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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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渦巻く作為

処理課に所属するメンバーの能力をこれからどんどん出していけたらなと思います。なので今回は一人、能力を書いてみました。

バイクに乗った天狼さんの後ろに乗りこみ腰に手を回す。すると妙な感覚を覚えてつい離しそうなったけどなんだこれ。安定感がありすぎるというか人に掴まっている感じがしない。比較対象は……電柱かな?ぱっと思い付くのがそれだ。電柱と比較される人なんてこの人ぐらいだ。


……電柱さん。言ったら怒られそうだから黙ってよう。


でもね、この人筋肉も凄いけど骨格が普通の人と違う気がする。このガッシリとした安定感はまるで天狼さんがバイクに溶接で固定されているみたい。人馬一体ってこういう意味だったのか


「行くぞ。しっかり捕まっていろ。」


「はい。うおっ!」


アクセルを捻ってバイクが加速すると物凄く早く感じて声が出てしまった。え?バイクってこんなに早いの?


「まだ20kmしか出ていないぞ。お前はこの速度の10倍は早く動けるだろう。」


そうは言っても物凄く早く感じて普通に怖い。これ転倒したら死にません?ヘルメットとか身体全身守れていないじゃん。致命的欠陥がありますよこの乗り物!


「速い速い速い速い速い速い!怖いよバイク!」


メーターは60kmを表示し私は必死に電柱に掴まる。同じ電気系統だから間違いじゃないよもう。


「これからの事を決めないとな。」


バイクがうるさくて良く聞こえないかと思ったけどヘルメットにはトランシーバーが付いていて天狼さんとは問題なく会話が成立した。こんな所まで手が込んでるとは恐れ入る。


「狙撃手の位置が分かっていない状況下でバイクを使っても見つけられないですよね。」


「しかし歩いていても見つからない。昼間は目立った行動は取れない。」


「……一応相手が東京から出ようとしたり派手に動いていたら分かると思いますよ。」


「何故だ?お前の射程距離はそこまでカバーし切れていないだろう?」


それがそうでもない。私の能力は別に面で相手を見つける必要はない。だって能力者だろうが何だろうが動き続ける生き物なのだから。


「私が何もせずに1ヶ月間休んでいた訳ではありません。東京には至る所に路線が走ってます。なので全ての路線の電車を利用して網目状にマッピングをしておきました。」


面でなく(ライン)でこの東京をカバーしている。私の脳内には東京の路線図が創り出されておりそこのラインにアイツが通ればすぐに分かる。


「……なるほどな。お前にしか思い付かないし出来ない芸当だ。流石は非接触型探知系能力者。」


「空港も夏休み中に網羅しているので空に逃げられる心配もありません。すぐにテレポートして現地に向かいます。天狼さんは私が狙撃手を見つけたら人目のない所まで移動してください。」


「……お前、今自分が言っている意味が分かっているか?」


今あいの風が言った事は彼女が東京の交通機関を網羅したという意味と等しい。彼女から逃れるためには建物の屋上を飛んで移動するしかないだろう。


「ええ。だから誰にも言ってません。後ろから撃たれるのは嫌ですから。」


「……分かっているのなら良い。私もこの事は黙っておく。」


こんな真実、誰にも言えない。なんせ組織の者達にとっても不都合に思う者が出てくるからだ。彼女の射程距離がここまでなんて誰も想像出来ていないだろうな……。


「助かります。………狙撃手が引っ掛かりました!」


私のマッピングした範囲にさっきすれ違った際に指したピンが反応した。狙撃手が通ったのはここから右側に670m離れた地点。


「そこを右に曲がってください。後ろに着けます。」


「グーグルマップより便利だ!」


天狼はバイクを右に傾けて急カーブし、それに釣られる形になったあいの風は悲鳴を上げて東京の街を駆けた。


そしてその頃に組織の第一部ビルにも動きが見えた。天狼の指示で向かった竜田姫と特定課のエージェント達が入れ替わるようにビルを出入りする。


「プリテイシア達は来ていますか?」


「あ、も、もうすぐで到着すると思います……。」


特定課の課長が竜田姫の相手をする為に処理課のフロアまで来ていた。本当は最近良くあいの風と絡んでいる淡雪を行かせようとしたが、彼女は別の任務でこの場に居なかった。課長の髪の毛がひらひらと落ちていく。


彼の毛根は限界を迎えていた。


「分かっていると思いますが彼女達は処理課預かりになります。他の部署は関わらないように課長からも通達をお願いしますね。」


処理課を表す指輪をして黒いスーツにスカートで身を固めた竜田姫は普段の様な柔らかさは無く、処理課の一員そのものの振る舞いだった。これは今回の件に対しかなり重要度の高い任務だと自負しているからだ。


なんせ自分に直接電話が掛かってくる程の事態。私利私欲の目的で人を動かす彼女では無いことを知っているからこその判断である。


「分かっております!」


「……課長さん。一応はあなたは役職のついた幹部なのでそんな対応はしなくても良いのですよ?」


頭をコテッと傾けて(おど)けるような言い方をする竜田姫に課長の胃がギブアップを申し立てる。


「ほ、ほ、報告せねばならない故、こ、これにて失礼します!!」


髪の毛を散らしながら走り去る課長を見届ける竜田姫の目はとても冷たいものだった。彼女は権力を振りかざさすのは好きではない。寧ろ嫌悪する行為だ。なので竜田姫の心の内は自己嫌悪という感情でいっぱいだ。


普段のあの格好も彼女自身が好んでしているが、他にも相手に警戒心や親しみを持ってもらう為にしている。だが今の彼女は正しく処理課のエージェントそのもの。誰もが彼女を恐れる。内部の人からも外部の人からも……。


ピピッ……っと彼女のスマートウォッチが鳴る。表示されるのは彼女達がエレベーターに乗り込んだという通知。


「怖がらせちゃうかもね……でも、彼女達の身の安全を守る為にもやらないといけないよね。…う…ん、頑張れ竜田姫。私がやるしかないんだ。」


覚悟を決めてエレベーターの扉のロックを外す。乗っている人達はゲストしかいないのでこっちからロックを解除しないとこのフロアで降りる事すら出来ない。


そしてこの階にたどり着いたエレベーターが開き見た事のある女性が5人現れる。5人とも物珍しそうに辺りを見回してからこちらに気付く。


「その格好って……もしかしてイザナミちゃんの同僚さんです……よね?」


「はい。天狼から話は聞いております。どうぞ中へどうぞ。」


私は彼女達を誘導しエレベーターから降ろす。そして彼女達の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()


「【()()()()()】」


私の能力は人の行動を制限する能力。命令を相手に理解させる必要があるが、その命令通りの指示を脳から身体に送信させる事が出来る。この能力は能力者相手には接触したり一人にしか効かない場合があったりと効果範囲が限られているが、訓練を行なっていない他の4人は一言発するだけで十分だ。


「くっ!【離れろ!】」


しかしやはりと言うべきかプリテイシアの5人の中で唯一声を出したのは常夜。それ以外のメンバーは急に声を出せなくなりパニック状態に陥って立っていられなくなっていた。


「常夜……やっぱり分かってて行使してる!」


竜田姫の身体が硬直し少しずつ後退りしそうになる。この中で動けるのは常夜のみで、彼女はエレベーターを操作しようとボタンを探すが見当たらず混乱していた。


「なんでボタンが無いのよ!ならどうやって操作してここまで来たっていうの!」


「……ここにボタンはありませんよ。貴方のような内部に入り込んだ能力者を閉じ込める為の仕様でもありますから。」


後退りする自分の足に目を向けながら彼女に声を掛ける。


「私達を閉じ込めるつもりだったのね!やっぱり信用ならない!」


「仲間を放っといてエレベーターに乗ろうとする貴方には言われたくありません。【私の意思で動きなさい】」


私は私に言い聞かせる。口から発せられた言葉が脳に認識されて身体に反映されると後退りしていた足が止まり、私の意思通りに動き出す。


「まさか……私と同じ能力!?」


驚愕の表情を浮かべる常夜を尻目に竜田姫はネクタイを締め直し、仕事を完了させる為にベルガー粒子を操作し始める。その操作されたベルガー粒子はフロア全体にまで広がり彼女達全員を射程圏内に捉えた。


「あなたとは少し違います。私は身体に作用させますけど貴方は人の心を操ります。それはとても下劣で、許されない行為で、やってはいけないラインを越えた行為です。」


どんな能力者であろうとどんな権力者であろうとも人の心まで捻じ曲げて良い道理は無い。それを彼女は手慣れたように行使している。……到底許される事ではない。


「皆さん、力をお借りしますね。【常夜に抱きつきなさい】」


能力者4人の筋力で抱きつかれた常夜はアッサリと身動きが取れなくなり床に倒れ込んだ。


「あ、あなただって人の心を捻じ曲げているじゃない!人のことを良く言えたものだわ!」


床に倒れ込んだ彼女を見下す様な構図が生まれた事に嫌悪した竜田姫が床に膝を着き、出来るだけ目線を合わせて話しかける。


「……そうですね。私も貴方も同罪です。しかし仲間を巻き込んでまで自分の道理を通そうとは思いません。……左右を見てください。彼女達の顔を。」


常夜は自分に抱きつく朝日達を見る。そしてその顔を見て自分が招いた状況に気付く。


……プリテイシアの皆が泣いて怯えていた。何故勝手に身体が動くのか、何故声が出せないのか訳が分からない状況下で、仲間である常夜が何やら知っていそうな様子に疑問を感じていた。そして心配もしていた。常夜がこれから目の前に居る女に何をされるのかを案じて……。


「あ、ああ……ごめんみんな。巻き込んでしまって……本当に……ごめんなさい。」


常夜は声を上げて泣き出しそれを見たプリテイシアのメンバーも大粒の涙を浮かべる。しかし能力によって声を上げられない為にフロアに響く泣き声は常夜一人分のものだけであった。

竜田姫の能力は常夜とは違って声以外でも大丈夫です。射程圏内で命令を理解させれば紙に書いた指示でもなんでも良いです。

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