同情を食べる
区切りよく終えました。
私でも良く知らないサイズを他人に知られるのはストレスがマッハでそこから生み出されるソニックブームをしゃがみ撃ちしたい。
「勘弁してもらえないでしょうか雪さん…。」
「だーめ♪」
私の周りにレインボーな柄のメジャーを持っている女性が2人、しかも私が逃げられない様に包囲を縮めている。そしてみんなニッコニコなのが少し腹が立つ。
「この和裁士さん達は私達“組織”のスーツや装備を作成供給してくれているの。大人しくお縄に付きなさい!」
メジャーを縄の様に持ちポーズを決める雪さん。3人に勝てるわけ無いだろ!
両手で降参のポーズを取り服従の意を示す。誰かに服を脱がされるのは久しぶりだ。お母さんとお風呂に入る時に良く脱がされたな。それ以来だよね。
そんな思い出に浸る暇もなくパーカーを脱がされる。こんな所で下着姿を晒すなんて!
「…伊藤さんってブラ自分で選んでる?」
謎の質問に私は混乱する。
「はい自分で選んで買ってますけど?」
雪さんとわさいし?さん達が顔を近付けてコソコソと何かを話してる。話し合いが終わり雪さんが代表して更に質問してくる。
「お母様やお友達にブラの選び方とか教えてもらったりしなかった?」
「お母さんは居ませんし友達も居ません。」
「美世ちゃん!!」
ガバっと抱きついて来た。おお柔らかい!すごい!!でも踏み込みが早すぎて反応出来なかった!やっぱりこの人只者じゃない。でもそのまま頭をなでなでしてくれる。おおー私を甘やかしてくれ〜
「大丈夫。心配しないで!ここには美世ちゃんをサポートしてくれる人達と組織と私が居るから!」
どこぞの武力介入している刹那い主人公と似たような事を言う雪さん。私ってツインドライブ搭載型探知系の能力者?
あと私の名前を呼んでくれて嬉しい。今は先生と雪さんの2人だけだもん。
「えーと?ありがとうございます?」
「あのねブラってね自分に合ったものを着けないとシルエットがキレイに見えないし形も崩れちゃうの。それにブラ跡が付いちゃうと中々跡が消えなくてね?それと…
雪さんが熱弁を奮って両隣の和裁士さん達がうんうんと頷いてる。何だこの空間…ブラジャーの講習かな?
…明日ね私お休みだから一緒に買い物に行こうね?」
「はい?」
「よし!年下の女の子との買い物なんて初めてだから楽しみだなー♪」
「はい?」
はい?何て?何て言ったねあの人?みんな聞いてた?私は聞いてなかったよ。
雪さんにもう一度話を聞こうとしたけど和裁士さんに捕まりそれどころではなくなってしまった。えーんえーん
「美世ちゃん何か運動とかスポーツしてる?」
「え?してないですけど?」
雪さんがボトムスを脱がされてあらわになった私の足や腰回りを触りながら更に聞いてくる。
「すっごく引き締まってるし筋肉もついててスタイルが良いもんだから。」
和裁士もうんうんと頷いてる。運動というか【マッピング】する為に小学生の頃からずっと歩き続けているせいかな?
「ジョギング?は小さい頃から続けていますね。」
「へー!いいなージョギング。私もしようかなー。」
和裁士さん達2人もうんうんと頷く。あなた達は赤ベコか!
サイズを測り終えた私達は和裁士さんと雪さんと私とで連絡先を交換し合い解散となった。本当に意味が分からない。誰かちゃんと説明して。
「2週間もしたら出来上がると思うからその時に袖を通して微調整しましょうね。」
2週間が早いのかどうか分からない。和裁士って職種もイマイチ分からないから雪さんに1つ質問を投げかける。
「あの和裁士ってどういう意味なんですか?」
「和裁士って元々は着物や反物を作る職人の事を示す言葉で使われているの。でね?ここの組織って古くから存在してるからその名残で和裁士と呼び続けているみたいな事を先輩が言ってたような?」
要領を得るような得ないようなふわふわとした解答で私もふわふわとした時間となる。
その後、私達2人は一階まで降り私のバックパックが返却されるまで飲み物を摂りながら休憩する事にした。
「今日はとりあえず終了ね。2週間後にまた来てもらうからその時に色々と説明したいと思います。ここまでで質問はある?」
私はこのもやもやとした思いを解消するため雪さんに質問を投げる。
「雪さんは彼氏居ますか?」
ざわ…ざわ…
周りで同じく休憩していた人達がざわつく。特に男性が。
「それは答えられませーん♪」
「私の小さい頃の写真見せますから。」
「今は居ないよ。」
食いつきが速すぎてビビった。周りの男性陣から称賛の目で見られる。女性陣にも嬉しそうな人がちらほら。
雪さんみんなに好かれ過ぎてて凄いと言うべきか雪さんならそうだよねと納得する所もある。
それにしても雪さん私の事好き過ぎん?気の所為?
「雪さんみたいなキレイな女性がフリーなんて意外です。」
「案外職場に出会い無いし良い男も居ないし独身貴族を楽しんでるよ。」
周りの男性は雪さんにとって目と鼻の先に居るのに、出会ってすらないし良い男でもないと認識していたという事実が死刑宣告になり男性陣は塵となった。コーヒーに混入するから勘弁してほしい。
「美世ちゃんは?気になるクラスメートとか彼氏は居るの?」
今度は雪さんから彼氏は居ないのか聞かれ高校の男子にすら話しかけられた事が無いと答えると塵となった筈の亡者共が復活した。どんな能力だよ。
そんなこんなで時刻は夕方5時を回りそろそろ帰宅する事にした。気付いたらあっという間だった。
生まれて初めて女子会っぽい話が出来た伊藤美世(15歳高校生)は大いに満足していた。
(私のバックパックちゃんが帰ってきたところだしね。)
バックパックにピンを指しているので〈地図〉に表示された瞬間認識出来たので席を立つことにした。
私のバックパックを持ってきてくれたのは複雑な表情をした…えっと名前が出てこない。朧気に覚えてるのは雪さんに開幕アッパーを決められた良い奴。朧気に覚えてるのはそれぐらい。朧気?…“朧”!
雪さんの同期の朧さんが神妙な顔で私にバックパックを渡してくれる。何だ?
「じゃあ美世ちゃん約束通り明日ね!連絡するから!」
明日?約束?ああ雪さんは勘違いしてるんだな。約束の日は2週間後の筈だ。ハッハッハッ!もう雪さんのオマヌケさん♪(悪口)
「今日はありがとうございました。ではまたの機会にお世話になります。」
私は丁寧に挨拶をし玄関を出ようとしたら朧さんに声を掛けられる。
「伊藤美世。君にとってそのバックパックの中身は何だ?」
バックパックの中身?急にどうしたんだろう哲学の話か?
…あーそうか中身を見たのか。そりゃあ見るよね。爆発物があるかもしれないし他にも危険物が隠されてる可能性だってあるもの。
「私には帰る場所が無いのでここが家なんです。」
私は背負った自分のバックパックに親指を指しながら質問に答える。
そうすると眉間にシワを寄せた朧さんが得心が行った表情でそうかと答える。雪さんは逆に眉間にシワを寄せて頭の上に?を出す。
私はそれ以上なにも言わずに雪さん達に背を向けてビルから出るのであった。
帰りの電車に揺られながら今日の事を振り返る。本当に殺し合いにならなくて良かった。良い人達だったし結構ホワイトな職場だった。
それでもお母さんの仇が居たら容赦しなかったけどね。容赦はしないけど勝てるかは分からなかった。なんせ能力者が5人も居た。ビルのほんの一部しか【マッピング】していないのにこの数は凄い。
初めて能力者と相対した時の事を思い出す。先生の助けが無ければ間違いなく死んでいた。能力同士にも相性があると思うけど私の能力は補助として力を発揮するタイプだ。直接的な能力とぶつかると私は為す術もない。逆に先生の能力はかなり直接的な能力だが弱点が無い訳では無いと思う。
先生の能力に対して相性の良い能力者が居たら勝ち目が無い。まだまだ準備が足りない。組織を通じて情報を集めていこう。
組織なら私以上に情報を持っている筈だし上手く立ち回ればそれなりの地位だって手に入るかもしれない。その地位を使えばお母さんを殺した赤い○を見つける事だって叶うかもしれない!
私は無意識に構えてた左手の力を抜く。最近私の感情に反応して左手が動いてしまうことがある。恐らく先生の能力である【再現】を完全に制御出来てないからだと思う。
使えるが使いこなせていない能力というものは厄介だ。能力を発動出来るのと勝手に発動するのとでは天と地の違いがある。
私がうーんうーんと悩んでるとスマホもウーンと震える。
雪さんからだ。
[明日は渋谷駅で待ち合わせね♪時間は10時!遅刻厳禁!!]
「渋谷駅のどこ?」
渋谷駅は広い。あまりにふわふわとした待ちあわせに笑いが出る。やはり明日買い物デートに行かないといけないらしい。
陰キャである私が誰かと下着を買いに行くとは世も末だ。昨日までの私ならこんな事言っても信じてもらえないだろう。
明日の事を考えながら笑うとは何時ぶりだろう。こんな感情が私にも備わっていたとは驚きだ。
「明日はなにを着させられるのかな…。」
そんなどこか浮かれている私も悪くないなと電車に揺られながらそう思うのであった。
私事ですがユニーク数が200人超えてました。有り難いものです。
ブクマもしてくれる人達が居てびっくりしましたがとても嬉しいです!モチベーションが上がります!原稿は上がらないけど!
これからも私は殺し屋として世界に寄与するを応援してもらえると幸いです。
来週もぜってえ見てくれよな!




