裏切りの一手
この作品の刺さる人に刺されば良いという作風。作者として嫌いじゃないです。
く、空気が死んでしまった。流石に私の能力でもこの空気を生き返らせる事は出来ない。どうしたものか……
「……死神に殺された私達を生き返らせてまた死神に殺されろって言ったよね今の?」
メリッサさんのご指摘は間違っていない。殺される確率の方が高いからね。
「それでまた生き返らせてまた殺させるのでは?ゾンビみたいに何回もアタックさせればいつか勝てるって思ってるんじゃない?」
サラ……結構エグい戦法を思い付くな。私ですら考えなかったよそんな方法。
「自分の命を粗末に扱われるのは慣れてるが私は嫌だね。殺したかったらここで殺せ。私は抜ける。」
ボーちゃん……そんな事言わないでよ。ちゃんと考えがあるから。川の中にある石を拾わせたりしないから。
「絶対にまた私から殺されるんでしょ?嫌だな……。」
ステファニーは最初に殺された事を引き摺っていた。記憶が無いのに良く引きずれるなぁ。私には無い感覚だ。
「勝算があるんですか?」
「「無い。」」
シークの質問にルイスとラァミィの声が重なる。この2人はなんだかんだ息が合う。
「……私もコイツも同じものを見せられたと思うけど死神は正真正銘の化け物よ。」
「やっとあの見えない死神の正体を知れたけど……知っただけで私達にはどうしようもない。まさかこれ程の能力なんて……。戦うという土俵にすら立たせてもらえないじゃない。」
流石のこの2人もショックが大きかったらしくかなり消極的な意見を述べる。しかしこの2人は大きな勘違いをしている。
「別に戦うと言っても色んな戦い方がある。別にあなた達に死神と直接戦えなんて言うつもりはないから。」
「……どういう事?」
食いついてきた……。彼女達も分かっているのだ。いずれ戦わなければならない事を。彼女達は死神と接触してしまったのだから、普通に暮らすことは出来ない。自由を手に入れるには死神を倒さなければならないのだ。
「私は仲間が欲しい。様々な能力を持った能力者達が。あなた達には能力者を探してほしいの。」
「なるほど……。あなたが死神と直接戦うのね。私達は射程圏外から支援する形で立ち回り援護する。悪くはないんじゃない?これしか手が無さそうだし。」
ルイスは納得がいったようで前向きに考えてくれた。
「あぁ、そういう事……。私達に求めるものは海外での伝手ね。あなた自身はまだこの業界に入って日が浅いからアングラな部分は知らないだろうし、その点どこにも所属していない私達に適任ね。」
ラァミィは私の言葉の裏まで読んで具体的な内容を言い当てた。すっごいなこの人。私が共有した情報から組み立てにしても早い。
「話が早くて助かるよ。」
「おいおい待てよ。なんで乗り気なんだ?特異点の下につくって事だよな?私達の目的はどうなる!?」
ボーが立ち上がり反発心をあらわにする。彼女の立場からしたらそうなるよね。だから今回は私が譲歩しなければならない。
「あなた達の目的は分かっている。なんで私が必要なのかもね。協力関係を築くんだから勿論わたしも協力する。それでいい?」
「……お前、自分が言っている意味分かってんのか?私達に協力するって事は組織には居られなくなるぜ?私達と同じくお尋ね者だ。」
う〜ん……だから?って感じだ。
「私さ、組織にはあまり忠誠とか誓ってないんだよね。お金くれるし能力者の情報手に入るし知り合いが居るから所属してるだけで、私の目的に使えるから使ってるだけ。所属する事に固執なんてしてない。だから大丈夫だよ。」
思った事をそのまま告げると彼女の顔が固まる。まるで意味の分からないものを見た人間のリアクションだ。
「……イカれてんなお前。」
「知ってる。私は利益でしか物事を考えれないから覚えておいてね。利益にならないと思ったら切り捨てるから……、物理的に。」
「……気に入った。私はコイツの話に乗るぜ!」
猫のような見た目と性格をしてる。勝手気ままという言葉が良く似合う。
「勝手に反発して勝手に納得してんなよボー・ペティット。……はぁー何でこうなったかな〜。ルイスとラァミィが良いなら良いよ私は。」
サラも私の話に乗ってくれたようだ。そうでないと非常に困る。彼女達の協力をもらえないと普通に詰むからね私。このままで先生に勝てる訳ない。
「あ、そんな感じ?なら私も良いよ。」
メリッサはみんなが良いならという日本人っぽいノリで承諾してくれた。あとは……
「……こっち見ないでよ。分かったから……。私達の目的を達成するにも協力関係結びたかったし了解しましたボス。」
ステファニーには何かしらフォロー入れておかないとわだかまりが残りそうだね。殺したのは先生なのに……。
「私はラァミィに従います。あなたの言う事は聞きませんから。」
シークは結構警戒心が強い人なんだね。仲良くなるには時間がかかりそうだ。
「良し、それでいいよ。私の事は信用しなくていい。お互い利用し利用される関係が一番でしょうし……。」
「使い終わったら殺してお終いだもんね〜。」
サラの茶々が入ったけど私はそんな事は考えていない。良くあるパターンではあるけど。
「サラ達が悪い人では無いことは知ってるから何もしないよ。私が殺す対象は平穏な世界を創り出す為に邪魔になる奴だけ。」
「私……殺されたけど。」
ルイスのボソッと言った言葉に対しみんなが同じ思いを抱いた。
(((((((邪魔になる奴だし……)))))))
「生き返らせたでしょ?」
「この胸の所も直しなさいよ!あなたが空けたんでしょうがッ!」
「あなたの私服そんな感じのばっかりじゃない。男受けを狙った服装で外出してるんだから今更よ。」
ラァミィの援護射撃が飛んだ。なんて正論パンチ。
「今それを言う?関係ないでしょう!?」
「組織に所属している時、上司の男を寝取ったり同僚のベルガー粒子を奪って敵地に放置したりして組織に追われた事……もう忘れたの?」
暴露ミサイルによる援護射撃がルイスを襲う。ルイスは肩身を狭くして椅子に座り直した。駄目だコイツ……。
「あなた達のボス、今からラァミィだから言う事聞くように。」
ルイスは駄目だ。こんな奴を頭に置いて協力は出来ない。
「フフフ、ありがとう。精一杯頑張るわ。」
このラァミィの勝ち誇った顔!愉悦さを隠さずにルイスを見下ろしおる……!
「じゃああなた達の逃走ルートはラァミィに共有したから彼女に従ってこの場を離れてね。連絡方法も分かるよね?」
「ええ。連絡のタイミングは私達の方で良いのよね?……この計画大丈夫なの?私達が連絡せず裏切ったら?」
「私から逃げられると思っているのならどうぞ。そこら辺は7人でちゃんと考えて決めてね。」
ここで裏切るような奴は最初からいらない。協力者は欲しいけど別にコイツらでなくても良い。みんなの能力はコピーしたからね。裏切るような能力者は私にとって不利益にしからならない……邪魔になる奴は殺すだけだ。
「……ちゃんと連絡はするわ。そっちが連絡に気付かなくて、みたいなのは無しよ。」
不法侵入で捕まると悪いので早々に家を出た私達はその場で解散する形で別れる事にした。
「ねえ……。」
「何かしら。」
私が彼女達を急かして行かせたのに声を掛けて引き止めてしまったのは本当に申し訳ないんだけど、どうしても聞きたいことがある。
「その格好で行くの?」
彼女達は魔女のコスプレをしている。どう考えても不審者かYouTuberかヤクをキメた奴らだ。
「ここは自由の国よ。」
彼女達はそう言って夜の道へと消えていく。
………………え?納得してないんだけど?あなた達が見つかったら私ヤバいんだけど!?あっ!めちゃくちゃ目立つ格好のまま行きやがったよあのコスプレヤー共ッ……!
魔女の集会メンバーは結構仲が良いです。喧嘩するほどなんとやらです。




