表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
2.死神の猟犬
16/602

誰にも言えない性

雪さん視点のお話です。

私は東山(ひがしやま)(かおり)。組織では“淡雪(あわゆき)”親しい同僚達からは雪と呼ばれている。


普段の仕事は能力者を特定し接触してから保護か処理の判断をする事。これを私達はチームで行う。私の担当は能力者と(おば)しき人物の特定を行い実際に接触しに行く時に他のメンバーを護衛する事。


能力者と接触する際は相手が抵抗する時やこちらに危害を加えようとする時がある。この時どれだけ迅速かつ的確に対処出来るかでチーム全体の生存率が変わる。


決して楽な仕事じゃないしやりたくて始めた訳ではないけど今は真剣に取り組んでる。大切な仲間達を守れるのは名誉な事だし誰も死んで欲しくない。だから真面目に頑張るって決めたんだ。


そのおかげで私の頑張りが課長や同僚からも評価された。みんなから頼りにされている自覚はある。でも私はそんな出来た人間じゃない。全ては能力のおかげだ。


本当の私は業を背負ってるから。


今日は失敗の許されない仕事を課長から任されたから緊張する。この件は“死神”が関わっているから失敗したら恐らく首が飛ぶ。物理的に。


死神の現場を見た事がある。もう処理が終わった後だったけど建物内に能力者とその仲間達合わせて10人の死体が転がっていた。現場は昼間で人通りも多かったのに誰も気付いてなかったのが印象的だった。


自然と背筋が伸びる。思い出すだけで身が引き締まる。あんなのどうやっても出来ないでしょ!神業すぎ!怖すぎだよ!


そんな死神が推す女子高生“伊藤美世”さん。資料では大人しそうな子って思ったけど能力者に対して先入観で語るとそのまま死に直結する事を私は知ってる。


私のスマートウォッチが振動する。警備員室から情報が入る。


(来たね。)


私はとにかく軽く見られて舐められないように毅然とした態度で接しようと思った。彼女がそのような態度に出た場合“組織”に対して良い印象が与えられず彼女自身が危険に晒されるからだ。


歩いてくる伊藤さんを視界に収める。左右のビルを交互に見てる。その挙動が子供っぽくて愛らしい。まあ15歳は子供か。


こちらに気付いたね。早歩きでこっちに向かって来る。


何だろう……モデル歩きしながらモデルのお忍びコーデっぽい服を着たモデルみたいにキレイな子が来た。


この格好でここまで来たの?電車とか街中で目立たなかった?芸能人がコソコソする為のファッションで決めて来るのは流石に予想外。


そんな伊藤さんが凄く丁寧な挨拶をしてくれた。頑張って色々と準備してここまで来てくれたんだなー。


「うふふ。ご丁寧な挨拶ありがとうね。コチラが呼びつけたようなものだから変に緊張しないで良いからね?」


伊藤さんが緊張してるようだから落ち着いてもらえる様に声を掛ける。そしたら伊藤さんもリラックスした顔で面接の話をする。


そうだった……面接ね。私の仕事は彼女の能力者としての素質を測って上に報告する事。


「そうね。今日は面接……のようなものね。どちらかと言うと面談に近いかしら。あなたの事はコチラで色々と調べさせてもらったし、……死神、さんからも()()()されてしまいましたから。」


嫌な事を思い出しちゃった。これ死神が絡んでる案件でした……


伊藤さんを連れて目的地の14階にある特定課のフロアまで向かった。途中“朧”のおふざけにツッコミを入れつつ伊藤さんと尋問室に入室する。


伊藤さんは落ち着いているように見えるけどこれじゃ駄目ね。能力者は追い込まれた方が能力を発揮する。私は伊藤さん発破をかけた。


「そう言ってくれると嬉しいわ。じゃあ早速で悪いんだけど“能力”見せてもらえる?」


伊藤さんの目が一瞬見開かれるが直ぐに戻る。それから辺りを見回して壁沿いに歩く。


ここは特別頑丈に出来てるから伊藤さんが()鹿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


しばらく歩き壁の前に立ち止まり私に告げる。


「この壁の先に私達をモニターしている人が4人居ます。モニターはカメラの数と同じ4つでそれぞれ一人ずつ担当しているように見えます。私から見て左から飲み物を置いてる人、携帯灰皿を置いてる人、書類を置いてる人、椅子に座らず立っている人が見えます。」


これは透視能力?厚さ100mmのコンクリートの壁相手にそれだけ見えるのは凄い!


しかし伊藤さんは更に凄い事をやってのける。目を瞑ったままで透視を行う。そんなの不可能の筈!干渉せずに探知するのは制約を破る事になる筈よ!


私はその事を指摘する。しかし伊藤さんから返ってきた返答に私は更に驚愕する。


「まさか……そんな事ことがありえるの?この能力がもし本当なら今、私の目の前にいるのは非接触型探知系の能力者!?」


死神が目にかける訳だ。今までで死神がこのような提案やお願い(脅し)をしてきた事は私が知っている限り無かった。


私は直ぐ様立ち上がり課長達と相談する為に退室した。課長達は隣のモニター室に居るからすぐだ。


「課長!どうしましょう!」


「知るかあああ!!!やっぱり普通の高校生じゃ無かった!!!アーメン!!!!!」


マイクから声が流れる。


「雪さーん!私どうしたら良いんですか?」


(私の位置を知られてる!?やっぱり本物!!)


そこからは嵐のようだった。世界初の非接触型探知系の能力者の対応など直ぐに出来るわけがない。この事実が外に漏れたら第三次世界大戦だって現実的に起こり得る。世界中の国々、組織、団体、とにかく超能力の存在を知っている者達全員この東京に押し寄せて来る!


死神が私達に求めた事は面接じゃない。彼女の保護を私達に求めたのだ!そうに違いない!


私達は伊藤さんを保護する形で話を纏めた。そうするしか無い。尋問室に入る為ドアを開けるとすぐに伊藤さんと目が合う。


これ以上驚かさないでー!!


「あーーえーと。伊藤美世さん私達“組織”は貴方のような能力者を歓迎します。それでどの部署に配属されるかは上の人達が決めるので決まり次第連絡します。」


私達だけでは判断付かない。部長クラスのお偉いと“上の人達”に託そう。うんそうしよう。


「あの私、先生と同じ部署の能力者を始末する部署が良いです。先生からもそこに所属してもらうと聞きました。」


先生?もしかして死神の事!?この2人どれだけ仲良くなっているの?しかも“上の人達”より更に上の人(死神)からとんでもない話がされてる!?ていうか話せたの!?誰も正体知らないのよ!?私も文面上でしか遣り取りしたことがない。


しかし彼女はまだ子供だ。守られるべき立場だ。誰かに言われて人殺しをするなんて間違っている。


「これは確認なんだけど本当に良いの?あなたまだ高校生なのよ?能力者の始末って事は人殺しをするという事なんだよ?」 


「はは。」


その日初めての笑顔を頂いたがドン引きしてしまった。あまりに良い笑顔で肯定された。伊藤さんにとって人殺しとはその程度の事なの?最近の若い子の考えが分からない!悟り世代ってやつなの!?


そして私は考える事を放棄した。死神に逆らう気も無いのでとりあえず彼女のサポートはきちんとこなそう。


「ではその方向で調整しますね。ーーーじゃあここを出て伊藤さんのサイズを測定しましょうか!」


援軍が必要よ!援軍〜!和裁士さん(援軍)は組織の癒やし枠!彼女達が綺麗なお洋服から可愛い小物まで作ってくれるから女性陣からの人気が凄い。私も日頃からお世話になってる。


スマートウォッチで援軍要請を出したらすぐに向かうとの連絡が入る。本当にありがとう!


「勘弁してもらえないでしょうか雪さん…。」


和裁士さん強い!伊藤さんが捨てられた猫みたいになってる!降参のポーズからそのままバンザイして服を脱がされる。


(ん?ブラが合ってないように見える。あれじゃあ本人も違和感あると思うのだけど…)


「…伊藤さんってブラ自分で選んでる?」


自分で買って選んでるって誰かに教えてもらったり店員さんに見てもらったりしなかったのかな?和裁士さん達!みんな集合!女子3人寄れば文殊の知恵!あのブラは見た目で選んで購入して合わなかった説や急いでて家族の誰かのブラを着けてきた説など様々な話し合いがされた。真相は如何に…良し、聞いてみよう!


「お母様やお友達にブラの選び方とか教えてもらったりしなかった?」


これは女の子として必要な質問!


「お母さんは居ませんし友達も居ません。」

「美世ちゃん!!」


駄目だった。私の業が彼女を抱けと言った。


私には人には言えない(さが)がある。その性に目覚めたのは十年前。私が剣道を辞めて時間を余らしてふらふらとしていた時だった。


家の近くにある本屋に入った時に“それ”に出会った。


“百合漫画”


表紙を見てすぐに会計を通し自室で読み耽った。堪らなかった。女の子と女の子の恋模様。同性愛というあまり人に言えない恋愛。私は虜になった。


翌日再び近くの本屋に入った時に“それ”に出会った。


“BL漫画”


表紙を見てすぐに会計を通し自室で読み耽った。堪らなかった。男の子と男の子の恋模様。同性愛というあまり人に言えない恋愛。私は虜になった。


それからは女の子と女の子と女の子の本や異種間BLなどにも手を出し、人には見せられない怪物と化した私はオタク文化に惹き込まれてオタクの仲間入りを果たした。


最近ではコスプレイヤーやアイドルのSNSを監視し崇める活動を行なっている。推しは推せるときに推せ!


美世ちゃんを見た時から何かあると分かっていた。推しを見つけた時と同じ感覚があったのだ。少し危険な香りがあり影がある女子高生。私の性癖どストライクの3次元とか耐えられない!そこに!地雷メンヘラ臭がする服装に悲しい過去!私が推さないで誰が推すのよ!!!


この娘は妹にします!義妹です!美世ちゃん妹属性高いと思うの!


そこから美世ちゃんとデートの約束を取り付けて美世ちゃんと和裁士さん達の個人ラインをゲット出来た。幸せ過ぎる〜みんな好き〜!


美世ちゃんとお茶をしていたら時間はあっという間に過ぎて美世ちゃんが帰宅する事になった。私は少し心配する。あまり上手くいっていないご家庭だから帰らせたくない。お家が嫌になったらお姉ちゃんのお家に来るんだよ!


そこで推しの為に出来る事を考える。


私、決心した。美世ちゃんは私が必ず守ってみせる!今日から単推しだ!まずは女の子の幸せをこれからいっぱいお姉ちゃんが教えてあげよう!明日のデートは楽しみにしていてね!美世ちゃん!

明日から美世と先生のツーマンセルで殺し屋になるための訓練を行うお話が続く予定です。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ