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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
4.血の繋がった家族
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新学期

4章スタートです。恐らく1番書くのが大変な章だと思うのでワクワクしています。

8月25日某所 “組織”公式議事録


[では第二〇一回 定例会議を始める。]


[創設者様はまた欠席か?]


[創設者様は体調が優れない。今回の会議には欠席すると連絡を頂いている。]


[今回のではなく、今回にもだろ?あの婆婆もついに死んじまうか?]


[止めろ。記録に残るんだぞ。]


[構わねえよ。そんで、今回の会議は誰が婆婆のポストに就くって話をするのか?順当で言うと創設者一族の誰かか?それとも京都?最近目立ってきたヨーロッパ諸国の誰かか?]


[止めなさい。これ以上会議を乱すのなら出ていってもらう。]


ここで一時会議中止。後に再開。


[今回の議題はあいの風と死神の処遇についてだ。彼女達の働きのおかげで我々組織の優位性は揺らぐ事は無くなった。最早敵はヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア辺りだが、戦力でも技術力でも全てこちらが秀でている。]


[だったら死神が次のトップか?]


[その話は今話すことではないし掘り起こすな。先の事ではなく今の話だ。彼女達は特別枠、組織に忠誠を誓っている訳ではない。だからこそ彼女達をコントロール下に置きたい。それが我々の共通の認識では?]


[デスハウンドと言われているあいの風に対してこちらの首輪は付けられないのでは?どう考えてももう死神の首輪が付いている。]


[そこら辺どうなんだオリオン。]


[さあ、そこまでは分かりかねます。死神は秘密が多いですから。]


[トップになれば死神のご尊顔も拝見出来るってか。]


[どうでしょうね。]


[議題からズレている。話を戻すぞ。あいの風だけでもコントロール下に置きたい。周りの敵を排除しきっても身内から敵が生まれるパターンが考えられる。その場合はあいの風と死神でパワーバランスが決まると言って差し支えあるまい。]


[それなら京都から提案はあります。私の所にいる三船理華。彼女があいの風と有効的な関係を結んでおります。そしてその彼女からこういう提案が……]


京都トップから資料を配られる。内容は割愛する。


[これは……面白いのではないか?許可しても良いと思うが?]


[これであいの風がどういう反応を示すか見てみよう。それを確認し方針を決める。]


[それでこれも京都からなのですが…]


[まだ何かあるのか?]


[私の娘もあいの風と親交を深めているらしく、そこからもアプローチしてみようと考えています。]


[京都代表のあなたの娘というと、天狼をですか?]


[はい。私の娘も大変彼女の事を気に入っている様子なのでそれとなく探りをいれてみます。]


[また京都か。お前達は女を子を産む機械としか考えていない節がある。貴様だけに任せておけない。]


[私はただ有効的な手段を講じようと話しているに過ぎません。]


[ふん、腹の中はどうだか。]


[それは皆に言えることだろう。外が落ち着けば次は身内。歴史を鑑みればいずれそこに行き着く。]


[平和に事を進めたいんだがねこちらとしては。]


[温厚派はこれだから……、強い奴が上に立てばいい。簡単なロジカルだ。]


[そんな事、創設者は望んでいない。]


[時代は変わったのだ。今こそ世界統一を目指すべきであって……]


[また議題から外れているぞ。]


[皆さん静粛に。]


[貴様こそ黙れ。]


ここで会議は中断の後、終了。第二〇一回議事録を終える。


組織の行末を決めることになるこの議題の内容が、彼女に対してどのような影響が生じるかは正に神のみぞ知る領域。もし、神以外に分かる者が居たのならば……それは悪魔にしか分からないだろう。


そして場所と時は東京にある住宅街の朝に変わる。ここに何も知らないまま高校生の身分を無駄に消費している少女が歩いていた。


はあ……朝から憂鬱だ。何故夏休みは終わるのか、まだ世界には夏休みを堪能している高校生だって居るのに何故私はそっち側の人間ではないのか。私はその謎を解き明かす為にアマゾンの奥地へと……


「おはよう美世。すっっごく久しぶりね。」


「おはようございますマリナ。お久しぶりです。」


夏休みが明け、我らがカーストトップのマリナ様と1ヶ月ぶりの邂逅を果たした。しかし彼女の様子がおかしい。すっごい笑顔なのに物凄く不機嫌そうな雰囲気、この夏休みに何があったというの?


「1ヶ月も連絡も寄越さないで何をしていたのかしら?」


あまりの深い笑みに目尻がこれ以上は下がりきれなくてそれはそれは深いシワになっていた。経験則からこれは私が何かやったパターンのやつだと気付く。なにかやったかな……


「あ、ごめんなさい。お土産買うの忘れてました。」


「そういう事じゃないっ!!」


それからは学校に着くまでの間ずっとマリナ様の説教は続いた。というか着いてからも他のメンバーも集まり、私への説教会が私の机の周りで開始してしまった。朝から早々説教を食らうはめになったのは私のせいではない。そう、任務が原因だったのだ任務が。


「……ごめんなさい許してください2度としませんから。」


「既読すらつかないから海外で何かあったんじゃないかって心配していたのよ?わかる?」


言われみると確かにマリナ様からするとそういうことだよね。これは私が配慮が足りなかったかもしれない。でも私にとって夏休みとは1人で過ごすものであり単独行動は普通な事。わざわざ連絡を取り合う必要を感じないんですよ。


「えっとですね……通知が溜まれば溜まるほど開くのが怖くなりましてね?もしかしたら私抜きでみんな盛り上がっていたのかな〜って思いましてね?それでラインを開くのが怖くてですね?決して忘れていたとかではなく……」


「個人でも私達送ってたけど?」


マキさん、リンさん、レナさん、ミレイさん、マリナ様に囲まれた私にもう逃げ場がなかった。……うん、謝ろう。


「溜まった通知に返事するのが面倒くさくて放置してましたー!すいませんでした!」


机の上に額を擦り合わせて土下座のポーズを取ると、みんながやれやれみたいな顔で呆れられた。でもその後なんだかんだお許しを頂いた。へっ、チョロいぜ全く。


「ほら、やっぱりね?美世っちちょっとこういう所あるって言ったじゃん。」


「まあ、そうだよね。面倒くさくて放置してたんだろうな〜って思ってたけど、ここまで来ると最早怒る気にもなれないよ。」


「潔い土下座であった。アッパレ!」


良し良し……感触は悪くない。今学期も私の立ち位置は安泰そうだ。彼女達は防波堤。まだ台風は起こる季節だからね。私を守ってちょうだい!


新学期早々クラスメートの視線を集めているとオシャレ番長のリンさんが私をじーっと見ていた。


なんだろう…なんか気になるものでもあるのかな?


「美世……大きくなった?」


え、なにが?態度が?


「ちょっと立ってみて。」


「は、はい。」


上位カースト勢に立てと言われれば立つしかない。これ世界の理なり。


「……やっぱり。身長伸びたね。」


リンさんは自分の背と私の背を手をものさし代わりにして比べる。確かに私の方が結構高いね。夏休み前はリンさんとどんぐりの背比べだったのに。


「あ、それ私も思った。一緒に登校している時に並んで歩くと真っ直ぐ視線があったもん。」


マリナ様も私の隣に立って身長を比べると同じぐらいの身長になっていた。前は私の方が小さかったのに……まさか今更成長期ですか?


でも思い当たる節はある。久しぶりに着た学校指定のシャツとかスカートがキツかった。その時は太ったかもしれないと思っていたけど、こんなに縦に伸びていたら横もデカくなるよね。


「あと胸もデカくなったよね。」


セクハラである。リンさんの問題発言にクラスの男子達の会話が途切れて教室に静寂が訪れた……と思ったら不自然に会話を再開する男子達。バレてるよ。


「太ったとか?」


ミレイが眼鏡をわざとらしくクイクイと動かしながら女子の間では禁句扱いのワードを私の脇腹にぶつけてきた。太った感じは無いんだけど海外のご飯が高カロリーだったから可能性はある。


「確かめよう。」


この中で1番の高身長さんのレナさんが服の上から私の脇腹を掴み……


「細っ!」


何故かショックを受けたレナさんが項垂れてしまい微妙な空気が流れる。


「夏休み中に太ったんだよレナ。仲間だと思っていた美世に裏切られちゃったから。」


新学期も素敵なおでこを出しているマキさんから情報提供を頂く。……逆恨みってこと?


「え〜……。」


私とレナさんとのやり取りで場は和み笑い声が絶えなかった。そしてなんだかんだで私は新学期から悪くないスタートを切ったのだった。


                〜おしまい〜






とはいかなかった。始業式の途中に私はある反応を感じ取り非常に嫌な予感がしたのだ。そしてその予感は的中した。


授業前のホームルームで担任の先生から転校生の説明を受けた。今学期から新しいクラスの仲間が増えるとの事。


……因みにその転校生は私の良く知る奴だった。……何で居るの?


「京都から転校してきた三船理華です。この時期に編入してきたのでまだ勝手が分かっておらず、皆さんにご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうかよろしくおねがいします。」


パチパチと、拍手が起こりクラスのみんな、特に男子から歓迎されながら私の相棒こと理華が私の教室にやって来た。彼女は私に気付くとしてやったりと言わんばかりにニヤっと笑いやがる。


新学期から私は理華と同じ教室で授業を受ける事になったんだけど、それは恐らく卒業まで続くだろう。


だけどこれだけなら正直まだ良かった。私が探知した反応はもう1つある。


「えー今学期、アメリカから英語教師として来てくださった先生を紹介する。」


「ハーパー・マーティンです。教師としての仕事は初めてですので緊張しております。どうか皆さん、仲良くしてくださいね。」


パチパチと拍手が起こる。特に男子達から……


ハーパーは私を見つけると嬉しそうに笑顔を私に向けてきた。


わ、私の学校生活空間が組織に侵食されていく〜っ!


誰か聞いてた?私聞いておらんよ。知らんよワシ、あの2人は知っていたっぽいけどねッ!


「……私の夏休みは、まだ終わってない……か。」

理華「来ちゃった★」


美世「帰って★」


ハーパー「私も来ちゃった♡」


美世「帰って♡」

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