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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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潜入する光

理華単体のパートで1話構成です。

正直な話、私自身が驚いた。能力を使って自分の姿を消すのは今まで何度も何度も行なってきたから無意識的に行なえる。だけど今のは経験したことのない感覚だった。


能力を使う時は脳を100パーセント使っていると実感出来るぐらい活性化されるけど、今回の場合は余裕を感じている。今までより素早く能力を行使出来たのに余裕があるなんて信じられない。多分あの一件が原因だと思うな…。


能力を素早く行使出来るように能力の訓練は小さい頃からやっていたけど、正直なところ私はあまり能力を使う事は好きではなかった。競争、才能、様々な要因があるけど一番は劣等感を感じてしまうのが嫌だったからだと思う。


組織の中には自分より優れた能力者の方が多かったし、私の能力は戦闘には不向きだったから尚更そう思い込み自分の限界を決めてしまっていた。


でも違った。美世が本当に殺されると思ったら自分の奥底にある何かが溢れ出した。これが何なのか私は知っている。それはベルガー粒子であり私の能力そのものだった。


だからなのかな…、能力を使う事が前より面白く感じる。新鮮な感覚で気分が乗るって感じ。ヤバいな…任務中なのに…私、楽しい!


計画では警備室には見つからないように向かわないといけないのに全速力で廊下を走ってしまい足音を響かせてしまった。でもこの高揚感は止められない。だって早く自分がどこまで出来るか試したいから!


(ここだ。)


潜入前に見た見取り図通りの場所に警備室のドアがある事を確認する。室内は慌ただしく人が動いている気配がした。客が急に帰り出したから不審に思っているのだろう。雇い主であるターゲットに連絡されると面倒になる。ここで彼らを無力化するのが私の仕事だ。


「…新しい能力、あなた達で試させてもらうから。」


ここの建物は古い建造物だけど設備自体はかなり厳重になっていて、一応能力者の襲撃を想定した造りになっているらしく防犯カメラも振動計もサーモグラフィーも設置されている。警備員にも銃の配備をしているし手榴弾や爆薬の類いも持たせられているだとか。相手にとって不足はない。


今回は時間との勝負だ…さっさと決めてしまいたい。


廊下を照らす明かりから発せられる光を指先に集め警備室のドアへ収束させる。そうすると金属で出来たドアが高温になり赤く発光し始める。


「…おい、なんか焦げ臭くないか?」


ドアの向こうから声が聞こえたけど無視してドアを破壊する事に集中した。ドアも赤く発光した箇所から白い煙が立ち昇り、金属部分はドロドロに溶けて鍵の部分がガチャリと音を立てた。


「な、なんだ!?」


私はすぐにドアを蹴り飛ばして開き警備室へ侵入する。一番近くにいるゴツい男の所まで向かう途中に私はあえて能力を解除し自分の姿を晒した。一方的に制圧しては自分の能力を試す事が出来ない。


…それに、面白くないからね!


「お、女!?ぐはっ。」


飛び膝蹴りを男のみぞおちに決めて前側へ吹き飛ばす。その時に後ろに居た男二人を巻き沿いにして時間を稼ぐことに成功した。その間に他の相手をしないと…


「し、侵入者だっ!捕えろ!発砲は禁止だ!跳弾の恐れがある!」


「銃は無しか。…つまんないなぁ。」


自分の口から出たとは信じ難い言葉だった。だけどそれは私の本心からの言葉だった。私は…この状況を楽しんでいる。


ドロドロに溶けて壊れたドアはまだ熱を持っていて発光していたので、私はその光を自身のドレスに収束させた。右足の太腿から足首の位置まで1つの線状に光を走らすとドレスのスカート部分にスリットが生まれる。そうするとチャイナドレスのように足が動かしやすくなった。


足首まであるドレスでは動きづらいからね。こっちの方が私好みではある。…こういうのは美世も似合いそうだね。


「コイツ、能力者か!?スタンガン用意!」


警備員達が腰に付けていたバトン型のスタンガンを取り出し構える。…面白くなってきた。敵の数は事前情報通り警備室に5人。全員筋肉隆々で威圧感があるけど何てことは無い。この中には能力者は居ないのは知っている。…残念ながらね。


「シッ!」


右足から放たれた水平蹴りがスタンガンを持っている男の手首に直撃し男の骨が砕ける。男は蹴りに反応出来ず無様に悲鳴を上げてスタンガンを手放した。私はそれをすぐさまにキャッチし男の首元に押し付ける。


「フグッ!?イ゛イイイ…!」


首に当てられた事で呼吸音と締めたようなうめき声が混ざりあったような音を鳴らして床に転がり落ちた。…1人目、次!


「この…!」


スタンガンを持ったもう一人の警備員がナイフを扱うようにコンパクトに腕を振るう。この一連の動きだけで彼が元軍人だった事が良く分かる。とても良く訓練された者の動きだったから。


しかし、今の私の反応速度に対してあまりにも遅すぎる。隙の少ない攻撃だったけど能力者相手では反撃するには十分過ぎる大振りだった。


敵の攻撃を避ける為に右足を一歩退くだけで攻撃は避けられる。そして左足を軸にしたまま左腕を前に押し出すように腰を回し掌底を男の顎に撃ち込む。男の前歯の上の歯と下の歯がガチッとぶつかって根本から砕け散り、顎を揺らされた影響で脳も揺さぶられて男は白目をむいて膝から倒れ込んだ。


これで…2人目。あと3人!


「囲んで押し倒すぞ!」


「「ああ!」」


さっき膝蹴りを食らわせた男と巻き添えを食らった男2人が立ち上がり私を囲む。…感触的に防弾チョッキを下に着ていたのは分かってたけど、この状況下で着ているのは驚きだ。防弾チョッキはかなり重い。だから銃撃戦を始める前に着たりはするけど普段から着用することは普通はしない。ここの警備体制はかなり厳しくされていることが伺えた。


だが、悲しい事に私は今回銃の類は持ってきていない。だからその防弾チョッキはただの重りにしかならない。私は頭部辺りを重点的に狙うしもう胴体は狙わないから。


「オラッ!」


後ろへ回った男は無言のまま距離を詰めてきて左正面に居る男は分かりやすく大声を上げて突っ込んできた。恐らくだけど彼が叫んでいるのは注目を集める意味だろう。本命は後ろの男だ。彼が私を背後から襲いかかり残った一人はフォロー役だろう。本当に良く訓練されていると思う。


だけど私も幼い頃から訓練を積んできてるんだよ!能力者を相手にした想定でね!


右手を前に出し左手を後ろへ向けて同時に2つの能力を行使する。前から突っ込んできた男の周りに天井から照らし出される蛍光灯の光を収束させて直径50cm程度の光球を創り出した。その光を男の頭に被せるように動かすと…


「な、なんだっ!?何も見えない!フラッシュバンか!?」


彼からしたらそう見えるだろう。しかしフラッシュバンと違うのは光源がある限りその光球は消えない事。彼はもう目を開けられないだろう。もし開けてしまうとあまりの光の強さに目を潰してしまう。


隙だらけの彼に近付き私は男の股間を思いっ切り蹴り上げた。体重が100kgもありそうな男の身体が軽く浮き上がってそのまま後頭部から倒れ込む。


…これで3人。あと2人!


「マイクっ!こんの悪魔が!!」


後ろに居る男が動き出そうとした際に目を見開いたタイミングで私は予め左手から生み出した小さな小さな光球2つを眼球の中へ侵入させる。あまりに小さく弱い光だったので誰もこの光球には気付かなった。だってこれより大きな光球が前に居る男の周りに現れたからね。


「な、何だこれ!?目を瞑っても消えねぇ!?」


眼球に侵入した光は小さな光だけど彼の視界を完全に奪うには十分な光量だったみたい。瞼を閉じた所で眼球内部に光源があるから目をくり抜くか、私が能力を止めるまでその光に目を眩ませる事になる。


「これで…4人目!」


回し蹴りを放つと男の側頭部に決まり、そのまま壁の方まで吹き飛んで行った。…あと1人!


「…こ、降参だ。俺は抵抗しない!」


「…それじゃあ面白くないでしょう?」


私は自分とそっくりの等身大の光の塊を創り出し彼の方へ飛ばす。人が見たらまるで私が急に2人になったように見えるだろう。その光の塊が男の視界に埋まるタイミングで私は彼の後方へ素早く移動しスマートウォッチを操作して警備室の制圧完了の報告をし始める。


「うわあああ!?さ、触れねえ!?」


男が必死に腕を振るい私を遠ざけようとするがただの光の為、触れる事は出来ない。だけど私が創り出したこの光は熱を持っている。


「あ、熱い!の、喉がァ…!」


光は彼の皮膚の表面、口内、そして喉を焼き身体の水分を消し飛ばす。男は急激な水分不足により見動きが取れなくなりその場に倒れ込んだ。


「…簡単、過ぎたかな?」


理華は誰も動けなくなった警備室の椅子に座りながらそんな感想を漏らして監視カメラの操作を始めるのだった。

もうただの無能力者では彼女には勝てないですね。

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