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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
2.死神の猟犬
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家に居るより学校に通うより楽しい時間

初めて殺し屋としての仕事を任せられた伊藤美世の長い1日が始まります。

いつもの様に学校に通い授業を受けて高校生としての本分を終えた帰り。組織のスマホ(ソマホ)が震えたのでアプリからメールボックスを開き“組織”のメールを確認する。


[“淡雪”率いる第1班が念動型物理系能力者を特定、接触を図るが対象が逃亡…]


後はつらつらと長く書かれているが内容はこうだ。雪さん達が仕事をミスったので私に白羽の矢が立った。


ふふふ新入りに仕事のカバーしてもらうなんて雪さんもまだまだだな〜。この仕事が終わったら雪さんにスタンプ爆撃してあげよう。


期限については明日から明後日までの24時間。それが長いのか短いのかも私には分からない。明日は平日で普通に学校があるけど“組織”の方で連絡してくれるって書いてあるしその他諸々も“組織”が面倒を見てくれるって書いてある。


やらせる内容はブラックなのに対応がホワイトだ。私の中の常識が悲鳴を上げている。組織に合わせて矯正していかないと。


場所の詳細は写真と地図で載せられている。恐らく埼玉県のどこかの範囲だと思うんだけど行ったこと無いんだよねダサイ玉県(偏見)。


ヨシ!かなり不安だけど初仕事をしっかりこなして先生との契約を果たそう!


(それに移動費や食事代金は組織が持ってくれるらしいしさっさと終わらせて帰りにラーメンでも食べて帰宅しますか!)


早朝、学校の制服に着替えた私はいつもより早い時間で家を出ることにした。


階段を下りてそのまま玄関へ直行し靴を履こうとしているとリビングから父が出てくる。


「こんな早い時間から学校に行くのか?」


「うん…日直あるし宿題学校に忘れたから朝からやろうかなって。」


本当は人を殺しに行くんだけどね。本当の事は言えないし父に対しては今日は学校に行った事にしておきたい。


「…朝食は?」


「途中で買っていくよ。」


「少し待ってなさい。」


何だよ〜早く行かせてよ〜初仕事でソワソワしてる美世ちゃんを早く行かせろよ〜。


父が何かを手に持ちながらこっちに向かって来た。


「これ、持って行きなさい。」


父の手からおにぎりと野口さんが描かれた通貨を受け取る。


「え?おにぎりは分かるけど、これ…?」


「最初の月のバイト代なんてたかが知れてるし最近お金使ってもう無いだろ?持っときなさい。」


「…貰えるのなら貰っとく。………行ってきます。」


「いってらっしゃい気を付けてな。」


玄関の扉を開け家を出たあとは最寄りの駅まで歩いて向かう。


(多分だけど父は私が最近新しい服を着ていることを知って私に気を使ってくれたのだろうな。)


カッコつけちゃってあの野郎…これから人を殺しに行くんだよお前の娘は。


道端の石を蹴り飛ばす。私の身体能力で蹴られた石はそのまま視界から消えさった。


あの人達と関わると色々狂うんだよ。あれだけ関わらずに過ごし合っていたのになんで今さら関与してくるんだ。私は自立したくてしたくて堪らないしこの仕事もちゃんとこなせば組織からお金が貰える。しかも大金だ。一人暮らしだって夢じゃないレベルのだ。


「くっそ、何でこの日に限って…!」


空は晴れやかで空気は澄んでる。今日はとても過ごしやすい1日と言える。


「…くっそ。」


駅構内に入り、コインロッカーへ向かい、そこでソマホを使ってトランクケースを取り出してからトイレへと向かった。


この時間帯でも人が多い。【探求(リサーチ)】で人の位置や視線を確認する。私の成長した能力は前と違って生きた人のシルエットを鮮明に認識出来る。


無能力者は青く光っていると表現して良いのか分からないけどシルエットの外枠が青くなっているように見える。だから人の目の動きも見れるし個人の特定も可能だ。


(駅員に注目されて目立つのは避けたいし、顔を覚えられるのは問題が多いと思うからやっぱりちゃんとした着替え場所を考えないと。)


取り敢えず私はすぐに多目的トイレに入り仕事着に着替え自分の姿を【探求(リサーチ)】を使い第三者視点で確認する。


(うーんテンション上がるな〜!この制服と違ってビシって決まる!)


和裁士さんに最初作ってもらったこの服はやっぱり思い入れがあるというか最初の仕事はこの服だと決めていた。


自分の姿をくるくると回りながら確認しつつ和裁士さん達との会話を思い出す。


「私のスーツって色々作ってもらったのですけどなんか一般的なスーツ姿と違いますね。」


「美世ちゃんみたいな若い娘がスーツ着てたら目立つでしょ?そっちの姿も見たいですけど!」「犯罪よ犯罪!」「最近だとコスプレの認知も広がってるし若い娘がファッションに拘るのは珍しくもないし大丈夫じゃない?」「え?コスプレイヤーの美世ちゃん?」「コスプレ!?」「え!コスプレありなの美世ちゃん!?」


回想、回想終了!!濃い、濃いよ和裁士さん達!!!


これから人殺しに行くのにこんなんで良いのか私!でも前回もこんな感じだったかもしれない…ヨシ!この勢いで行くか伊藤美世!うおおおおお!!!!


着替えを入れたトランクケースを再びコインロッカーにしまった後にいつもと違う路線に下りた私はダサイ玉(ド偏見)に向かった。


平日の朝だから同級生達は学校へ向かっている。それなのに私は初めて訪れた土地でスーツを着こなしアタッシュケースを持ち運び組織から受理した任務を行なう。しかも内容は組織が逃した能力者の処理なんてヤバい…ヤバすぎる。生きてて良かった!


自分の人生に感動を覚えつつ周りを見回す。


ふ〜ん初めてダサイ玉(お気に入り)に来たけど普通に田舎じゃん?なんか中途半端に栄えてる感じが出てて寂しく感じる。(都民目線)


私の初任務がこことは…まあワガママ言っちゃあダサイ玉県民が可愛いそうか。(都民の驕り)


周りから視線を感じる…というか学生多いな。時計を見ると時間的に通学時間と被ってしまったか。この時間に制服じゃない奴が居たら目立つか…早く対象が潜伏していると思われる地域に向かおうっと。


「あの娘可愛くね?どこ高かな?」「制服じゃないし大学生?」「見たこと無いよね?」「モデル?」


モデルやアイドルと見紛う容姿の美世に目を奪われる学生達。しかし彼らの称賛の声が美世に届くことは無かった。彼女の耳は都合良く出来ており陽キャの声はノイキャンされるようになっているからだ。


そして駅を出て美世は腹ごしらえをしようと座れそうな場所を探す。例え土地勘が無い場所でも彼女の能力ならば造作もなく探し出すことが出来る。


(お腹減ったな…おにぎり食うか。)


途中で公園を見つけたのでベンチに座る。貰ったからには食べるのが私だ。例えあの人が握ったおにぎりであってもだ。


むしゃむしゃごっくん。


散歩してる犬の声や鳥の鳴き声を聴きつつおにぎりを口に運ぶ。


…家から離れて隔離された世界の仕事をしようとしているのに私はあの人の握ったおにぎりを食べている。何かイマイチ締まらないんだよなあ。


ベンチの横に置いてるゴミ入れにおにぎりを包んでいたラップを捨ててから背伸びをする。


(うーん行くか〜雪さんの後処理!)


出来たらタクシーで向かいたいんだけど東京ほどタクシー走ってないね。バスがあるならバスでも良いんだけど。


ソマホは様々な決済サービスのアプリが入ってるから問題ない。流石はお国認定の組織。


私はソマホで目的地の確認をしつつ車通りの多い道へ移動する。ヘイ!タクシー!


適当なタクシーを捕まえた私は適当なマッピングの住んでいない地区まで移動し、そこから徒歩でターゲットを探し出すことにした。


「支払いはPayで。」


Payタクシー!


「お客さん観光客かい?」


「ええ…ここら辺を見て周ろうかなと。」


「ここは何も無いけどねえ。」


私は微笑んで明言を躱す。確かにここ辺りは住宅街って感じだし観るものも無いけどちゃんと視に来たのだ。


私はアタッシュケースを持ちタクシーから降りる。“対象”の住むアパートはここの近くにある。


(組織の報告書では()()は昨夜から帰宅していないとあったけど【探求(リサーチ)】で分かる事もある…かも?)


ソマホとスマートウォッチは連動してくれているのでスマートウォッチからマップを確認する。


(ここか…一応念の為に【探求(リサーチ)】で探ろう。)


私の視界が2つになる。1つは肉眼からの視点でもう1つは能力による視点だ。


この能力で“視れる”範囲はマッピングされた範囲、つまりは地図に映された場所を視ることが出来る。しかし昔とは違ってマッピングは私自身が動く必要が少なくなった。何故なら…


(良し。ここからなら…行け!)


“視界”を飛ばす。この“視界”は半径5メートルの範囲を“マッピング”しつつ視認出来るという能力。


言ってしまえばドローン視点だ。制約は先に言った通りで効果範囲は直径10メートルの球体状でその先は視えない。射程距離は私自身から大体100メートルの長さで壁や地面をすり抜けて飛ばせる。


私は視界を認識しつつ操作する。肉眼の視点では視界の軌道が見えるので位置関係を測れる。


(写真で見たアパートはアレだね。)


2階建ての10部屋のアパートなら視界がすり抜けるだけでマッピングが終了する…対象は居ないのは視れたしもう此処には用が無くなったから移動しよう。彼女が帰って来たらすぐに分かるしね。


組織のアプリにはリアルタイムで情報が送られてくるので私も情報を流す。


雪さんから仕事のやり方や進め方を聞いて過ごしていたので流れは分かっている。


[対象となる()()()()()は現在でも帰宅していない様子なのでこれから範囲を広げて捜索してみます。もし発見した場合“処理班”に連絡してください。]


報連相は社会人の基本だよね!私以外のエージェントからも情報がどんどん入ってくるし私は捜索範囲が被っていない地域に移動するか。


マップには随時更新がされて捜索が済んだエリアは赤色で塗りつぶされてる。


雪さんから聞いていた話の通りならチームを組んで人海戦術で対象を見つける方法を取っているらしい。アプリで確認すると今回のチームの殆どは特定課の人達で処理課である私は一人しか居ない模様。


(この中に雪さんは居るのかな?居たら少し意地悪だけど雪さんのせいで学校サボる事になったって言ってやる!)


ニヤリと笑いながら私はアパートを後にした。

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