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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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コンビネーション

戦闘描写はスムーズに進めたいですね。スピーディーな方が個人的に好みです。

しまった…特異点の事をすっかり忘れてしまっていたわ。彼女も放置する事の出来ない強者。ボーには悪いけど私は目の前の障害をどうにかする必要があるわ。


「ボー悪いわね。影は戻させてもらうわ。」


足跡の周辺を囲っていた影を解除し自身の足元まで影を引っ込める。


「ルイスお前…!」


「仕方ないでしょう。私も特異点を相手にしないとなの。その代わりに…ラァミィ、同志に指示を出してボーを守ってあげて。敵は何故か彼女にしか興味はないみたい。」


「…はァー分かったわ。」


ラァミィなら上手く指揮してくれるでしょう。これで特異点に専念出来る。


「私は特異点とサシでやるからこちら事は気にしないで。」


「聞いた?同志諸君、私達はあの足跡の敵に集中します。協力してあの敵を迎え撃ちましょう。」


「「「「了解。」」」」


これで隙を見てこの戦いから離脱しやすくなったわ。これから特異点と一人で戦うのはリスクが大きいけれどあの足跡の敵よりマシね。影で囲ったから分かったけどアレは私達とは次元が違う存在ね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「少し離れない?」


私はジェスチャーを使って特異点を同志達から離れた場所まで誘導する事に成功した。


『固まられると巻き込んでしまうかもな さっさと決めてしまおう』


死神はその場で屈伸し膝と腰を曲げて姿勢を低くしてから一気にバネのように身体を伸ばして跳躍した。そうすると死神が居た地面は大きく抉れ、敵もその事にいち早く気付き防御を取ってみせる。


『…やるな』


死神は標的であるボー・ペティットの1メートル手前で違和感を感じ取り、その場で拳を振るうと何かと衝突して空気を震わせた。


《バリア…という事はあの女はサイコキネシスか 厄介な相手だ》


能力者達が徒党を組む際にどういう能力がチームに必要か?という時に必ず名前が上がるのが念動能力者(サイコキネシス)だ。その能力の汎用性と単純なパワーはどの組織も欲するもので、数も比較的に少ない事もあって貴重な戦力として重宝される。なのでここで殺してしまうのが惜しい人材ではあるが…。


「シーク!合わせなさい!」


サイコキネシスであるラァミィはボー・ペティットをバリアで守りすぐさま攻撃に移る。魔女の集会の中で一番新人であるシークを呼んで能力を掛け合わせた。


ラァミィとシークは肩がぶつかるぐらいまで近付き右側に居るラァミィは左腕を、左側に居るシークは右腕を前に突き出した。そして肩や肘、小指球密着させてベルガー粒子を絡ませる。そうすると彼女達の手から空間が捻れて歪みが発生する。この歪みは強力なエネルギーを内包し大気と触れると擦り切れるような異音を発していた。


『ほう…パスも繋がず別種の能力をここまで合わせられるとは驚いた ここまでの事が出来る能力者達とこんな辺境で出会えるとは』


ラァミィと呼ばれたあの女は恐らくこいつらの中ではサブリーダーのような地位に居るのだろう。


能力の使い方を見る限りサイコキネシスとしてもかなり上位の実力…。それに加えて周りを上手く動かしている所を見ると頭の回転も良い。タイプ的にはミヨに近いな。こういう相手を敵にすると厄介極まりない。


死神はラァミィからシークに視線を向ける。


そしてもう一人…シークと呼ばれたあの女、一番最初の攻撃の中で地面に干渉したあの能力、ワタシは最初地面だけに干渉出来る能力だと思っていたが予想以上に自由度が高くそれに加えて能力の精度も高い。ベルガー粒子量が多いだけあって精度も素晴らしいな。


ワタシとしては彼女達の能力をミヨにコピーしてもらいたい。彼女達の能力はどれも中々に強力で悪くない。ミヨの戦力を増強する為にもまだ殺さない。殺すのはあの欠点だらけの能力の彼女だけだ。


死神は攻撃を行なおうとしている二人から視線を外してボー・ペティットを見つめる。死神の顔は落胆に近い表情であり見たものに非常に冷たい印象を与えるもので、まるで死神と出会う前の美世とそっくりな雰囲気だった。


あの能力は駄目だ。まず運用方法が悪い。血液操作の能力は何度か見たことがあるがアレは一種の異形能力だ。


体内の血液を操作して身体能力を高めたり傷を負った際に内側から傷口を塞いだりとそういう運用方法なら使える。しかしあの体外に多量の血液を出すのは弱点を敵に晒しているのと同義。あの女、放っといたら勝手に死んでしまうのではないか?


《ミヨならもっと良い運用方法を考えるのだろうが…寿命を縮めるような能力は不要だな》


心臓、臓器周りに負担が大きすぎるあの能力は論外と結論付けた。


《…そろそろコチラも準備万端のようだな》


視線を目の前に居るラァミィとシークに戻すとちょうど攻撃をしようとしていたので死神は観察を始める。


「シーク!最初から全力で行くわ!」


「はい!」


ラァミィとシークの手のひらには凄まじいエネルギーの塊が創り出されていた。月明かりがその塊に照らされると妙に明るく見えてまるで水面のようだったが形状は安定せず全容を把握出来ない。


正面に立っている死神からその塊を見ると光が屈折しているのか、彼女達の手のひらがゆらゆらと揺らいで大きく見えたり小さく見えたりと安定しない。かなり不安定なエネルギーだと死神は考える。


《念動能力と…もう一人の能力が分からないな》


シークの能力を死神は推測しきれなかった。能力の候補として5つ程思い付いたが実際に食らってみないと判断が付かない。だがこの姿では攻撃を食らう事も出来ない。なのでその場で停止して観察し続ける事にした死神は分かりやすく足跡をその場に創り出した。


「ラァミィ!あそこ!」


「みんな下がって!巻き込まれるわよ!」


ラァミィは仲間に下がるように声を掛けたが掛ける前に皆はもう避難をしていた。この能力の威力を良く知っていたからだ。


「やっちまえ!ラァミィ、シークッ!」


真っ先に避難していたボー・ペティットの声を合図にエネルギーの塊が死神に向かって射出された。そしてその瞬間、彼女達の髪が後ろに流される。それまでは無風状態であったにも関わらずそのエネルギー体が二人の手を離れた瞬間から辺り一帯に暴風が吹き荒れた。


彼女達の手の中にあった時までは二人のコントロール下に置かれていたので、エネルギーの指向性を内側に巻き込むように回転させる事によって抑え込んでいたのだ。しかし彼女達の手を離れた瞬間からエネルギー体の周りにある空気と衝突した影響でそのエネルギーに押し出される形で暴風が発生していた。


トンネル内を新幹線などが走る事によって空気が押し出された際に発生する振動音と良く似た轟音が地面を伝って鳴り響く。


《この威力と能力は…》


エネルギー体は足跡が生まれた位置、つまり死神が居る位置で爆発し衝撃波が生まれた。


この能力は言わば爆弾だ。爆発した際に発生するエネルギーが外側に向かって行く事で標的に致命傷を負わせる空気の爆弾。その能力の名前は空気振動爆弾(エアーインパクト)。それが彼女達の複合能力の名称だった。


「なっ!?」


「先生っ!」


爆弾の震源地から少し離れた場所に居た美世とルイス達にもその攻撃の余波が及ぶ。地面の表面は水しぶきのように舞い上がりまるで雨が降り注ぐ地面のようだった。


美世はその事を認識しながらも、体重が軽い影響で地面と一緒に浮かび上がり、そして衝撃波となった大気と一緒にドーム状に広がって美世はその波と同じ方向へ投げ出された。


「わっ!?」


震えた空気を通して私の身体が振動している。細胞の一つ一つまでもが震えているみたいで上手く身体を動かす事が出来ない!


(ていうか何であの女も転がり落ちてんの!?)


美世は丘から転がり落ちながらも客観的に自身のこととリーダーと思われる魔女を見ていた。


(あのバカ共ッ!)


特異点に集中し過ぎたせいでバカ共の行動を見逃した結果、何故かリーダーである私までも吹き飛ばされたんだけどっ!?


しかもこのエアーインパクトは身体を振動させるのでその影響で身体のコントロールを奪うという効果があるのよ。そのせいで私はろくに受け身も取れず丘を転がり落ちるしかなかったわ。


(あのバカ共…生き残ったとしても絶対に後で殺すわ。)


ルイスは結局10数秒ほど転がり落ち、そして力なく地面に横たわるのだった。

魔女の集会の実力順はリーダーのルイス、サブリーダーのラァミィ、新人の順番です。他は大体横並びか能力の有用性で変わります。

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