女子高生は組織の面接を受ける
区切りよく切りました。
先にここの場所を調べておくんだった。【マッピング】が不足した街にぽつんと立ちながら黄昏れる私は後悔を募らせる。
今すぐパスで先生を呼び出したい衝動に駆られたのでスマホにイヤホンを挿入し、スマホの画面を操作して音声データを開く。
「ミヨ 面接に来てくれたんだな 嬉しいよミヨ」
私は歩き出す。面接に向かう為に。
とりあえず警備員の人に話しかけてみる事にする。近づく事により〈地図〉が更新され警備員の青い○が2つ表示される。
「ミヨならどんな困難だって越えられる 信じてるぞ」
先生の言葉(本人未監修)を耳元で聞いてしまったワタシは腰が砕け足取りが怪しくなるが、なんとか真っ直ぐ歩いて向かう。
どうやらこちらに気付いてるようで屈強な警備員の男性と視線が合う。
…さてなんて言ったものか、この警備員は能力者の事を知っているのか否かでこちらの行動方針も決まる。
(取り敢えず知らない事を前提で話すか。)
「あの…面接を受けに来たのですが。」
警備員の男は目線を自身の手元に移し何かを確認する。
(〈地図〉で見るとあの輪郭と大きさ、多分タブレットだろうな。)
液晶画面には何が映されてるかは能力では分からないけど、私の事を確認する為の情報が載ってるのかな?というか載っててほしい。
警備員の声がスピーカーを通して発せられる。
「マスクと帽子を外してもらえますか?」
強面のにーちゃんに言われては従うほかない。
私はすぐ様にマスクを顎まで下ろしキャップを脱いで素顔を晒す。顔とタブレットを今後に確認する強面ニキ。タブレットを操作し何かを確認している。
「何か身分証明が出来るものをお持ちになられてますか?」
バックパックを漁り学生証を取り出す。学生証を渡そうとしたが警備員と私の間には厚いガラス板で仕切られており、接触が出来ないようになっている。
私は学生証を相手に見やすいようにガラスに貼り付ける。
強面のにーちゃんが再びタブレットと交互に目線を動かしながら
「確認が取れました。扉を開けるのでビルに続く白い線に沿ってお進み下さい。」
白い線?私が疑問を抱いてると扉がスライドして開閉する。恐らくもう一人の警備員が開けゴマをしたのだろう。
扉が閉じてる時は分からなかったが、扉の中心位置からビルまで白い線が伸びてる。こいつか。
「そのまま進みますと係の人が待機しているのでそちらの指示に従ってください。」
わたしは警備員さんに軽く会釈してからビルに向かう。軽く進むとカメラの存在に気付く。
多分もう一人の警備員はここから私の様子を伺っていたのだろう。
マスクと帽子を装着する。陰キャのオドオドした様子を記録に残したくない。
門を通り抜けて白線の上を歩いて進む。心臓バクバクで胃がキリキリする。バクギリだ。
目測で門からビルまでおよそ50mぐらいだと思う。こんなに緊張する50m走は無いだろう。
ひらけたコンクリートの地面が続いており、まん中に白い線が引かれ両側に地中から生えた高さ4mの細い柱が等間隔に並んで、先端にはカメラが設置されている。
(能力者を警戒してるんだろうな。能力者相手だと普通の一般人では対処出来ないだろうし。)
下手に人で対処しようとするよりかはカメラや機械を使って警戒する他ない。
例えば私が殺した連続殺人犯。アイツは分かりやすい。外見が変化するし、恐らくだが人体の中身も変化させてる。もしそうなら医療機器とか機械類で能力者かどうか判断出来るだろう。
防犯カメラ以外にも、もしかしたらサーモグラフィーカメラだったり能力者の特徴を見つけるために色々な種類のカメラが設置されているのかもしれない。今更ながら現代と能力者との在り方を知った気分だ。
私が線からはみ出さないように歩いていると中心地点で左右に線が別れている事に気付く。
別れている線は左右で色が変わっていて、それぞれの線の先は別々の高層ビルに続いてる。
(もしかしてこの周りの高層ビル全部組織の建物なの!?)
私は頭を左右に振り互いの高層ビルを見比べる。
(確かに共通点が多い。マジか…私ここに就活しに来たのか。)
呆然としてるとビルの前に人が立ってこちらを見ている事に気が付く。やっべ!待たせてしまってる!
私は線からはみ出さないように気持ち早歩きで向かう。
(第一印象が肝心だ。ちゃんと挨拶しないと!)
イヤホンをパーカーのポケットにしまい髪の毛がハネてないか手櫛で整える。そして相手を失礼に当たらない程度に少しだけ観察する。
パンツスーツを着こなした二十代女性。髪はアッシュベージュのセミロングで髪先にパーマをかけているのかふんわりしていて優しい印象を受ける。
顔立ちがキレイでスタイルもキレイ。靴を見ると動きやすさを重視したヒールが低いパンプス。
少しと言った割には上から下まで舐め回すように見てしまった。
そして最後に彼女は能力者だ。【マッピング】で目の前の彼女が赤い○で表示されてる。私が観察して分かった内容は以上だ。私はその事実を表情に出さずに挨拶をする。
「はじめまして。本日はわたくしの為に時間を割いていただきありがとうございます。」
良い子ちゃんスタイル(ver.真面目)で先制ストレートを決める。
「うふふ。ご丁寧な挨拶ありがとうね。コチラが呼びつけたようなものだから変に緊張しないで良いからね?」
もう声が優しい。この人絶対に私の事甘えさせてくれそう!メンヘラは依存先を見つけるのが上手い。
「はい。それで今日は面接をして頂けると聞いているのですが?」
「そうね。今日は面接…のようなものね。どちらかと言うと面談に近いかしら。あなたの事はコチラで色々と調べさせてもらったし、…死神、さんからもお願いされてしまいましたから。」
後半は顔を引き攣りながら徐々に声に覇気が無くなって途中から良く聞こえなかった。死神?聞き間違いかな?
「はい?そうなんですか?」
面談ならまだどうにかなりそうだとホッとした。これなら希望が見える。
「………………………ハイ、ソウナンデス。」
声ちっさ!さっきまでの出来る女から苦労人にジョブチェンジしてる。
今なら履歴書について話しても特に問題なさそうかな。
「あのー履歴書とか持ってきていないのですが、大丈夫ですか?その〜内容が内容だったので。」
私の言葉に口に手をあてながらクスクスと笑いニコニコになる。カワイイなおい。
「フフ。そうだよね!書けないよね!」
口調が柔らかくなり親しげに言葉をかけてくる。こっちが素だとしたらお姉さんよりお姉ちゃんって感じだ。しかし客観的に見てみるとビルの玄関先で和気あいあいと会話してるがこれから殺し屋の面談があるのだ。中々にシュールだ。
気を引き締めていかないと…
「あ、面談?ってこのビルの中でするんですか?」
「あ!忘れてた!」
忘れるなよ!カワイイから許すけど!
「じゃあ行こっか!」
私はお姉ちゃん(確定)に連れられビルに入る。最近ビルに縁があるなと能天気に考える。ビルに能力者が入りその後に私が入る。ここまでは前回と同じ。
違うのはビルに私のお母さんを殺したと思われる赤い○が居るかどうかだ。
この後も前回と似たような展開になるかどうかは分からないけど、出来たらこの人は殺したくないなーと考えるいつもと変わらない伊藤美世がそこには居た。
毎日投稿をしていますが、平日は最低1話投稿。
休日はストックを作りつつ土曜日は1話投稿。
余裕があれば日曜日に2話投稿を目標に頑張ります。




