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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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盗んだ車で走り出す

新メンバー加入回です。

良さげな車を求めて三千里。私は新たなチームメイトととして彼女を見つけた。外見は明らかにお前車検通して無いよね?みたいな風貌でかなり使い古された昭和生まれの彼女と出会ってしまった。


「こいつ………鍵挿しっぱなしです。」


「…これさ、エアコン付いてるの?」


理華の疑問は最もだ。多分付いてるけどあまり効かないタイプでめちゃくちゃ臭う風を(なび)かせると思われる。


「時間がありません。これにしましょう。」


オリオンさんのゴーサインを頂いたので彼女を仲間として連れて行くことにした。彼女は鼻血が付いたティッシュを放置したみたいな赤色でタイヤなんて二本がスペアタイヤだ。エンジンの中は見てないけど恐らくご飯ですよが詰まってる。真っ黒ドロドロだ。


「かかりません。」


何度もキーを回してもエンジンは道路に寝そべっている酔っ払いのサラリーマンみたいに唸るだけで動き出さない。


「19時34分、ご臨終です…。」


「ここにこの車があるという事は彼女はちゃんと自身の力で来たという事です。信じてあげましょう。」


ハーパーの謎の説得により何度もキーを回してトライするオリオンさんはまるで心臓マッサージをするお医者さまみたいだった。


「あいの風、敵は来てるか?」


「ハーパーの能力のおかげかまだ来てないけど近くに居ると思うよ。」


パトカーや救急車のサイレンの音が遠くから聴こえる。マッピングされた地図を俯瞰しながら探るとさっき私と理華が一緒に処理した敵の車の辺りで集まろうとしていた。


そしてサイレンよりも低い唸り声のようなエンジン音が車内に響き渡る。


「やっとエンジンがかかった…。身を低くしていてね。この車で見つかったら逃げられないから。」


…念の為にこの車の軌道を固定しておこう。走っている最中に分解でもされたら困る。私達が暴れたら簡単に壊せそうなんだもんこの車。


オリオンさんの運転で私達は目的地に向かった。場所は彼しか知らないので私達は身を低くしながら辺りを警戒して息を潜めていた。ドンパチはもうやりたくない。特に理華はもう休ませたいし。


表面には出ていないけどベルガー粒子の操作が荒くなっている。サブマシンガンを今も見えなくさせているけどもしかしたらこんなに長い事消した事が無かったのかもしれない。脳への負担はなるべく抑えて明日以降の任務に差し支えが無いようにしてあげたい。


「理華、もう消しておかなくても大丈夫だよ。」


「いや、目的地まで消しておく。」


少し冷静なら外から見える位置にサブマシンガンが無いという事ぐらい分かるはずなのに今の理華は精一杯過ぎてやらなくてもいい事を止められなくなっている。


(不安…なんだろうね。少しでも見つかるリスクを下げたいんだ。)


私は辺りを警戒しながら彼女の心メンタルの心配をし続けた。


車が走り出して暫く、私達の目の前に大きな建物が現れる。多分ホテルか何かだと思う。見上げるだけでも首が痛くなるような高さだ。お値段もすごく高そう。


オリオンさんはその建物に向かい恐らく従業員専用の入口から地下へと車を走らせた。


「ここが目的地、ワタシ達が拠点とする場所だよ。」


オリオンさんはそう言って車を停車させた。そして私達は車を降りて奥の方へ進んでいく。するとエレベーターらしき扉を見つけてそれに乗り込む。


エレベーターは組織のビルのようなボタンが無いタイプでここは組織の運用する施設なんだと分かって肩の力が抜けた。もうここは安全地帯だと認識した私も理華もハーパーも緊張感から解放され自然と笑顔になる。


「散々な初日です。ここの1番豪華なランチを希望します。」


「それは勿論。みんなあいの風の事を待っていたからね。」


「みんな?」


(みんなって誰?アメリカに知り合いは居ないんだけど…。)


オリオンさんがソマホで操作し私達はエレベーターに乗り込んだ。


このエレベーターには地下3階から地上の1階までしか無く、私達を乗せたエレベーターは1つ上の階に行って停止した。そして扉が開くと黒いスーツを着こなしたエージェント達が私達を出迎えていた。


「お待ちしてましたオリオン。」


「カーシン、また会えて嬉しいよ。」


オリオンさんとカーシンと呼ばれた男の人がハグをして挨拶を交わした。


オリオンさんの知り合いのエージェントさんかな。背丈があって大きな人だ。服の上からでも体格の良さが分かる。鍛えていないとこの筋肉量は維持出来ない。現場の人なのかな?


「オリオン、彼女達が…?」


「ああ、紹介するよ。今回一緒に日本から来た若きエージェント達、あいの風、リカ、ハーパーだ。」


私達の紹介で後ろに控えている別のエージェント達からどよめきが走る。


「じゃあ…彼女が例の?」


「そうだよ。こっちだと死神の猟犬(デス・ハウンド)って言ったほうが通りが良いかな?」


「デス・ハウンド!会えて光栄だよ!」


身長が180を超える男性に詰め寄られてつい引き下がってしまったが両手を掴まれて握手を交わされた。


「は、初めましてカーシン…私はあいの風と言う者です。」


自己紹介をしている間も両手を掴まれてブンブンと振りながら握手をし続けている。身長差が20cm以上あるから手の位置が頭の高さで振られるから顔が良く見えない。


「お噂はかねがね、皆あなたの事を待っていましたよ。ようこそアメリカへ!歓迎します!」


おお…フレンドリーなのは良いけど私のパーソナルスペースを侵略しないでください死んでしまいます(心が)


その後は後ろに控えていたエージェント達ともフレンドリーな挨拶を交わされて精神がゴリッゴリに削られてから部屋まで案内された。


「この部屋は皆さんの為に用意しました。自由に使ってください。」


案内された部屋はジェット機の内装と遜色の無い豪華さで驚いた。もっと目立たない拠点で活動すると思っていたからこの待遇は想定していなかった。


「えっと、ありがとうございますカーシン。必ず任務を遂行させますのでその間お世話になります。」


「ええ、では何かありましたらすぐにお呼びください。」


何でこんなに良くしてくれるの?私はそんな事をされる理由が見つけられない。


「あの…何でそんなに良くしてくれるんですか?」


「それは…仕事ですし、何よりあなたがミューファミウムの先鋭部隊を壊滅してくれたからですよ。私達アメリカ支部は彼等に甚大な被害を受け続け多くの同胞を亡くしました。私の友も1年前に……だからあいの風には感謝しているんです。」


「そう、だったんですね。」


気付かない内に私は誰かの仇を取っていたんだと知った。


「なので私達アメリカ支部はあなたの味方です。万全のサポートを約束しますのでどうか、どうかミューファミウムの本部を…!」


「お願いする必要なんて無いです。仕事ですし私はその為に来ました。タダ飯を食いにわざわざアメリカまで来ませんよ。」


「ありがとう…ありがとう!」


泣きながらお礼を言うカーシンを見送ってから部屋の奥に向かおうとしたら理華がベジ○タみたいに壁に背を向け腕を組みながら立っていた。似合ってるなその立ち姿。


「やっぱり凄いよねあいの風は。海外支部からも超人気じゃない。」


「嬉しいけどちょっと怖いよ。」


「…期待されるのが?」


「あんな大きな男性に詰め寄られるのが。日本だとお巡りさん案件だったね。」


予想外のあいの風の答えに理華は笑いがこみあげる。


「やっぱり凄いよあいの風は。」

新メンバー脱退回です。

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