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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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任務完了

明日は休みなので色々とストーリーの大まかな順序を決めて行こうと思ってます。

私は何を見せられているのだろう。美世と死神のやり取りは正にその……アレだ。お互い想い合っている男女のそれだ。この2人がここまで仲が良かったなんて……。


美世が凄く好意を抱いていたのは知っていたけど死神の方も相当だ。期待もしているし信用も信頼もしている。しかも色々と配慮や心配もしていた。


死神なんて名前からは想像も出来ない人格者。……こんな人に助けられたら好きにもなるよね。


でも……私だって美世の隣に居て、これからもずっと傍に居るつもりなのに……出会いがもし、私が最初なら今の関係性はどうだったのかな。


その時、胸にズキッと痛みが走った。


そこで自分に嫉妬心が生まれた事に私は気付く。そして同時に自身を嫌悪した。


今はそんな事を考えている時間ではないのに……ハーパーを救わなくては可哀想だ。どんどん熱を失う友人をこれ以上見ていたくない。


『ーーーありがとうミヨ 救われた気がする』


「いえいえ、こちらこそいつも救われていますよ。」


そう言った後に美世はハーパーの方を見る。そして悲痛な面持ちで死神に声をかける。


「……取り敢えずこの話はここまでにして良いですか?ハーパーを生き返らせたいですから。」


美世も私と同じ想いだった。……嬉しい。たったそれだけの事で嬉しくなる。


『生き返らせる前に確認したい ハーパーという人物は信用に値する人間かどうかを 彼女はここ出身の能力者だ その意味は分かっているな?』


これは……色んな意味が含まれている。私なりの考えだけど、今回はこちらの損害も大きい。情報が筒抜けだったから起きた突然の襲撃。身内に裏切り者が居た可能性が高くそのリストに恐らくハーパーの名前も挙がっている。


だからそれを払拭する為に彼女も前線に出て身の潔白を証明しようとした。ここまでは美世も分かっているはず。


「もし……彼女が裏切り者なら殺されていません。敵はハーパーの事を裏切り者って言いました。それに個人的な意見ですけど彼女は仲間です。仲間を疑ったりはしません。」


「私も美世と同じ意見です。彼女はその……あまりそういう事を考えて行動出来るほど器用ではありません。疑っても時間の無駄かと。」


『ーーー2人の意見は分かった 私も2人の言葉を信じ彼女の事も信じよう これはその信用の証だ』


死神はハーパーに手を当てて能力を行使した。


『【再生(リヴァイブ)】』


一瞬の事だった。徐々にとかではない。瞬きをしたらハーパーの身体が元に戻り彼女も不思議そうな表情で美世と私を見ていた。


「あの……何で私寝ているんですか?あれ、私はアイに近寄ろうとして……」


自分が死んだ事すら覚えていない。今……死者蘇生を目にした。この世界に死者蘇生なんて能力があったなんて信じられない。実際に目にしてもだ。


「あの時敵の攻撃が来てね。その時の余波で気を失ってしまったの……だから、もう大丈夫なんだよ……。」


美世は泣き崩れてハーパーに抱きついた。……そんな事をしたら苦しいと思うよ。


ハーパーなんてうぎゃあーって叫び声を上げてるしどれくらいの力で抱き締めているのよ全く……


『リカ 口で返事はするな』


その時突然死神から話しかけられる。だけど死神はずっと美世とハーパーの方を見ているし美世も気付いていなさそうだ。


『今はワタシ個人とキミとの間にパスを繋いだ ミヨまだ気付いていないから怪しまれる挙動はしないように ミヨなら簡単に気付いてしまう』


私は死神の言う通りに怪しまれないよう美世とハーパーに抱きついて3人でくっつき合う。


……何故私個人に?何か……あるのだろうか。


『ミヨはワタシを信頼しきっているからミヨはそれ以上何も言わなかったが キミはどうだ? ワタシを信用するか?』


いきなりそう言われても答えられない。まず口を動かせば美世にばれる。


『ーーーああそうか パスを通じての会話方法の情報を送る』


情報を送る?んっ……何かが頭の中に入ってきて…………


…………何これ。まるで最初から知っていたかのように話し方を()()()()()()


『……こう、ですよね。聞こえていますか?』


『ああ ちゃんと聞こえている それで急かすようだが質問に答えてほしい』


質問の答えは最初から決まっている。


『信用はしています。美世が信じているのなら信じます。』


『そうか……ミヨはちゃんと仲間を見つけられたのだな』


死神の声は美世の声そっくりで最初区別がつかなかったけど、今はなんとなく分かる。死神の口調は何というか……年上の人を思わせる。優しく見守ってくれているような雰囲気を感じた。


『では別の質問だ キミが何故そこまで彼女に傾倒している?会ってまだ日が浅いだろう?……取り入るにしても2人の関係性が妙でな』


不思議そうな雰囲気で私と美世との関係性を聞いてきた。……この人絶対に過保護だ。どんだけ美世の事を考えているのだろうか。


『死神が美世に対して抱いている感情と一緒ですよ。私も彼女に期待していますし一緒にこれからも生きていきたいと思っています。1番近くで彼女を支えて肩を並べて行けたらなって……そんな感じです。それが妙に見えるんですか?』


私は死神から美世を奪うつもりだ。彼女から1番信頼されるのは自分でありたい。そう願っている。


『ーーーモテるのだなミヨは まあそこら辺の事は2人で話し合ってもらえば良い ワタシは彼女の邪魔になるものを排除するだけだ 2人の関係性についてもうあれこれ聞いたり言ったりはしない 約束しよう』


ガラガラと私の中の死神のイメージが瓦解していく。


めちゃくちゃ良い人じゃんこの人。視点が保護者というか親視点だよね。……美世の親代わりのつもりなのかな。


『ありがとうございます…?』


『ヨシ それが聞けて本当に良かった キミならミヨを支えてくれると信じられる この子は本当に危なっかしいからな 本当にそこが心配だった ……本当に心配だ』


……心労が溜まった口調に不安を覚える。死神ですら苦労している美世を私が支えられる…?


……ヤバい、ちょっと自信無いかも。


美世のホールドが解除されゲホゲホと咳き込むハーパー達を見ながらそう呆然と思った。


そしてそんな心情の中、死神が突然爆弾を私に投下してきたのだ。


『これでワタシが居なくなっても大丈夫だろう。間に合って良かった』


『え、は、はい……?どういう意味ですか?』


死神の言った意味が理解出来ない。私は動揺が表に出ないように努めた。


『実はワタシにはもうあまり時間は残されていないようでな 勿論この事はミヨには秘密だ 彼女が知れば私達の目的が果たされなくなる それは絶対にあってはならない』


そ、そんな事を私に話されても困りますけどっ!?


『な、なんで私にそんな事を言うのですか?……本当に?時間が残されていないんですか?』


確か死神は組織の設立した時から所属している。もしそれが本当なら相当なお年になる。……寿命の問題なのかな。


『そうだ ()()()()()()()だ ワタシという存在は目的を果たして消える』


『消える……?』


多分かなり死神の深層の部分の話をされている。だけど現実感が無い。目の前で美世とハーパーが笑い合っているのに私の頭の中は混乱でいっぱいいっぱいになっている。


『能力と同じだ 行使され目的を果たせば能力は消える ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


そんな能力……ある筈無い。比喩表現か何かだろうけど、死神は美世に託して消えるつもりらしい。


『その考えは逃げではありませんか?一人の少女に押し付けて自分は逃げるのですか?』


こんなことを言われれば死神に怒りを感じる。聞き心地の良い事を言って、結局は彼女に責任を押し付けているだけ。そんな人に彼女を利用させない!彼女を言い訳にも使わせない!


『ーーー本当に 本当にその通りだ 私達が不甲斐ないばかりに彼女の世界をめちゃくちゃにした その責任も取れないままワタシは消えようとしている ……最低な事をしている自覚はある』


『だったら……一緒に居てあげればいいじゃないですか。それだけで彼女は幸せそうですよ。』


悔しいけど、美世は私より死神の方に傾倒している。


『ーーーその点は大丈夫だ 私達はずっと彼女と一緒に居る だがワタシは消える ーーーこれ以上は説明出来ないが……無責任なまま彼女を置いていく気など無い そこは安心してほしい』


要領を得ない説明、しかし死神はこれ以上語るつもりは無いらしく無言だ。……ズルい。死神はズルい。


『嫌われますよ絶対に……』


『それで構わない 彼女の今後の人生を保証できるのなら安いものだ』


そこまで気持ちが固まっているのならもう私からは言う事はない。


『ならもう私は知りません。美世は私が支えて行きますからね。』


『それで良い それが1番だ ……それと最後にだが』


そして死神は最後にまた爆弾を投下する。


『キミにはいつでも能力の貸し出しを出来るようにしておく キミ達が困った時にパスで伝えてくれればいつでもな』


ゴクリと唾を飲み込む。なんて甘美な響きか。あいの風と同等……いや、死神と同等の能力者になれるって誘いを断れる能力者が居ると思う?


でも私はNOと答えられる能力者。三船理華。


『……死神の能力なんていりません。そんなものに頼る事はありませんから。』


ちょっとだけ言ってから後悔した。カッコつけ過ぎたかもしれない。


『キミの能力は分かっている 攻めには使えるが守りは弱い 誰かを守る為にワタシの能力が必要な時が来るだろう その時は遠慮なく言ってくれたまえ』


死神に依存する訳にはいかない。私達はいずれ死神と相対する時が来るから。だから能力は借りない。


『フフフ そんなに警戒しなくていい ミヨが裏でコソコソ動いているのは知っている キミも共犯なんだろう?あとはハーパーと天狼と……魔女達だな』


心臓が飛び出る程驚いた。それでも表情に出さなかったのは、あまりに驚き過ぎて何も出来なかったから。


……見破られていた。流石に死神の裏をかけるほど甘くはなかった。


『だがそれについても特に言う事はない ワタシの判断より彼女の判断の方が正しいと信じているからだ だからキミはそっちに居てくれ』


美世と全く同じ姿に同じ声。そこにこの人格……ヤバい。美世が惚れる理由が良く分かる。私もぐらっと来てしまった。


『ではまたいずれミヨが居ない時にでも話そう キミ達の活躍に期待している』


死神はそう言い残して私達の前から姿を消した。


(死神……これから長い付き合いになるのかな。)


そんな一抹の不安を感じながらも私達はこの地での任務を完了し、あとの事後処理をこの国の人達に託して日本へと帰国するだけになった。

あと…3話ぐらいで3章は終わります。予定ですけど。


それで4章に入る前に小話を数話書こうと思ってます。ちょっとこういう話を書きたいな〜って考えていた話です。

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