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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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そうだ、京都へ行こう

小休止終了、ストーリーを進めていきます。

ショタ達とのイナズマイレブンを堪能してその帰りに一本の電話が私に掛かってきた。相手は天狼さん。何だろう……。あの稽古以来だから緊張してきた。しばらく話していない相手と話す時ってなんで緊張するんだろうね。


「もしもし。」


「私だけど………うち来る?」


テンションが低めの声がスマホから聞こえてくる。全くというレベルで来て欲しくなさそう。


「行く行く。……って、なんでそんなに嫌そうに誘うんですか。」


「おねーちゃん、電話誰?」


誠と一緒に帰っている途中だったのについ電話に出ちゃったけどさ、これ内容を聞かれたら良くないよね。天狼さんは組織の人で誠は一般人だから。


「ちょっと仕事の話だからそこに待っててね。」


スマホのマイク辺りを手で塞ぎながら誠と少し距離を取る。あの子は巻き込みたくない。誠には綺麗な世界で生きていて欲しい。私みたいな人間とは違うのだから。


「……みよ、美世?」


「あ、もしもしスイマセン。大丈夫です。」


「……弟か?」


疑っているような声だ。私に弟が居て何か不都合でも?私にだって姉弟の一人や二人居ても良いだろう。


「なにか?」


「いや、休日に弟の面倒を見ているのが全く想像つかなくてつい……」


今日の天狼さんはオフモードっぽい。口調もそうだしスマホ越しの声から覇気も感じられない。


「今日は伊弉冉……ですか?」


「ただの伊弉冉だけど……悪い?」


「いえ、私的にはこっちのほうが話しやすくて好きですよ。今日はオフなんですか?」


「そう。家に居てね、さっきまで父上と話していて疲れたわ。」


父上……やっぱり伊弉冉のお家って結構厳しそうなお家柄っぽい。


「伊弉冊のお父様って京都支部長さんでしたよね確か。」


「なんであの人が支部長しているのか分からないぐらい適当な人だよ。だからあの人の言葉をあまり鵜呑みにしないで聞き流すぐらいの気持ちで来てほしい。」


ぱっとイメージしづらいな支部長さん。厳格そうで風来坊なのかな。


「いつ遊びに行けば?」


「明日。私も突然明日って言われたから私のせいにしないでね。」


明日か……いきなり過ぎるけど、脳裏に先生の言葉が浮かぶ。確か……先生が圧力を掛けておくからって言っていたよね。


……もしかして向こうからしたらいきなり死神が出てきて、急にあれこれと言われたのかもしれない。それならこの急な話にも納得がいく。というかそれが正解だろう。


「もしかして先生から何か言われました?」


「……もしかしてお前か?」


あ、藪蛇。突かなければ良かったよ。


「明日ですね了解しました。」


「おい!話は終わって……」


「お昼頃に伺いますからよろしくお願いします。」


そう言い切って通話を終了させた。……このくらいで怒るような大人ではない。だから大丈夫。何も問題無い。


「お話終わった?」


「終わったよ。あ、それと誠は先に帰ってて。これからちょっと用事が出来たから。」


いつも私達は別々に家を出て別々に家に戻るから、特に問題無い会話だ。誠も分かったっと言い自転車に乗って先に帰宅してくれた。


「……もしかしたら明日会えるかもしれないしね。」


京都支部の支部長なら知っているかもしれない。私のお母さんを殺した能力者を。もしその時が来た場合に備えて私は準備を始めた。


「何しに来た。」


翌日、京都支部へ扉を使ってワープし、天狼さんに会って突然そんな事を言われてしまった。やはり昨日の電話の件を根に持っているようだ。なんて小さい人なんだ。幻滅したよ私は。


「昨日の事は謝りますから…」


「そうだ。昨日の事なんだが……いや、そんな事よりお前の格好だ!何をしに来た!?」


格好……?別に変な所なんて何も……


「日本刀を腰に帯刀して!背中に軍用のバックパックを背負い!脇と太腿に拳銃のホルダーを着けておいて何を言っているんだ!これから戦争しに行くのかお前はっ!?」


こんなに熱く熱弁する天狼さんは初めて見た。いつも冷静でクールでローテンションな人なのに、こんな一面もあるんだね。


「そうですけど……?」


私は何を当たり前な事を聞くの?という表現をジェスチャーを交えて天狼さんに伝える。


「帰れ。ここは日本、銃刀法違反だ。」


「全身銃刀法違反みたいな人に言われたくありません。」


「おい、ブーメランだぞそれ。」


いや、天狼さんもブーメラン飛ばしてますよ。お互いにブーメランを飛ばし合っている。


「とにかく時間が無い。それは置いて早く付いて来て。お願いだから。」


伊弉冉としてのお願いに、私は渋々と了承して装備品を全て床に散乱させて伊弉冉の元へ行く。


「おい、まだ装備品残ってる。」


「え、いやもう無いですよ。仕込みナイフ類は持ってきて無いですし……」


「指輪とブレスレットを外せ。どうせ第三部製だろ。」


自分の指と腕を指さしてジェスチャーで指摘された。言い逃れも出来ない。第三部製というのも見抜かれた。


「チッ……せっかく昨日貰いに行ったのに……」


昨日は急な訪問にも和裁士さん達は歓待してくれた。その時に色々と装備品を頂き、この仕込針が付いた指輪とかワイヤーが仕込まれたブレスレットもその時に頂いた。


「本当に何しに来たんだお前。あまり騒ぎを起こさないでよ私が怒られる。知ってる?美世の保護者的な位置付けにされてるんだよ私。」


気だるそうにしている伊弉冉はそれでも少し嬉しそうに見えた。


「なんで嬉しそうなんですか。」


「……保護者という事は美世は私の下に居るってことだから。」


マウントだった。あの頃の天狼さんは何処へ……


「浅い人間になりましたね。」


「もうみんなの前で格好つけられないから……」


薬降るさんの言葉を未だに引きずっていたよこの人。どんだけ心に沁みたんだ。


「でも今の伊弉冉も天狼さんも好きですよ。どっちにも味があるみたいな?」


カバーにもなっていないけど、本音だからね。


「私は路上に捨てられたガムぐらいの味しかしないよ。」


あれ、どうしよう……ちょっと面倒くさくなっちゃったぞ。一度も挫折したこと無い人が挫折すると面倒くさいって聞くけど正にそれ。伊弉冉、面倒くさい女や……


「ガムさん、案内してくれますか。」


「ガム?いまガムって呼んだ?」


「伊弉冉、早く案内してください。時間が無いんですよね?」


「……あとで覚えておけよ。」


おお。ちょっと覇気が戻って来た。うんうん、この調子ならすぐに元に戻ると思いますよ。


そのあと伊弉冉について行き私達は車で移動し、京都の町並みを眺めながら着いた先は古い料亭だった。凄く格式高い雰囲気が入る前からヒシヒシと伝わってくる。


料亭前の道路はアスファルトなのに敷地に入ると石で敷き詰められた道がかなり続いている。木や狸、狐の置物が置かれて古風な日本というイメージを受けた。


神社とかお寺のような雰囲気って感じなのかな。神聖な空気感があるというか…機械らしいものが一切無い風景なんだよね。案外無いよね機械とかが無い風景。公園にでも街頭とか自販機とかがあって東京では山にでも登らないと見れられない。


「あの、お財布持ってきてないので水だけで良いです。……水ってタダですよね?」


こんな所に呼ばれるのならちゃんとした服装で来れば良かったよ。


「安心して、うち持ちだから。ここ母上の実家がやってる料亭だし。」


はえ〜〜伊弉冊ってめっちゃ良い家のお嬢さんじゃん。見た目からだと全然この料亭と合わないよ。身長高くて玄関の和風門?とか潜るように入ったからね。


服装とかも組織から支給される黒い制服を着てるからお葬式感ある。


「今日ってオフですか?それとも……」


長い石の道を歩きながら最後の質問をする。道の長さ的にもこれが最後だろう。


「一応私の事は天狼って呼んだほうが良い。向こうが呼び方を崩してきたら別にどう呼んでもかまわない。」


伊弉冉……天狼さんがネクタイを締め直して背筋に芯が入ったかのように歩き姿が変化した。私もそれに習って背筋を正す。


「これから合うのは組織の上に立つ者。死神とは違い組織を運営する立場の人だ。油断するなよ。すぐに食われてしまうぞ。」


自分の父親をそう評価する天狼さんは、まるでこれから敵地に赴くようだった。私には武装を解除させたのに天狼さんは完全に支部長を敵として見ている。


「ヤバくなったら先生を召喚します。多分すぐに来ますよ。」


「ふざけた事を……イヤ、マジで言ってるなお前。」


天狼さんは別の意味で緊張し更に背筋を伸ばしていた。

次回は支部長初登場yeah



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