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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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ラァミィという傑物

ここ最近、魔女の集会のキャラを上手く描けて個人的に嬉しかったです。

彼女達の複合能力、あの塊が爆発し周辺に与えた事象でシークの能力にあたりがついた。彼女の能力は振動系能力の類い。分子同士の振動に干渉する事でこのような現象を引き起こしたのだろう。


『ミヨが巻き込まれて飛んで行ってしまったが…あの子はとても頑丈な身体の造りをしている それに体重が軽いおがげで衝撃は殆ど抜けていっただろう…』


本当は事前に伝えておけば良かったのだが目の前の能力に意識を割きすぎて忘れてしまっていた。…後でミヨに謝っておこう。


死神が心の中で謝罪を述べている間に押し出された空気が穴を埋めるように四方から風が吹いてきた。その影響で空中を舞っていた土煙もうまい具合に拡散して視界が広がり魔女達の姿も視認出来るようになる。


『なるほど…この距離で爆発させた理由が分かった 普通は自身も巻き込んでしまうがサイコキネシスならではの対応だな』


ラァミィは自身と仲間達にバリアを貼り衝撃波を防いでいた。瞬時に攻撃から防御へ能力の切り替えを実行した彼女の精神力と能力の精度、速度に死神は称賛を贈る。


『素晴らしい キミは今まで見てきたサイコキネシスで一二を争う能力者だ 殺してしまうのが本当に惜しい』


そんな死神の称賛も彼女には届かない。今の姿では美世以外に言葉を届けることは出来ない。しかし彼女達に死を届けることは出来る。


「ねえ…今の攻撃、ルイスにも当たったんじゃない?」


サラはラァミィに恐る恐ると聞く。何故なら戦闘面ではこの女には勝てないからだ。


「…」


沈黙、つまり肯定の意味での沈黙。ラァミィは最初からリーダーであるルイスを巻き込む事を前提で攻撃を放ったのだ。


その事をこの場に居た全員が理解したが誰もその事を非難する事は無い。なにしろ元々ルイスはそこまで皆から信頼されている訳では無かったからだ。どちらかというとラァミィの方が信頼出来る。それが彼女達の共通の認識であった。


「シーク、振動で相手の位置と形状を認識出来た?」


「え、えっと出来ませんでした。()()()()()()()()()()。」


ラァミィはあくまで目の前の敵に専念して情報収集をする。その姿を見た仲間達はラァミィに信用を置き始めていく。


(どうしよう…どっちにつくべきかしら?)


この状況で敵に対してここまで冷静に判断し実行する事が出来るのは彼女しか居ない。そしてリーダーを同時に始末しようとする策略も指揮官として、リーダーとして必要な才覚でもある。


(ルイスよりラァミィの方が生存率が高いかも…)


サラと仲間達は同じ事を考えていた。この状況では目の前の敵の事しか頭に無かったがラァミィは同時にリーダーの排除も企てる程の傑物。…ここで生き残るにはラァミィの力が必須なのだと彼女達は判断した。


「ラァミィ、私は何をすれば良い?」


サラはラァミィに問う。自分は何をすれば生き残れる?…と。


「…サラはあの敵に憑依出来る?」


ラァミィは振り返らず敵が居るであろう位置を観察し続ける。その徹底した姿も見ている仲間達にとっては信用の出来る行動だった。


「ごめんなさい無理。あそこに居るのなら射程距離なのに何も感じないわ。」


「メリッサは?異空間を標的の周りに創り出せる?」


「さっきから探してるのにあそこの空間には何も無いわ。能力者おろか生物の反応も感じない…これって敵の能力によるものかしら。」


「そう、分かったわ…。」


そこには何も居ないのに何かが居る…。そんな理解不能な存在が居るという事実は彼女達の精神に悪影響を及ぼす。なので少しでも敵の正体を掴みたい。ラァミィ達は一歩一歩少しずつ後退りながら観察を続ける。


「…考えられる可能性は一つしか思い当たらないわね。」


「え?相手の正体が分かったのラァミィ?」


比較的ラァミィと良好な関係を結んでいるサラが皆の代表として彼女に質問を投げ掛ける。


「あなた達も冷静に今の状況を観察し少し考えれば分かるはずよ。」


「今の状況って…特異点とこの見えない敵と交戦しているって事よね?」


「そうよ。相手は特異点、つまりはデス・ハウンドが敵に回っている。そしてその仲間と思われるこの見えない敵はハッキリ言って特異点よりも危険な存在…つまり?」


ここで初めてラァミィは振り返り同士達の顔を見た。同士達はラァミィの表情を見て全てを悟る。


「で、死神(デス)…!」


サラがその名を口にした瞬間、ラァミィ以外の全員の顔色が真っ青になり足が固まったかのように停止した。


死神は彼女達の会話を聞きほんの少しだけ驚く。まさかこんなに早くバレるとは思ってもいなかったからだ。


『やはり彼女は危険な存在だな 彼女が居なければ正体を知られる事も無かった ワタシに関しての情報を外に漏らす訳にはいかない』


死神が一歩進むと地面に新たな足跡が生まれた。その事を目敏(めざと)く見つけたラァミィ達は一気に警戒レベルを最大限まで上げる。まだ仮定の話ではあるが、敵がもしあの伝説級の能力者である死神なら我々は間違いなく絶体絶命の危機的状況にあるということだ。


「聞いてた…?」


サラは自身の軽率な発言のせいで仲間を危機的状況に陥らせたと思い今にも泣きそうな表情を浮かべる。


「死神は自分の正体を知られる事を嫌っていると風のうわさで聞いたけど、真実だったわね。」


メリッサは敢えてサラの発言には触れず死神に関しての情報を仲間に共有した。今のは誰のせいでもない。サラが言わなかったら自分が言っていたと、ここに居る皆は同じ事を考えていた。それにここでサラ一人を責め立てたらその隙に死神が何をするか分かったものではない。ここまで来たらみんな一蓮托生だ。


「ボー、悪いんだけど死神がまだあなたに執着しているか確かめさせてもらうわね。」


ラァミィのこの言葉はボーに囮になれと言っているようなものだったがボー・ペティットはその事に関しては特に批判的な態度は出さず肯定的に了承した。


「いいぜ。あの死神に命を狙われるなんてすげー体験だからな。ヘヘッ、中々私も捨てたものじゃないなッ!」


ボー・ペティットは嬉しそうな声を上げてニヤリと笑う。それは普段の彼女らしい反応だった。


「そう、良かったわ。じゃあお願い。」


ラァミィは彼女の捻くれた性格を良く理解していた。だから彼女なら囮役を買って出るだろうと思い正直に話してみたが、彼女の思惑のとおりボー・ペティットは自ら敵の足跡に向かって歩いていく。


(何があっても私が守るから命を捨てるような事はしないでね。)


ラァミィは後ろから歩いてきたボーに小声で伝えた。死神に聞かれてしまってはボー・ペティットに攻撃を仕掛けてこないかもしれないからだ。そうなれば彼女が囮になってくれた意味が無くなる。


(テメーの尻はテメーで拭くぜ。)


普段の彼女からは考えられない程冷静な声にラァミィは勘違いしていたと気付く。ボー・ペティットの先程の反応は演技だった。彼女は本当の意味で囮役を買って出たのだとそこで初めてラァミィは理解した。


(こりゃあ死んだな。なんで死神が私を優先的に狙っているか知らねえけど、ラァミィが私を有効活用してくれるのは分かっている。)


ラァミィは口が悪くて良く私と口論になったがいつも私みたいなどうしようもないクズを話の輪に入れてくれたクソヤローだ。だから私は喜んでこの命を捨てられる。


「おい!テメーマジで死神かッ!?もしそうならこの…」


『どうでもいい』


死神は右手を銃を持つ構えを取ると何もない空間に突然リボルバー式の拳銃が現れる。そのデザインは美世が使う銃と同じものでこの拳銃は同一の能力である事は明白だった。なのでこの拳銃は軌道を創り出し視認のできない悪魔の弾丸を放つ。


そして拳銃の銃口をボー・ペティットに合わされ引き金が引かれた。弾道の軌道は確定され不可視の弾丸が彼女の眉間まで走り出す。そしてあと数センチの所まで弾丸が接近した所でラァミィの創り出したバリアと衝突し悪魔の弾丸は粒子のように拡散し散っていった。


しかしバリアも完璧には防ぎ切れずガラスの様にヒビ割れて能力を維持し切れず消失する。


「ボーさ、…って話してる最中だおわっ!?」


「ボー早く退きなさい!死にたいんですか!」


ラァミィは念動を使ってボーを自分の後ろまで引っ張り地面に転がした。


『この攻撃も防ぐとは!…だが耐久不足だ 2発連続は防げないと見たぞ』


死神は予想以上の強敵に頬を緩ます。殺す気で放った攻撃を久方ぶりに防がられ死神はギアを1段上げる。


『こういうのはどうだ?』


死神は左手を動かし能力を行使した。すると右手に持っている拳銃と同一のリボルバーが左手にも握られており死神は二丁持ちで敵に構える。


『さて…貴様たちが仲間を死なせずに守りきれるか見せてもらおうか』

※ルイスと美世は丘から転げ落ちて地面に寝そべってます。

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