表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
167/602

再現という能力

また遅くなった…なんでや!ユーチューブ見てただけなのに!

美世がラァミィ達と合流する3分前。死神の激しい銃撃にラァミィは為す術もなくただバリアを張り続ける事しか出来ずにいた。


『ほら そんな調子ではお仲間を守りきれないぞ』


死神が二丁の拳銃の引き金を引く度に不可視の弾丸が軌道線上を走りラァミィが張るバリアを次々と破壊していく。


「くっ…!メリッサ!何でも良い!壁になるものを展開させて!」


「わ、分かったわ!」


私には何が起きているのかも分からない。バリアも見えないし敵も敵の攻撃すら見えない。分かるのは何かがぶつかる衝突音とその度にラァミィが疲弊していく事だけ。


多分、ラァミィが死神の攻撃を一手に引き受けてくれている…。ここで私が打開しないと!


(お願い来て!)


メリッサは想像する。私の右腕に獲物を見つけ捕える狩人を、その狩人は翼を広げれば私の身長をゆうに超える大きな鷹であり私に従順な下僕。必ず獲物を捕える空の支配者。


そして左手に獰猛な守護者を。体重500kgを超える巨体に硬い毛並みを纏った熊、人間とは比べ物にもならない隆々とした筋肉に防御に適した骨格。私達を守る大地が産んだ怪物。


彼女は想像を膨らませてイメージを固める。そうすると想像は創造へと変化し現実世界に反映される。


「ピィー!ピィー!」


「グルルルゥ…。」


それは一瞬の出来事だった。瞬き程の一瞬にメリッサの右腕には鷹が威嚇音を発して左手には熊が唸りを上げていた。


その2匹どちらも生き物と見分けのつかないクオリティに流石の死神も驚く。そのあまりの出来に銃撃を止める程だ。


『素晴らしい…ただの結界型創造系能力者だと思っていたが創造の部分が本命か』


結界能力者は貴重な存在だ。しかし結界にも色んな種類がある。ハーパーの精神系、メリッサの創造系などが挙げられる。だがメリッサの場合は結界はおまけのようなもので本命は生物の創造。想像出来る生き物ならなんでも創造する事が出来てしまう。それがメリッサ・シモンという能力者の本領。


「行きなさいあなた達!」


彼女の命令に反応し鷹が大きな翼を広げて空へ飛び上がり、熊はその巨体を揺らしながらメリッサ達の前に出て壁のように立ちふさがる。


この2匹はメリッサが予め命令したプログラムを実行する存在。これはベルガー粒子の保存機能を利用した能力であり、メリッサ本人の手から離れた状態であってもプログラムされた命令を長時間実行し続ける事が可能。これは他の能力に比べて燃費性能が良く一度発動してしまえばメリッサの脳に負荷がかからないという利点がある。


(鷹は死神へ攻撃をしかけて位置を探り熊は私達の肉壁になってラァミィの負担を減らす。私が今出来るのはここまで…。)


「みんな!この子の後ろに来てっ!」


メリッサは仲間達にラァミィがバリアを張る範囲を狭めて強度を上げられるようにと固まるよう指示を出す。


「ナイスですメリッサ!」


「くま公踏ん張れよ!」


「グオゥッ。」


メリッサが生み出したこの熊はプログラム通りに動いているだけでたまたまのタイミングで鳴き声を上げたので別に返事をした訳では無かったが、この勇ましい鳴き声が彼女達のやる気を刺激する。自分たちよりデカい生き物が盾になっているという事だけで安心感というのは生まれるものだ。


「ピューィ!」


低空を飛行していた鷹が死神が構える拳銃目掛けて飛びかかった。鷹の脚には10cmを超える鉤爪と100kgを超える握力が備わっており小動物の頭蓋骨すら握り潰す。そんな人間を凌駕する生物が能力者をも凌駕する死神に襲い掛かった。


『トリ…か?脆い骨格になんて貧弱な能力(ちから)か』


鷹は死神の拳銃を掴みかかろうとするが鉤爪がすり抜けて触れる事が出来ない。この拳銃には時間操作型因果律系能力者しか触れる事が出来ないからだ。


この場でキャンパスに触れられる存在は死神だけであり感じ取れる次元の違いがこのような結果を生む。


『煩わしい 高高(たかだか)粒子の塊風情が』


『ピィ…』


死神が拳銃を鷹に目掛けて振るうと鷹が粒子になって砕け散る。誰も死神に触れる事は出来ないが、死神は触れられる。…そんな事実にメリッサは呼吸が詰まるような絶望感に襲われる。


「か、勝てない…!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!どうやったらこんな化け物殺せるのよ!?」


「メリッサ!落ち着いて!ちゃんと報告をしてくれないと状況を掴めない!」


ラァミィが半狂乱気味のメリッサに怒声を浴びせて自分に意識を向けさせる。敵の情報が不足している今は少しでも多くの多角的な情報が欲しい。


「ベルガー粒子で造られた生命が、あの拳銃に触れる事すら出来なかったの。私の言っている意味が分かる?物理的に触れる事も出来ない、能力の効果範囲にも入らないの!それなのに向こうは一方的に攻撃を仕掛けてきたわ…!対象を捉えられないから結界も張れない。もう私に出来る事なんて…。」


マズい…メリッサの心が折れかけている。彼女の気持ちは痛いほど分かるけど今の私達に慰めている暇なんて無い。


「仕方ない…サラ!メリッサに憑依して能力を維持し続けて!」


「う、うん。分かったわ。シーク、ボー、私の身体をちゃんと守ってよね。」


サラは能力者に憑依する事でその能力者の能力を行使する事が出来る。これはとんでもない効果範囲であり記憶も読み取れる彼女はそれらを利用し能力の使い方をある程度熟知した状態で能力を使えるのだが、その分デメリットも存在する。


それは彼女が憑依している間は本人の身体が隙だらけになるという制約だ。意識を失っている状態と変わりないので身体を動かす事も出来ず、その間は誰かに守ってもらったり安全な場所に身体を避難させておいたりしないといけない。それに加えて食事も取れないので点滴などで栄養を補給しないと3日で衰弱死してしまうという制限時間も存在する。


以上の点からサラの能力は効果は素晴らしいのだが使い勝手が非常に悪いというアンバランスな能力となっている。


「…あ、あー、あーあー。う〜ん…行けるよ。」


「…お前マージで図太い精神してんな。」


サラは記憶を読み取れる。だがこれは自由に読み取れるのではなく強制的に読み取れてしまう。特に新しい記憶や能力については絶対に。なのでメリッサの半狂乱した記憶も読み取れてしまったのだがサラは特に気にした素振りも見せず能力を行使した。


「く〜ま熊、熊、熊、熊!5匹も居れば延命出来るよね〜っと。」


メリッサの身体に憑依したサラが追加で5匹の熊を創造し合計6匹の熊の防護壁を創り出す。


『ふむ 面白い能力の運用方法だな 何回か試した事があるだろうが悪くない手だな』


死神は再び拳銃を構えてから引き金を引いて残された弾丸を全て撃ち出した。撃ち出された弾丸は全て創造された熊達の額に命中したが粒子に拡散する事はなくその場に留まり続ける。


「た、耐えました…?」


「私がバリアを張ってなんとかって感じだけど…今ぐらいの攻撃なら私とサラで守りきれるわ。」


「メリッサの脳もまだまだ余裕そうだし死神のベルガー粒子が切れるのを待ってみる?」


「持久戦をするのか?疲れるという概念も無さそうな敵相手に?」


「でもそれしか選択肢が無さそうですけど…。」


死神は彼女達の会話を聞き失笑する。


『…そんな選択肢も無いがな ーーーさて…この程度の能力者だと思われるのも癪だな 少しだけ本気を出そうか』


死神の視界には12本の軌道が確定されておりその全てが彼女達へ向かっている。魔女の集会は受けの姿勢でいた為にその場に居続けてしまっていたのだ。


『たった一つの能力で全滅しないでくれよ?』


死神は唱える。美世が良く使い、美世が初めて行使した時間操作型因果律系能力。その威力は様々な能力者達を屠り、赤い染みに変えてきた悪魔の能力。


『【再現(リムーブ)】』


魔の弾丸が12本の軌道線上を同時に走り軌道上の標的の肉を、骨を、彼女たちをも貫いていった。

魔女の集会みんな強ない?気の所為?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 先生がチート過ぎて魔女の皆さんが可哀想になってきましたw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ