任務より派閥争い
気が付いたらこんな時間でした。私のワールドクロック狂ってるかもしれません。
「天狼さんのお父様は京都支部で1番偉い人なのは知っていた?」
「いや初耳だけど。」
「支部長ですよね。所謂“上の人達”です。今回の任務を要請した一人でもあります。」
上の人達…何回か聞いたことがあるけど誰なのかは知らなかった。そっか天狼さんのお父様が。
「天狼さんは京都出身の能力者で代々幹部を務めている家の長女でもあるから立場がややこしいの。天狼さんって東京支部に所属しているでしょ?ずっと家から猛反対されているけど実力で手に入れた地位だからね。誰も文句言えない状況ではあるんだけど…。」
理華の話しぶりから天狼さんの立場を思いやる気持ちと京都のやり方に文句があることが伝わってくる。
「家から茶々入れられている?」
「そう。本当だったら天狼さんが今回の任務を担当するはずで成功すればもっと地盤を固められたのに…。やっぱり家からの妨害があったの、最終的に天狼さんが私を推した形でしか天狼さんの助けになれなかった。」
そういう事か、理華の調子がおかしかったのはこれが理由。ただでさえ今回の任務は難しくてしかも初任務なのに失敗すれば天狼さんの立場を悪くしてしまう。もし今回の任務が失敗すれば理華を推した形の天狼さんは責任を負わされる可能性がある。
「派閥争いは昔からあるからね。それこそ組織が大きくなり始めた時から今現在でも続いている。」
「派閥争い派閥争いってみんな言ってますけど誰が争っているんですか?」
あまりに私は組織の事を知らない。正直関心なんか無いけど理華と天狼さんが絡んでいるのなら知っておきたい。
「全員、って言ってもいいかもしれない。国同士、支部同士、家同士、個人同士…規模はそれぞれだけど皆争っているのが現状だね。」
「血の気が多い人達が多いんですね。」
ハーパーのほわほわした感想は嫌いじゃない。だけどもうちょっと深刻そうな雰囲気を出してほしいよ、ハーパーの周りだけ空気軽いもん。
(…私も見習ってみるか。)
「じゃあ今回の任務成功させれば天狼さんの地盤を固められるって事じゃん。任務を成功させれば報酬を貰えて理華も処理課に入れて良いことしかない話だよね?」
私の発言で理華とオリオンさんがポカーンと間抜け面を晒す。なに?別に間違った事言ってないでしょう?
「あんたさ…自分の立場と言っている事理解してる?派閥争いしてるって言ったよね?あなたは派閥争いに介入しない立場でしょうが…。」
「何で?派閥争いする気もないし立場って?」
理華の言っている事が理解出来なかった。私の立場って?
「あなたは死神の下についてるでしょ?死神はどこの派閥にも所属していないの。あいの風もそうだってみんなが認識してる。そこまでは分かるよね?」
「まあ…先生がそういうのに興味なさそうなのは分かる。私もそんな感じ。」
「で、私は天狼さんの教え子で今回は天狼さんの推薦で来ている。つまり私はもう天狼さんの派閥に入っているとみんなが認識してるの。そんな私にあからさまに手を貸したらどうなるか…分かるでしょ?」
「ああ、それなら大丈夫。私もう派閥みたいなの作ってるし。」
「「は!?」」
「あ、そうなんですね~!」
オリオンさんと理華はビックリしたリアクションでハーパーはそうなんですね~と余裕の表情。多分良く分かっていないなこの人。
「いつ!?どこで!?誰と!?」
「天狼さんと淡雪さんとで…。」
「興味無かったんでしょ!?ていうか天狼さんが!?」
天狼さんから理華へは話が言っていないのか。話さなかったのは理華を守るためかな。
「興味無いよ?ただ天狼さんには良くしてもらってるし天狼さんは今の京都をどうにかしようとしてるから手を貸したいなーって。それに理華も天狼さんサイドならもう協力関係って事だし、理華とは友達だからさ。」
「それは嬉しいけどさ…。」
理華は恥ずかしそうに顔を逸らして髪を弄りながらボソボソとだけど嬉しいと言ってくれた。うん、嬉しいと思ってくれるのなら協力するよ私は。
「…それは死神に話したのかい?」
「話してません。巻き込みたくないですし誰も巻き込めませんよね?先生に派閥争いの話題を振れる人居るんですか?」
「それは…そうだけど、一応聞いておいた方がいいんじゃないかな。」
確かに一応は聞いておいた方が良いのかな。でも全ては話せないかな。対死神で結成されたチームだし最終的に蘇芳とやり合う形になるからな〜。
「機会があれば話してみます。でも先生は派閥争いとか興味なさそうだからなー。流されそう。」
「でも周りはそうは思わないんじゃない?あいの風が死神を慕っているのはみんな知ってるし。」
いや恥ずい。言わなくていいよみんなが聞いてる中でさ。
「だから天狼さんと死神が手を組んだって思われない?」
「別にいいんじゃない?誰も喧嘩ふっかけてこなくなるよ。私が先生にそこら辺話しておくから虎の威を借りようよ。」
「虎どころか死神の威を借りる事になるのでは…?」
「あの〜アイ?」
「何?」
「私も理華の派閥に入っていい?」
「え?良いの?こっちは助かるけど…。」
まさかの申し出だ。ハーパーがこっちについてくれるのは嬉しいけどハーパーの状況が良く分かっていないからな…。
「うん、その代わりと言ったらあれなんだけど…私を守ってくれる?死神の下につけば身の安全が保証されるって事だよね?」
「誰も手出さないと思うよ。私も守るしね。…えっとオリオンさん、ハーパーの今の立ち位置ってどんな感じなんですか?」
「一応は東京支部預かりだね。でもあいの風が保護した形だしあいの風サイドにつくのは自然な形かもね。」
オリオンさんが私の言いたい事を読み取って聞きたいことを答えてくれた。流石は先生にこき使われているだけある。
「やった!身の安全が保証された!」
なんて不憫な喜び方なんだろう。彼女の未来が心配になってきた。
「任務途中でこんな話をしていて良いのかな…?」
真面目だな理華は。私とハーパーを見習ってほしい。
「ずっと気を張り詰める事なんて不可能だしたまにはいいんじゃないかな。」
ちゃんちゃん…みたいな感じでこのままほんわかに終わりたいな。
「うーん…帰国してから大変だな〜。両親に何て言おう…。」
理華の両親も確か組織に所属してるんだよね?家族ぐるみとか親族絡みとか色々とありそうだな京都は。
「死神がバックについてくれるって話せば?めちゃくちゃ偉い位置にいられるよ。一応処理課の中だと私二番目に偉いらしいから。」
「でも天狼さんも居るからあいの風は三番目になるんじゃないの?」
「それでも私は良いよ。偉いと責任とか生まれてだるそうだし。」
「地位か…私はどうなるのかな。」
「ハーパーと私同じぐらいで落ち着きそうだけどね。理華もそんな感じ?」
「処理課の先輩達より偉い立場とか…胃に穴空きそう。」
「みんな仲良く出来ればそれでいいのにね。何で争うか分からない。」
「そう思うのはなお前が良い立場に居るからだよ。誰も美世を害せないし敵対した相手を実力でねじ伏せられるから争いすら起こらない。周りが美世より強かったら多分最悪な立場に居たと思うよ。」
「最悪?」
「希少な能力を持った女性という事は…優秀な能力者を産める可能性が高いって事。つまりは権力を持った男性に狙われる。しかも同じ組織の男性からね。」
「え?…私、もしかしてそういう…立場なの?」
私よりハーパーが先に反応した。確かにハーパーはそういう立場かもしれない。組織に所属はしているけど立場が弱そう…。
「早く死神の下についた事を宣伝した方が良いのかもね。」
オリオンさんが真顔で言ったから説得力が半端なかった。ハーパーを守る為には早めに先生に話をした方が良いかもね。
明日、2話投稿したいけど…したいけど…ゲームしたいんよな。




