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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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確定された未来

休日だと投稿した話の誤字脱字を直す時間が取れるので捗ります。早く土曜日来て〜。

紅茶を飲み干した後も蘇芳は中々話し始めない。テーブルの上に手を置いて指をトントンと叩いて何かを言い渋っているようだった。


「帰っていいの?それともまだ何かあるの?」


私は聞く。彼女の悩んでいる内容なんて思い付かないしこれ以上居るとまた術中にはまる気がして居心地が悪くて悪くて仕方ない。


「蘇芳ってこの後の事も知っているんだよね?何で言い淀むのか分からないんだけど…。」


彼女はこの後の展開を知っているのに言い淀む理由が思い至らない。


「…そうだね。知っているね。知っているからこそ怖いんだよ。」


…怖い?何を怖がる事があるの?結果を知っているのに怖い訳ない。展開を知っているホラー映画みたいなもんじゃん。怖がる所無さそうだけど。


「怖いって言ってもそういう怖いじゃないよ。美世に嫌われるから怖いの。今から言う事はそういう事。」


相手に嫌われると分かっているのに言わないといけない。…確かに怖いかも。相手を傷付けてしまう事を言わないとなら言い淀む理由になり得る。


「だから私の事を嫌いにならないでほしい。私は美世が知りたい事を伝えるだけ。でもコーチングはしてもティーチングはしないよ。それじゃあ美世が納得出来ないから。自分で気付くことに意味があるから。」


この枕詞は私にとってはかなりの効果がある。嫌いにならないでって言われたら嫌いにならないように考えてしまうから。


それにコーチングはしないでティーチングか…自分で考えて答えを出せって事だよね。 


あくまで責任は私って事か。自己責任なんだから八つ当たりしないでって事だと思うけど、そんな前置きするぐらい未来の私は蘇芳に怒りをぶつけたのかな。


「分かったよ。出来るだけそうするけど、内容によっては敵対するから。」


あくまで私達の関係性はWin-Winでなければならない。一方的な関係性は好ましくない。


「それを美世の口から聞けて本当に安心した。これで美世に伝えられる。美世のお母さんと再会するという意味を。」


肩の荷が下りたような感じだけど、これから言う内容は私にとってはとても重要な事だ。もう山場は越えたような雰囲気は出さないで欲しい。


「でも、美世も気付いているんだよね?再会出来る方法をさ。無意識でその可能性を否定している。だって今更だもん。昔は生き返させる方法があったなら飛びついただろうけど、今じゃあ…ねえ?」


蘇芳の言葉はあまりに正しい。正しすぎて嫌になる。そうだよ。今は生き返らせようとは到底思えない。だってそんな事をしたらお母さんを不幸にしてしまう。


私ももうあの頃のような考えなしの子供ではない。死んだ人間が生き返ればどうなるかぐらい分かっている。もし組織にでも知られた際には、この世界に死者蘇生の方法があると考えるだろう。そうなると私のお母さんは貴重なサンプルとして世界中の組織、勢力、団体、個人に狙われる。


もし仮にバレなかったとしてもだ。日常生活が送れるとでも?戸籍はどうする?偽造でもする?色んな障害があるのに幸せな暮らしなんて不可能だ。


それに生き返させるなんて概念は大きな間違いである。生き返させるというと“戻す”みたいなイメージが強いと思うけど本当は違う。寧ろ逆。お母さんの視点からすれば8年後にタイムスリップさせることになる。だからこの場合“進める”が正しい。


生き返させる事=進めるだ。私はお母さんの人生を進めたらいいのか分からない。自然の摂理から離れすぎるのはいけない気がする。


「そうだね。離れすぎるのは良くない。でもその選択肢が出てくるって事は分かっているって事、そうだよ…()()()()()()()()()()。」


この世に死者蘇生の方法があるとしたら時間操作型因果律系能力…【再生(リヴァイブ)】しかない。それを行使出来るのは私と先生、先生は私のお母さんを生き返らせる事は出来ない。もしそんな事が出来るとしたら私しか居ない。例え射程圏外の死者蘇生だったとしても。


「ごめん…話に割り込ませてもらうんだけど、美世はどうしたいの?お母さんを生き返らせる方法があるなら…そうする?」


理華が私に問いかける。理華が知りたいのは方法ではなく私個人の気持ち。私が気持ちを整理させる為に溜めを作ってくれた。このまま話し続けていたらろくな結論に至らなかっただろうからとても助かる。


「…そりゃあ、お母さんには会いたいよ。でも会ってはいけないんだと思う。何よりお母さんが可哀想だもん。お母さんからしたらいきなり8年経っている世界にタイムスリップする事になるんだもん。」


個人でどうこうしていい問題ではないと理華に伝える。


「でもこれは確定された未来だけど?絶対に美世は母親と再会するの。美世の意志でね。」


蘇芳がバッサリと私の考えを否定する真実を言い放った。今日の蘇芳はかなり私に対して厳しい。


「さっきからまるで私にそうして欲しいみたいに聞こえるけど?そうすると蘇芳にメリットが生まれるのかな?」


「そうだけど?というよりもうメリットが確定されたからね。私はただ待つだけで良い。それで私の願いは叶うから。」


…何かマズい。上手く言語化出来ないけどこれはかなりマズい方向へ進んでいる。因果律…?が良くない方向へ向かっている様な気がしてならない。


「蘇芳…あなた、何をした?」


蘇芳は私のこの言葉を待っていた。私の言葉を聞いた瞬間、目を見開き碧い瞳を晒して狂喜じみた笑顔を浮かべる。


「全部よ。魔女達を美世に会わせる事から全部ね。」


魔女…?ラァミィ達を私に会わせる事が目的だった?つまり彼女達がトリガーで蘇芳の思惑通りに動いてしまったいたのか私は。


「そして私は自由に動けるのね!とても素晴らしいわ!」


彼女は未来での自分の感情を吐露しているように見えた。未来では先生の手から逃れられたみたいだ。つまり蘇芳の勝ちでこの関係性に幕が降りる。


「私…全くついて行けないんだけど、未来はいったいどうなっているの?」


理華の疑問には答えられない。ここから先の事は彼女の独壇場という事しか分からないから。


「…トリップしているみたいで悪いけど私達はもう帰るから。理華行こう。」


理華を無理やり立たせてテレポートの準備をする。


(ここに来るべきでは無かった。)


魔女達に私を会わせたのは蘇芳にとって都合の良いことだったからだ。彼女が最終的に望んでいることは先生の排除。信じられないけど、未来では先生は負けたって事だ。


「私は先生とは敵対しない。蘇芳…私はあなたと対立する。あの音声ファイルも好きにして。絶対にお前の好きにはさせないから。」


お母さんの仇は自分の力で成し遂げる。彼女の力は借りないし彼女の思い通りには動いてやらない。私はお母さんを生き返らせるなんて事はしない。


「そう。知っているから別にどうでもいいよ。何度も何度もこの光景は見たし聞いたから。」


全て自分の思い通りに動いているのが堪らなく面白いのだろう。そういう顔をしている。


「特異点を2人相手にして勝てるとでも?」


私と先生が手を組んだら彼女は絶対に勝てない。彼女は確定された未来を知る事は出来ても確定された未来を覆せるわけではない。因果律を操作出来る能力者2人が手を組んだら蘇芳は抵抗すら出来ない筈なんだ。


この瞬間から私と先生で確定された因果律を操作すれば彼女の知っている未来も変わる。


それならどうかな?未来のあなたは私と先生を敵に回しても余裕そうな顔をしている?


「2人…ああ、死神ね。」


しかし私の予想とは違い蘇芳は余裕そうな表情を崩さずにある事を言い切る。


()()()()()()()()()()()()。敵…ですら無いかな。もう私の脅威ではなくなったからね。」


あれだけ死神を忌避していた蘇芳が言い切った。先生はもう怖くないと。


「全部美世のおかげだよ。原因と結果。美世が居てくれたから死神が脅威では無くなった。」


死神が怖くない能力者なんてこの世界に居るとは思えなかった。だけどそんな能力者がいま目の前に居る。そのことが怖くて仕方がない。


私からか、理華からかは分からないけど気が付いたら2人とも手を繋いで肩を寄せ合っていた。


「気をつけて帰ってね。あと美世のお母さんにもよろしく伝えておいて。美世を産んでくれてありがとうって。」


手を振って見送る蘇芳から私達は逃げるように理華の部屋へとテレポートし、蘇芳との敵対を選択するのだった。

次回はどうしましょう。書きたいのがいっぱいあって書き切れないかも。

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