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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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友達の主張

久々にほのぼの回です。この空気感を楽しんでおいてください。また不穏な空気になりますので。

「理華、理〜華!起きて!」


パチンッと愛のこもったビンタで覚醒を促してみる。愛が入っていれば暴力も肯定される。


「っ!痛い…」


良かった。お姫様が目を覚ましたよ…。


「お目覚めですかお姫様。」


「…ここは誰、私はどこ?」


ボケをかませるぐらいには意識がハッキリしていると見て良いのかな。それとも素で言っているのかな。判断に迷う。


「あなたは洞窟、ここは理華。」


「なんで洞窟に…あ!そうだ!私はあの魔女達と戦った後に急に意識が曖昧になってそれからお前に…」


話している途中で頬を赤く染めてもじもじしだした。今の所で赤くなる所あった?なにかしたっけ…押し倒したやつ、かな?


「それね。理華が精神支配されていたからだよ。その能力者はもう…倒したけどね。」


今度は私の方が話している途中で少し表情を暗くしてしまった。それでもすぐに笑顔に戻したけれど理華はその微妙な変化を見逃さなかった。


「…何があった?」


「…えっとね。それが…」


私は先生が来たことと魔女の集会を殲滅した事を簡潔に話した。


「し、死神にフォローされてしまった…!…ぺ、ぺ、ペナルティが発生するんじゃないか!?ていうか私が寝ている間に色々と起こりすぎだろう!」


理華の先生に対する印象が良く分かるな。


「言っとくけど先生はめっっっちゃ良い人だからね。この洞穴も先生が作ってくれたし理華の事も配慮してくれてたよ。」


「そっちの方がマズい!組織のトップに尻ぬぐいをしてもらったなんて!」


「私の尻ぬぐいでもあるから気にすんな。…とは言わないけど気にし過ぎないでよ。先生も楽しそうにしていたからさ。」


私は能力をコピーした事や先生の能力については触れずに出来るだけコミカルに話したから理華もそこまで重い内容では無かったと思い込んでくれたと思う。


「…まあ、それは分かったよ。…じゃあさ、1つ聞きたいんだけど。」


「何?」


「何があった。」


「話聞いてた?説明した気がするんだけど。」


「お前が話した内容と今のお前の状態と合ってないからな。何かあったんでしょ?」


「…」


鋭い…理華は本当に良く私の事を見ている。ポーカーフェイスは得意だと自負していたのに。


「話したくないなら話さなくてもいい。でも、私の事を気遣って話さないなら止めて。もう来てるところまで来てるんだからさ。変な遠慮とかいらないから。」


理華の言葉1つで吐き気も背中のむず痒さも消えていく。彼女の存在は私にとって薬と同じかもしれない。それもとても依存度の高い薬…


「歩こうか。」


私と理華はバックパックを担いで山を登っていく。先生の射程距離から出なくては話せる内容ではないから。


それから歩き続けて暫く、私と理華は無言のまま山々の間を散策していた。


(何で何も言わずついて来てくれるのかな。)


理華は何も言わず一緒に山を登ってくれる。私は彼女が何故そこまでしてくれるのか理由を見つけられずにいた。私は今まで友達なんていなかったし仲間もいなかった。だから人を信用したり信頼したりする事もほとんど無くて、先生のような私に利益与えてくれるような人しか興味を持てなかった。


だからそんな私みたいな人間が、彼女にしてあげられるような事なんて…利益を、与えてあげる事しかない。でもさ、理華の利益って何?彼女は何を私に欲しているのだろうか。


そんな考えがぐるぐる巡って気が付いたらもう山の中腹まで登っていた。日もそろそろ昇ってくる頃合いだ。このままだと何も話せないかもしれない。時間が経つほど口に出しづらくなる。勇気を振り絞るんだ。理華は、私の事を…


「あ、あのさ。」


「…なに?」


私は前を向いたまま後ろからついて来てくれる理華に話し掛ける。


「何があったか話す前にさ、聞きたいことがあるんだけど…良いかな?」


「別に構わないが、逆に質問されるとは思わなかった。」


足場の悪い山道を登っているから体力も使うし関節も痛い。徹夜で行動している私なんて結構限界が近かったりする。でも、ここで言わないと後悔してしまう気がするんだよ。


「理華はさ、なんでそんなに私に対して優しいの?」


「はぁ〜?聞きたいことがそれなの?…はぁ〜〜身構えていたのに損した気分。」


理華はあからさまに落胆したような声を出してやれやれとジェスチャーを構え続けてこう言った。


「最初はお前の事が嫌いでぶっちゃけると嫉妬していたけど、殴り合ったり話している内に美世の良い所ばかりに目が行ったんだよ。生きてきて色んな人達と交流してきたけどそんな奴は初めてでさ。気が付いたら…私にとって特別な存在になっていたんだよ美世は。」


「私が…特別?」


「私だけじゃなくて色んな人から見ると美世は特別な存在だよ。世界に一人しかいない探知能力者だし、高校生で処理課に所属しているし、死神の弟子というか生徒だし。」


「それこそ気が付いたらってやつだよ。なろうとしてなったものじゃないし、それなりに苦労してるんだよあたしゃ。」


「う〜ん…そこが美世の魅力的な所かな?威張らないし自慢もしないじゃん?任務だってこなして当然、終わったら日常生活に戻ります。みたいなさ、カッコいいよ。」


「普通じゃない?」


当たり前の事をしているのが魅力的?みんなは当たり前の事をしていないの?


「ほら、そういう所とかさ。嫌味に感じないんだよね。本当にそう思っているって感じさせる説得力があるって言うか…カリスマ?性があるって言えば良いのか…?」


「ぼっちにカリスマ性なんてある訳ないでしょうが。」


もしかしてからかわれている?


「いや、本当に美世は自分が思っているより魅力的なんだよ。仲良くなりたい、何かしてあげたいって思わせる不思議な魅力があるんだよ。心当たり無い?絶対に周りもそう思っているよ。」


そんな事無い。…と言い返そうと思ったが、学校での出来事などを思い返すと確かにそうなのかもと変に納得してしまった。私…愛されキャラだったのか。


「マスコット扱いってこと?」


「う〜〜〜ん…ちょっと違う。惜しいっちゃ惜しいけど、美世は…そうだな、男性から見たら女性らしい可愛いくて綺麗な女の子に見えて、女性から見るとカッコいいボーイッシュ系のクールな女の子って感じかな。結構賛同を得られる例えだからねこれ。」


「何それなぞなぞ?」


「そう!そういう所だよ!見た目は女の子!って感じなのに反応が凄く男の子っぽいんだよ!浮き世離れしている感が凄いんだ。美世みたいなタイプは珍しいし人はそれを魅力的に感じるんだよ。美世の思いとか関係なくね。」


「女子力が低いだけだよ。女子と遊んだり絡んだりする機会が無かっただけで…。」


「ネガキャンすんな!私の大切な友達の悪口はお前だって許さないぞバカッ!」


突然堪忍袋の緒が切れた理華が私に私の悪口を言うなと言って悪口を言ってきた。文書におこすとマジで意味が分からない。


「はぃ〜〜!?お前どこの位置から誰の話してんの!?」


ここは流石に振り返ざるを得ない。理華のマジギレを背中で受けとめられない。怖いし絶対に蹴りを背中に入れられそうだから。


「ゴメン、ムカついてつい勢いで言ってしまった。だけど自分を悪く言うのは本当に止めて。お願いだから。」


暗くて理華の表情が見えなかった。と言えれば良いのに私の能力がそれを許さない。私には今にも泣き出しそうな彼女の表情が手に取る様に分かってしまう。


「分かったよ。私凄い私天才私可愛い友達居る処女。」


「…後半怪しくないか?」


「気の所為だよ。男子ウケするから良いんだよ。」


男子ウケとかどうでもいいけどさ。理華がこんなネタで笑ってくれるのらいくらでも言うさ。


「気にしていない癖に、バカ…ふふ。バカだ。」

久々に早めの時間帯に投稿出来て良き良き。

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