表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/25

悪役(ヴィラン)の者

 ウリイイイイイィィィィィーーーッ!! とメタルマンは、再登場の喜びを(あらわ)に雄叫びを上げる!


「あ……、(あゆ)()さんの、コレクションが……」

「!! あの野郎……っ!」


 ぶち抜かれた壁の一角が崩れ去り、そこに陳列されていた岩々が瓦礫の山と化していた。

 わななくジュエルの震える声に、微居はギリッと歯噛みをする。

 男は、彼らが手に入れた緑色の秘石を一目見るなり。


「おォ、ラッキーッ! 秘石(いいもん)持ってんじゃねェか! とっととそいつを渡しやがれェ!」

「お前なんぞに、誰が渡すか」


 シャンカラ・ストーンを後ろ手に隠し、微居は要求をね付ける。絵井もジュエルをかばいながら、抗戦の構えを見せた。

 しかし。


「あァ? モブのくせにヒーロー気取りかァ? てめェら、()()()()()()()()()()()()()のくせに、『あきぼく』の主要人物(メイン)ぶってんじゃねェぞ、ゴラァ!」

「「ゲボーッ!!?」」


 絵井と微居の口から赤色が飛沫く。メタルマンの発言に、2人は噴水のように吐血する!


「えっ!? 絵井さんっ!? 微居さんっ!?」

「それから、てめェらの名字はえいびいが元になってるようだが、『()』が被ってるせいで作者がちょっぴり困ったそうじゃねェか。あと、11万種類ある日本の名字の中に、『絵井』と『微居』という名字は無ェ!」

「「ゴハッ!!」」


 ドガッ!


 見えないハンマーで殴られたかのように吹き飛び、絵井と微居は壁面の岩棚に叩きつけられる!


「う……、ぐ……っ!」

「絵井さんっ! 微居さんっ!」


 ジュエルの呼び掛けに2人はなんとか立ち上がるが、ガクガクと生まれたての小鹿の様に膝が震える。


「テーツテツテツ! かなりメンタルにキてるようだなァ!」

「お前……、なぜそんなメタな事を……?」

「忘れたか? 俺様の名前は『()()ルマン』だァ! 俺様の頭脳のネットワーク機能で、メタな情報ネタは取り放題なんだよォ……。メタるぜェ?」


 殺戮機人はオラつきながら、自らのCPU(あたま)をコツコツと指差し。


「そんじゃ、てめェらに絶望(とどめ)をくれてやらァ。絵井・微居の『あきぼく』初登場は『番外編その12:席替え』、感想欄の初出は『番外編その1:ダブルデート①』。つまりッ! 時系列で行くと今の時間軸に、そもそも()()()()()()()()()()()()()んだよーッ!!」


 ガガーンッ!


「「ぐわあああぁぁぁーーーっ!!」」


 メタルマンのメタ発言が洞窟内に反響し、絵井と微居の精神を刃の様に刻む。

 すると、2人の身体に異変が!


「あ、あ、あ……、俺たちの身体が……?」

「足元から消えていく……?」

「テーツテツテツ! どうやら存在を保てなくなったようだなァ! からのォ、マルノコブレイドォーッ!」


 間髪入れずに放たれた円刃が、消えゆく絵井と微居を容赦無く襲う。


「危ないですっ!」


 ドドッ!


 ジュエルは、2人にまとめて高速タックルをお見舞いし、寸での所で斬撃をかわす!


「「うわあああああーーーーーっ!」」

「絵井さんっ、微居さんっ!」


 地面が透けて見えるほど存在が薄くなり、ジュエルは悶え苦しむ2人の手を束ねて握り寄せ。


「絵井さん、微居さん、気をしっかりです! たとえモブキャラでも、誰が何と言おうと、あなたたちは今この時、この瞬間を確かに生きているんですっ!!」

「「うあああぁぁぁぁぁ……」」


 絵井と微居は、ジュエルの励ましと柔らかな手の温もりに勇気づけられ、消えかけていた姿に再び色を取り戻す。

 はあはあと2人は肩で息をしながらも、ゆっくりと立ち上がった。


「あ……、ありがとう、ジュエルちゃん……」

「……すまねえ、今度ばかりは本気(マジ)で助かった」

「どういたしましてです」


 しかし。


「テーツテツテツ、その程度で存在がグラつくたァ、(しょ)(せん)モブだなァ! ザマぁねェぜ!」

「くっ……」

「……ちっ」


 辛くも攻撃を耐え抜いた絵井と微居に、嘲り笑いを浴びせる悪役(ヴィラン)の者。

 そんな彼らに追い討ちをかけるがごとく、地面が沈む。


 ズズンッ!!


「きゃっ!」


 衝撃でビシビシと壁面に走るヒビ!


「うわっ!」

「地震か!?」


 大きな揺れはいったん収まったものの、小刻みな震動は続き、パラパラと天井から岩の破片が降り注ぐ。


「おおォ、そろそろ限界が近いようだなァ」

「……お前、一体何をした!」


 ゴゴゴゴゴ……と地鳴りが響く中、敵から放たれたのは衝撃の台詞(セリフ)


「ああァ、てめェらを探して派手にぶち抜き回ってたからなァ……。もうすぐ洞窟(ここ)は跡形もなくブッ潰れるだろうぜェ!」

「な、に……?」

「な……、なんて事をです!」

「まあ、俺様は()()でも脱出できるがな。だが、てめェらはどうだァ? ()()ったらとっとと秘石(そいつ)を寄越して、命乞いをしろォ! 俺様の足の裏でも()めてみるかァ!?」


 ギュイイイーンッ! と腕のドリルを振り回し、メタルマンは卑怯な交換条件を迫る。

 もはや一刻の猶予も許されない中、微居の選択は。


「……絵井、こいつを頼む」

「わっ? これは……?」


 微居は絵井にシャンカラ・ストーンを投げ渡し。


「……奴は俺が食い止める。お前はそいつを持ってジュエルと逃げろ」

「えっ、です?」

「おい、なに言ってんだよ。お前一人を置いて行ける訳が……」


 だが、微居は背中越しに絵井に語る。


「……俺たちが今、一番優先すべきは何だ?」

「それは……」


 洞窟内の至る所で響く落盤の音を感じながら、絵井は不安そうな表情(かお)のピンク髪の少女と、手の中の緑色の岩を見た。


「…………分かった。微居、死ぬなよ?」

「そのつもりは無い。俺もじきに追いかける」

「微居さん……。お気をつけて……」

「……お前もな。シャンカラ・ストーンは託したぞ」

「はいです!」


 行け、と微居が促すと、絵井とジュエルはダッシュで聖堂の出口に向かう。


「テーツテツテツ、やらせるかァッ!」


 それを阻止しようと、メタルマンがマルノコブレイドを構えたが。


 ドゴドゴドゴドゴゴンッ!


 岩の5連弾を縦一列に叩き込まれ、大きくのけぞる!


「……お前の相手は、俺だろうが」

「あ゛あァッ! ナメんじゃねェぞ、ゴラァーッ!」

「ナメろと言ったのはお前だろ? 足の裏じゃねーけどな」


 怒りに震える悪役(ヴィラン)の者に対し、無事に逃げおおせた絵井とジュエルを見送った微居は、口元だけでニヤッと笑った。



 *



 徐々に崩れ行く大聖堂で、岩使いと鋼の機人が相まみえる。


「カアッ、喰らいやがれェ! マルノコブレイドォーッ!」


 高い跳躍から、メタルマンは3連続で円盤の刃を放つ!


「……おらあっ!」


 装填にかかる時間は0.01秒。微居が右腕を揺らして手の中に岩を出現させると、一度の挙動(ピッチング)で同時に3つの岩弾を発する。

 さらに左腕で2発を放ち、計5つの岩がマルノコブレイドを迎撃する。


 ガギガギ、ギィンッ!


「!」


 だが、全ては相殺できず、微居は撃ち損じの鋼刃を横っ飛びでかわす。素早く体勢を立て直し、追撃に備えるものの。


「……くそっ、一撃の威力が足りねえ」

「逃げるのだけはうめェじゃねェか。だが、何時まで持つかなァッ!」


 微居は立て続けに迫る円盤を走りながら避け、岩を返すものの、鋼との硬度の差を埋める事が出来ない。


「テーツテツテツ! まともにカチ合って、岩が鋼に勝てる訳がねェだろうがァ!」

「まともにカチ合う? ……そうか!」

「何をブツブツ言ってやがる! とっとと喰らって、死にやがれァーッ!」


 再び襲い来る鋼の刃。だが、なぜか微居はその射線とズレた方向に岩を放つ。


「ハーッ、ど下手くそがァ! ()()投げてやがるッ!」


 しかし、(かす)りもしないかと思われた岩弾は、急激に軌道を曲げてマルノコブレイドの側面を弾く!


「!!」


 ドゴドゴドゴォッ!


 円刃はあらぬ方角に跳ね飛び、変化球で弾幕をすり抜けた微居の岩は、残らずメタルマンに叩き込まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
ブックマーク評価感想
レビューをいただけると狂喜乱舞します。

小説家になろう 勝手にランキング

『明らかに両想いな勇斗と篠崎さんをくっつけるために僕と足立さんがいろいろ画策する話』
i410077
間咲正樹様作のすごいラブコメディです!

『肘川叙事詩』
有志による『あきぼく』世界のSS集です!

『水兵チョップ海を割る ~西の島国の英雄譚~』
i410077
海洋バトルアクションファンタジー(完結済)です!
― 新着の感想 ―
[一言] メタにメタってメメタァ!? もうやめて! 2人のライフはもうゼロよ!(゜Д゜;) そして最後……まさかカーブした!?
[良い点] メタ過ぎてずっと笑っていました。 [気になる点] 「感・想・欄・か・ら・偶・然・生・ま・れ・た・存・在・」 なっ、なんだってぇー!! [一言] やめて! もう二人のライフはゼロよ!
[一言] >ウリイイイイイィィィィィーーーッ!! とメタルマンは、再登場の喜びを顕あらわに雄叫びを上げる! デ〇オ様!?www >「それから、てめェらの名字はAとBが元になってるようだが、『い』が被…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ