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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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両者の齟齬

お久しぶりです。地獄から舞い戻って来ました。また毎日投稿(5敗)を続けて行きます!

まず先生が行なったのは身体中から無数の怪腕を生やす事だった。私が生やす怪腕とフォルムが同じだから同一の能力だと推測出来たけど、問題として挙げられるのはその怪腕の数だ。


私は勝手に怪腕は左右一本ずつがディフォルトだと思っていた。だけど能力なんだからそもそも人体に寄せる必要性が無い。どう考えても怪腕が2本より3本も4本もあった方が絶対に良い。


でも先生が創り出した怪腕のあの数は異常だ。数も凄いんだけどそれをなんて事無いみたいに同時に一瞬で生やしたのが理解出来ない。私が怪腕を生やすにはそれなりの時間が必要だ。実戦においてはそこまでの致命的な遅さでは無いけど先生はほぼノーモーションでやってのけた。この速さを知らずに先生とやり合ったとしたら…私は一瞬で殺されていただろう。


(ヤバいヤバいヤバい!先生がマジでヤバいのは知っていたけどこれは想像以上にヤバいっ!)


一文にヤバいが5つ使われるぐらいにはヤバい。私の言語能力にも支障を及ぼすぐらいには。これが世界一の能力者としての一端…。世界中の能力者から恐れられる理由が嫌でも分かる。


これは天狼さんであっても実力の開きを感じる。実力的に私と天狼さんが手を組んでも先生の足元にも及ばない可能性が非常に高い。


『なんだ?何をそんなに呆けている?ミヨならこのぐらいなんて事ないだろう』


『先生…私は今まで先生から掛けられた言葉を信じれなくなりました。』


『何故だ!?急にどうした!?』


私の言葉に反応して先生から生えた怪腕も驚きのリアクションを取る。私の怪腕と違って先生のは感情で動くのか。


『だって先生は私の事を凄い、素晴らしいって言ってくれて私は特別なんだよ感出していたのに実際は先生の方が凄くて特別なんですもん。私なんて先生と比べたらクソ雑魚ナメクジじゃないですか。』


私のこの言いがかりに近い半分ヒスの入った暴論を真に受けてしまった先生の導き出した答えは…怪腕を減らして左右に一本ずつにする事だった。


…え?今更怪腕減らしてもあの大量の数を無かった事には出来ませんよ?流石に【削除(リボーク)】みたいに無かった事にはしませんからね。ここだけで先生のコミュ症具合が良く分かる対応だった。


『ーーーたまたま調子が良かっただけでいつも出来る訳では無い』


ふ、フォローが…虚しい。


『すいません私が悪かったです続けてください。』


この空間にシリアスな空気はもう無い。先生の天然さに空気も浄化されてしまったに違いない。


『ーーーそうか…すまない先の続きをしよう まずはこの空間から脱出することが優先事項でありその方法は…』


先生は自身(私の軌道を利用した姿)の手と怪腕の計4本の手を四方に伸ばして何かを掴んだ…ように見えた。


『…何を掴んでるんですか?それともなにかの構え?』


私の視点からでは4本の腕を適当な位置までピンと伸ばして手を掴む形にしているだけに見える。


()()()()()()()()()()()()()()


『へ?…概念って掴めるんですか?』


私はその場で手をにぎにぎしてみるが掴めているのか掴めていないのかすら判断出来ない。私にとって空間の概念という概念が分からないのだから仕方が無いと言えば仕方が無い。ないない。


『ミヨ ワタシの能力は?』


『え、えっと時間操作型因果律系能力です。』


『そうだ この能力の名前の通りに時間と因果律は切っても切れない関係性 つまり時間と因果律がセットになっている この世界に過程を踏んだ事象は全てに因果が発生する それはどんな能力であっても逃れられない制約だ 私達(例外)を除いて』


『…先生の言っている意味は分かります。それで今の状況と何の関係性が?』


先生の言う関係性が今の関係性に繋がるビジョンが見えない。今までの授業で1番難解かも。今はノートもシャーペンも無いのに…これでは合格が貰えないかもしれない。


『敵が自分達より強い能力者であっても 能力がどれだけ強力であっても どれだけのベルガー粒子があっても 射程距離もあっても 効果範囲も凄まじくあってもそんなもの時間操作型因果律系能力の前ではなんの問題も感じさせない些細な情報だ それは何故だか分かるか?』


『先生が最強だから!』


真実はいつもひとつ!これが正義だ!強さこそ正義!つまり正義は先生!ジャスティス!


『…ミヨはたまに凄く頭が悪くなるな 上振れも凄いのだが下振れも凄い 普段は優秀な子なのだがな…』


問題児を前にしている疲れ果てた先生のような表情を浮かべる死神(先生)。下振れって言った?今の私って下振れなの?


『話を戻すぞ?時間操作型因果律系能力はそれ以外の能力とは次元が違うからだ これは比喩表現ではなくそのまま意味で捉えて欲しい』


『捉えました。』


両手をその場で合わせてパチンと鳴らし(あたか)も本当に捉えた風に比喩表現で表した。伝われ私の渾身のギャグ!


『それでだ』


(スルーされた!流石先生、私の扱い方がわかっていらっしゃる!)


『キャンパス…またはフィルムを想像してみてくれ そこには1枚の絵が写っている その絵には様々の情報が描かれていてその情報がそのまま世界に反映される』


『はい。』


多分だけど私レベルでも分かりやすく解説してくれている。とても有り難い事なんだけどだんだんと自分が情けなくなってきた。だって敵にはこの異空間に閉じ込められ理華が憑依された事にもすぐには気付けず終いには先生が助けに来てくれた。しかもついでに私に分かりやすく解説までしてもらってる…なんだ?これは一体何をしたらこうなるんだ?私の夏休みとは?(哲学)


『今回の場合その絵の中心にはミヨが描かれており周りにこの異空間も描かれている この異空間を消すのは容易ではない 何故ならとても強力なインクを使われて描かれているからだ このインクの強力さは能力の強力と比例していると考える』


『ハイ。』


駄目だ…文章がテストみたいになってきて耳に入ってこない。聞こえてくるのは先生の美しい声だけ。…声?


あ、そういえば先生の声で思い出したけど先生の新しく録音したASMRボイスのデータをスマホに移すの忘れていたな。今考える事じゃないけど。


『だがここでフィルムとして考えてほしい この異空間はいつどのタイミングでフィルムに写っていた?』


『えっと…魔女共とやり合った時だったんで1時間以上はま…』


『そうだ!時間だ!いま時間で考えただろう?どんな能力であっても時間という制約に縛られている 因果が発生しているのだ』


お、おぉ…凄い前のめり気味に先生が入ってきた。もしかしたら話は佳境に入っているのかもしれない。でもその話をしている片方が未だに理解していない事を片方が理解していない。SNSで良く見かける光景だ。


『良いか?ワタシとミヨはインクを消すような事はしない つまり絵自体に細工はしない ワタシがこれから行おうとしているのは絵が描かれた()()()()()()()()()()()()()()()


『あ!』


脳のシナプスが一気に刺激されて脳全体に電流が流れた。


『次元、そう次元…そうか。誰もそこの領域に手を出せない。だからそこに干渉出来るから…』


蘇芳が何故あそこまで先生を敵視しているのか…何でも知っているのにあれだけ警戒している理由の一端を深くまで理解出来た。知っていてもその土台ごと、蘇芳の干渉出来ない領域を操作出来てしまうから先生は死神として恐れられているんだ!


美世は今の自身の状況、つまり異空間に閉じ込められている状況とは別に蘇芳の先生に対するスタンス、つまり現在進行系の蘇芳の状況について考えていた。美世と死神と蘇芳との三者関係も常に考えておかねばならない“状況”なのだから。


『分かってきたか?時間が進む事を止められる能力者は私達(ワタシ)とミヨだけ 時間を逆行させるのも削除出来るのもだ フィルムを巻き戻して余計な所を完全にカットする ワタシとミヨ以外の人間はその事を認識する事すら出来ない 出来るとしたら推測ぐらいだろう』


『分かりました…やっと問題そのものが分かってきました。』


『フフフ 分かってきたのなら問題無い』


死神は満足そうに頷き、美世を見つめていた。しかしこの両者との間に深い齟齬がある事を死神は気付いていなかった。

〉(死)〈『ミヨ命!邪魔な奴は大体敵!』

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