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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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決断の提示

明日また誤字脱字直しながら執筆していきたいと思います。

理華にそれからも色々と薬降るさんの話を聞かせてもらった。彼女は元々処理課所属ではなく能力を活かして後方勤務、第二部の医療スタッフとして働いていたらしい。私はそれを聞いて彼女の能力・性格に合っていると思った。


そしてここからは誰にも言わない事を前提として話してくれた内容。


薬降るさんの本名、諸橋あやせ。この苗字は死んだ旦那さんの苗字という事。旦那さんは処理課に所属していてあやせさんと旦那さんは仕事の関係上会う機会がよくあり、そして社内恋愛に発展して結婚したという事。


非常に仲の良い夫婦で子宝にも恵まれ傍から見ても順風満帆だったらしい。しかし子供が産まれて間もなく旦那さんが任務中に死亡。死因は能力者同士の戦闘による外傷。


それを聞きつけた際の彼女の行動は皆が驚くものだった。医療スタッフとして働いていていた彼女は戦闘訓練を積んでいないのに旦那さんの復讐の為に現場へと向かいそして………復讐を果たした。


それからも彼女は旦那さんを殺した能力者の仲間達を見つけ出して殺し、それを周りの人達は誰も彼女を止めることは出来なかった。


彼女の淡々と殺してしまう姿から精神を病んだと見られたが、医者による診断は問題無し。つまり彼女には才能があった。旦那さん以上の才能が。


上の人達に認められた諸橋あやせさんは、薬降るとして処理課に配属が決まりそれからも能力者を殺し続けて……今日にまで至る。簡単にまとめるとこんな話だった。


「じゃあ、あの人は復讐をやり遂げた人なんだね。」


彼女は復讐をやり遂げた時、どう思ったのだろう。やっぱり嬉しかったのかな。それとも虚しかったのかな。


今度会ったら聞いてみたいけど、そんな事は聞くようなことじゃないってぐらいには分別はついているから本当に聞いたりはしないけど、でもやっぱり気になっちゃうよ。


あやせさん、旦那さんの事本当に好きだったんだろうな……。


「うん。その当時はかなり恐がれていたらしいよ。復讐を果たしても淡々としていたって話だから。でもああいう性格の人だからさ、慕う人も多いしもうそんな偏見無いんだけどね。」


人の傷を癒やす能力者を嫌う人なんて居ない。でも能力のおかげで偏見が無くなったんじゃなくて、あの人の性格や生き方で偏見を無くしたって所が凄い。


「凄い人だったんだね。全然知らなかったよ。」


「まあしょうがないよ。あの人あまり自分の事を言うタイプじゃないし。でも言う事は確かな人なんだよね。」


薬降るさんが言った言葉で印象的だったのは役割の所かな。色々と考えさせられるよ。


「確かにそうかも。医者っぽいよね。」


「医者……うん、しっくり来る。看護師免許持ってるらしいから医療関係者って所は同じだしね。」


あの人が人を癒やす事が役割なら私にも役割があるのだろうか。彼女からしたら私はどんな役割が与えられているように見えたのだろう。


あの人が去った後にどんどん気になってきたけど、家事が残っているのなら仕方ない。シングルマザーって大変だと聞くし。


「話が変わるんだけどさ。」


「なに?」


「あっさり負けてやんの……あがっ!」


脇腹に肘を入れられて激痛が走る。……良かった。やり返す元気はあるみたい。天狼さんに負けた事を引きずるかもなーって思っていたけど、安心する痛みだったよ。ちゃんと痛い所を狙って放たれた肘打ちでございました。


でもなぁ……もう一人は引きずってそうなんだよね〜。


「あの……天狼さん。みんなの前ですし立ちません……?」


「淡雪……私は駄目な大人だ……。何も言い返せなかったよ……。指導者として私は恥ずかしい……。」


雪さんに腕を持たれても立ち上がれない天狼さん。深刻な傷を心に負ったようですね。まあ私が彼女の立場でも泣いていると思う。


「今日はもう解散しましょうか。」


私の提案により本日の稽古は終了した。今日は学ぶ事も多く総じて良い日だったかな。でもこれから私がしようとする結果によっては変わってくる。


稽古が終わった後に私は一人ファミレスで時間を潰していた。ドリンクバーで数時間居座り最低な客層だったけど、考えを纏めたかったから私はずっと夜まで考え事をしていた。考え事と言うより悩み事かな?それとも問題点を見つけたから解決策を考えていたって言ったほうが正解かもしれない。


まあどっちでもいい。これも全て薬降るさんのせいだ。彼女の言葉がずっと頭に残っている。道着を脱ぐ時も道場を出た後もずっとあの言葉がリフレインして気が付いたらファミレスに入っていた。


薬降るさんは言った。役割があると。それが組織のルールだと。


いつもなら人それぞれ色んな考え方があるなと思って流してしまうけど、この言葉は流せなかった。寧ろ引っ掛かってしまいずっと残留している。


あの言葉にはちゃんと向き合わないといけないと思ったからだと思う。私の役割はなんなのかを見つけ出さないといけない。その為にも私はずっと逃げていた事に向き合う事にした。


その日の夜遅く、私は使われていない建物の中へ侵入し、逃げ続けていた問題を片付ける。


『……聞こえますか。』


『ああ』


私の背後に私そっくりの人物が立っている。私の軌道を利用しこの場に居続けられる存在はこの世に一人しかいない。


『先生、お久しぶりです。』


『ミヨから呼び出されるのは久しいかもしれない 今日はどうした?』


いつもと変わらない反応、いつもと同じ先生だ。だからこそ怖い。先生は私がしている事を知っているのに、そこに触れもしない。先生からしたら裏切り行為そのものなのに。


『お話があって呼ばさせてもらいました。お時間よろしいでしょうか。』


さっきから喉が乾いて仕方がない。ドリンクバーでいっぱい水分を取ったのに舌も乾いてしまい声が出づらいよ。


『何も問題無い 椅子にでも座って話そうか』


何年放置されたか分からない椅子に腰掛けて先生と一対一で対話を始める。


『先ず最初に先生に対して謝らないといけません。私は先生の信用と信頼を裏切ってしまいました。ごめんなさい。』


頭を直角に下げて謝罪する。人に対してこんなに誠意に謝罪するのは生まれて初めてで、どう謝罪したらいいのか分からない。だからありきたりな謝罪方法を選んで先生に謝罪した。


『ーーー話が見えてこないぞ?何に対しての謝罪だ?』


『分からないフリはもう良いんです。先生が私の事を知っているように私も先生の事を知っています。』


ここで先生の表情に変化が起こる。


『ーーー知っているというのは……何をだ?』


『私が先生に黙って色々としている事を知っている事をです。先生が知っている事を知っています。』


全て言ってしまった。もう無かった事には出来ない。私はもう用済みとして処理されるかもしれない。


『なんだそんな事か 話はそれだけか?』


先生はホッとした顔で私の一世一代の告白を流した。


『……あの、私先生と戦う為に色々と動いていたんですよ?』


『知っている それをミヨも知っているのだろう?それで?話はそれだけか?』


『無人島で殺した魔女達を生き返らせて能力者を集めてもらっているんですけど……?』


『良い案ではないか?良くやったと思うぞ』


え?いま褒められた?


『あ、あの!私!先生と敵対して自分の望みを叶えようとしていたんですよ!?』


『良いんじゃないか?ミヨのしたいようにすれば良い ワタシはミヨに能力を貸し 邪魔になる存在を排除する ミヨが私達の事を邪魔と感じたのなら私達は消える』


…………理解出来ない。先生は何を言っているんだ?


『ふざけてます?』


『ーーーさっきから何を言っているんだ?』


逆に言われてしまった。言いたいのはこっちの方なのに。


『えっと、あのですね……整理させてください。……怒っていないんですか?私結構酷いことを先生にしましたよね?裏切り行為を働いたんですよ?そこは分かってますか?』


懐が深すぎて私のやる事何でも肯定しているのかもしれない。先生ならあり得る。


『裏切り行為……?ワタシと戦う事がか?寧ろワタシは楽しみにしていたぞ ミヨがどれほど成長したか見れるし ワタシの教えたい事を戦いを通じて教えられる そうだ来週の週末は予定が空いているか?』


え?え?話がついていけない。何故それをスルー出来るんですか?


『待って待ってください。思っていたのと違うっ!先生ちょっと真面目に聞いてください!』


私だけ盛り上がっているみたいで恥ずかしい。先生にとっては取るに足らない事柄なの?


『いや真面目に聞いているつもりだが……?』


先生のキョトンとした顔に力が抜ける。そして抑えていた感情が爆発した。


『じゃあ天然ですか!?もっとこうシリアス目に聞いてくださいよ!』


『至って真面目に聞いているのに何が不満なのか分からないな』


こんの先生は本当に……。終いには頭に手を当てて困り果てたような反応しやがりましたよ。……ここ最近の私の苦悩とは一体なんだったのか。

いつも読んでくださりありがとうございます。

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