしている人々が溢れている。前回の時間軸ではここの道路を歩いている人達の殆どは死んでいたんだ。それが今はみんな生きている。だからね。私が選んだ選択に後悔なんて無いよ。


「あいの風、聞こえていますか?」


「はい……聞こえてます。」


搬送用の車には医療スタッフの人も乗っていてその人が注射したり点滴を打ったりと懸命に私を治療してくれている。


「もう大丈夫ですからね。このあと検査した後に治療に移りますから。まだ起きててくださいね。」


車の揺れが内出血を起こしている内蔵にダイレクトに響いてくる。途轍もない激痛だけどもう耐えるとか耐えられないとかの段階を過ぎてしまった。


多分薬降るさんの治療が無いと死ぬか大きな障害が残るだろう。私の身体の内側はズタズタで出血が止まらない。内側に溜まった血液を外に出さないと神経を圧迫してしまい駄目になる。それに身体中の細胞に酸素が行き渡らないから壊死が進行していっているし(まさ)に死に体の様子だ。


「……すみません。身体の中に血液が溜まっているのでそれを摘出してもらいますか。至る所の血が固まり血流が阻害されて壊死が始まってます。」


私の能力、【探求(リサーチ)】は人体の中を視る事も出来る。夏休み中に先生にそのやり方を教えてもらって良かった。人体の内部を視れるから目に見えない傷を視認出来る。


「内出血……あいの風には見えるのですか?」


「能力で視えます。……心臓のような太い血管は大丈夫なんですけど、細い血管がズタボロです。」


「……流石は非接触型探知能力者ですね。細いという事は流れる血液も少ないという事、もし太い血管も駄目ならどうなっていたか……不幸中の幸いですよ。」


なるほど……そういう考え方もあるのか。なら良かった。助かる可能性が増えたね。


身体を吹き飛ばす程の血液を動かされてまだ生きていられるのは私の血管も異形能力者として丈夫になっていたのかもしれない。もし普通の能力者なら雨女の能力一回でお陀仏だったのかな。


(そう考えると雨女って本当に強い能力者だったんだよね……。)


そんな事を考えているうちに急激な眠気に襲われた私は車の天井を見上げながらすれ違う車の騒音、人混みの騒がしさ、店外に流れるBGM、それらを耳にしながら瞼を閉じていく。


本当に……………馬鹿共が………………。

本編では語られないと思いますのでここに書きます。


雨女と白雪姫は小学校卒業で中学以降学校には行けていません。能力に目覚め能力者として身体的変化が訪れるタイミングと身体的成長を促す第二次性徴のタイミングが重なってしまい、多大な精神的負荷を抱えた2人は人とのコミュニケーションが取れなくなり学校には通えませんでした。


それが原因で人とは違うコミュニティに参加したり社会を憎んだりしましたが、本当はただ普通の生活を送りたかっただけです。


前回のテロも彼女達が子供のまま大人になってしまい自分達の意見主張を表現する方法を知らなかったから引き起こされた悲劇でした。


彼女達が能力者として高い能力を持っていたのはそんな生活を送り多大なストレスを長い期間もの間に感じていたからです。


この物語の能力者はどれぐらいのストレスを感じたかでその能力の強さは決まります。なのでこの物語に出てくる強い能力者はそれだけ強いストレスを感じていた事になります。その最たる例が主人公ですね。

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