攻防戦
書いててたのちい。一生こういうパート書いていたい。
ミューファミウムの非常用通路には爆弾が仕掛けられていた。これは侵入を防ぐ事とデータの持ち出しを防ぐ為に予めに仕掛けられていたもので、管理室から遠隔操作で起爆することが出来る。
「非常用7番通路爆発成功。カメラも破壊されましたが近くに戦闘員を待機させていますので肉眼での報告を流します。」
戦闘員のヘルメットに付けられたカメラ、マイクの映像と音声がモニターに反映される。
「こちらアルファ部隊、煙が酷く視認出来ず。瓦礫が落ちて通路が塞がられている。」
先行していたアルファ部隊から報告が管理室に響き渡る。隊長の声以外にも瓦礫が落ちる音やボォーンっといった雑音が混じり、現場の臨場感が音声だけでも良く伝わってくるようだった。
「こちら管理室了解。そのままアルファ部隊は待機。ベータ、ガンマは直ちに現場へ急行してください。デルタは他にも侵入してくる可能性があるので直ぐに動ける様に後方で待機。」
オペレーターの女性が規定通りに指示を出した。この場の最高責任者であるビリー・マッケンはただモニターに注視し命令は出さない。彼は状況を精査する必要があり、あれやこれやと口は出さない。この場に居るオペレーター全員はちゃんと自身のやるべき事をやっている。彼も彼がやるべき事をやるだけだ。
「アルファ了解。待機しつつ観察を続けます。」
「ベータ部隊急行しています。」
「ガンマもベータと同じく急行しています。」
アルファ、ベータ、ガンマの順番に報告が上がる。これは通信時に混雑を避ける為に徹底している形であり基本の流れだ。特にこのような切迫した状況では尚更であり特殊な状況下以外ではこの順番は必ず守られる。しかし管理室と1つの部隊との間の通信ならこの順番は守られなくても良い。
「司令、現在非常用電源に切り替わっておりますが1時間程で優先順位の低い電源から落ちます。」
前に電源共有を確認し停電原因を探っていたオペレーターからビリー・マッケンに対し報告が上がる。
「優先順位の低いものは何だ?こっちで決められるのか?」
電灯などの照明が落ちるのは避けなければならない。相手は探知能力者だ。向こうが有利になるような事はあってはならない。現場優先で考えるのが正解である。
「お待ち下さい。……最初に落ちるのはこの施設内に取り付けられた照明です。非常灯に切り替わるようです。」
「それはマズい。研究の設備に関しての電源を先に切れ。そっちの方が電力が掛かっているだろう?」
「……よろしいのですか?」
「お前はわざわざ聞き直さないと命令に従えないのか?」
酷く冷淡な声がビリーの口から漏れる。オペレーターの女性は慌てて分電盤などが置かれている電気室に連絡を取った。
この施設は地下5階までありこの管理室は中間の3階にある。全体的の敷地面積階層によって違いはあるが大体45000平方メートル。それが5階分もあるので相当な大きさだ。
「ふん……お前達、長期戦になる覚悟をしておけ。応援が来るまで籠城しなくてはならない場合、電源が切れたら敵はこの部屋まで攻めてくるぞ。」
ビリー・マッケンはまだデス・ハウンドが生きていると確信していた。能力者とは理不尽な存在である。特にデス・ハウンドはこの世の不条理を体現したような存在だと認識している。
あの時の戦い、衛生から監視していた彼が見たものは正に不条理。映像ではなく写真で画像だけだったが、彼女に機関銃が撃ち込まれている画像を見た時は殺ったと確信した。だが次の画像では機関銃が破壊され装甲車も破壊されていた。その後はもう悪夢のような画像が続き船が沈没させられた時には目眩がした。
しかもだ、奴は来週には普通に高校に通っていたのだからそれを知った時には思わず笑いが出たものだ。
「奴は必ず生きてる。警戒を続ける。何もなくても半日は待機させると部隊に伝えろ。」
「は!」
ビリー・マッケンの予想は当たっていた。あいの風達は無傷のまま瓦礫に押し潰されることも無く塞がった通路の前に立っていた。
「まさか爆発させて物理的に塞ぐなんて……あいの風が爆弾に気付かなかったら危なかった。」
「私の能力は能力者を探す以外にも物体がどこにあるのか探すのにも向いているんだよ。わたし落とし物をしたり捜し物をあっちこっち探した事も無いんだよね。」
通路をマッピングする際に私は通路の壁の中、天井、床の下にある空間を見つけていた。ほとんどが配線や配管が通っていただけだったけど、明らかに毛色の違う箱のようなものが等間隔で置かれていた時にピンと来たよ。
その時に私は理華にお願いして自分達の姿を残像のように創り出してもらった。だけど同時に私達の姿が2つあるのは敵だっておかしいと気づく。でも理華は上手く巧妙に能力をコントロールしてその問題を解決した。
私達に残像が重なるように創り出してから私達の姿を不可視化させて残像は私達の8メートル程度前に向かわせた。これで敵は目測を誤り私達の居ない位置で爆発させてしまったのだ。
でも流石に密閉された場所で爆発するもんだから衝撃と熱がこちらまで来たから私はバリアを張って全てを防いだ。ハーパーに私の能力を見られてしまったけど、彼女を派閥に入れるのだからこの問題は避けられない。
「あ、あのアイ?今のって……。」
爆風や爆音が見えない壁に阻まれたら気になるよね。でも今は話せない。敵の応援が来るまでに終わらせないといけないから。
「これが終わったらちゃんと話すよ。今は任務優先。ちゃんと切り替えてくれないとハーパーを連れて前へ進めない。」
ハーパーなら分かってくれる。優先順位は決まっているから。
「……分かりました。今は任務優先ですね。」
ハーパーは心の中で自分の気持ちをリセットし論理的思考に切り替えた。ここで問答するのは時間の無駄だと自身の感情的な考えを切り捨てる。
「じゃあ……本当に行くよ?瓦礫は5メートルぐらい続いていて敵はその先に武装して待っている。数は20人、武器は催涙弾を撃ち出す銃が5つ。催涙弾って言ったけどこれは敵の脳の活動を低下させる無色透明無臭のガスだから絶対に吸わないで。」
前に東京で使われたやつと同じ形状をしているから間違いない。私達は口元だけをカバーするガスマスクを着用し、敵はいつでも撃ち出せるように構えている。
敵は私の事をある程度は意識してこの布陣を敷いているのかもしれないけど、私も前にお前達と戦った経験を活かし準備はしてきた。ここからは情報と情報の押し引きに武力と武力とのぶつかり合い。どれも負ける訳にはいかないんだよ!
「先ずはこの瓦礫が邪魔だよね……理華、私がこれを退かしたら……」
「分かっている。」
理華はガスマスクと別にゴーグルを着用した。このゴーグルはサングラスように黒く塗られて遮光されているがどちらかというと溶接になどに使われる溶接眼鏡に近い。これを付けると殆ど光を感じないのでこの明かりが消えて非常灯が点いた通路では全く意味をなさない。寧ろ歩行するのにも支障がきたしている。
しかしあいの風はその様子をみて安堵した。そしてそのまま能力を行使する。
「【再発】act.念動力」
コンクリートがまるで発泡スチロールのように、鉄骨がまるでダンボールのように吹き飛ぶ。しかし本来であればあり得ない。あいの風のサイコキネシスの力が凄まじくて総重量数百キログラムにも及ぶ瓦礫が風に吹かれたかのように見えているだけだ。その証拠に瓦礫が廊下にぶつかり合い耳を劈くような音が廊下に轟いている。
そしてその音はあいの風達以外にも届く。アルファ部隊は自分達に襲いかかるような瓦礫を目にして後退する。
「て、撤退!!全員撤退ッ!」
観察し続けていから分かる。あの瓦礫を退かそうものなら機械を使わないと動かせないということを理解していた。それなのに瓦礫がまるで生き物のように悲鳴を上げながらこちらへ向かって来たのだ。厳しい訓練をくぐり抜け様々な戦場を経験した男達が我先にと後退し、状況は正に阿鼻叫喚の様子だった。
ちょっと待って。(戦闘パートに)入ってないやん!どうしてくれるの?
(戦闘パートが)楽しみで読んだのに…はぁーつっかえ。




