高次元の存在
遅れました。ここから新章です。
悪魔の通達を言い渡されてはや2日。明日が約束の処刑日…違った面接日。いや違くない処刑日。
面接を受けるという事は“能力”を見る以外に、社交性や人格などを見るという事だ。
ド陰キャマザコンメンヘラポジティブシンキングヤンデレ地雷ポップガールの私に社会性を問うことは、不法入国者にVISA持ってますか?と問うこと同じだ。
「もってねえーよ!!!」
両者共にキレ散らかしながら同じ事を答えるだろう。というかだ。女子高生が人に言えない仕事の面接に向かうというのは非合法の香りしかしない。殺し屋って非合法だよね?非合法の組織だよね?非合法の筈だ。逆に合法だったらやべー組織だ。
やっぱり給料とか出るのかな?人殺しの相場が分からないが報酬が高いイメージがある。アタッシュケースに札束が並んでいたり、口座にドルで入金してくれみたいな感じ。
女子高生、高収入、人に言えない仕事…この並びは悪いイメージが凄いし卑猥な感じが拭えない。世の活動家のパパ達が頑張ったせいだろう。私は悪くない。もしかしたら合法の仕事かもしれないし。
そしてそんな事を考えていた私は放課後に死装束を買い求めユニ○ロに向かった。
ここは普段からお世話になっているので勝手はわかってる。あの人達と一緒に連れられる場所ナンバーワンの座に君臨するユニク○。様々なニーズに沿う種類とリーズナブルな価格設定からファミリーに大人気だ。
私達は決してファミリーとは呼べないが、まぁこの際どうでもいいだろう。
家を出る前にタンス貯金から野口さん樋口さん諭吉さん(下の名呼び)を収集したおかげで伊藤美世財閥の懐が暖かい。間に女性を入れて三角関係を意識させる日本の通貨の業の深さは嫌いじゃないよ。
さて、何故私が服を買い来たのかというと、外見を良くすれば社会性の無さを誤魔化せる可能性があるかもしれない事と、先生からは制服だと目立つから私服で来るようにと言われたからだ。
修学旅行前にも担任の先生に似たような事を言われた気がする。あれは最悪だった。外は制服だがホテルや旅館の中は私服で過ごす流れがあり、そこは体育着のジャージじゃないのかよ!とキレた記憶がある。
ヒエラルキートップの子でも私服がダサいとピラミッドから転落死する事も珍しくない。私のようなヒエラルキー最下層の陰キャが私服がダサいなんて知られたら…考えただけで恐ろしい。念の為にかなりの種類の服を用意しバックを圧迫させてたよ。
小学校と中学校では横浜と京都に修学旅行で行ったが、特に中学校で行った京都は酷かった。
京都の景観を変に考えて意識したコーデで私服を決めたもんだからめちゃくちゃ浮いてた。コイツ京都楽しみだったんだなぁとみんなから生暖かい目を向けられて死にたくなった。因みに思い出すだけで未だに死にたくなる。
…切り替えて行こう。私はいつも通りタイムセールのエリアに向かい服を買い求める。
色々な服を手に取り物色しながら面接について考える。考えてみればこれは就職活動ということではないか?そこで気付く。
(就職活動という事はスーツじゃないか?)
マズいマズい!スーツの上下と靴を用意するのならば諭吉さんのパワーでは足りないかもしれない。カバンもどうしようか。
更に気付かなくてもいい事に気付く。
(能力者の面接って、普通の面接なのか?いや、まさか…アレか?)
能力者が集う人里離れたアジトに向かう私。
バンッ!扉が開き私は足を踏み入れる。
「アイツが例の能力者か」「今度の新人はどれぐらい保つかな。」「それにしてもあのパワー…やるな。」「アイツ相当気を練ってるぞ!」「先生が言っていたことは本当だったか。」
「俺は認めねえぞ!」
小生意気な男が私の前に立つ。
「あなたに認められる必要性を感じないわ。」
余裕な態度を崩さず冷静に対処する私。
「なんだとてめえ!!!」
沸点の低い頭が可哀想な男が私に殴りかかる。
「ふん!」ふぁさー
左手を振るったら謎のパワーが男を吹き飛ばす。
「ぐああああああああああああああ!!!!!!!」
「なんだと…!?」「このパワーは!」「アイツ相当気を練ってるぞ!」「あの新人、侮れない。」「何をしたんだ!」
「何って手を振るっただけだが?」
というアレ。もしくは…
「先生の指示通りの建物に入ったのは良いけど…」
奥に進み扉を開た私は複数の扉が等間隔に配置された空間を見つける。
(この反応は!…123…いや違う…6!)
扉が開き能力者が集う。私達は面接を行う為に呼び出さられた哀れな子羊。
そしてアナウンスがかかる。
「これから集団面接を行います。生き残った一人が次の2次審査に進んでもらいます。」
(私達は騙されてここに集められたのか!これは組織による能力者の蠱毒…
「様…お客様!大丈夫ですかお客様!」
「はうわあ!?」
妄想と現実をトリップしすぎて意識が飛んでた。
「大丈夫ですかお客様?」
時間を確認すると20分間飛んでた事を知る。服屋の店員に声を掛けられるという非常事態とトリップの影響で私の脳は上手く動かない。
「いえ大丈夫です。バイトの面接でどんな服装で行こうか悩んでたので。」
咄嗟に出たセリフだが悪くない。本当の事だし嘘ではない。流石と言うべきか、判断が早すぎて天狗ですら手が出せまい。
「え!そうなんですね!どんなバイトですか?」
「合法のです。」
もうここには来られないかもしれない。休憩時間、あの女性店員は私の事を話題にして1週間は笑ってるだろう。
How what女とか合法女と揶揄してな!テメーにピン指してやったからな!お前の行動範囲全て把握してやる!
今の私は憎悪と八つ当たりをバッドトリップしている。近づかない方がいい。
そしてそれからは私は大真面目に服を選ぶことにした。
(先生が言っていた言葉がヒントになる筈だ。)
目立たない為の私服だと言っていた。という事はだ。地味で正体を隠すという事、つまりは暗殺用の服装だ。
割とマジでぶっつけ本番の殺し(圧迫面接)をさせられそう。先生ともぶっつけ本番だったしね。…先生との本番。下着も新調しておこうかな。うん、必要になるかもだし。
それならと取り敢えず黒いパーカーを手にする。ぶかぶかのパーカーは夢がある。パーカーの中に暗器とか仕込めそうだし、私の薄い体が豊満になったとしても着られるし単純にカワイイ。
(下はどうしようか。)
このユ○クロには色んな素材で作られた服が多い。あまりこだわりは無いけど、よく分からない素材で出来た服は手を出しづらい。
私は黒のボトムスを取る。上下とも黒を選んだ理由は血が付いても目立たないし、夜では見えづらい。
(靴は家に結構あるし、あとは帽子とマスク。それにカバン。)
靴だけはある。〈地図〉を埋めるために自分の足で歩き回ったからだ。直ぐに靴底を擦り減らして駄目にするから家には靴が大体5足は常備してる。
帽子売り場?あるのか?あるとしたらどこ…?あそこか。黒のキャップとマスクをカゴに入れ、バックパックを探す。
学校指定のカバンは流石に持っては行けないから、容量が大きいのが良いな。
私のカバンには荷物がぎゅうぎゅうと詰まっているので、そろそろ新しい大きなカバンかリュックが欲しかった所だから丁度いい。
そして下着は白地の上下セット。男ってこういうのが好きなんでしょ?あ、でも先生が女だったらどうしよう…。黒色も買っておくか…?
バックパックも黒色をチョイス。全身黒コーデ。眼鏡も黒縁メガネ。買い物かごをカウンターまで持っていき、あの店員に見つからないように会計を済まし店を離脱した。
無事に帰宅し自室で明日の準備を行った。カバンに入ってる荷物を全てバックパックに移し終えたし、宿題も終わらせた。時間は日付が変わる手前まで進んでる。
ここからは重大な実験を行う。私が高次元の存在になる為の実験だ。
私はベッドに潜り込み【マッピング】に全神経を集中させる。
(隣の部屋から探る。…寝てるな。あの人達も…寝てる。ヨシ!)
スマホを取り出し慎重に操作する。イヤホンで外に音が漏れないか何度も確認して…ヨシ!
(ヤバいぐらい緊張する。でも、これは必要なことだから。)
面接にあたって色々と調べた結果ポジティブな姿勢は好感が持てるという記事を見つけた。コレだ!と思った。ポジティブシンキングガールの私はここを極振りするしかない!方針を決めた私の行動は早かった。
スマホにはボイスレコーダーという機能がある。…勘の良いガキは気付いたかな?私はボイスレコーダーを起動し音声を入れられるか確認する。
ふーーと息を吹き込むと画面に映っている音のパラメーターが動く。ヨシヨシヨシ!!
鼻息荒くした私は呼吸を整える。ふう。落ち着けー餅つけー。これは必要な事他意は無い。これはただの実験だ!ヨシ!ヤルぞ!!
スマホに顔を近づける。ーーーそして放つ。
「ミヨよ 良くやった」
ポチッ…と終了ボタンを押して録音を完了し、録音した音声を流す。
「ミヨよ 良くやっ」「うひょおおおおお♡♡♡♡♡」
ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバいよヤバいよ!
天才だ私は!美世は鼻息荒く興奮した状態でベッドの中をモゾモゾと動く。
先生の声は私の声で再生される。つまり私が先生の口調を真似れば先生にあんなことやこんなことを言わせる事が可能だ!これこそ【再現】…!
ハァハァハァと酸欠になりながら声を吹き込む。
「ミヨは賢いな 凄いぞ!想像以上だ キミなら出来る ワタシはそう信じてる ミヨなら受かるさ これからは一緒の職場で働くんだ センパイ…と呼んでくれないとな 家を出たいのか?なら来るか?ミヨはカワイイな ミヨは何でも直ぐに覚えるから教えがいがあるよ これは契約だ ミヨとワタシの ミヨ ミヨ ミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨミヨ…ミヨ…愛してるよミヨ」
メンヘラの女子高生は割とこういう事をする。
そして某日。美世はトリップした面持ちで電車に乗り込んでいた。
(昨夜は途中から意識が無かったけど、録音した覚えの無い膨大な音声データがスマホに残されてるのはホラー過ぎる…)
妄想と依存のバッドトリップで意識障害と記憶障害に苦しみながら電車に揺られる。
(面接する場所って何処だろう。次の駅で降りると思うけど。)
昨日はお楽しみだったので詳しく調べていない。それに良く知らない状態で向かうほうが乙なものだ。
窓から景色を眺める。高層ビルが建ち並び、オフィス街が広がっている。そこで停車する。
は?
先生に教えられた住所をスマホのマップで確認しながら歩く。スーツ姿の男性と着物を着た女性とすれ違う。
は?
高級そうな車が走り、自転車に乗った意識が高そうなサラリーマンが並走している。
は?
「目的地に到着しました。お疲れさまでした。」
目の前にとても大きな高層ビルが建っている。いや周りも高層ビルが建っている。高層ビルしか建っていない。
は?
敷地面積がデカすぎでビルが遠い。ビルに入るには警備員が詰めてる関所みたいな出入り口を通らないとだが厳重に警備されてる。
扉?扉なのかあれ?
下から棒が生えて車が侵入出来ない様にしてあり人が通るには学校の正門の究極進化系の見た目の門が鎮座して進行を阻害してる。
ここに来て私は1つだけ分かったことがある。
「これスーツのやつじゃん。」
…履歴書は書いて来ていない。
「スーツのやつじゃ〜〜ん!」
データぶっ飛んで書き直してたりして遅れました。
話が変わりますが今までの話も加筆、修正をおこなっています。
表現がクドいところ足りないところを直してるのでまた読み返してみると面白いかもしれません。
感想やブクマなどをして頂くと作者が嬉しがります。




