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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
100/602

暗躍

記念すべき100話に何とか本文に収め切れました。


考えてみれば3ヶ月間以上毎日投稿(2敗)をしているんですね…頭おかしなるで。

「つまり蘇芳さんは私に情報を渡すかわりに死神をどうにかして欲しい…そんな所?」


「その通りよ美世。私を助けてほしい。私はただ長生きしたいだけ。能力も望んで手に入れた訳ではないのにそれが理由で殺されるのは間違っている。」


それはそうとしか言えないな。私より年下の子が殺されるのは嫌だし彼女の能力を失うのは世界にとっても損失だ。有効的に使えれば平穏な世界を創り出すことだって…


「私を裏切ったら私がお前を殺すし私の機嫌を損ねたら先生にチクる。オーケー?」


「バッチグーよ美世。これから先ずっと仲良くしましょ?」


お互いに左手を差し出して握手を交わした私達は信用の証の為に話を続ける。そして私の方から蘇芳さんにひとつの提案を持ち掛けた。


「お互いに相手を信用出来るように少しだけ手の内を見せ合わない?」


「賛成。私からしようか?」


「残念。もう見せちゃった。」


私はポットからお茶を注いで蘇芳さんに見せつけるようにお茶を口にした。


「…驚いた。やっぱり実際に見ないとその能力の詳細は理解出来ないね。」


握手を交わしている間に私はポット【再生(リヴァイブ)】して溢れた結果を無くした。先制パンチとしては中々のものだっただろう。それに蘇芳さんの能力についてもほんの少しだけ分かってきた。


(直接見ないと、か…能力で得る情報は現実の情報より少ないっぽいな。)


「美世さ、家のハウスメイドとして雇われない?給料と休日もちゃんと用意するからさ。」


「それは無理。誰かと働くの多分無理だし。」


あの執事さんや使用人と肩突き合わせて働く自分を想像出来ない。


「じゃあ家で一緒住まない?私株でボロ儲けしているからずっと養ってあげる。」


自分より年下の子にヒモにならないかと誘われて断れる人間が居るのなら手を上げてほしい。その手を撃ち抜くから。


「将来有望な寄生先(就職先)として検討させてもらいます。」


「漫画いっぱい買い込んで待ってるね。」


「将来有望な就職先(寄生先)として検討させてもらいます。」


「ふふふっ美世って本当に面白い!」


「じゃあ次は蘇芳さんの番だけど…失望させないでね?」


満面の笑顔で蘇芳さんに脅しをかける。雪さんが初対面の時に私にやったやり方だ。女が女に向ける満面の笑みはめっちゃ怖い。


「淡雪さんの真似?怖いなー…出し惜しみ出来ないじゃない。」


クスクスと笑う蘇芳さんは私より断然怖かった。雪さんより怖い女性がこの世に居るとは…


「私から見て美世に一番利益があるように話すね。」


蘇芳さんから見た利益と私の求める利益は違うとは思うけどどうなんだろう。顧客が求めたものと造り手の求めるものは違うみたいな感じでさ。


「美世のお母様を殺した犯人は…美世が思っているより近い場所に居るよ。」


「…私さ、何でも知っているキャラクターが全部を話さないでただ場をかき回すだけみたいな展開大嫌いなんだよね…。」


「まあ待ってよ。全部話したらもう美世にとって私の存在価値が大暴落しちゃうじゃない。多少好感度を下げてでも情報を絞らなきゃだからね。」


「拷問して話させようか?」


左手がもう抑えきれないぐらいに力が入ってうっ血している。


「それは困るね。じゃあ…ここまで話そうかな。犯人は死神じゃないよ。全く関係ないし死神は裏で結構調べてくれているよ。大事にしてもらっているね。」


緊張の糸が切れた。


「良かったあ…!先生は違ったんだあ…!ううぅ…」


「…泣くほどに嬉しかったの?」


ずっとこの不安を抱えておくのは私にとっては本当に辛い事だったけどそれが急に無くなったのだ。零さないようにしていた液体が全部溢れたみたいに涙が止まらない。


「あ゛りがどおぉ蘇芳ぢゃん゛んん!」


「どういたしまして。まだ情報渡せるけど…どうする?」


「それは頂戴。」


涙がピタッと止まる。蘇芳さんの話は素面じゃないと聞けないものばかりだ。


「京都には通い続けたほうが良いけど目立たないように立ち回ってね。そうすれば美世にとって一番良いタイミングで仇に会えるよ。」


「分かった。そうしてみる。」


「あとね、美世は人に好かれる星の下に生まれている。その事をちゃんと自覚して立ち回れば人生を楽しく楽に生きれるよ。」


「急に怪しい占い師みたいな事言うじゃん。」


「ふふふっ、星はね私が昔から視ている感覚のようなものでその人の巡り合わせが分かるの。美世は色んな人から好意を持たれる星の下に居る。それをもっと自覚して立ち回ってね。」


確かにここ最近は色んな人と仲良くなっているし基本的には好意的な反応を示してくれる。


私の脳内にストーカーのサッカー部部長の顔が浮かんでしまう。


「…何事もほどほどが良いよ。」


「美世はモテるからね。これから先もっとモテるから今の内に覚悟はしておいた方が良いよ。」


「うへえ〜嫌だな…。」


「特に女性からはかなり重たい愛を向けられるから覚悟しておいてね。中には大事な巡り合わせがあるからちゃんと向き合う事。」


もう傍から見たら完全に占い師にアドバイスを貰っている構図だ。蘇芳先生の占いは良く当たるとの評判。


「有難うございます先生。」


「誰が先生だ!」


じゃれつきふざけ合うぐらいには親密度が上がった後、私は館を後にした。蘇芳さんはあれ以上詳細な情報を言うつもりは無かったし、あの場で私が出来ることもない。その事をお互いに理解しているからあっさりと呆気なく解散した。


(蘇芳…多分だけど先生よりヤバいな。)


美世は正確に蘇芳の脅威度を理解していた。


死神が彼女の事を殺そうとしている理由が良く分かる。危険すぎるからだ。


彼女の言ったことは全部真実だと思う。だけどあえて全てを話さずに私を上手く誘導している節があった。まあ…それは別に良い。私を利用するのは全然気にしていない。私の目的が達成されるなら私が死んでしまっても構わない。


そしてその事を蘇芳も知っている…と仮定して動かないとワンサイドゲームになって蘇芳さんの一人勝ちになってしまう。


蘇芳さんにとってこの世界は確定された物語。そこに不確定要素として私と死神が居る。死神が蘇芳さんの敵サイドで私を味方サイドに置いてパワーバランスを保とうとしているようだ。


(私はその気になれば先生と一緒に敵サイドにも立てるし敵対サイドにも立てる自由な駒だ。)


立ち回りを考える為にも情報がいる。そして味方も…


確定された未来を変えられるのは私と先生だけ。だったら私が色んな人に関与すれば色んな場所と時間帯で変数が生まれるんじゃないかな?その変数が蘇芳さんにどんな影響があるからは分からないけど、このまま蘇芳さんの思い通りにさせるのは危険な気がする。


「先ずは天狼と雪さん、後は…」


私サイドの仲間を増やす必要がある。ただの仲間じゃない。影響のある人間で無ければ大した変数にはならない。その条件に当て嵌まる人物は…


「オリオンさん…この3人は必ず私の仲間に入れなければ!」


美世は勘違いをしていた。いや蘇芳という人物を図り損なっていた。彼女が8年間の期間をただただ美世を待っている筈が無かったのだ。


死神と美世が出会ったあの廃ビルの一件。死神にあの廃ビルの場所を教えたのは蘇芳だ。


彼女は複数の人を経由して死神に自身の事を気付かせずに情報を提供した。その事に死神は気付かずに偶然的に美世を見つけたと思っている。しかし全ては蘇芳の策略。美世を特異点として覚醒させる為の一手。


一巡目の世界では美世は廃ビルで2日間強姦されて精神も肉体も疲弊しきった状態で組織に保護される運命だった。そしてその後は組織に所属しエージェントとして活動するのだがミューファミウムに捕まって様々な辱めを受け、その特異な能力を増やす為の贄にされる未来が確定されていた。


蘇芳も敵対組織に目をつけられてしまい貧弱な彼女では逃げる事も出来ず惨たらしい最期を迎える。それがα線の世界。


その未来を変えるための一手を打った蘇芳の願いはただ1つ。生き残る事。彼女はその為に様々な活動をし続け色んな所に協力者を置いている。


その協力者を利用してミューファミウムに情報を流したのも蘇芳。ミューファミウムが美世にとって邪魔な存在になる事を知っている彼女が打った一手。死神によって強力な能力を得た美世なら勝てると踏んだこの一手は世界そのものを大きく変える一手となった。


そう全ては蘇芳という能力者の手のひらで行われているワンサイドゲーム。それに対抗出来るのは美世のみ。だから蘇芳は美世と接触を図った。もっと早いタイミングで会えた筈だったが、美世が死神に疑惑を持った絶妙なタイミングで接触を図りこちらに引き込もうとした彼女の思惑を成功した。


美世は蘇芳サイドに立った。この未来を確定させる為に8年間、様々な一手をもう打っている。


何度も言うがこれは蘇芳という能力者のワンサイドゲーム。不確定要素はたったの2つの駒。


「死神を一緒に殺しましょうね、美世…」


蘇芳の目には闇が広がっていた。視力を失っているからではない。それはまるで光が吸い込まれるような闇で彼女のドス黒い思想から来ているようだった。


「そして世界をこの手に…ふふふ。」

蘇芳は超危険人物でありラスボス的な位置です。でも本当にラスボスになるかは分かりません。この後の展開をお楽しみに!

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