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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.5
213/602

姉と弟の関係 後編

おしマイケル。


姉弟の話をいつか、いつか書きてえ…っと思い数ヶ月の時が流れてました。浦島太郎かな?

「ふぅ疲れた〜。」


深夜3時過ぎに私は組織の第一部ビルにへと向かっていた。今回の標的はそこまで強くもなく簡単な部類だったけど、状況があまり良くなかったから時間がかかり過ぎてしまった。


私一人なら簡単に能力者を捕まえられたのに、特定課の人達と混合で任務にあたらないといけなかったから手間がかかり遅くなってしまったのがね…。


「あの子、良い子にしていたかな。」


もう寝ているだろうあの子の事を考えながら私はビルの上階へと向かうとする。途中までは能力で視ていたけど、流石に任務優先だから後半は良く視れていない。だけど、あの子にちょっかいを出そうとしていた奴らの顔は覚えた。後で色々と動かないとかもな…


あ、それと雪さんと和裁士さん達には後でちゃんと礼を言わないとだね。


私はこれからも人との繋がりを大事にしようと思いスマートウォッチで操作しながらエレベーターに乗り込んだ。


私は処理課に所属しているからある程度の施設を利用出来る。処理課のフロアには寝泊まり出来る部屋があり、今日はそこで朝まで軽く睡眠を取ろうと思う。


エレベーターが目的の階で停止し私はその階で降りる。今日の寝床である高級ホテルのような部屋に入り、すぐさまシャワーを浴びようと準備をし始めた。


(ん?この部屋って…)


途中でこの部屋には監視カメラが無いことに気付いた。このビルには至る所に監視カメラが設置されているから珍しい。処理課の所有する部屋だからだろうか。その権力の高さが伺える。


そして私は心置きなく浴室へ向かい軽く汗を洗い流し髪と身体を洗って浴室を後にした。バスタオルで頭と身体に巻き付けて部屋に備え付けられた電話で託児所へとコールする。


それから暫く、電話が繋がり聞いたことのない声が受話器から聞こえた。


「はい。こちら第一部ビル託児所。」


(流石に夜間だから交代したのかな?)


「もしもし、そちらに私の…身内を預かってもらっている“あいの風”です。あの…様子はどうですか?」


「あ、あいの風さんでしたかっ。えっとですね、誠くんはとても良い子にしていましたよ。ご飯も食べて一人でもお風呂に入れましたし。」


ほっとした私は頭に巻いたバスタオルを使って髪の水分を取っていく。


「そうでしたか。朝に迎えに行きますのであの子が起きたら連絡もらえますか?」


流石に今から押しかける訳にはいかない。私だって眠いしね。


「分かりました。その時はこの番号に掛けますね。」


「はい、お願いします。」


良し、これでもう用事はない。あとは髪を乾かしてから葉を磨いて…


「あ、それとですね…」


これからの予定とも言えないような予定を考えていると、向こうから何か言いたそうな雰囲気で話を続けて来た。


(眠いんだけどな…。)


「あ、はい。」


「誠くん、あいの風さんの事ずっと待ち続けてましたよ。途中船を漕いで寝てしまいましたが。」


「…そうですか。」


そうですかとしか返しようが無い。その状況下を私は見ていなかったから。あの子がどういう思いでそうしたのか私には分からない。


「お姉さんの事好きなんですね。帰ってくるかもしれないって言ってずっと待ち続けていたんです。」


「えっと、それはご迷惑お掛けしました。」


職員さんも中々寝ない子の面倒を見て疲れただろう。


「いえいえ!謝れる事なんてありませんよ!見てるこっちが元気になりました。だからありがとうございました。また良ければ誠くんと来てください。いつでも歓迎しますから。」


教育上の観点からそれはしない方が良いと思う。それに父かあの人が必ず家に居る。今回みたいな事は本当に稀な事でもう2度と訪れないだろう。こんなのは結局姉弟ごっこに過ぎない。


「…考えておきます。朝寝坊するとあの子に怒られそうなのでもう寝ますね。いきなり深夜に電話してすみませんでした。」


これ以上話したりしたくない私は最強の枕詞を使いこの会話を終わらせようとした。


「あ、いえいえこちらこそ長々と話してしまいすいませんでした。おやすみなさいあいの風さん。」


そこで通話を終了し寝支度に入った。余計な事は考えない。私とあの子の関係性はあくまで腹違いの姉弟であり、それ以外の何ものでも無い。


私は自分にそう言い聞かせてベッドへ倒れ込み、目を瞑るとすぐに夢の世界へと飛び立った。どんな内容の夢かは思い出せないけどお母さんの夢ではなかったことは確かだ。


そして私は電話が鳴る音で意識は覚醒した。私は起きたばかりであっても俊敏な動きで受話器を掴み電話に出る。


「もしもし。すみません今起きました。」


電話は昨日の人だろうか、私は相手の返事を待っていると予想外の相手の声が聞こえてきた。


「もしもし…?お姉ちゃん?」


「はいっ!?」


心臓が一気に高鳴り血管の巡りが良くなる。私は慌てて能力で託児所を視認すると間違いなくあの子が受話器を持って電話をしていた。…相手は間違いなくマイブラザーだ。周りの職員達も雪さんもニコニコして見守っているから彼らの仕業だろう。


「お姉ちゃん…?」


「はい、はいはい起きてます。今から準備して迎えに行くからほんの少しだけ待ってて。同じ建物内に居るからすぐだよっ。」


私は耳と受話器の位置関係の軌道を固定した。そして器用に寝間着を脱ぎ髪も能力で視認しクセがついた所を見つけブラッシングしとにかく急いで支度を済ませた。


「朝ごはんここで食べようって言われたんだけど…」


「うん、うんそうしようか。嫌なら外でも良いよ。」


「食堂ね、人がね、お姉ちゃんと食べに来てねってね。」


「うん食べに行こうか!」


話している間も私は動きっぱなしである。こんなに急いだ朝なんて記憶に無いよ。


「おはよう美世ちゃん♪」


「…おはようございます雪さん。」


託児所に行くと雪さんが待ち構えていたので朝の挨拶を交わした。こんなに急がされた原因は間違いなくこの人のせいだろう。


「お、おはようお姉ちゃん。」


「おはよう。良く眠れた?」


あの子もスタタと小走りで駆け寄って来たので朝の挨拶を生まれて初めて弟と交わした。朝の時間重ならないようにしていたし、こうやって面と向かって挨拶なんてしたことないですよ。


「まだちょっと眠いけど良く眠れたよ。」


「私もまだ眠いかな。あ、どうもおはようございます。一日預かってもらって助かりました。」


あの子の後ろから職員さんが来たので挨拶とお礼を述べる。社会人としてここはちゃんとしておかないと。一応私はかなり地位が高くて偉いらしいんだけど、ここで威張ったりしたらこの子の教育上良くない。ちゃんとお礼を言えない大人にはなって欲しくないからね。


「おはようございます。誠くん朝頑張って早起きしてましたよ。お姉さんが帰ってきたよって言ったらすぐに支度してね。」


大人衆はニヤニヤが止まらないようでとても嬉しそうな顔をしている。ぶん殴りたいねその笑顔。


「あの電話は心臓止まりそうでしたよ絶対に忘れませんから覚えておいてください。」


「「すみませんでした。」」


職員2人の血の気が引いて今にも死にそうな顔をしていたのでここら辺で止めとくことにした。また預かって貰う可能性が微粒子レベルで存在するかもしれないから。


「あと雪さん…本当に助かりました。ありがとうございました。」


頭を下げて雪さんにちゃんとお礼を言う。雪さんの配慮には頭が上がらない。


「私が急にお願いしたんだもん。ちゃんと弟くんの面倒は見るよ。それに楽しかったしね。」


…嘘は言っていなさそう。シャツも着替えたのかピシッとしてるし目の下の隈も引いてる。雪さんの息抜きにもなったのならこの子を連れて来て良かった。


「やっぱり私の目標は雪さんみたいな大人の女性です。」


「えっ!?急にどうしたのっ!?」


雪さんが顔を真っ赤にしながらあたふたと手を動かしオーバーなリアクションを取る。


「いや、初めて会った時から雪さんの事カッコいい女性だな〜って思ってて、でも知れば知る程見た目以外でも雪さんはカッコいい人だと思いまして…そんな姿に憧れます。」


そう言ったら雪さんが鼻血を出して倒れた。白いシャツを真っ赤に染めながら恍惚とした表情で倒れる雪さんは、やっぱりあんまりカッコよくないかもな…と思わせる程の残念さも持ち合わせた女性だと結論づける。


そして私達は雪さんとマイブラザーと朝食を食べてから第一ビルを後にし、約束通りマイブラザーにカードを買ってあげる為に彼の案内で怪しげなお店へと向かっていた。


「ここがそうなの?」


私はどこにカードが売っているかすら分からないのでタクシーを捕まえてマイブラザーの言った行き先へと発進し、30分そこらでこの目の前にある良く分からない建物に到着した。


「うんっ!ここがそうだよっ!」


店の外にはそれらしきポスターやチラシが張り出されているからこの店で合ってるっぽいけど…入店している人の層がアレだ、大きなお友だちだ。ここにこの子を連れて行って大丈夫だろうか。父にバレたらブレンバスターを食らいそう。


「早く早く!」


マイブラザーに手を引かれて私はこの場違いそうなエリアへと足を踏み入れた。


…そしてそれから小一時間経過した。いきなり話が飛んで申し訳ないけど、本当に私はそう言い表す事しか出来ない。最初は物珍しそうに2人共店内を歩いていたけど、マイブラザーがカード売り場を見つけてその前から動かなくなり私もそこから動けなくなった。…つまりそういう事だ。


「決まった?」


「うーん…もうちょっと待って。」


この質問はもう十回はしている。だけど返ってくる返事も十回目だ。流石に限界だよお姉ちゃんは…


店内に女性は私しか居ない。かなりみんなの視線も集めている。正直言って居心地が悪い。視線がウザい。あと店内臭い。チェケラ。


(ん?この反応は…)


店内にクラスの男子達(陰キャ)が入ってきて私に気付くとギョッとした目で私を見つめる。…これ夏休み明け噂になるんだろうなぁ…。


私はクラスの男子達にも聞こえるのように声量高めでこの子に話し掛ける。


「マイブラザーまだ決まらない?お姉ちゃんそろそろ家に帰りたいよ。」


「もーちょっと。」


クラスの男子達もその言葉を聞き納得したようであからさまな反応は見せなくなった。


「何を悩んでいるの?」


とりあえず私は質問の内容を変えて問題解決の糸口を見つけることにした。多分あの黒いイラストのやつとこの赤いやつで迷っていると思うんですよあたしゃ。


「コレとコレ。こっちが新しいやつなんだけど、コレが雑誌でしか情報無かったプレミアム版なの。あるなんて思わなかった。」


「プレミアム版は大事だね。」


私はそういう所には理解はある。周りのぽたく達もうんうんと頷いている。でも集団で腕組んで後ろから見続けるの止めてね?私達が邪魔ならどくからさ。


「うん大事。でも300円もする…。」


普通の方は150円でプレミアム版は300円と倍だ。なんて汚い商売しやがる。許せん!


「両方は?」


「でも…高いもん。450円するし…それならこっちが3つ買える…。」


か、可愛いなこいつ。金銭感覚が小学生だよ…。後ろのぽたく達もニコニコ顔で弟を見ているし。


「いつも買う時どうしてる?ち、お父さんが買ってくれるの?」


「ううん。お父さんもお母さんも買ってくれないからお小遣いで一つずつ買ってる。」


毎月のお小遣いで一つか…それは迷うね。ていうか父とあの人厳しいな。私はこの子がパソコンも買ってもらったりしていたから結構なんでも買い与えてもらってると思っていた。


でもこの一日で色んな事を知りこの子も大変な思いをしているんだなって気付けた。私よりはマシかもしれないけどこの子は私より自由が無いかもね…。


「値段関係無く何が欲しいの?」


「…僕が持っているデッキならこの古いやつ。でもこのシリーズでデッキ組みたい。」


古い方は緑のイラストでこの子はこのシリーズを良く買っていたらしく、次はこの黒いイラストのやつでデッキを組みたいと。…私には良く分からない世界だ。オタク文化は理解あるつもりだけどカードゲームは男の世界ってイメージ強いからな…。推しのイラストが描かれたカードはコンビニで買いまくるけど、カードゲームは本当に分からない。


「それ以外のシリーズはいらないの?」


他にも7種類ぐらいある。あくどい商売やで…単価数円程度の紙切れを150円で販売したらそりゃあ儲かるよね。


「…欲しいけど、1つ2つじゃレアカード出ないしデッキ組めないもん。」


レアカードか…レアカードを出すには数がいるよね。


「店員さーん!」


私は店員を召喚!


「はいっ!どうしました?」


ずっと私の様子を伺っていた店員が一目散に来て私の胸をチラチラと見…おい、ブッ殺すぞ。女性はそういうの分かっているからな?


「ここから…」


私は1番右端を指差して。


「ここまでのやつあるだけ全部ください。」


1番左端までのシリーズ全てを所望した。これが大人の買い物じゃい!


私達は約束を果たしお店を出て、あとは家へと帰宅するだけとなった。その道中で私はマイブラザーを観察しながら歩道を2人で歩いていた。


「〜♪〜〜♪〜♫」


マイブラザーが大変機嫌がよろしい。鼻歌まで歌って両手で抱えきれない袋を持って楽しそうに歩いている。


「なんの歌?」


「デュエルエクスターズのオープニングッ!!」


「そっか〜。」


確か紅白声優が歌っていた歌だね。一回だけ聞いた事あるよ。


「それ、口止め料だからね。あの2人には絶対に秘密、良いね?」


「うんっ!」


「今回だけだから次は期待しないでね。あと、あの人達が居る時は前みたいな関係だから。」


「うんっ!」


「…本当に分かってる?」


「うんっ!」


駄目だ…分かっていないよこの子。しかも抱えてるビニール袋が今にも落ちそうでハラハラしてしまう。


「袋の片方持つから、落としちゃうよ。」


「うんっ!ありがとうお姉ちゃん!」


私と弟で袋の紐を片方ずつ持って歩道を歩いていく。


「…どういたしまして。」


まあ、なんだ。たまには姉弟ごっこをさ…。またしてもいいかな〜と思うぐらいには私達姉弟は、そこら辺のごく当たり前な一般的な姉弟みたいにはなれたよね。


凄く、凄く…時間が掛かったけどさ。もしかしたらあの人とも仲が良くなる日も来ちゃうのかな。


「誠。」


「…お姉ちゃん?」


今まで感じた事のない所が暖かく感じる。…そっか、まだ私にもこういう気持ちが残っていたんだね。


「あの人が居ないときは、またこうやってお出掛けしようっか。」


「うんっ!」


歩道の真ん中に2人の姉弟が歩道を歩いていた。それは傍から見ても2人ともとても仲が良さそうで、どこにでも居るごく当たり前の姉弟だった。

前の話に出てきた恋鞠さんなどの職員さんは能力者の事を知っています。彼女のような職員は元々特定課などに所属していた経歴を持っていますが、しかし同僚の死や自身のケガ(身体や心)が原因で現場に出られなくなった人達がエージェントから職員へ転職する場合があり恋鞠達もそれに含まれます。


いつかこういう設定をもっと後書きなどで書けたらな思ってますので後書きも要チェックです。


まあ、ほとんど毎回適当な事しか書いてませんけど。

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