悪魔の調整
蘇芳めっちゃ便利なキャラだと気付きました。
彼女を出すと物語の情報をいっぱい出せて説明が不足していた所を補ってくれるのでこれからは定期的に出そうかなと思います。
山梨県と静岡県の県境にある古い洋館。この洋館の位置を知っている者は組織の中でも限られており、更にいくつものダミーの洋館が存在してるので実際にこの洋館を訪れた者はほとんど存在しない。正確な洋館の位置を知る者はこの洋館に住まう者だけなのだ。
この洋館の主、蘇芳は今日も最新型のクーラーが取り付けられた奥の部屋で優雅に温かい紅茶を飲みながら快適なニート生活を堪能していた。
(さて……美世は無事に覚醒したみたいだし天狼とも協力関係を結べた、ここまでは私の読み通り。)
今日も今日とて蘇芳は美世の事を観続けている。能力が目覚めた時から続けている美世鑑賞は蘇芳のライフワークと言って過言ではない。因みに美世干渉も最近のライフワークに組み込まれている。
「光情報は美世に筒抜けになってるし、もう私は派手には動けない。」
その為にあれだけ会いたかった美世との時間を先延ばしにして準備を終わらせた。ここからは私が蒔いておいた種が芽を出して美世を手助けになる果実に育つのをゆったりと紅茶でも飲みながら待っているだけでいい。
それにこの建物全体はもう美世の射程圏内にある。今も美世は私の行動を見る事が出来るからここで紅茶を飲んでるくらいしかやる事がない。まあその為にこの洋館に呼んだんだけどね。
でも美世は優しくて思いやりが強い娘だから普段は私の事は見ないし私の私生活も監視していない。感覚として私が何かしようと感じたら見るだけに済ませて私のプライバシーを尊重してくれる。
もちろん私の驚異を感じ取って色んな人に私の事を話しているけど、それは能力の事だけで私の私生活は誰にも話していない。だから私は美世の事が大好き。
私との敵対を選んでも私が一線を越えない限り絶対に彼女も一線を越えない。これを自然とやってそれを当たり前と考えているから彼女を信頼する事が出来る。
私が彼女の事を知っているように美世も勿論その事を知っている。これはお互いに信用している信頼関係と言えるだろう。ふふふ。
(それにしても天狼に会わせる事で能力が覚醒したのは喜ばしい。)
美世は異形型電気系能力に目覚めさせられたのは最高の結果と言える。美世も死神も不確定な存在だからこのルートに誘導するにはちょっとした賭けではあったけどね。流石は美世、1番良い結果を引き当てた。
これで美世は天狼に対抗出来る能力者になり組織No.1の死神とNo.2の天狼の両方に王手をかけられた。全ては私の思惑通りに進んでる。
天狼はまだ美世の能力について全ては理解していないし、ある事実には気付いていない…というより気にしていない。美世にもう電気系能力は通じない。天狼は美世に対しての対抗する術を失っている。だけど美世は天狼に対して死神の能力を使える。このパワーバランスは天狼が美世を鍛えれば鍛えるほど美世に傾く。
それに…暴走するリスクも今年中に解決する。
紅茶のお茶請けのクッキーを口にして計画を再確認する。
次は夏休みに入った美世を海外に派遣し死神と協力させてミューファミウムの本拠地を潰さないと。あの組織は一巡目の世界線で美世に酷い事をした糞共の集まりだ。さっさと全滅させるのが良い。
死神と美世を使って二面からの攻撃を行えばどんな組織だって壊滅する。まだ私の存在は外には漏れていないけど、これから先の事を考えれば私の命が外部からも狙われないとも限らない。脅威は内部だけじゃなくて外部にも居るからね。
まだ死神が私の命を狙うには時間がある。この二人を使って夏休み中に世界中の敵対組織を潰し尽くしたい。
組織内部には私の手の者や外部には間者が居る。計画は私の手を離れて進んでるし証拠も残していない。後はこの冷房が効いた部屋で吉報を待つだけ…とはいかないんだよねこれが。
問題なのは美世とオリオンの関係性だ。美世のオリオンに対しての認識とオリオンの立ち位置が複雑だからこの二人の絡みが現段階で1番読めない。どっちも天然だからなおさら質が悪い。
それにプラスして相性が良いのよねあの二人は…こっちは見守るしかないとある程度は切り捨ててる。ここに労力は注ぎ込めない。だってどうなるか分からないもの。私にだって読めない未来はある。本当に因果を操作する美世は厄介であり愛おしい。
紅茶を飲み干してティーカップを受け皿の上に置いてほくそ笑む。
美世なら私の未来を変えてくれる筈…これから先、美世にはこの先とてもツラい未来が待ってるけど全ては私達の為。
だから許して欲しい…例え家族をその手で殺める事になるとしても。
これしか私達が生き残る未来は無かったの。いっぱいいっぱい考えて時間も労力も使ったけどこの方法しか無かった。【ラプラス】であっても特異点が2つ生じてる世界線で完璧な正解は導けない。
不甲斐ない私を罵ってくれていい。だけど全ては美世と私達の未来の為だと理解して欲しい。貴方なら私の選択が間違っていないと分かってくれると…私は知っている。
「私も自分のお母さんを死なせたくないの。だからこそ美世は許してくれる。」
お母さんという存在に囚われている美世にこの手はかなり有効。
その為に私はお母さんを殺されないように対策を立てている。記録の上では私のお母さんは死んだ事にしてるからお母さんを狙う相手は居ない。それにいつも私の目の届く所に居るしまだ死ぬ事は確定していない。
もしお母さんが殺される時は多分私の方が先に殺されるしね。だから私とお母さんは一蓮托生。この択はもしもの為の保険として使える。
他にも保険は各所に残してはいるけど結局はもしもの時の保険でしかない。本命である美世に私はオール・イン。これが私の選んだ未来。
「でもやっぱり嫉妬しちゃうな。良いな〜伊弉冉…美世と姉妹みたいに仲良くしちゃって。」
まあー別に良いけどね。楽しいのは今だけだし姉妹みたいに仲良くした事を後悔する時が来るよ美世。
あなた達が仲良く出来ることは知っていた。だって…
(…だもんね。ふっふふふ…。)
美世の能力で分かるように口を動かした蘇芳は笑みを深める。今は美世と伊弉冉が楽しく話しているから自分が見られていない事を知った上で行なった行動は見方を変えれば子供の嫉妬…また見方を変えれば悪魔のような所業だった。
“ラプラスの悪魔”その名前を体現している彼女は部屋で1人暗躍をし続ける。
「うふふふ…。」
瞼を開けて碧い瞳を天井に向ける。その姿はまるで星を見上げる儚い少女そのものであった。
でも伏線もいっぱい出るから読者が混乱しそう…流石ラスボス候補。




