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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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動き出す猟犬達

今日はずっとトイレの住人になっていました。寒くなりノロウイルスが流行っているので皆さんも手洗いを忘れずに。

ミューファミウムの研究施設、つまり本拠地があるとされる場所は分かっていた。それはカルフォルニア工科大学にある地下の施設。


されているというのは状況証拠しかないからだ。大学に地下施設があることは運び入れられる物資の量で推測されており、物資の大きさ、量から相当大きな地下施設があると思われる。しかしいつからその地下施設があるかは分かっていない。工事などの様子が確認されていない所からかなり前から作られていたとしか分からない。


その地下施設へ向かう為には大学の敷地内に侵入しないと行けないが、先ずは監視カメラと警備員達をくぐり抜けなければならない。それに加え、地下施設へと続く入口は厳重な扉で守られており並の能力では破壊する事は不可能。


そういう状況下の中で美世、理華、ハーパーの3人はカルフォルニア工科大学の敷地内に居た。比較的にここはまだ大学生が多い地区で入口とはかなり離れている場所である。


(これ……絶対に間抜けなビジュアルしてる。)


(言うな。)


(もっと良い方法を思い付けば良かったですね。)


3人は縦に並び前の人の肩の上に手を置いて芋虫のように移動していた。このビジュアルは大変目立つ筈なのだが周りの大学生達は気付いた様子はない。夜なので暗いというのもあるが、理華の能力により不可視化しているおかげである。


(サーモグラフィーには引っかかるからね。)


(探しているけどそれらしきものは視認出来ないよ。)


理華の能力では光の膜を創り出しそれを自分達の周りに囲む事で不可視化している。だが自分達から発せられている遠赤外線はこの膜を貫通して外へ向かって行くので、サーモグラフィーでは彼女達の位置がすぐに分かってしまう。


(そろそろ時間ですよ。)


ハーパーは自分の腕時計を見ながら作戦実行の時間を伝える。


(5.4.3.2.1……)


ハーパーのカウントに合わせて大学内の電気の供給が止まり停電が発生する。周りにいる大学生達も不審に思いキョロキョロとしだしたタイミングでハーパーは能力を行使する。構内に残っていた大学生達は全員外に避難させる段取りだからだ。


(行くよ!)


美世の合図で不可視化の能力を解除し3人は全速力で走り出す。そうするとハーパーが遅れてしまうが問題はない。最初からこうすると決まっている一連の流れだからだ。


彼女達が走り出した目的は地下施設への侵入。しかし地下施設の入口へは向かわずに別の方角へ向かって行く。


彼女達も別にあの隊列でずっと待機していたわけではない。大学構内をずっと歩き回って周りマッピングをしていたのだ。彼女達はずっと探し続けていた。地下施設へ続く通路を。


地下施設がどういう形をしているかは分からない。なので地上から地下に向けて美世が“視界”を飛ばし地下に続く非常用の通路を探っていた。そしてそれはもう見つけている。地下20メートルの所に通路となる空間を発見していたので、その場所を目指し美世と理華は向かって行く。


「ここ!」


美世は舗装された地面に向けて能力を行使する。その能力は【削除(リボーク)】美世は怪腕を自分の腕と重ねるように出現させ地面を殴りつけた。そうすると大量の瓦礫が宙に舞い、そのあまりの衝撃に理華は目を瞑る。


「す、凄い……!」


その様子はまだ後方に居るハーパーも視認出来た。大量の瓦礫が爆発したように見えたので何事かと歩みを止める。


「アイの……能力ですよね?」


彼女はあいの風が探知能力者としての面しか知らないのでどうやって今の事象を起こしたのか理解出来なかった。美世もオリオンの居る所で自身の能力の話は出来なかったので話してはいない。


だが、事態は動いている。この衝撃による揺れは地下にあるミューファミウムの本拠地にまで響き渡っていた。





「これ揺れはなんだ。それに地上の停電はどうなっている。報告はまだか。」


男はコーヒーの入ったコップを持ちながら管理室の一番見晴らしのいい自身のデスクに向かう。この男はここの地下施設の警備を任されている責任者で名前はビリー・マッケン。年はまだ41才と若いがここの警備を任される程の優秀な軍人である。


「停電は電線の切断が原因と思われます。ここ以外にも停電している地区があるそうなので……ここを狙ったものなのかは分かりかねます。」


オペレーターの女性が電気の供給を探って報告を述べるがビリー・マッケンは報告に不備を唱える。


「憶測はいい。事実だけ報告しろ。監視カメラは!」


「動いているのは我々のものだけで入口付近の周りしか見えません。敵や異常は視認出来ず、このまま監視を続けます。」


10人にもなるこの監視体制は例え夜間であっても人が減ることは無い。24時間体制でここの警備を行なう。この地下施設には研究者が多く在籍しておりそれ以外に彼らのような警備を担当している者も居る。


「揺れはなんだ?地震ではない。爆発時の振動に酷似している。」


自身の経験則から爆発物が大学の敷地内にて使われたと考える。テロの可能性もある。もしそうなら連邦警察に連絡し事態の収拾を図る。


しかしまた同じような振動が響き渡る。コップに注がれているコーヒーに波紋が生まれた。


「……警戒レベルを上げて研究者には避難を開始させろ。データは破棄だ。」


「宜しいのですか?まだ敵の姿が確認出来ておりませんし上に判断を仰いだ方が……」


部下である男が確認をした方が良いと提案する。


「今の最高責任者は私だ。ここは破棄する。今までのような小競り合いでは済まないぞ。能力者達を起こせ。」


こんな図太い攻めをしてくる所など1つしか居ない。


「“組織”か。久々に戦争が出来るな。」


振動は続く。それはどんどん大きくなっていき地下施設全体に響き渡る事で事態の深刻さを全員が理解し始めた。





「はあ……面倒い。」


殴るのは飽きてきた。もっと効率の良い方法で地下へ侵入しよう。


「まだまだ浅いぞー!」


地上から理華の有り難い報告を受けて私は少しだけ不機嫌になる。確かにまだ8メートルしか掘れていない。殴るのは予想以上に効率が悪かったようだ。


掘るか……なんか前にそれっぽい事をした気がする。何だったかなぁ……印象に残っているから結構インパクトがあったやつだよね。


そう考えていると上から瓦礫が落ちてきて私のすぐ隣の足元に転がった。


「あ、ごめん!」


理華が穴を覗く際に落としてしまったようだ。


「大丈夫。能力で落下軌道は分かって……」


落下軌道……落下…………あ、あの実験の時だ。水の軌道を固定して男の顔に向けて落としたら地面を貫通し続けたんだった。これを利用すれば簡単に落ちれる。


「ありがとう理華!すぐに穴開けられると思う!」


「え?えっと……どういたしまして!」


ちゃんとお礼に対してこういう反応が出来る彼女はかなり育ちが良い事が窺える。ご両親の育て方が良かったんだね。ありがとう理華のお父様お母様、人の着替えをガン見する娘ですけどこれからも仲良くしていこうと思います。


「この足元にある瓦礫で良いか。」


瓦礫を持ち上げて地面に落とす。そうすると瓦礫が地面に接触しても落下速度は落ちる事は無くそのまま落ち続けていく。たった2〜3秒で目的の通路まで瓦礫が落ちて行き私はそこで能力を解除した。


瓦礫によって開いた穴は人が1人分入るぐらいの大きさで女性なら簡単に通れそうだった。


「ハーパーを連れて行こうか。」


「……お前建築系に就職したらどうだ?」


理華は一連の私が行なった能力の事象を見てそう呟いた。


「壊す専門だから建築は出来ないかな。」


ミューファミウムへの入口は出来た。後はこの施設を破壊し尽くして敵を殺すだけ。私の得意分野だ。

ついにミューファミウムの本拠地に行きました。やっとですよやっと。


ここからは人物の内面を描く事より人物が見ている体験している外側の描写を多めに描けていけたらなと思います。


戦闘描写も多めになりますのでお楽しみに!

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