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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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影の貴婦人

お久しぶりのキャラが出てきます。覚えている人居るかな?

探求(リサーチ)】を使って天狼さんが行使した能力を認識することが出来た。髪の毛、つまり自分の一部を使って飛び道具にしたのには流石にびっくりしたよ。


異形能力者の身体の一部ならああやって使用する事も出来るんだね。多分普通の人間の髪の毛に電流を流したら焦げてチリチリパーマになるだろうし。


「でもちょっと卑怯じゃありません?」


「卑怯者で良いと言っていたと記憶していたが?」


うぅ……確かに言っていた。それを言われたらずこずこと引き下がるしかない。


「理華は大丈夫ですか?」


今も痺れている彼女に近寄るが……反応無し。


あれ?これ本当に大丈夫なやつ?天狼さん加減とか調整間違っていないか。


「電流の調整は慣れているから大丈夫だ。少し痺れているだけで問題無い。」


いやー……結構痺れてますよ?能力者だから即死していない電流値じゃない?


「直してあげたいけど記憶が消えちゃうからな……どうしようかな。」


あの戦いの経験値は無くしてあげたくない。ああいう戦い方もあることを知っているだけで戦術に幅が生まれると思うから。でもこのままだと命の危険か後遺症だって考えられる。


「ならあの人を呼ぼう。」


天狼さんが呼び出した人は私が会ったことのある人物だった。コードネームは確か……


「いきなり呼び出さないでもらえますか。」


彼女とは一度だけ処理課が召集された際に顔を合わせた事がある。私が手に大火傷を負った際に能力で治してもらった事のある女性。


「えっと、“薬降(くすりふ)る”さん。お久しぶりです。」


相変わらず姿勢が良く大人な女性の雰囲気があるけど今回着ている服装が……その、あれだ。主婦の格好。


シンプルなデザインのシャツと膝下まであるスカート姿にエプロンをしている。正に主婦像そのものである。


「こんにちはあいの風。背が伸びましたね。」


確かに最初に会った頃は私の方が低かったけど、今は私の方が高いかな?でもそんな事よりもその格好が気になる……既婚者だったの?でも、指輪していないし……


「あやせさん、いつもありがとうございます。」


天狼さん言った名前って薬降るさんの名前?


あやせ……これが薬降るさんの本名か。


「どうせやり過ぎたのでしょう。……あ、理華立たないでいいわ。」


薬降るさんの元へ行こうとした理華を静止させる辺り、手慣れているというかいつものやり取りって感じる。


「いつもスミマセンあやせさん。」


喋るのも辛そうなのに立ち上がろうとするなんて理華らしいといえば理華らしいけど、大人しくしててよね。


「怪我人は黙ってて……あら、珍しい。能力でやられたのね。」


薬降るさんが眉を上げて驚く。あまり表情が動かない人で冷たい印象があるけど、怪我人に対しては真摯な姿勢で安心出来る。私も火傷見せた時は叱られたっけ。


「はい、もう大丈夫。立っても良いわ。」


「え?……相変わらず早い。」


ほんの少し考え事をしていた隙に治してしまったようだ。理華もなんてことないように立ち上がってるし物凄い早業だよね相変わらず。


「もう要件は済んだかしら……あの子も治しましょうか。」


雪さんを見つけてついでとばかりに治そうとする薬降るさん。


「あ、私は大丈夫です!稽古で疲れていただけなので!休んだら治りますから!平気平気!」


雪さんが手を振って治療を拒否した。いきなり処理課の人に話しかけられた事でテンパっている。


「そう……ならあいの風。左手を見せてちょうだい。」


「え?私別に怪我も何もしていないんですけど……。」


急に話しかけられたからちょっとビックリしちゃった。この人の冷たそうな瞳を向けられるとこっちも背筋が伸びるよ。ちょっと苦手かもしれないなこの人。冗談とか通じなさそうでどういうノリで話したらいいか分からない。


「この前の火傷の跡が残っていないか確認するだけです。ほら早く。」


「わっ、は、はい。」


道着の袖を捲られて左手をまじまじと見られる。その表情は真剣そのもので私はされるがままに左腕を預けて彼女に触診を許していた。


「……綺麗に跡が消えている。こんな回復の仕方は異形能力者しか出来ないと思っていたけど、非接触型探知系能力者もこういう治り方するんですね。勉強になります。」


「ソウデスネ。」


傷の治り方で相手の能力断定出来るってどんだけの能力者の傷を治していたのだろう。処理課にはまだまだ私の想像外の能力者が居るな……。


「あいの風、あなたは女の子なんですから怪我には気を付けてくださいね。指先も丁寧にケアしないと細かい傷が残りますから。」


手のひら辺りを見ていたのに次は指先に行ってる。この人に低めのトーンで淡々と言われるとまるで看護師や医者に注意されてるみたいで気を付けようと思っちゃうよね。


良い人なのは分かるんだけど人生の中でこういうタイプの人と関わった事ないから、どう接したら良いか分からなくて私は黙り込んでしまう。


「終わりました。細かい傷を治したのでこの状態が継続出来るようにケアをしっかりしていてくださいね。」


「いつの間に……。」


左手を見ると右手に比べて綺麗になっている。特に爪周りとかが綺麗だ。


「いつも息子がお世話になっているお礼です。」


「え、息子さん?」


薬降るさんの息子……?誰だ?


「はい。この道場に通わせてもらっている優太が私の息子です。」


……誰?男子は田中角栄と諸橋くんだけだから……


「諸橋……あやせさん?」


「はい。私の名前です。」


薬降るさんの名前が分かってしまった。諸橋あやせ……か。


「………優太くんはとても良い子ですよ。礼儀正しくて上手くみんなをまとめてくれるしリーダーシップがあってですね……」


あれ?私なにいってんだ?テンパりすぎて聞かれていない事を喋っちゃってるよ〜!


「あの子は年の近いあなたを意識し尊敬もしていますから、人の模範になるような行動を取っていてくださいね。」


今日一の低い声音で脅される。私の普段の素行を改善しろと暗喩に言っていると私は受け止めた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「あ、はい。気を付けます……自分で直します。」


この人なら私がその性根を治しますと言いかねない。保険の為にちゃんと自分で直しますと宣言して取り敢えず時間を稼ぐ戦法を取る。決してこの人が苦手という訳ではない。これは戦略的撤退。勝つ為の逃走なのだ……


「それが聞けて安心しました。……伊弉冉。」


矛先が天狼さんへ移って私はホッと胸をなで下ろす。


「……名前で呼ばないで下さい。」


珍しく受け身に回っている……!?あの天狼さんが!?写真取らないと……


「洗濯物の途中だったので今日はもう帰りますが、あまり怪我をさせないように。良いですね?」


「……分かっております。以後気を付けます。」


天狼さんでもこの人には頭が上がらないらしい。数少ない弱点を知ったね。


「稽古に熱を出すのは良いですが、あなたはお気に入りの子を構いがちですね。好きなアイドルグループにお熱なのが良い証拠です。ここに居る人以外にも教え子は居ますよね?」


「……はい。おっしゃる通りです。」


す、凄い!言葉だけであの天狼さんが押されてるよ!


「それなら平等に扱いなさい。それがあなたの役割です。私にも役割があり彼女達にも役割があります。それが組織のルールであり人の生き方そのものです。私はルールを破る子が嫌いです。」


感情を抑えて淡々と語られる言葉は氷河のように冷たく不動なもので、これが母親かと教えられているようだった。


「………ごめんなさい。」


あぁ……天狼さんが膝から崩れ落ちた。ぐうの音も出ない正論で殴られた彼女のHPは0に近い。


「最近皆で集まっている様ですが役割をお忘れなされないように。これは同僚としての忠告です。派閥は違えど手を取り合う事は叶います。」


これは……私達にも向けた言葉のように感じる。


「薬降るさん、あの……」


声を掛けたが彼女は背を向けて行ってしまう。


「この世界に居ればまた会うこともあるでしょう。その時にまた話を致しましょう。ではごきげんよう。」


エプロン姿の貴婦人は天狼さんをボコボコにして去っていった。


……あの人が組織No.2じゃない?影の貴婦人と呼ばせてもらおう。


「相変わらず凄い人だよね。」


「理華って薬降るさんと知り合いだったんだ。」


「小さい頃から交流あったし、怪我とか良く見てもらっていたから。」


へーそんな関係があったとは。じゃあこんな事も知っているのかな。


「じゃあさ、薬降るさんって…………おいくつなの?」


私が最後に呼び止めようとした理由である。見た目は20代後半なのに中3の息子がいる。一体年はいくつなのあの人。優太くんの話をされてから気になって仕方ない。


「確か……まだ30代後半で40は行っていないと思ったけど。」


若っ!自分の加齢も治してるのあの人!?

処理課の人達はこれからもちょくちょく出てくる予定です。

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