先生とふたりきりのランデブー
昨日投稿した雪さんのお話なんですけどPV数が断トツで笑っちゃいました。
雪さんにひたすら服と下着を貢がれ続けたデートの翌日。いつも通りバスに揺られ先生ボイス(非売品)で頭の中を満たしながら登校していた私にパスから先生の声が響く。
「実は初めてなんだ 優し……」『ミヨよ 聞こえるか?』
はうわあ!?先生の声が耳と脳内からダブルで入ってきた!本当の事を言えば全部私の声なんだけどね。
(はい!聞こえております先生!)
『今日から時間は取れるか?』
(今から学校辞めてきます!)
『ーーーいやガッコウは行ったほうがいい 目立つ行動は控えよ』
(分かりました先生!)
私“伊藤美世”は先生に対してだけはイエスウーマンなのだ!
『ホウカゴ とあるチカチュウシャジョウに来てほしい』
あぁなんて男気溢れる話し方なんだろう。今のうちに覚えてボイストレーニング頑張らなくちゃ!
先生との通話が切れてその後は普通に授業を受けて放課後まで無難に過ごした。そして放課後、私は先生に言われた地下駐車場へと向かう。
(ここら辺だと思う…どの建物の駐車場だろう?)
ここ一帯には地下駐車場が沢山あり判別つかない。それにまだここは【マッピング】されていない地域なのでかなり心細い。
『着いたか?』
(先生!いえ近くまで来たのですがどの地下駐車場か分かりません!すいません!)
『いや構わないーーーいい機会だ パスの使用例と【ユニゾン】の使い方を教える』
パスと【ユニゾン】についてそういえばあまり分かっていなかった事に気付く。便利な連絡ツールと能力の貸し借りの契約ぐらいの認識しか無かった。
『パスに意識を向けろ ワタシの〈地図〉をミヨに見せる』
そんな事も出来るの!?と驚くがすぐに意識切り替えてパスに集中する。し〜ゆ〜う〜ち〜ゆ〜う
そうすると私の視界、つまりは〈地図〉が広がり視界も広がる。そこに行った事が無いのに行った気がする。私は行くべき地下駐車場を知っていた。
(何ですか…これ?初めて見たのに見覚えがあるし場所も知っていたような感覚があります。)
『そこまで繋がったか ワタシの感覚の一部まで流れたようだな これは凄いことだぞミヨ』
何故か褒められた。しかし理由が分からなくても褒められるとやはり嬉しい。
(ありがとうございます?これからも精進します。)
そして目的の地下駐車場の入口まで来たけどシャッターが閉められて入れない。別の入口が無いか探そうと思ったけどここしか入れない事を知っている感覚が残っている。少し気持ち悪い。
『ミヨよ 監視カメラを見ろ 出来れば手も振ってな』
(イエス ユア マジェスティ!)
監視カメラに向かって手をブンブンと振りまくる。何の意味があるか分からないまま監視カメラにアピールを続ける。しばらくするとひとりでにシャッターが動き出す。
『ここの地下駐車場の組織の物だ ワタシから組織にミヨの訓練所を見つけて欲しいと話したら組織がミヨに貸し出してくれたのだ』
先生!あなたという御方はどこまで私の事を思って…!うぅ…涙が止まらん。
(先生!私なんかの為にここまでして頂いて感謝の念しかありません!)
『いやこれぐらいで礼を言う必要はない これもワタシの為に行なっている事だからな』
先生の配慮には尊敬の念しか浮かばない。私は先生の言葉を噛み締めながら地下に降りた。
地下は思っていたより広くコンクリートの柱が並ぶ広場と言ったところか。車が一台も止まっておらず人も居ない。〈地図〉でも反応が無い事から無人の施設なんだろう。
『ここは特別頑丈に作られた倉庫であり能力者の為の訓練施設だ 好きなだけ能力を使っても問題ない』
やっぱり組織ってとんでもないな。ここ以外にも色々とありそう。
『訓練を行うにあたってミヨには能力者としての動き方や戦い方を学んでほしい そして【再現】を正確に深く理解しその先の新たな能力を身につける事を最終目標として2週間の訓練を行なってもらう ワタシがツーマンセルで指導するから安心して取り組んでほしい』
私の求めていたドリームがそこにはあった。ヨダレが垂れてきたじゅるり。
ウッヒョー最っ高!まさかの2週間もの間、先生とくんずほぐれつの稽古なんて!そんなボイス録った記憶無いけど!?
(それで具体的には何をすれば?)
良い子ちゃん(真面目ver.mk-2)で先生に質問する。
『そうだな…【再現】を使い始めてから異常は無かったか?』
先生の言葉に心当たりがある私はつい最近左手が凶暴になった事を先生に話す。
(ありました…感情が昂ぶると無意識に能力が出現される時があります。)
『やはり制御しきれていないか ミヨの脳はまだ未開拓の領域が多い為 ベルガー粒子の制御が完全には出来ていない』
脳?未開拓?ベルガー?何の話だ?私は記憶を覗くがそんな話は聞いたことが無い。
その後、先生は様々な話をしてくれる。能力と脳の関係性、ベルガー粒子の存在。かなりSFに片足突っ込んだ話だが先生が言うのだから本当なんだろう。
(それで私はベルガー粒子を制御する為に脳の開拓を行なわないといけない…という事ですね?)
『そういう事だ しかし2週間の期間を有効的に使う為 脳と身体を同時に鍛える』
それで最初に言った能力者の動き方か。それなら自信がある。意外と思われるかもしれないが運動は小さい頃から大得意だ。同い年の子に運動やスポーツで負けたことが無かった。
まあ体育とか今は適当に流してるけどね。目立ちたくないし。
(でもここには運動器具とか無いですけど走ったり腕立て伏せとかで身体を鍛えるのですか?)
『フフ違うな 能力者の動き方と言っただろう? ヨシまずは体験してもらうか ミヨよその場で思いきり垂直にジャンプしてみなさい』
私は先生の指示に従うため通学でも使うようにしたバックパックを下ろしてジャンプをする姿勢に入る。この地下駐車場は4mの高さに天井があるがジャンプするには十分の高さだ。良し!思いきり飛んでみるか!
足を屈んで腰を曲げ手は膝の位置まで下ろす。そこから一気に力を込めてジャンプ!とうっ!
ゴンッ!と地下駐車場に衝突音が響き渡る。私は頭を天井にぶち当てて頭が割れたかと錯覚する程の激痛に襲われた。
「痛あっ!?」
そして背中から地面へ落ちて強打する。これも相当痛かった。
「いったぁいぃ!!!!」
何が起こったの!?頭が天井に激突したんだけど!!!そこから背中で着地して痛いんだけど!!!!!
「ううううう痛あああいいいいいちちち!」
駐車場でのたうち回る。本当に痛い。受け身とか一切取れなかった。私の身長は155cmだ。どうジャンプしても高さ4mの天井に頭から衝突するなんてありえない!
『ーーーすまない そこまで飛ぶとは思わなかった 最初に聞いておくべきだったな もしかしてミヨは幼い頃から運動が得意だったか?』
(うううう…はい。小さい頃から得意でした。)
『それは能力者に良く見られる特徴だな 能力者は脳が発達する為に身体にかけたリミッターが外れて人とは比較にならないほど身体能力が上がるのだ』
なるほど。私が小さい頃から運動が得意だったのにはそんな理由があったのか。
『そこから更に発達 成長したのが異形型の能力者 君が最初に出会った能力者がそれだ』
異形型の能力者。確かにあれは色々とリミッターが外れている。
『ミヨよ 頭をぶつけた以外で身体に痛みはあるか?可能であれば一度起き上がって欲しい』
(背中から着地したので背面全般痛いですけどそこ以外は大丈夫です。)
私は起き上がり身体の不調を探るが問題は無さそうだ。
『それは喜ばしい リミッターが外れていると自分の力に身体が耐えられなくて文字通り身体を壊す場合があるのだがミヨは小さい頃から身体を慣らしていたおかげで自身の力に耐えられる身体が出来上がっていたようだな』
《本来は幼い頃から訓練を行ない身体を作り上げるのだが流石だな》
(私ってそんなに人間離れした身体能力を持っていた記憶が無いのですが…)
『ミヨは筋力だけではなくベルガー粒子を全身に行き渡らせてたからあれだけの跳躍が出来たのだ 普通は年単位の訓練が必要な事を自然と出来たのだ これは才能だ 誇って良い』
(…ぁざます)
頭の痛みを抑えつつ先生にお褒めの言葉を頂いた。しかしその言葉に対して素直に喜ぶことが出来ない私は初日から幸先の悪いスタートを切るのだった。
先生は褒めて伸ばすタイプです。
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