光の柱
分かっていると思いますが作者は設定魔です。正直な話、設定を考えてストーリーを考えるのは好きなのですが執筆は苦手なので誰かに書いてもらいたいなーと考えながら毎日執筆しています。
これは…無理だ。それを見て最初に思った。あまりに数が多過ぎる。今の私では到底敵わない。
どうする?どこまで戻る?少し戻った所で焼け石に水。もっと遠くまで戻らなければならない。しかし、魔女の集会関連以上は駄目。ここを越えるともう戻れない。コピーした能力を失い対抗手段を失う。しかも理華が会話不可能なのも相まって、遠くまで戻す事が出来なくなっていた。コイツらを倒す方法も忘れてしまうのは避けなければならない。
…万事休す。八方塞がり。これらのワードが浮かび上がる。こんな状況でこのような考えは不要だと分かっているのに。
…先生を呼ぶ?現状ではそれしか未来はないと思う。しかし問題がある。それは理華の存在。先生の能力を理華に見られる。まあ、【再生】で記憶を消す事を提案するけど…結局記憶が飛んだという事実までは消せない。それを先生がどう捉えるかは分からない。
先生は私に対しては優しい。だけど敵と見なした相手には苛烈な面を見せる。理華がどういう扱いを受けるかは先生次第だけど、もし…先生が理華を排除しようと動いたら、私は…どうするのだろう。先生に賛同して理華を殺すのか、理華の味方をして先生に殺されるのか。
(…考えている時間は無い。)
こうしている間も敵は雹のように降り注いできている。【探求】の射程圏内に入って来ているから瞬きをした瞬間…私達は死に別の生命へと変質してしまう。
「ゴメン理華…」
最後に取った私の行動は謝る事だった。何に対しての謝罪かは分からない。死ぬ間際にする事なんて特に理由なんて無いんだ。その時にしたかったことをする。たったそれだけの事に過ぎない。
「ピーーーィン」
まるで話しかけているように鳴いたその声を静かに聞いていた者達の中で、1人は心の奥底にある思いを口にして生きる選択を諦めていた。しかし本人は気付いていなかったがその目には憎悪に飲まれた青い光を写していた。その光の正体は未だ分かっていない。分かっているのはこの世で2人しか居ないだろう。
そしてもうひとり…能力を行使し続けている者が居た。
友を失う恐怖のあまり脳のリソースを全て能力に割いた結果、話す事も聞く事も出来ない程の偏りを見せていた。その能力に込める思いは敵を殺し友を助ける事。
そしてその時、山々の頂上から日が差し込む。その日の光は騎士達に当たって反射し彼女達に注がれた。
それがトリガーとなり三船理華の能力が行使される。
「…何が起こったの?」
敵は空中で急停止し辺りを旋回し始めた。その原因は理華の周りの景色に異変があったからだ。敵が私達に辿り着く前に日が入ってきた。その日の光が理華の両手に集まる事で急激に辺りが暗くなったのだ。もう日差しが入って朝になっているのにまるで夜中のような暗さだった。
真っ暗闇に凝縮された光が1つだけある光景はまるでこの絶望的な状況を打破する希望の光。その希望の光を持っている理華はまるで女神のような神々しさを放っていた。
浮世離れした光景はそれだけではない。上を見上げると真夜中のような暗闇の先に青空が広がっている。でもこの景色は人の肉眼では視認出来ない。広範囲の探知能力を持っている私だからこそ視える風景。理華の周りだけが暗くなり、そこから離れてある一定の距離で明るくなっている。大体半径5メートルぐらいか、その境界線辺りは朝方のような薄暗い青さをしていて幻想的だ。
「…理華。凄く綺麗だよ。」
私は周りを見渡しそんな感想を漏らす。こんな景色は彼女しか創れない。彼女が光を喰らった結果、この暗闇の空間が創られた。普通はいくら暗くしようとしてもこんな開けた場所では日差しが差し込んで絶対に明るくなる。でも理華は注がれた光をずっと吸収してあの手の中にある光球に閉じ込めている。
(…何故かは分からないけど敵が近付いてこない。)
そろそろ現実を認識しないと。非現実的な光景を見ていたせいで忘れそうになっていたけど敵は健在だ。しかし敵はまだこちらへ攻撃は仕掛けてこなさそうに思える。まるで理華を警戒しているみたいだ。ただ命令された動きを再現するだけしか能がないと思っていたけど、相手の能力を見て退く事ぐらいは出来るみたい。
という事はアイツらにとって今の理華は危険な存在って事だ。つまり…私よりもって事だよね。
どういう事か考えても今の理華の状態は私には良く分からない。分かる事は…意識はある。でも私の事を認識していないのかな。
「ねえ理華、私のこと…分かる?」
「…私が、美世を守るから。」
独り言のようにぽつりと呟くようなその一言に私は涙を流した。諦めてしまった私と違って彼女は諦めず能力を行使し続けていた。理華は私を守る為に能力に全てのリソースを割いていたんだ。
「う、うん。ありがとうね…ありがとう理華。理華のおかげで助かったよ…!」
この光は、この状況は理華が創り出した光明だ。この状況をどれぐらい維持出来るかは私の能力で大体把握出来る。彼女のベルガー粒子の動きが活発の間は大丈夫の筈。回復したらすぐにテレポートを使って…
「敵はみんな…私が殺すから。」
「え?」
理華の不穏な言葉を皮切りに暗闇が消えて理華が創り出した光球から強い輝きが辺りに散らばる。
「マズい、敵が!」
暗闇が消えたと同時に騎士達が全員一斉に動き出した。最悪のシナリオが頭によぎる。今は私より理華の方が脅威と見られている筈、だから敵は全員理華の方へ向かって…
(彼女は殺させない!)
ベルガー粒子を体内に巡らせる。身体から青白い光が放たれ私は最後の悪足掻きとして理華を助けようと手を伸ばした。その行為が彼女を助ける事に繋がるか分からなかったけど身体が勝手に動いていた。
…しかしその必要は無かった。銀色の騎士達が理華に近付くにつれて黒く変色し始めて動きが鈍くなり、そして黒く変色した敵の身体は次第に赤く光り出した。それから次はオレンジ色へとどんどん色を変えていく。特に理華に近い敵程その変化は顕著に現れていた。
「ピ、ピーーー…ぴーーンピィん」
理華の一番近くに居た騎士は最終的に真っ白に光り、最早浮遊する事も出来ず地へ落ちてしまった。その声もノイズが混じったような汚らしい音へ変わり苦しそうに身を歪ませる。
「これは…熱?」
顔に熱を感じたと思ったら敵から発せられる熱だった。そこで私は気付いた。敵は赤熱していたんだ。理華の創り出した光を浴びて凄まじい高温になっている。
しかもそれだけじゃない…光が動いている。騎士の身体を良く見ると懐中電灯を照らしたような光の輪が身体の表面を蠢いていた。その光の輪がある箇所は金属がどんどん変色していき赤熱化が顕著に表れている。
「ピィ…」
金属で出来た鎧のような金属が形状を保てなくなりドロドロに溶け出す。それから鎧の中にある能力者の身体があまりの高温に蒸発して金属の鎧に気泡を生み出していた。その気泡は穴へと変わりそこから様々な色の炎が立ち上って…絶命した。
「凄い…。光が感染していく。」
理華は光球を持っているだけで特に敵に向けたりなどはしていない。ただ近くに居た騎士に光の輪が出来て赤熱すると騎士自体が光源になるのだ。つまり赤熱した騎士は理華の効果範囲になり騎士から発せられた赤熱の光が隣の騎士の金属で出来た身体に写り込むとそこに光の輪が生まれる。そうして射程距離をどんどん伸ばして浮遊している騎士達を次々と地に落としていっている。
理華の能力は凄い。本当に凄い。あれだけ居た騎士達が地面へ落ちて行き私の足元で次々と絶命していっている。こんなの避けられる訳がない。この凄さが分かる?この光の感染のスピードは…文字通り光の速さで拡大している。
理華の放つ攻撃は光だ。だから光速で敵に襲いかかりガードする事が出来ない。状況次第だが、もし屋外で太陽が昇っていたら私ですら何も出来ず一瞬で殺されてしまうだろう。それ程までに理華の放った攻撃は凄まじい殺傷力を秘めていた。
これが…理華の本当の能力…。
理華、覚醒です。
彼女の能力を考えた時からこの展開は出来上がっていたのですが予想以上に強くなってしまいました。多分美世でも攻撃を防げません。だって影の能力で防げないですもんもしかしたら美世キラーの能力なのかもしれませんね。
最初は光と影の関係性を作り出す為にこの能力にしたのにね。何でこうなった?




