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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.5
212/602

姉と弟の関係 中編

最近一日で4千文字書いてる事に気付きました。スマホで書いてると腱鞘炎になるのでPCで書きたいんですけど、気付いたらYou Tube開いてるので作業自体出来ません。助けてください。



託児所らしき一角は私の能力で分かってはいたけど、まさかこの年で利用する事になるとは思わなかったよ。女子高生という身分と託児所を組み合わせるとそこはかとなく叡智(え○ち)な雰囲気が醸し出されると私は思うのですよ。


「では、この子をよろしくお願いします。」


託児所には保育士の資格を持った職員が常に2人は就いており夜間や早朝でも子供たちを見てくれると説明を受けた。私よりこの人達と居たほうが良いだろう。


「…行っちゃうの?」


その顔はやめい。私が罪悪感を感じてしまうでしょうが。…まあ、私の都合で1人にしちゃうから私が悪いんだけどさ。


「私が帰ったら買いに行こう。それまでお留守番出来るよね?」


私は目線を合わせる為にしゃがみ込む。子供は目線を合わせて話すと対等な扱いをされて嬉しくなるらしいですよ奥さん。


これは私の考え方だけど子供ってさ、特に日本では人扱いされない身分だと思うんですよ。人間であり権利もあるのに子供扱いされて人と別(くく)りされる事が本当に多い。私もお母さんとちゃんとお別れも出来ずに父と警察の間で話し合いをしていた。私はそれに参加も出来なかったのを覚えている。


子供だという理由で権利を主張するテーブルにも着かせてもらえない。だから私は子供でも大人と同じように主張も権利も認めている。でもだからと言ってワガママを全部聞く気はない。それは大人相手にも同じ対応をするからだ。


「…うん。…分かった。」


一応は頷いてくれた。小学1年生?の割には聞き分けが良いよ。この頃の子は生意気な子が多いからね。私もそうだったから。


「良し、偉い。…雪さんは私と行くんですか?」


雪さんはここまで案内してくれたけどその後の動きは分からない。特定課からの委託任務だから雪さんが絡んでいると思うんだけど…。


「ごめーん。私昨日から徹夜だからこの後休憩取るように課長に言われているんだよね〜。」


良く見ると化粧で誤魔化しているけど目の下に隈が出来ている。世間は夏休み真っ盛りなのにご苦労様です。


「分かりました。じゃあ行ってくるから。良い子にしているんだよ。」


私はその後に職員さんにも挨拶をして任務へと向かった。これは後に聞いた話だけど今この東京には処理課の人は私しか居なかったらしい。他の処理課の人はみんな任務で外へ行っていたとか。


私がアメリカに居た時は周辺諸国を警戒してみんな国内に出来るだけ居るようにしていたらしいんだけど、今じゃ逆に私が日本に居るから誰も攻めてこないだろうと上が判断して、私が国内に居る間は他の処理課を色んな所に派遣しているんだって。


こう聞くと私の存在感も先生と肩を並べ始めたんだな〜って思うよ。それは嬉しい事なんだろうけど複雑だよね。先生と同じ分類にされるのはむず痒い。私はまだあの領域には辿り着いていないのだから。


それから美世が託児所を去って30分後。淡雪は未だに託児所に残っていた。


「誠くんはサッカークラブに入ってるんだ。将来はサッカー選手?」


淡雪は終始ニッコニコだった。美世の弟という事実だけで疲れを忘れる。それに淡雪は外堀が埋めていくタイプ。かなり大真面目に美世とのゴールインを視野にしている変態だ。


「…違います。」


子供というのは敏感だ。淡雪から漏れ出している腐の空気を感じ取り心に壁を作り出していた。


「じゃあ好きな子は居る?クラスに気になる子は?(男女どっちでも可)」


「居ないです。」


誠のATフィールドは拒絶型。淡雪の擦り寄りは受け付けない。


「じゃあお姉ちゃんは?可愛いしカッコいいよね。」


淡雪は誠と美世の空気感からそこそこ仲が良さそうで、しかも誠は美世の事をかなり気になってそうだったので美世の話題を振ることにした。


「…姉は美人だと思います。」


(おっ!これはこれは禁断な香りがしますね〜!)


淡雪のテンションは今までにない上ブレを記録していた。


「お姉ちゃんとは家で話す?」


淡雪は自身の言った言葉で地雷を踏んだ事を瞬時に理解した。誠表情から感情が抜け落ちて完全に殻に籠もってしまった。


「…」


(やっちゃった…。)


今日見た限り仲は良さそうだったけど今日だけだったのかもしれない。特殊な状況下で仲が良くなって平常時は仲が良くない関係性は割と良くある。


「あ、ゴメンね?誠くんと会えて嬉しくなっちゃってお姉さん聞き過ぎちゃったね。お詫びに美世ちゃんの事を話してあげようか?」


ピクッと誠くんが反応を示す。ここあたりは小学生らしくてとても可愛い。あーお持ち帰りしたいな……。


女性が小さな男の子に欲をぶつけるのは犯罪か否か。これを母性だと言い換えることも出来なくは無いのは歴史の重なりのせいだろうか。


「…聞きたい。」


堕ちたな…ヒッシャッシャッ!堪んねえな男子小学生はっ!


「淡雪〜?そろそろ戻ったら?」


職員の1人である恋鞠陽子(こまりようこ)が淡雪に注意喚起する。彼女は常識人で淡雪の事を良く知っているのでこの構図が犯罪的なのを理解している。


「淡雪さん、女性でも犯罪になりますからね。」


そしてもう一人の職員、井上優太(いのうえゆうた)が恋鞠の掩護に回った。彼もかなりこの組織の中でも常識人枠に入る。


「何よ〜別に本人が聞きたいって言っているんだから!」


淡雪は分かっていて別の事を指摘されたと解釈した風に答えた。


「あんたねぇ…」


恋鞠が淡雪に詰めてかかろうとすると託児所に入る為のドアが開いて和裁士達が雪崩込んできた。


「…来たわね。」


恋鞠は今日一日は地獄を見ると察した。


「誠くんは可愛いね〜女の子にモテるでしょ?」


「お菓子いる?甘いの好き?今度作ってきてあげようか?」


「あ〜こんな弟欲しかったな〜!お姉ちゃんの弟になる?」


やたら距離感の近いお姉様方に囲まれた誠はカチンコチンに緊張して固まりソファーの上で縮こまっていた。


「私こういう構図知ってる。おねシ…」


淡雪の口を瞬時に恋鞠が塞いだ。そんな言葉を聞かせる訳にはいかないと保育士としての使命感が働いたからだ。でも内心全く同じ事を考えていたのはここだけの秘密である。


「羨まし…ゲフンゲフン。将来(性癖が)歪まないか心配だな。」


保育士としての使命感で何とか踏み止まれなかった井上は淡雪と恋鞠から冷たい目を向けられて興奮を覚える。


井上は気の強い女性がどストライクであった。この2人は正に火の玉ストレート。最高の職場だった。


「…大丈夫、です。」


何とか絞り出したような声に和裁士達は昂ぶり控え目に言って地獄だった。


「大丈夫ですって〜謙虚よ謙虚!可愛いな〜っ。」


「美世ちゃんの弟とか私の弟って事だよねっ!?」


「どんな女の子がタイプ!?年上って何歳まで可ッ!?」


1人だけ…合コンのノリの人が居たが勿論犯罪である。


「は〜いそこまでですよ〜。皆さんお仕事に戻りましょうね〜。」


恋鞠はこれ以上は悪影響しかない。毒が強過ぎると判断し和裁士達を追い出そうとする。


「1時間いくら?」


そう聞いてきた和裁士の目は穢れのない綺麗な瞳をしていた。何故そんな目でそんな事が聞けるのか不思議でしょうがない。隣に居る誠より純粋な眼だった。


「そういうサービスはしていません。ここを利用したかったらご自身の子供を預けに来てください。まあ…その予定があればの話ですが。」


「「「ぐはっ!?」」」


和裁士の3人は抑えきれない母性を持て余らせている悲しきアラサー。その言葉は親の孫の顔が見たいより強力だった。


「あ、あのっ!」


ここで誠は立ち上がり恋鞠に意を決して質問した。


「ど、どうしたの?」


恋鞠はこの流れで自分に声を掛けてきた誠にドキッとした。これはまさかのまさかかと思い、どう答えたら良いのか、小学生と付き合うのは犯罪では無いのか、結婚したら年下の姉が出来るのかと未来予想図を想像した。


「お姉ちゃんは黒神みずきなんですか!?」


世界が止まった。あまりに関係の無いことに大人の脳は麻痺し思考が空回りを始める。しかし、この中に1人だけ子供の思考回路すらついて行ける脳を持ち合わせている者が居た。


「そうだよッ!」


デュエルエクスターズを毎週録画し視聴している淡雪だけがすぐに反応した。


「くろかみみずき?だ…」


淡雪は能力者としての身体能力を全力で行使し恋鞠の口を封じた。


「モゴゴッ!」


「お前保育士のくせにサンタの正体を言うのか?違うだろ?ここは私に合わせろ。」


コクコクと生命の危機を感じた恋鞠は涙目で頷き淡雪から開放された。その様子を見ていた和裁士達も井上も察し淡雪の言うとおりにしようと心に決める。


「やっぱりそうなんだ…お姉ちゃん。黒神みずきなんだ…。」


「因みに美世ちゃんはブラック・ローズの使命でアラナイズに攻撃を仕掛けに行ったの。」


1話から視聴ネキの淡雪はスラスラと設定を考え誠に吹き込む。


「ホントっ!?じゃあ高坂と蓮司の邪魔をしに行ったんだ…。」


アニメとリアルの境界線はこの頃の子はまだ判別出来ていない。そこにはもう大人では楽しめない時間がある。だからそれを取り上げたりはしてはいけない。


自分の方が頭が良いだとか、そんな事も分からないのかと否定してはいけない。この世界に自分の姉がアニメに出てくるキャラと重ねても誰の迷惑にもならないんだから。


いや、その姉本人からしたらかなり迷惑になるのだが、今の淡雪はそんな所まで頭は回ってはいない。何しろ徹夜2日目だからだ。


「…なんかのアニメの話っすかね?」


小声で井上は恋鞠に話し掛けると恋鞠はハッと気付いてみるみると頬を赤らめて己を恥じた。小学生相手にのぼせた事が恥ずかしくてたまらない。


「知らないわよ。」


ドキッ…井上はその横顔を見て2人の未来予想図を想像する。しかし恋鞠からしたら井上は良き同僚であってもストライクゾーンからかなり外れた抜け玉。手を出す訳が無かった。


「ていうかあなた達もう帰りなさいよ…誠くんは私が面倒見るから。」


このカオスな状態はこのカオスなメンバーのせいである。コイツらを帰さないと私の職場は平和にならない。


「良いから良いから。私もここで休ませてもらって誠くんに付いているからさ。」


淡雪はそう言って誠くんの向かいに置かれたソファーに寝転ぶ。


「だから…」


恋鞠は居座ろうとする淡雪を帰らそうと声を掛けようとする。すると淡雪がこっちではなくドアの方を見ている事に気付いてそっちを見るとドアの外に人集りが出来ている事に気付いて声を失う。ここのドアは閉塞感を無くす為に透明な窓が付けられているが、それは外から中を見れるという事。


何故こんな人集りが出来ているか…それは決まっている。


“伊藤誠”…あの“伊藤美世”の弟なら様々な派閥の人間が接触しに来る。それを淡雪は分かっていたんだ。なら和裁士さん達もそれを知っていて…?和裁士さん達も組織の中で特異な立ち位置、彼女達を敵に回したら組織全員の女性を敵に回すという意味になる。


「私はここで寝ているから。良いよね?」


そうだった。淡雪はこういうのを誰よりも上手く立ち回れるからみんなから一目を置かれている。だからこそ誰も彼女を敵に回さない。みんな彼女を良く言う。その理由はこういう押さえる所を必ず押さえる所だからだろう。


「…毛布持ってこようか?」


そうして組織は回り続ける。たった一人の気遣いや天才的センスによって。

こういう主人公が絡まない人間関係のお話良いですよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 某魔法少女の 男の子は男の子同士で、女の子は女の子同士で恋愛すればいいと思うの? と言いきった小○生を作る気か!
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