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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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ご馳走が並ぶ

次かその次で魔女のパートは終わります。このパートは科学の勉強しなくてはいけない程の難解な能力が目白押しで大変でした。書いていて楽しかったので良いんですけど。

「こりゃ…死ぬな。私達みんな。」


最初に諦めたのはボー・ペティットだった。死神に対して対抗手段が無いのに加えて魔女の集会で一番の実力者だったルイスも殺された。しかもルイスの能力が何故か使えるようになったデス・ハウンドも合流…これで折れない人間が居るのなら頭が足りていない馬鹿野郎だ。


「まだ、負けていない…!」


頭の足りていない馬鹿野郎に該当してしまったサラはメリッサの能力を使い生物を創造する。サラ達の前に現れたのは巨大な象。象は怒り狂っているのか頭を振りまわしながら美世に向かって突撃を仕掛けた。


「良い練習相手だね。」


象が牙を突き立てようと頭を振るったタイミングで美世の影が障壁のように象の前に立ちはだかる。そしてすぐに影と象の牙が激突したが……無音。重量のある象が衝突した際に起こるはずの衝撃音は発生せず、その衝撃エネルギーは影の中へ飲み込まれた。


「やっぱり弾かれるんだね。」


美世は淡々と観察していた。敵の事は一切目もくれずに影の性質に対して意識を向けて思考を重ねる。


この影は使用者以外のベルガー粒子飲み込む事は出来ない。なのでベルガー粒子で構築されているこの象は影と反発し合い弾かれた。これを利用すればベルガー粒子で構成された様々な能力はこの影一つで対処が可能。なんて使い勝手の良い能力なんだ。


「こうすればどうなるかな?」


次は影を操りこの象を丸い球体に閉じ込めて圧縮していく。この能力で操る影は恐らくだけどパワーがとんでもない。というか光以外で影の動きが阻害される事はない。例え強靭な肉体を持つ象だって…ほら、簡単に押し潰せた。


影の球体は象を丸々覆い隠す程の大きさからバスケットボール大の大きさまで一定の速度で縮小していき、途中でベルガー粒子で構築された象が粒子となって砕け散る。そしてその際に生まれた粒子は影の影響で外に出ることが出来ず球体の中に残留していた。美世はこの粒子に目をつけて能力のコピーを図ろうとした。


(ここだ、ここからだ。私が成長する為に必要な事象…!)


このベルガー粒子には事象が付与されている。元々は創造能力で生物に変容されていたという事実…私はこれを探求し再現すれば良い。パスなんて必要無い。能力の因果を知って再現出来ればいいんだ!


(【再発(リカー)】act.…イマジネーション!)


バスケットボール大だった影の球体が急激に膨張し最後は風船のように破裂した。そしてその中から出てきたのは先程と全く同じ“象”


その象は怒り狂ったように頭を振り回しその長い牙を敵に向かって突き立てようと大地を揺らしながら魔女たち目掛けて突撃していく。先程の象をコピーしたかのような再現率にサラ達は驚愕する。


「嘘ッ!メリッサの能力まで…!?」


サラは自身の生み出した生物が美世の影によって破壊された事を認識していた。だが先程生み出した生物と全く同じものを創造された事に認識が追いつかない。


(どうやって能力をコピーした?)


サラは生まれて初めて感じる未知に対する恐怖のあまり憑依を解いてしまった。


「あ、しまっ…」


こんな時に能力を解いてしまっては私とメリッサが動けなくてあの象を相手にするのがシーク一人に任せてしまう…!クソっ…。


「砕けて。」


その時、シークは立ち上がり一人で象に向き合い能力を行使した。

  

パチンッとシークが右手を前に向けてフィンガースナップで音を鳴らす。その音はシークの能力により増大、拡散し美世の創り出した象を波状に砕いて粒子に変えてしまった。


『素晴らしい…!たったあの振動だけでここまでの威力に増幅させてしまうとは!優れた能力者だな彼女は!』


「…サノスじゃないんだからスナップで解決するなよ。」


先生が能力で興奮するのはいつもの事、だからそっちには触れない。今の私は彼女の事にしか目が行かない。せっかく創造能力をコピーしたのにこんな簡単に破られるとちょっとプライドが刺激されて張り合いたくなるんだよね。


だからあなたの能力もコピーさせてもらう。タネは分かったからね。あなたはベルガー粒子は拡散させて原子、物体の振動を増幅させている。たったそれだけの原理だけど原子レベルの緻密なコントロールが必要な能力だ。使いこなすには結構訓練が必要だね。自分まで巻き込んでしまう可能性が高いからさ。


「だから敢えて私は本番で使う。【再発(リカー)】act.振動(ヴァイブレーション)(ヴァーグ)


パチンッと右手で指パッチンを鳴らす。…懐かしい。先生と初めて会ったあの廃ビルの時も指パッチンしていたな〜。それで相手は彼女みたいに血を吹き出したんだよね。


『彼女は確かに素晴らしいが…やはりミヨの方が圧倒的に優れているな』


「ゴブッ…う、嘘…私の能力まで…。」


振動が空気を伝わりシークの身体に伝わる。シークの身体は細胞の一つ一つまで振動し血液、体液がシェイクされた。身体中の毛細血管は破れあっちこっちで内出血を起こし青色の瞳は真っ赤に染まる。


口からも歯茎や喉、鼻からの血が漏れ、肺も出血を起こし血の混じった咳が出て彼女は立っていられなくなり膝を着く。


「シークっ!!」


ラァミィはシークの身体を支え彼女に話しかけるが反応は無い。そしてよくよく見ると耳からドス黒い血が流れ鼓膜が破れている事に気付いた。シークは聴覚に支障が起き何も聴こえていないようだ。


「私が…なんとかしないと…!」


しかしシークは重体の状態でも右手を掲げてスナップし、音を増幅させて美世に目掛け衝撃波を拡散させた。


「はいバリア。」


だがそんな抵抗も彼女の前では意味を成さない。様々な能力を行使出来るあいの風に対し、もはや魔女たちは有効打を持ち合わせていない


(良し、バリアを何重にもすれば衝撃波も防げるのが分かったのは大きいね。)


私の目の前にバリアが張られることで空気を遮断し、敵の振動による攻撃も遮断することに成功した。それに…うっふっふっふ〜♪もうサイコキネシスも使えちゃうんだな〜これが。うんうん、これも使い勝手が良い。デメリットが無いもの。


「私の能力まで…ルイスもこれに殺られたのね。」


ラァミィはなんとか上体を起こして美世を観察する。死神の次はそれ以上かもしれない能力者。寝ている暇など与えてくれない。


「せ、制約がある筈よ。」


元の身体に戻ったサラも身体を起こして美世の能力について制約があると告げる。どんな能力にも制約は存在するからだ。


「制約よりどうやって能力をコピーしているのかが問題よ。こっちで能力をコピーされていないのはサラとボーだけだもの。あなた達までコピーされたら…。」


本当に嫌になるわ。特異点である彼女が予想以上に化け物で太刀打ちが出来ない。死神も今なにをやっているのかも分からないし、私達はこのまま嬲り殺し合うのかしら…。せめて、生きている同志たちを逃してあげたいけど今の私は能力を使えないお荷物。頼みの綱であるシークも…。


「今更能力を渋るの?遅いんだよね。みんなそう、私が非接触型探知系能力者である事を忘れている。」


あなた達が先生と戦っている様子をずっと私は認識していた。先生があなた達の能力を引き出してくれたから全部見れたしね。それにこの空間は私の【探求(リサーチ)】に侵食されている。だからあなた達の能力はある程度理解出来ていた。


特にサイコキネシスの方はいっぱい能力を使ってくれていたしサイコキネシスは何回か相手にしている。だから簡単にコピーする事が出来たよ。


『先生ありがとうございます。私が能力をコピーしやすいように立ち回ってくれたおかげで4つも能力をコピー出来ました。』


『いや まさかここまで簡単に能力をコピー出来るとは思っていなかった ワタシの予想を超える展開に驚いているよ』


先生が笑いながらこっちへ向かってくるのを目で追ったら視線を感じた。サイコキネシスの彼女が私を見ている。…気づくのか凄いな。彼女の視野の広さは先生との戦い…とも言えない一方的なものだったけど、それでも彼女は上手く立ち回っていたよね。良く見ている。殺すのが惜しい人物だ。


「特異点は死神の事が見えているのか…やはり何かしらの繋がりがあると考えるべきよね。」


ラァミィは考えを纏める。死神は特異点と何か繋がりがありこの触れる事の出来ない身体は特異点の彼女が要因となっているのではないか?…と。


「サラ!一か八かだけど特異点に憑依して!特異点と死神の両方をどうにか出来るかもしれない!」


『やはり殺すのが惜しいな 具体的には分かっていないだろうがワタシとミヨとの関係性に気付いたぞ』


先生が少し嬉しそうにサイコキネシスの女の事を話すから私は少し食い気味に言葉を紡ぐ。


『先生の正体を探る奴は全員殺します。』


別に嫉妬した訳ではない。断じて!嫉妬した訳ではない。ただ彼女が目障りだと思っただけで他意は無いよ?本当だよ?


「わ、分かったわ。信じるからね!死んだら恨むから!」


サラはそう言い残し美世に向かって意識を飛ばして憑依を仕掛ける。


()()()()()()()()!)


私はこの時をずぅ〜っと待ち続けていた。彼女が私に憑依してくれるのを!彼女の能力こそ最後のピース!絶対にコピーしてみせるから!

ここで指パッチンの伏線回収です。実質ワンピースです。

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