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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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敵の狙いと私達の狙い

結構新しい試みが多いパートになりそうです。

下の道にガラスの破片が落ちていきこの階を見上げている歩行者が19人も居るしスマホで撮影もされている。他の階のフロアの人達も何事かと注目してるし、私達が一般人に見られないようにする必要があると考えて私は能力を行使することにした。


「理華の能力を使って光学迷彩を掛けます。それで直接私達が見られる心配は無いかと。」


「あれはサーモグラフィーに映る筈だったが?」


サーモグラフィーカメラが仕掛けられている可能性か…。正直言って可能性はゼロに近いだろう。でもゼロじゃない。天狼さんはそこを心配している。万が一があってはならない。私達はプロフェッショナルに任務を遂行する必要がある。決して一般人に能力者の存在が露呈してはいけないのだから。


「理華の能力はすでに赤外線も効果範囲です。私もそこまで再現出来るので視覚は完全に切れます。」


「…やるな。というか便利過ぎる。一家に一台欲しい。」


「ふざけていないでとっとと殺しに行きましょうよ。敵はプリテイシアを狙って狙撃していましたからね。」


「…。」


こう言えば激昂するかと思ったけど何かが引っ掛かるのか天狼さんは何か考え始めた。


「…何故プリテイシアが狙われたのかが気になるのですか?」


「気に食わん。何故このタイミングなんだ。私達以外にも彼女達が能力者だと気付いていた奴らが居たとしか考えられない。」


プリテイシアを狙う理由がそれなら何故今なのかが分からない。


「私達が接触したからでは無いですか?私達に情報を聞き出されるのを防ぐ為に彼女達を…」


「そうなるとプリテイシア、マネージャー、社長の誰かが狙撃手、又はそいつの雇い主と繋がっている可能性があるってことになるが…。」


天狼さんは決してアイドル狂いの脳筋ではない。私なんかより頭が良く回転も早い。色々な意味でもとても切れる人だ。もう誰が怪しいか目星がついている。


…私もだけどね。


「スナイパーを取り敢えず殺さずに情報を引き出しませんか?そのあと殺しましょう。」


ここで考えていても埒が明かない。でもちゃんと敵の狙いに気付いてからこの後の動きを決められたのは本当に良かった。天狼さんが敵の狙いについて考えてくれなかったら狙撃手を殺してお終いだったと思う。


天狼さんは組織No.2と称されているけど、それは実力以外にもこういう所が起因しているからだと実感させられる。この人から学べる事はまだまだ多い。


「いや殺していい。殺さないように動くと手間がかかるだけだ。殺してから生き返らせればいい。」


私の能力を織り込んでから行動方針を…流石だ。いつも仕事をする時は私が考えて行動方針を決めていたけど、今回は天狼さんが居るから私はサポートに回って天狼さんが動きやすいように立ち回ろう。その方が良い結果を生む筈だから。


「分かりました。その方針で行きましょう。スナイパーの所までは私が天狼さんを運びます。」


私は能力を行使して天井に突き刺さった銃弾の軌道を操作し私達の所まで軌道を逆行させる。


「この銃弾の軌道を辿(たど)らせればそのまま向こうへと行けます。でも速度はそのままなので恐らく音速か、それ以上の速度で移動する事になります。」


音速は秒速340メートル程度。つまりスナイパーの狙撃位置である向こうのビルまでが300メートル程度なので1秒もかからず向こうに着く計算になる。


「私が音速より遅い生き物だと?」


「…そうですよね。愚問でした。」


確かに天狼さんは能力を行使して動くと余裕で音速を超えられる超常生物でした。


「私の左手を掴んでください。私達の軌道を固定して位置関係も固定します。移動中に振り解かれる事はありません。」


私達は手袋をした手で握り合い、それから空中に固定された弾丸を手袋をした右手で握る。手袋は仕事をする上で必需品だ。特に人の出入りが激しい所では指紋を残さないようにしないといけない。それが組織のルールである。


「タイミングは任せる。」


「はい。」


(手袋越しでもまだ弾丸は温かい。本当に射撃で撃ち込まれたんだ…)


敵は無能力者である可能性が高い。スナイパーなんてものを持ち込む時点で分かっていたけどね。


「【再発(リカー)】act.【振動(ヴァイブレーション)(ヴァーグ)】」


ガラスが小刻みに振動し粉末状に砕け散った。これでガラスにぶつかるという心配は無くなる。


細かく砕けたガラスの破片は外へ落ちてしまうけどこれぐらいでは怪我はしない。それにさっきガラスが落ちてきた真下に居るような馬鹿は居ないしね。


「【熱光量(サーマル)】」


私と天狼さんの周りに光の膜を作り出し万が一にも私達が見られる可能性を無くす。音速で移動するといっても飛翔体がデカければ見えてしまうから。


「行きます…【逆行(リワインド)】」


身体に凄まじいGがかかり景色が一瞬のうちに後ろへ飛んでいく。たった1秒にも満たない道のりなのにまるで数秒間にも感じた。それ程までに情報量が多かった。


流れる景色、肌に触れる空気の厚み、手から伝わる天狼さんの存在、そして何よりもこの非日常感。普通に生きていたら決して感じ取れない能力の世界。


一歩間違えれば死に直結する危険なダイブなのに目的の為に決行する。そんな立場に立たされている事を身にしみて感じ精神が研ぎ澄まされた。


(ここだッ!)


右手を離して空中に投げ出される。このまま弾丸を掴んだままだと急停止に入り、私達の身体にとてもおおきな負荷が掛かってしまう。急加速もそうだけど急停止も強いGがかかる。


「天狼さんっ!」


私達は空中に投げ出されて慣性に乗ったまま屋上を通り過ぎてしまいそうだったので私は天狼さんを屋上側へ投げ飛ばした。


「すまないっ。」


天狼さんは無事に屋上へと辿り着き、私は自身をサイコキネシスで無理やり操作して屋上にへと軌道修正を図った。


「危なっ…」


能力を駆使しなんとか私も屋上に着地出来た。でも今回はかなり改善点の多い方法だったな…。次やる時はこの教訓を活かしてもっと安全に能力を行使しないと。


「あいの風、スナイパーが居ないようだ。追えるか?」


屋上には誰も居らず狙撃に使われていたであろうライフルとそのケースバックが放置されていた。この手際…間違いなくプロの犯行だ。


この国にスナイパーを雇える所なんて限られる。なにしろライフルを調達するのも大変なのにもっと大変なのは狙撃手の調達だからだ。軍人や特殊部隊の警察官しかスナイパーライフルは扱わない。つまり日本人の狙撃手なんて数が限られているし国がマークしてる。


つまり国と繋がっている組織も把握しているという事だ。フリーの狙撃手がここ辺りに居たら必ず情報が回ってくる筈なのに…。ということは海外か?いや、憶測で判断するのは良くない。目の前にある手掛かりを調べてからでも遅くないだろう。


「少しお待ちを。」


ライフルとケースバックに触れてベルガー粒子を纏わせる。


「軌道を創り出す…」


ライフルの軌道が私の視界に現れる。一番最近の軌道はライフルが構えられている軌道…ここで発砲してその前が…組み立てている?


ケースバックの中では分解された状態で仕舞われていたらしい。


「…時間がかかると追うのが難しくなる。」


天狼さんには軌道が視えない。だから私が何をやっているのか分からない。焦る気持ちが伝わってくるけど私は能力に集中し続ける。


(…私が視たいのはここじゃない。)


当たり前だけどライフルの軌道はライフルしか視えない。だからライフルを扱った狙撃手本人は視ることが出来ない。なら何故軌道を読み取るのか、それはライフルとケースバックの軌道からでも分かることは色々とあるからだ。私が知りたいのはこのケースバックを持った姿勢と高さだ。


軌道はライフルをケースバックの中に仕舞い込んだ所まで遡った。そしてケースバックが持ち上がり肩にかけるような運び方がされ屋上から地面へと続く避難用の非常階段にまで続く。


「狙撃手の身長は170cm程度で非常階段を使ってここまで登って来ていました!」


天狼さんの方へ振り返りながら報告すると既に天狼さんは階段の方へと走り去っており、そのまま屋上から飛び降りて行った。


「ちょ、待ってくださいよ…!」


私も階段の方へと走って向かい、天狼さんみたく屋上から飛び降りるのだった。

次回は市街地での描写を書きます。いつも任務の時は夜だったり、美世達と敵しか居ない構図ばかりだったので、人混みの中で彼女達がどう動いてくれるのか楽しみです。

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