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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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走馬灯

ラァミィ達がめっちゃ主人公サイドっぽくて美世達がめっちゃ悪役っぽい。なんでこうなった?

何が起きたのかその場に居たにもかかわらず私には理解出来なかった。ただ私の張ったバリアが一瞬で破壊され、それとほぼ同時に創造された熊達も砕け散り私の横から悲痛な叫びが上がった。


「ぐぁああああ!!わ、私の、腕がァーー!?」


叫ぶ声のする方向を見るとボー・ペティットの右腕が千切れかけており、彼女が痛みのあまりに暴れるとその千切れかけていた右腕も肘から先が千切れ飛び地面へ落ちる。


「ら、ラァ…ミィ、うぐぅっ。」


その隣のメリッサは脇腹の一部が消し飛び帯だたしい血が脇腹から流れ出ていた。死神が放った悪魔の弾丸は彼女の脇腹の一部を消し飛ばしその衝撃は内蔵を伝って傷付け彼女の命をも削り取っていた。


サラは憑依している間、痛覚も感じ取ってしまう影響でサラ自身の肉体にも影響を与えてしまう。彼女の肉体も苦しそうに身をよじり口元も歪めながら息を漏らす。


「サラ!大丈夫ですか!」


「揺らさないで…ゲホゲホッ、出血を、止めないと…。メリッサが、死んじゃう。」


(このままだと私も死んじゃうのかな…。)


試したことは無い。もし憑依した側の身体が息絶えた時に憑依した私はどうなってしまうのか。私はメリッサとシンクロしている。だからもしメリッサが死んでしまったら私も…。


そんな考えが真っ先に思い浮かんで不安な気持ちに襲われるが…サラは憑依を止めなかった。ここで急に憑依を止めてしまったら意識を取り戻したメリッサが更に混乱して最悪そのまま死に至ってしまうかもしれないからだ。


「おい、ボー…叫ぶ元気があるなら、メリッサの、傷口を…塞いでくれ。内蔵がな…、飛び出そうなんだ。」


「う、腕が、利き腕が千切れた奴に…!言う事かよ!」


ボー・ペティットは血液を操作して先ずは自身の出血を止める。傷の断面は切り傷のように真っ直ぐでは無く、吹き飛んだような痛々しい傷口だったので流れ出る血液を大きなかさぶたのように固体化させ無理矢理止血する事にした。


「ぐうぅ…いってぇな畜生…。」


『結局誰も死ななかったか ラァミィと呼ばれているあの女が少し面倒だな…』


死神はラァミィに近寄ろうと歩き出すと地面に足跡がつき、その死神の足跡が生まれた瞬間を目撃したラァミィが仲間へ警告する為に大声を上げた。


「ボー!サラ!あなた達は逃げなさい!死神がこちらへ向かって来…」


『有能過ぎると長生き出来ない事がこの業界の常識だ』


死神はその場でラァミィに飛び掛かり拳を振るう。


《バリアを張られる前に彼女の意識を刈り取る》


ラァミィは能力を行使し過ぎて重たくのしかかる頭を無理矢理覚醒させてバリアを張ったが、死神の突撃であっさりと壊され死神の攻撃を生身で受けてしまう。


「かふっ…!」


人体の壊れる音が自分の身体内部から鳴り響いた。


その瞬間、自分は死ぬのだと理解したラァミィの脳裏に古い記憶が呼び起こされ、走馬灯が頭の中に映し出される。


それは家族との思い出、父と母と妹と弟…、最近では思い出す事も無かった大切な家族との記憶。


父さん、母さん、妹弟達を、家族を置いて先に死んでしまう事が申し訳ない。彼らに美味しい食べ物や教育を…裕福な暮らしをさせてあげたかった。妹は、リーチェはもう19歳だったか…。もう何年も会っていない。みんなの安全を考えて連絡は最小限にしていたしお金の送金もネットで済ませていたから。…後悔の思いが込み上げる。もっと傍にいてあげれば良かったな。ゴメンね…良いお姉ちゃんじゃなくて、ゴメンね。


家族との思い出が流れていき、次に映し出されたのは魔女の集会での思い出。彼女達との思い出は…正直良い記憶が少ない。何をやっても上手くいかず喧嘩も絶えない。こう考えると苦労を重ねていたな私。でも…思い返してみると案外悪くなかったと思えるから不思議だ。


そして魔女の集会での記憶も流れていき最後に映し出されたのは死神の攻撃を受ける前に見えた足跡。恐らく跳躍して私の懐まで入り、そこで一回片足で着地した際に出来た足跡。見えないから全部推測だけど攻撃をする際に踏ん張る為に片足で着地したんだと思う。


だけど私がもう一度見たい、知りたい事は一つだけ。走馬灯で家族や仲間達の記憶より欲しい記憶は死神の足跡の形と大きさだ。


ラァミィの脳裏に複数の記憶が一斉に映し出される。それは死神の拳銃の位置、死神の足跡、そして…特異点の姿。これらは無作為に選ばれたのではない。ちゃんと意味があってこの記憶が頭の中によぎったのだ。


…違和感、そう違和感ね。死神に対してのイメージが確立されていなかったから漠然と受け入れていたけどおかしい点があった。()()()()()()()()


正確な足の形は分からないけど大体の足のサイズは分かる。多分私の足のサイズより小さい。つまり成人女性より足が小さいって事。それにあの浮かんでいた拳銃の位置、あれもあまりに低過ぎた。普通拳銃を構えると大体胸の位置で固定して撃つもの。死神の拳銃の位置は私の胸の位置より低かった。


この事から死神はかなり小柄な人物だと推測される。私は勝手に死神は男性で屈強な体型をしていると思い込んでいた。でも実際は真反対…もしかして女性なのかもしれない。


死神(デス)…それに死神の猟犬(デス・ハウンド)。この二人の共通点は小柄な女性であり、強力な能力を持っていて…


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


そこで思考が一旦止まる。死神の攻撃を受け、一時的に加速した思考が急速に減速して現実世界に引き戻されたからだ。そのきっかけは彼女の右肩に何が触れる感触を感じそこに意識が向いたからである。


その触れた物の正体はシークの左手だった。彼女は死神が踏み込んだタイミングと同じタイミングでシークの元に走り彼女の肩を触れた。足跡が出来た際に発生した振動をすぐさまに感じ取った彼女が反射的にラァミィを守る為に行動したのだ。


死神の拳を腹部に受けたラァミィの身体は足が地面から浮かび上がりそのまま真後ろに吹き飛ぶ程の衝撃を受けていた。なのでそれを左手で受け止めたシークにもその衝撃が伝わって来る。


シークの能力は振動を増幅させたり遠くまで衝撃波を打ち出したりする事だけではなく、逆に振動を抑えたり衝撃を打ち消したりする事が出来る。彼女は自身の左手を通じてラァミィの身体に流れている衝撃を打ち消そうと能力を行使した。


(遅かった…!)


しかし流石の振動系能力者であっても完全には衝撃を打ち消す事は出来ない。特にもう衝撃が身体全体に伝わってしまった後では…


それでもシークは全力で能力を行使してラァミィに流れている振動を抑え衝撃を打ち消した。その結果ラァミィの身体は空中で不自然に思える減速をして地面へ背中から倒れ込む。


「ラァミィ!」


シークはラァミィを庇うように自分がクッション代わりになるよう倒れて声を掛ける。


「んぅ…痛いわ。」


ラァミィは生きていた。しかし内蔵類、特に腸や胃、子宮などの下腹部にある臓器にダメージを負って、口や股の方から血が漏れ出る。シークのおかげでなんとか即死を免れたラァミィは重傷を負った状態だった。意識はあるが立ち上がる事が出来ず、もう戦う事は難しい。


(…シーク。)


「な、なんですか?」


シークはラァミィの状態を見て全てを察する。彼女を守れなかった事と現状戦える者は自分一人しか居ない事を。そして、彼女がまだ諦めていない事を。


(死神はデス・ハウンドと深い関係性がある。死神を視認する事は出来ないけど恐らくデス・ハウンドと同じ姿をしているわ。)


「え…?」


ラァミィは死神に聞こえないよう小声でシークに耳打ちをして自身の考えを伝えた。


(そこにカギがあると思う。なんの能力か分からないしこの情報が打開策になるかも分からない。でもあなたに伝えておくわ。)


このやり取りにはシークに対する信用と信頼があってのものだった。メンバーの中で一番の新人である彼女は周りから低く見られがちであるが、ラァミィは彼女に素質を感じていた。だから彼女を良く訓練に誘って二人で能力の組み合わせを試したり複合能力をボー達相手に試し打ちなどを行なっていた。


(自分にもしもの事があった場合、彼女がこのグループを引っ張れるようにあらゆる知識、技術を叩き込んでおいたわ。)


「あなた一人で判断し行動しなさい。私達の命運…託したわ。」


「え…?わ、私にですか?」


そしてその時にシーク達の視界に蠢く影が入り込み、美世がルイスの首を捻じ折った所まで話は戻る。

あと2〜3話で魔女の集会との戦いが終わります。長かったな…。体感1ヶ月ぐらい書いている気がします。

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