33000フィートの女子会
なんとか体調を回復させたので夜にまた投稿しようと思います。次の話で飛行機での会話は終わります。
「良くない…良くないよ暴力は。」
完全に無警戒だったから良いのが入ってしまった。さっき汗を流してスッキリしたのにまた変な汗が出てきたよ。
「で?能力の詳細は話してくれるの?」
腕を組み足を組んで靴を脱ぎ散らした理華が偉そうに私を見下しながら話の先を促してきた。この女がぁ…。
(覚えておけよッ。)ボソッ
「何か言った?」
「何も?話の続きだけど探知と異形とは別にもう一つの能力があるんだけど…実際にやった方が分かりやすいかな。」
私は部屋に置かれていたお菓子の籠から小分けされラッピング包装されたチョコを1つ手に取って理華に渡した。
「はい。チョコ出してみて。」
「え?良いけど…あれ?あれ?」
理華は金色のフィルムに包装されたチョコを取り出そうと包に爪を引っ掛けたりしても全く剥がれず悪戦苦闘している。
「じゃあ次は握り潰してみて。」
「さっきから何でこのチョコに何かさせようとするの?能力の話は?」
「だからしてるじゃん。握り潰してみて。」
私の真面目な声色に何かを感じたのか手の中にあるチョコを見て私の指示通りにチョコを親指と人差し指で摘んで握り潰そうとするが全くびくともしない。
能力者の筋力で潰せないチョコなんて食べられる訳がない。その事を理解している理華はこのチョコに何かしらの能力が掛けられている事を察する
「このチョコ…硬すぎない?」
「硬くしたもん。絶対にこの形状を崩す事は出来ないよ。」
「硬くした…?」
私は理華の手からひょいとチョコを奪って包を開いた。
「え!?何で!そんな簡単に外せなかったのに…。」
「これが私のもう一つの能力。この能力は熱は防げない。見て、チョコが溶けてる。理華の指先の温度が伝わって溶けているのに硬かったでしょ?」
「何この能力…?」
「これだけじゃないよ。見てて。」
次は丸い飴のようなお菓子を手に取ってお菓子籠が置かれているベットサイドテーブルの上でコマのように回転させる。
「これも硬くするの?」
私は理華の質問に答えなかった。ただ回したお菓子を見せる…そうすると理華も違和感を感じたらしい。
「…ねえ、ずっと回ってるけどこれも能力なの?」
「この回転を止めてみて。」
(さっきから何なのこの能力…。)
私はベットから立ち上がってテーブルの所まで行き回転しているお菓子に触れる。だが回転は一切止まる気配が無く私はその現象を気持ち悪く感じ手をぱっと離した。
「何これっ!?おかしいよ!」
「お菓子なだけにぃ〜?っいで!」
今度は肩を叩かれた。暴力に訴えないでよ!確かにちょっと自分でもウザかったと思ったけどさ!
「能力3つどころか4つもあるじゃない!」
「いやこの能力は応用性と汎用性が凄いんだよ。」
私は回転しているお菓子を持ち上げて空中に固定した。
「…テレキネシス?」
理華は回り込む様に見てそう結論付けたけど、違うんだよ。この能力はもっとヤバい。
「そんな程度の能力じゃないよ。今これを空中に固定しているでしょ?でも今、私達は空の上に居る…このお菓子は飛行機との位置関係が固定されてるの。じゃないとこの硬いお菓子に飛行機がぶつかって撃墜しちゃうから。」
「…電車の中でジャンプしても位置関係が変わらないみたいな話?」
「そう、そんな感じ。」
私は回転を止めたついでに空中に固定されているお菓子に両手で掴まえてから足を床から離して宙ぶらりんの状態になり理華に見せつけた。
「どんな型の能力かすら分からない…資料にも載ってないし掲示板にも出た事が無い能力。」
「だろうね。死神の能力だもん。」
「そう…うん?今何て言った?」
サラッと投擲された爆弾発言に理華の思考が止まる。
「死神の能力だよこれ。」
宙ぶらりんになりながら私は答えたら理華の蹴りが飛んできた。
「ぐふッ!」
フリーになった脇腹にまたクリーンヒットが入り私は床に落ちる。なんでこんな高度で身体の張った漫才をしないとなの…
「何でお前が死神の能力が使えて何で死神の能力を私に教えたんだッ!」
う、嘘だろこの女…。話してくれって言ったから話したのにまた殴りやがった。
「何で…殴った?殴る必要あった?」
「ふん、この程度で済んで良かったな。私じゃ無かったら殺されても文句言えなかったぞ。」
彼女の論法は破綻している気がするのは私だけだろうか…。
「ありがとうございます優しい理華様。…で、聞きたい?」
再度確認を取る。殴られるのが嫌だからね…。
「…私だって能力者の端くれ。死神の能力を知りたい。そして何で美世が死神と同じ能力を持っているのかを。」
「うーん…どこから話したら良いかな。」
「あなたと死神が血縁関係だったとか?それなら納得しなくもないけど。」
「いや違うよ!…多分、確証無いけど。」
確率は無いはずだけど実は生き別れの兄弟、姉妹説がワンチャンあるかもしれない。
「じゃあ、たまたま?」
「いや、ちゃんと理由はあるよ。理華って“パス”とか“ユニゾン”って知ってる?」
「いや…パスポートの事、じゃないよね。」
飛行機乗ってるからね。パスポートを連想するのは仕方ない。
「これは限られた人しか知らない概念なんだけど多分天狼さんも知らない。パスってのはね、能力者と能力者の間に通る繋がりって言うのかな…。」
「絆みたいなそんな感じ?それが何?美世と死神の間に絆があるから何なの?」
何でちょっと不機嫌なんだよ…。別にあっても良いじゃんかよ絆。
「そんな抽象的なものじゃなくてもっと能力とかベルガー粒子系の話。」
「私ベルガー粒子見えないからオカルトの域を出ないんだけど。」
「なるほど…理華はそういう認識なんだ。」
そっか、理華にとって幽霊みたいな概念なんだね。同じ能力者でもこんなに認識が違うのはちょっと面白い。
「このパスは繋がっている両者同士しか恩恵が無いし認識も出来ないという特徴があって、その恩恵が…能力の貸し出しが出来るという点があるの。」
「貸し出し?え?今貸し出しって言った?」
「うん。私と先生は能力の貸し出しをしているの。だから私は先生の能力が使えて痛い゛っ!」
まーた殴った!手出るの早すぎるよこの女!
居るよねー仲良くなると殴るようになる奴。理華は間違いなくそういうタイプだ。
「それで合計3つの能力が使えるって事ね。分かったわ。」
え?殴った事に関しての弁明無し?マージ?
「殴ったよね?」
「殴ったけど?」
「あ、何でも無いです。」
呼吸したけど?みたいなニュアンスだったよ。逆に何も言えかった。
「ていうかとんでもない事実じゃないっ!組織の能力者全員美世から能力を貸してもらえば敵対組織全部1日で壊滅出来るんじゃない?」
探知能力を組織に所属している能力者に貸し出したらかなりの広範囲を探せるからもしかしたら1週間ぐらいで撲滅出来るかもしれない。
「でも先生がそうしていないから多分不都合な所とか無理な部分があるんだと思うよ。私もそのやり方はちょっと危険だなって思うし。」
「探知能力が危険なの?」
「まず脳が耐えられない。私のベルガー粒子量が多いって話出たよね?それって脳の開拓されている領域が広いって事なんだけど他の能力者は私ほど脳が開拓されていないから使えない。それに先生の能力も同じ事が言えるね。」
「そんな美味い話がある訳無かったか…。」
表情に陰が生まれる理華を心配して声をかけた。
「理華さ…能力増やしたいの?」
「増やせたら増やしたいよ。私の能力は別に戦闘向けでは無いし能力単体では殺傷力も無いしね。」
その言葉に私はある提案を理華に持ち掛けた。
「私の…異形能力なら使いこなせるかもよ。」
理華強化フラグ立ちました。




