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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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ラストトライ①

書いていて自分でも混乱してきました。頑張りたいと思います。

エレベーターが目的の階にまで行き私達はそこで降りた。この階で降りる人達は私達以外にも居るけどそのメンバーも1回目と同じ様に思える。家族連れにカップルと老夫婦。みんな幸せそうに笑っている。


……この人達は何も知らずにここに来ているんだ。知っていたら絶対に来ないはずだ。もし知っていたらみんなここから避難するだろう。誰も氷の檻に閉じ込められたくない筈だし。


「……居たか?」


「……ええ。」


意識をカフェに向ける。……1回目と同じ席、前回と同じ配置に奴は居た。雨女を認識した瞬間殺してやりたいと衝動に狩られるけど、ここは落ち着いて行動しないといけない。


なにしろ奴らは一般人を巻き込む事に躊躇がない。今までの敵とは違うから攻め方を変えないと、またあの結末を迎えてしまうことになる。もうあんなことは繰り返させない。


「ならどうする?……癪だがここは一般人が多い。手を出せないぞ。」


天狼さんはここに雨女が居ることを知り昂ぶっている。でもまだ手を出す訳にはいかない。私は天狼さんにある提案を話した。


「私に策があります。先ずは……」


天狼さんは私の提案を静かに聞き続けて最後まで言葉を挟まなかった。


「……てな感じで行きたいと思います。被害は出ますけど人的被害は最悪私達だけです。どうでしょうか?」


私なりに考えたつもりだけど、天狼さん的にはどうだろう……。


「……悪くない。寧ろ今の状況下で1番確実で被害が最小限で抑えられて良い。この作戦で行こう。」


「ありがとうございます。実はもう能力を行使していて……駄目って言われても強行するつもりでした。」


「だと思った……。あまり褒められた方法ではないけど私は好きだぞ。」


天狼さんは私の肩に手を置いて笑いかける。私が少しでも緊張しないよう配慮してくれているのが凄く伝わって来た。


私が立てたこの作戦は結構危険な作戦で組織のマニュアルではあまり推奨されていないやり口だと思う。でも天狼さんは推してくれた。流石は推す事に関しては右に出る者はいないと云われた天狼さんだ。


「天狼さんにも負担をかけてしまいますが、どうかよろしくお願いします。」


「分かっているよそんな事は。敵の射程が広いせいで私達ではカバーし切れない。だからあいの風の作戦は間違っていない。自信を持て。」


……本当に天狼さんはとても私に優しい。まるで本当のお姉ちゃんや部活の先輩みたい。でも……だからこそ巻き込むような形にしてしまって申し訳なくなる。だって私がプリテイシアを能力者と見抜いてしまってからこんな状況になっているんだから。


でも天狼さんはそんな事を毛ほども思っていないんだろうな……。良い人過ぎるのも考えものだよ。


「……分かりました。では行きましょう。」


カフェの入口に行くと雨女が窓を眺めているのを視認出来た。隙がありそうに見えても彼女は私達がここに来るのを待ち構えている。……油断の出来ない強敵だ。もう彼女は準備が終わっていつでも能力を行使出来る状態。


私が巻き戻った時間は雨が降った後だから彼女の準備を邪魔する事は出来なかった。つまりあの悲劇はいつでも起こり得るという事になる。


……そう考えると身体が震えてくる。やっと巻き戻しの余波が消えて頭がクリアになって来たから、あの時の自分の感情が急に追い付いてきたようだ。雨女を見て現実感が出てきたのかな……。


「ふぅ〜……。」


本当に失敗が許されないんだぞ伊藤美世。ここでしくじったら大勢の死者と怪我人を出してしまい天狼さんは倒れてしまう。その後は考えたくもないけど世界中パニック状態に(おちい)り能力者と無能力者同士の殺し合いが始まってしまうだろう。


「……急かすようで悪いがあまり悠長にはしていられない。ここに居ても状況は悪くなる一方だ。」


「……はい。分かっています…………ふぅー行きます。」


私は店内に入った。そして一直線に彼女の席にまで向かい声を掛ける。


「相席……良いですか?」


近くによって彼女の顔を直接見た瞬間、途方もない殺意がブワッと自分の中から溢れて思わずぶっ殺しそうになった。左手が疼くとかそんなレベルじゃない。全身を無理やり抑えつけないと彼女の顔を剥いで臓物を床一面にばら撒きそうだ。


こんなに殺したいと思う相手なんて私のお母さんを殺したクソ野郎ぐらいだよ。だからこのあと必ずぶっ殺してやるからな……覚悟しておけ糞女。


「構いませんよ。雨が強かったでしょう……どうぞお座りになってください。」


雨女はそう言ってニコリと笑って私達の同席を許可した。そして目線は相変わらず窓の外に向けられている。


……ここまでは前回と同じ。私が前回と違う選択肢を選ばない限り同じ様な会話がされる筈。


つまりこれは私のアドバンテージだ。私だけがこの後の展開を知っている。このあとの展開をコントロールする事が出来るということだ。


「では失礼して……。」


私は雨女の向かいの席、窓側の席に座って天狼さんは私の隣の席に座る。ここも前回と同じ。


……良し。私は冷静だ。今の私はちゃんと前回と同様に立ち回れている。雨女に私の殺意はバレていない。でも天狼さんはかなり心配そうにチラッと私を見たからこっちにはバレたと思うけど。


「ふふっ濡れていないのですね。この豪雨の中で相当気を遣ってここまで来られたようで。」


ここら辺でもう私達が能力者だと見抜いている。というか私と天狼さんの顔を知っていたんだと思う。私達を狙って誘って来たんだから。


(あーこのあとなんて言ったっけ?)


確か煽られたと思ってムカついたからマトモに返さなかった気が……


「……ここまで上がってくる間に乾いたのかもしれません。エレベーターが長いもので。」


確かこんな感じだったかな。もっと淀みなく話していたけどこれが今の私の限界。


「ふふっ……東京スカイツリーですもんね。」


あれ?こう返されたっけ?もうあやふやだ。雨女が何を言っていたかなんて全部覚えている訳ない。私はそんな異常な程に記憶力の良い主人公ではないしね。……もうここからは今の私の言葉で話そう。変に思い出しながら話すのは怪しまれる可能性がある。


「世間話をしに来た訳ではないだろうし、そろそろ本題に入りたいんだが。」


ここで天狼さんも会話に参加してきたけど、天狼さんの言葉を聞いて私の心臓はドクンと高鳴った。ここで天狼さんが会話に入ってくるのは前回と同じだけど……多分言っている言葉が前回と違う。つまりもう前回とは違うルートに入っている事になる。


……馬鹿か私は!私が作戦を立ててそれを天狼さんに伝えたから未来が変わった事ぐらい気付け!


……もう天狼さんは前回とは違う。つまりもうこのあとの展開は正確に予想は出来ない………。だからこそ落ち着かないと。落ち着くんだ私。私の目的は彼女を私達か外の風景に集中させることだからまだ致命的な失敗ではない。彼女が私の作戦に気付かなければ何も問題は無い。


「本題と言われましてもここで景色を眺めているだけですし……」


眺めているのは間違いない。でも別に景色を見ている訳ではないよね?ベルガー粒子を混入させた雨がどういう散らばり方をしているのか確認しているんでしょ?


あなたも私と同じで失敗が許されない。だから念入りに確認しているんだ。……私も念入りに確認しないと。そろそろ片割れが来るはず。あのクズ野郎が来るまで私達は動けない。


目の前のクズ野郎を殺したらもう片方は逃げてしまうだろう。しかも通行人や色んな人達を巻き添えにしながら逃走してしまうかもしれない。いや必ずそうする。こいつらは人の命をなんとも思っていない。しかも憎しみで殺していないから質が悪い事この上ない。


雨女と白雪姫はこの世界そのものの在り方を憎んでいる。人間なんてオマケみたいなものだ。前回の彼女達の言動とかからある程度推測出来る。


「確かに良い景色ですね。この世界そのものを表しているみたいで。」


「……詩的ですね。私はこの景色が嫌いです。」


これは本音かな。この世界のシステムに弾かれた者としてはこの景色は憎むべき光景だろう。


「雨女が雨の景色を嫌うとは面白い。」


そこで彼女は私達の方を向く。……私には分かる。この後こいつは……


「アーハッハッハッハッ!雨女って私のこと?そっちでは私ってそう呼ばれているのね!あははは!……はぁーおかし。」


そう……笑う。自分が雨女と呼ばれている事が予想外過ぎてね。


「……楽しませたお礼に私の質問を聞いてくれる?」


「うーん……私の質問に答えてくれたら考えてあげる。」


ここも前回通り。大分修整されて前回と同じ方向に進んでいる。本当はそれは駄目なことなんだけど白雪姫が来るまで時間を潰さないといけないからくだらない会話を続ける必要がある。


「……良いでしょう。最後のお願いになるでしょうし聞いてあげますよ。」


私は天狼さんにアイコンタクトをした。天狼さんにここまでは順調だと知らせる為の合図だ。


「私の事をどうやって見つけたの?単純に射程圏内に捕らえられたのかな?」


この質問から分かる通り彼女は私達に対してそこまでの興味なんて無いんだ。前回はここで気付くべきだった。彼女の目的は私達をここに呼ぶ事で殺す事じゃないって事を。


「雨の中にベルガー粒子が混入していたのは見て分かった。でも空を見上げても雨に混じった粒子が重なって見えてね。どこからこの雨が降ってくるのか視認出来なかったの。」 


これは前回とは違う説明だ。前回の説明で端折った部分でもある。


「でも逆に言えばどこから降っているのか分からないぐらい粒子が重なっている事になるじゃない?それってかなり高い場所から降らないと無理だよね。だからここが1番怪しいと思ったの。」


「……ベルガー粒子が見えるんだ。」


警戒……してる?彼女のやろうとしている事に私が気付いているのか怪しんでいるんだ。だったらここは気付いていない振りをしないと……


「そのおかげであの狙撃手を見失ったけどね。流石は雨女って所だね。まさかあんな方法で探知を妨害するなんて。」


「……まあね。」


嘘だ。彼女にとって狙撃手は私達を釣る釣り針でプリテイシアは餌だ。マジでぶっ殺してやるからなテメェ。


「次はこっちの番でいいな。何故プリテイシアを狙った?」


天狼さんの質問は至極真っ当なものだった。そうだった……これを聞かないといけないんだった。天狼さんが質問してくれて本当に良かった……。もし私がこのまま話し続けていたら雨女に不信感を持たせてしまう所だったよ。


「う〜んどうしようかな〜どこまで話しちゃおうかな〜?ふふっ。」


((イラッ))


私と天狼さんの心情は全く同じを事を思っていただろう。こいつを今すぐぶっ殺してやりたいってね。

天狼とあいの風は同じ異形能力者ですけど、あいの風は目覚めて日が浅いのでまだまだ異形能力者としては未熟です。なので前の話では天狼は拳で硬い胸を貫通させましたけど、あいの風は手刀で柔らかい腹部を貫通しきれませんでした。(妨害されたけど天狼なら貫通していてました。)

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