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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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パーティー会場へ

どんどん進めていきます。ガンガン行こうぜ!

令和の時代で絵に描いたようなパーティーが開催されているとは夢にも思わなかった。映画だけのお話かと思ったけど上流階級の人達はこうやって暇を潰してるのかな。知らんけど。


「まさか無人島の次はパーティー会場に潜入とは…。」


「ぐだぐだ言わない。ここで諸悪の根源を絶たないと…あれ、ハーパーは?」


「気の弱そうな所を突こうと男達に群がれてるよ。後で助けに行ってくる。」


ハーパーは軽薄そうな男性3人に囲まれて今にも死にそうな顔をしていた。ハーパー可哀想…。誰か早く助けてあげて。


「私達も動かないとハーパーみたく声を掛けられそう。ここから早く移動した方が良い。さっきから腰と尻の所に視線を感じて…。」


私にだけ見える角度で不快感を隠さない顔をする理華。潜入しているから目立つ事は出来るだけ避けないと。今の理華の表情はある特定の男性達にとってはご褒美になりかねない。因みに私にとっても大好物です。


「知ってる。後で殺しに行ってくる。」


私も胸や顔を劣情を隠せていない目で見られているから不快指数が跳ね上がっている。しかも男性からだけじゃない…女性にまで。40〜50代の女性からそんな目で見られたら普通トラウマになるからね?止めてよ本当に…。


「今回の件で引き継ぎされた支部の人達は人使いが荒いね。いきなり潜入して来いってさ。」


「向こうも焦っているんでしょ。襲撃されて面子丸潰れだもん。結果を残さないと内側から潰されちゃうんじゃない?」


正直な話、そんな面子とかどうでもいい。私にとって重要なのは今回の任務だけだ。


先日、強奪したデータを回収し解析した結果、研究データと別にある名簿が見つかった。その名簿にはミューファミウムの出資者達の名前が載っており、ここを潰さないとまた別のミューファミウムが作られてしまう。そう考えた上層部の判断により、私、理華、ハーパー、オリオンの4人がこの会場へと派遣された。判断が早すぎる。相談もなにもなかったよね。


まあ仕事なので断れるわけもなく潜入し暗殺する任務を課せられた。標的はこのパーティーの主催者で名簿の一番上に載っていた人物でありミューファミウムを裏から操っていたと思われる出資者。良くは知らないけど世界ランキングに載るほどの金持ち。色んな事業に出資して非合法な事にも手を付けているマジもんの悪者。悪者過ぎて誰も手が出せないレベル。


そんなこの世のゴミみたいなターゲットを今夜中に始末するのが私達に命じられた任務っていうわけ。少しぐらいこちらの意見も聞いて欲しいものだ。昨日今日でまた別件を片付けないといけない。全くどうなってんだ私の夏休みは。初日から敵に追われてカーチェイスし、その次の日には無人島へ行って魔女と騎士と戦い理華が覚醒、そして次は綺羅びやかな場所でパーティー…。


あれ、私の夏休み…中々の塩梅なんじゃない?


「それにしても凄い所…。一体今日だけでいくらのお金が使われているのやら。」


理華がそんな事を独り言で溢す。私も全く同意見。こんな場所があったなんて信じられない。まるでセットで作られたような建物、高さは2階ぐらいしかない古い建造物だけど趣向が凝らされている。屋根には女神像が建ってたり床は古い木の板張りだけど凄く手入れされている。ワックス掛けも丁寧にされていて引っ掛かりも滑り過ぎもしない。しかも板がかなり古くて色が黒く変色しているけど、床が凹んでいたり盛り上がっていたりもしていないから管理が行き届いているのが分かる。


私の横には暖炉もあるしその上には金持ちの家に大体存在している皿が並べられている。実物初めて見たけどなんで皿飾ってんだろう。やっぱり高価なのかな?こういうちょっとした置物1つで部屋の印象も変わってくる。


ぐるりと見回すともっと良く分かる。インテリアのセンスが抜群でどこの位置から見回しても絵になる。スマホでクルクル回りながら撮影したいぐらいだ。どこの角度からも映える。


だけど凄いのは部屋だけじゃない。外に出れば広い庭と建物外装が良く見える。石を切り出してブロック状にしたものを積んだ壁や地面に花があちらこちらにあしらってある。ラピュタで見た事あるよこれ。


(人が居ない時に来たかったなここ。観光目的で来たかったよ。)


そんな素晴らしい会場に100人を超える参加者と20名のスタッフ達。こんな中に一般の女子高生たる私が居るのだから浮いて仕方ない。ドレスコードなんて初めてだし着られている感が凄い。理華は何回かこういう場所に縁があったらしく落ち着いている。私は任務の事を考えていないと頭がおかしくなりそうなぐらい落ち着いていない。誰か助けて…。


「この格好良くないのかな…。」


私が着ているドレスは黒地のワンピース型のドレスに刺繍があしらったレースが上から重なった形でとてもスリムな形状をしている。靴もピンヒールに近い形状でとても高い。低身長気味の私に合わせた形なんだろうけどこれがとても動きづらい。だから適当なテーブルの上に肘をついて飲み物を楽しんでいる風に構えている。


「ベリーベリー似合ってるよ。」


理華は私の上から下を舐めるように見回してだらしのない笑みを浮かべる。理華は良いよね〜私の衣装を考えて準備したからさ。


「理華ってさ、結構何でも出来るよね。和裁士さん達の所で勉強してたなんて知らなかったよ。」


この裾の所とか肩幅とか彼女が修整してくれた。急に任務が決まったから衣装の準備が間に合わなかったんだよね。本当はこういうドレスは衣装合わせしてから調整しないとなんだけど理華が1人で全てやってくれたのだ。針を持った彼女の手捌きには私とハーパーは驚かされたよ。


「普通はするの。美世…あいが途中から入ってきてすぐに処理に行ったから。」


「へーそうなんだ…。」


「…どこ見てるの。」


理華が身をよじって恥ずかしそうに頬を染める。ドレスといえば理華も着ているけど今の理華は…正直ヤバい。私が男だったらここで告白して振られている。それぐらいの魔力を秘めている。目線が胸元に行ったっきり帰ってこない。お化粧をした理華のちょっと普段とは違う魅力的なお顔と中々のお胸の間に発生したバミューダトライアングルで遭難中。


着やせするタイプじゃったか…。


理華のドレスは深紅のドレスで私みたいに身体のラインが出るからとても目を引く。出るとこは出て引っ込む所は引っ込んでいるバランスの取れた女の子の身体つき。まだ大人への階段を登っている途中と分かるから尚更ヤバい。見ているだけで何か、とてもいけない事をしているような気持ちになる。


私へのヘイトを分散させる為って言っていたけど駄目よ。嫁入り前の子がこんな格好いけません!破廉恥です!でもありがとう!ちょーカワイイ!!


「ごちそうさまでした。眼福眼福。」


ちゃんと食べたあとにごちそうさまを言うのはマナーです。


「…親戚のおじさんと同じ事言ってる。」


「どうしたのカナ?飲み物イル??」


「止めて、本当にそんな事言ってるから今度会ったとき笑っちゃう。」


「分かったよ。そろそろハーパーを迎えに行こう。」


ハーパーの腰に手を当ててニヤニヤしているあの男の足をこのピンヒールで潰しに行かないとね。私はハエのように群がる男共を巧みな話術を駆使して駆除に成功した。パートナーが見てますよって言うだけで消えるからハエよりも知能が高そう。


「た、助かりました〜。でも、置いて行くなんて酷いですよ〜。」


「ごめんごめん。見失っちゃって。それでさ…」


非接触型探知能力者が言っても絶対に信じてもらえない言い訳No.1の言い訳を言う私。理華なんてジト目で何かを訴えかけてくる。だけど私は気にしない。このままゴリ押す。


「首尾の方はどう?」


「え、えっと…パーティーが始まってから能力を浸透させていますのでいつでも大丈夫ですよ。タイミングはアイと理華に任せます。」


良し良し…。いつでもパーティーしても良いってことね。主催者の男は遅れて来るって話だし、まだ待機で良いかな。


「…何で逃げないんだろうね。データが行方不明になっている時点で自分の情報が敵対組織に知られているって考えても良さそうなんだけど。」


「…逆、じゃないですか?怪しまれないように通常通りにしていると思います。このパーティーって結構前から通知している筈なので急に取り止めにして身を隠したらそれこそ疑って下さいと宣伝しているようなものじゃ…。」


おーなるほど。ハーパー頭良い。流石大学生、その思考回路を他にも使ってあげて欲しい。


「顔に出てるぞ。」


顔に考えている事が出ていたらしく理華に指摘され私は居心地の悪い気持ちになった。ゴメンねハーパー。全く悪気が無かったんだよ。だからそんな目で私を見ないでよ。

感想ありがとうございました。いつも読ませてもらってます。

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