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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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収束した光の線

冷静にミューファミウムの施設でけえよね。地下鉄かな?

人が死んだ際にする独特な悪臭が漂う広間で待ち構えていると通路の先から能力者が一人現れた。男性だ……。細みで筋肉が引き締まっている。黒人で髪を兵士達みたいに短く刈り込んでいるから軍人かもね。


異形型か?それとも全く関係の無い能力か?


考えても分からない。分かるのは大した事が無さそうという点だけだ。明らかにベルガー粒子量が私達より劣っている。


「……酷え事しやがる。コイツ等とは知り合いだったのに……許せねえよ。」


辺りに転がっている兵士達を見て怒りを露わにする男。私も彼と同じ立場ならそう思うだろう。だけどそう思うだけで、こいつらを殺したあとも可愛そうだとかそういう感情は一切湧かない。海を超えてここに来たけど結局の所は他人事でしかないしね。


「武器も持たず来るとか自分の能力に自信がある奴か、武器を持たせて貰えない危険人物かの2択だと思うけどどっち?」


「……何?」


挑発に聞こえたのか男は怒り心頭だ。しかし本意は別のところにあると思った。


この施設は能力者を研究している。彼も研究に協力していた筈。この男がどういう扱いをされていたかは知らないけどハーパーの話では能力者はあまり良い待遇では無かったと聞いていたからこの男も似た感じだと思う。


それなら不満がある筈なのだ。わざわざこの組織に義理を立てることは無い。なのに彼は一人で一番最初にやってきた。


正直言うと怪しい。混乱の最中逃げてきたんじゃないかと疑いたくなる。さっきまで部隊単位で動いているのにコイツ一人は道理が合わない。付き添いも居ないんだよ?能力者一人で出歩けるような管理はしていない筈なんだよここは。


「混乱に乗じて逃げ出してきた?」


男は黙って私達3人を交互に見る。その反応だけでこの男がどういう経緯でここに来たか分かるものだ。


「……デス・ハウンドでいいよな?探知能力者はそんな事まで探知するのか?」


「嘘発見器扱いしないで。こんなのただの思い付きだったし別にどっちでもいいの。死んでくれればそれでいいし。」


私の任務は完全なミューファミウムの壊滅。能力者なんて一人として生かせておけない。


「抵抗せず投降すると言っても?」


その気など微塵も無さそうに見えるけど?話した印象から私達に対しての怒りは嘘ではなさそう。


最初は戦力的に敵わないと考えた彼は降伏しに私達に会いに来た。そしたら兵士達が全員殺されてついカッとなってしまい感情を表に出してしまった。


まあここは外国だし普通の反応かもね。感情を表に出して相手に伝えるのが普通。


まあ、私みたいなのは敢えて出さず沸々と黒い感情を募らせるけど。


「貴方達の一軍はそこそこ強かったしプロとして徹していたけど、やっぱり二軍は殺る前から腰が抜けて駄目だね。それとも貴方が三軍だから?」


挑発で返すと彼のベルガー粒子に反応があり私に向かって突撃してきた。……無抵抗の人間を殺すのは躊躇われるんだよね。


理華とハーパーに悪く思われちゃうからさ!


「殺す!」


空気が弾ける音が彼の足元が聴こえたと思ったら急加速し私との間合いを詰めてきた。速度はそこそこで回避は容易だったけど、私は彼の攻撃を受ける事にした。


ほら、私って優しいらしいからさ。一矢報いるチャンスを与えてあげようと思ったのよね。


「はぁあああッ!」


大振りのストレートを私とまだ数メートル距離があるのに放った。すると私の腹部に衝撃が走る。


「ぐぅッ……拳圧?」


腹パンを決められたみたいに内蔵に痛みを感じる。だけどそこまでのダメージではない。20分もしたら引いていくような痛みだ。戦いに支障はない。


「アイッ!」


ハーパーの悲鳴に近い声を聞くと焦ってしまう。そうだった……一人じゃないんだったわ。ハーパーが私の事を心配そうにしているしさっさと終わらせないと。


いつもは私一人で能力者と殺り合っていたから敵の能力とかを観察してしまう癖が付いちゃってたね。反省反省。


「……昼間食べた物がこみ上げてきたけど大丈夫だよ。」


私は振り返らずにハーパーにそう伝えた。敵がまだ攻撃の手を緩める気はなさそうだからね。


でも私の意識は目の前の敵より隣でブチギレている理華に向いた。こんなに凄く殺気立ってる彼女は見たことがない。


「……美世を殺すって?……死ねよお前。」


理華が右手の人差し指を男に向けると、私の能力で男が能力者であると示す赤色の表示が死体などを表す灰色の表示に変わる。


正に一瞬の事だった。


私には理華がどうやって相手を殺したかすぐには理解出来なかった。理華が指を指した瞬間男が倒れたという認識しか出来ない。


だけど男をちゃんと観察したら分かったよ。彼の額に小さな穴が開いていた。鉛筆の芯が入るか入らないかぐらいの穴だった。それが後頭部まで貫通していた。


憶測だけど理華はデスビームを出して男の脳を焼いて殺したんだと思う。光をあの穴のサイズまで収束させないと出来ない芸当だ。


彼女の能力は成長している。光を拡散させて広範囲に射程と効果範囲を伸ばせる事は分かっていた。そういう成長を遂げたんだと思いこんでいたけど違った。金属を溶かす程の熱をもたらす光を圧縮し収束させる事であれ程の能力に昇華させた。


私ですらすぐに理解出来ない程の発生とデスビームの貫通速度。人体を一瞬で貫通するレーザーなんて物はまだ誰も作り出していないだろう。つまり誰もが予想外の攻撃。初見殺しとしては最強の能力だ。


「……今の私でも避けられないし防げないよ。」


「今のはリカがやったんですか?指を指したぐらいしか分からなかったです。」


ハーパーも突然の事で状況を飲み込めていないようだ。あの男が死んだかどうかすら分かっていない。


「……ついカッとなって殺ったけど、私今のどうやったんだろう……。」


無自覚で殺ったの!?逆に凄いね!?


あの能力の使い方を無意識に出来たのなら彼女の潜在能力はハッキリ言って未知数だ。今のを連射出来たら先生以外の能力者全員に勝てるんじゃない?


「私越されちゃったかもな〜。デス・ハウンドの称号あげるよ。」


「え、いらない。」


素のいらないだった。即答だった。


「あ、あの。これからどうします?ここに居ます?それとも移動しますか?」


ハーパー的にはここに居たくはないだろう。私も嫌だ。だって暑いもん。ここの室内温度が軽く40℃は行ってそうだ。汗がじんわりとかいてきて喉が渇く。


「まだ地下の方に階があるからそっちに向かおう。」


私は下方向の方に意識を向けると地下にまだ空間がある事を認識した。多分地下に行くほど重要な階層になると思うけどね。この際行けるところまで行こうと思う。


それからは暫く探索が続いた。そして不自然なほど人が居ない事に私達は途中で気付く。敵さんはとっくに避難していたらしい。でも避難したのはついさっきのようだ。デスクの上に飲みかけのコーヒーが置かれている。


私達はそれからもどんどん下の階層へ降りていき職員や能力者を探した。しかし見当たらない。私の能力で主要な通路や階段をマッピングしているから、私達が通った後に逃げ遅れた人が通ればすぐに分かるんだけど誰も引っ掛からない。


「もう逃げたんでしょうか。誰も居ません。」


「ハーパーはここのどこら辺に居たの?」


「分かりません……移動の際は目隠しに耳栓をしていていつも同じ部屋で過ごしていましたから。」


ハーパーの待遇を聞いてちょっと殺意が湧く。左手がワキワキと動き出すから抑えるのにも一苦労です。


そして私が早く敵出てこいやと思いながら理華の方を見ると理華もかなり怒っているようだ。怒りが一周して感情が消えた表情がかなりホラー。


「この階で地下4階だよね。広いのに何も無い。何かが置かれていた形跡があるけど。」


大きな機械が置かれていたと思う。それに部屋も沢山あって人が寝泊まりしていた形跡がある。ここの階層は何に使われていたのだろうか。


「私達が襲撃してからそんなに時間は経っていないから元々どこかへ持ち運んでいたんだよ。」


「データはこちらで押さえていますから設備などを移動されたとしても、すぐにミューファミウムが活動し始めるということは無さそうですけど……。」


「そもそも人が居なければ研究は出来ない。出資者も殺したし先生が逃げ出した者達を処理してくれている筈。私達は居るかもしれない能力者を見つけよう。理華に瞬殺された彼みたいな能力者がまだ居るかもしれないし。」


そんな話をしていたら地下5階へと続く階段を見つけた。ここの施設は侵入対策なのか階段の位置が階層によってバラバラだ。だけどどの階層も造りが同じで研究所や病院みたいな内装の為に迷いやすくなっている。


初めて訪れた者は絶対に迷うと思うよ此処。私だからこそ迷わずに探索が出来ている。


階段を降りながらそんな事を考えていると少しだけ雰囲気が変わったことに気付いた。それは理華もハーパーも同じようで辺りを警戒し始める。


「なんだろう……空気が……濃い?」


5階に降りると明らかに他の階層とは違う雰囲気に私は能力者がこの階層に居ると確信を得た。


「うん、そんな感じ。重たく感じる。」


「……嫌な感じです。私が通っていた大学を思い出します。教授の研究室前に立つとこんな嫌な気持ちになりました。」


分からなくもないような……全く分からないような微妙な感想を聞かされて反応に困った。確かに学校の職員室に入る前って変な感じだよね。緊張感とは別の何かがある。


「ふたりとも、いい加減に……」


理華が言い終わる前に私達は階段の方へ向かい“それ”から身を隠した。


「今のみんな分かった?何か来たよね?」


「分かりました!何かが来たの間違いないです!」


ハーパーも同意してくれた。間違いなく何かが私達に向けられた。


「……今のは、まさか。」


理華は一人だけその何かについて掴んでいた。

デスビームで殺されたベジータの能力は空気を圧縮し炸裂させて加速したり空気砲を飛ばしたりする能力で応用は効きますがパワーが足りません。


一般人相手には充分な威力ですけど美世が頑丈過ぎました。


因みに美世は力を入れると腹筋が割れます。シックスパックです。

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