纏わりつく軌道
ギリギリ2話投稿間に合いました。
先生の言葉に対して初めて疑問を感じる。というか不可解な気持ちになる。
(これ以上身体能力を上げる必要があるの?)
今ですら体育の時間は力を抑えてみんなと同じくらいの動きに合わせているぐらいなのに…ここから更に上げる?多分私が体育の先生をマジ殴りしたら死ぬよ?あまり私を怒らせるなよおっちゃん?
うーんそこらへんのバトルマンガの登場人物とだって良い勝負出来そうなんだけどな〜。
そこで自分の思考に疑念を持つ。“能力”が目覚めたばかりにありがちな全能感から来る驕り。
(いや、この考え方は違う。間違っている。)
私の相手は“能力者”だ。みんな同じく身体能力が優れている筈、体格の差を考えたら私が不利な状況が多いだろう。しかも異形タイプの存在も無視できない。こいつらと身体能力で競う事自体が愚かとしか言えない。
『異形型能力者の存在を考えたら身体能力の強化は必要ですね先生。』
『そうだ “銃”は強力な能力だが近距離系の能力者に対して決定力が足りない場面がある それに近距離弾数が6発という制約がある為に敵が複数居る場合はコチラが不利になる』
そこに私の考えも付け加える。
『それに相手に先手を取られた場合だと能力次第では私の耐久力では一撃で死ぬ可能性が高いですね。』
私は能力者相手ではスペランカ○先生並の耐久力しかない。相手も“銃”レベルの能力使ってきたら確実に死ぬ。
『そうだな しかしそういう自体に対して対応出来る“能力”をワタシが持っているから気にしなくていい』
(先生どんだけ能力持ってんの!?先生何気にチートだよね!?)
『ミヨが気を付けないといけないのは無力化される自体 つまり意識を奪われる自体だ ミヨはこの世界で唯一の“非接触型探知系能力者”だ 確実に解体される』
なるほどヤヴァイ兵長だ。よく知らん奴らに心臓を捧げる事になってしまう。
『…気を付けます。』
先生は私の顔で心配そうな顔をして注意してくれる。そんな事出来るのか私の顔!
『そうだな気を付けたほうがいい そして今から教える“強化”はそんな君に覚えて欲しい能力の使い方だ』
おお〜ということは耐久力を上げたり出来るのかな?流石は先生。色々と規格外だ。
『まずは【再現】にリソースを割け パスからワタシの能力を流す これはベルガー粒子を使って軌道を再現し纏うからだ』
『どんな軌道を再現するんですか?』
『取り敢えずはワタシの軌道だ ワタシの身体能力を“再現”する』
先生が私に近づいて来る。え?え?何々近いよ先生!キス!?キスすんの!?
『じっとしていろ』
やっば!キスじゃん…これ、うるさい口だなって言われてから、塞いでやるよってキスされるやつじゃん!
先生はそのまま後ろ向きになり、私と同じ方向を見て重なるように近づいて来る。
(何で??)
そして重なる!(これが本当のユニゾンなの!?)
私に先生は触れられないし逆も然りだ。私の姿が重なっている。
(え?何これ珍百景?私いまなにをされているの?分からん!)
『イメージとしてはコレだ ミヨに手と足が増える事でリーチと手数を増やす コレを目指してもらいたい』
『…あの殺人鬼と同じ感じで手とか足を生やす感じですかね?』
『少し違うな あれは制約がある アイツが作れて生やせるのは肉体の腕だ ミヨはベルガー粒子を固めて腕にする そして軌道は“再現”する』
『…つまりは腕の材料はベルガー粒子作って“軌道”自体は【再現】して…その選択を私がする感じですかね?腕の大きさや数を選んでこの動きを選んでさせるとかを私が操作するんですかね???』
訳の分からない状況で頭が働かないし能力の理解が足りなくて言ってる事が支離滅裂になってしまった。
『ーーーまあ実際にやってみるのが早いな 今のミヨならベルガー粒子のコントロールも簡単に行えるだろう』
先生が後ろに下がり“軌道”だけ残る。この軌道をベルガー粒子で作れば良いのかな?
そんな考えをしていたらパスから先生のイメージが流れてくる。
(なるほどこれは出来るな…え?ていうか出来てる!?)
私の肩からベルガー粒子で出来た腕が…生えてる?違うな全身を纏ってる。私はベルガー粒子で出来た腕を動かしてみるが私の身体に干渉しない。触れないのにそこに存在している。“銃”と似てるけど、どちらかと言うと“弾丸”の方に近いかな。
《ーーー本当にすぐに出来るなミヨは…》
理解したし認識出来た。この腕の本質は【再現】。異形型の能力を再現するのに必要なプロセスを取り除く。必要なのは“軌道”であり現象だ。
壁に向かって“軌道”を描く。…そうすると壁に亀裂が入り破片が辺りに散らばる。威力は“銃”レベルだな。
近距離に居た私には破片の欠片1つも付着していない。全身に纏わりつくベルガー粒子が私を守る形になったが、その現象に納得がいかない。
『先生…ベルガー粒子って物理的に触れるのですか?腕は“軌道”なので物理的防除が出来無いのに全身を包んでるベルガー粒子が私を守ってくれるのですけど。』
『ベルガー粒子単体には物理的干渉は無い 人体だって貫通する しかし変化させられる ベルガー粒子でミヨの“軌道”を確定されている事で物理的干渉を防いだ訳だ』
先生はニヤリと悪い顔をしながらとんでもない事を言う。
『なんか裏ワザみたいですね。』
『しかし攻略法は色々ある ベルガー粒子にはベルガー粒子で干渉出来る そうしてベルガー粒子の結合を解いて霧散させてしまえばいい』
『じゃあ能力には能力で対抗するって事ですか?』
『いやそれは一概にそうとは言えない 能力には能力に干渉出来ない 干渉出来るのはベルガー粒子に限る』
訳が分からなくなってきた。どういう事だろう?
『例えば精神系の能力でミヨに干渉し認識を狂わせようとしても【探求】は干渉されない だからミヨが相手の位置の認識を間違える事は無い』
『なるほど!分かりやすいです!ではどうやって干渉するのですか?』
先生が更に更に悪い顔をしながら教えてくれる。私の顔で止めてください!ていうか私ってもしかして普段の顔が悪い顔をしてるのかな?
『触れて認識すればいい ベルガー粒子は物理的干渉は出来ないが能力者はベルガー粒子を認識出来る 認識してしまえば脳で干渉すればいい』
先生が頭を指差しながらとんでもない裏ワザ攻略法を教えてくれた。
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