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桃『太郎』の『鬼』退治  作者: そーた
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少年の記憶


「どうしたんじゃ桃太郎や。そんな怖い顔をして・・・」


ある日の事、いつものように鎌を携え、薬草を取りに山へ出かけようとするおじいさんの前に、桃太郎が現れました。


今日の桃太郎はいつもと違い、その顔は真剣な表情そのものです。


おじいさんはいつもと様子が違う桃太郎に、怪訝な表情を見せていると・・・


彼は一言、おじいさんにこう言いました。



「おじいさん。僕、思い出したのです。」



「も、桃太郎・・・?」


その言葉におじいさんはハッと息を呑みます。



「以前おじいさんが話していた、鬼達に村を襲われた日の事を。」


おじいさんの鎌を持つ手に力が入ります。


「桃太郎…。まさか、それは、お前が前に言っていた怖い夢のことか…?」


おじいさんの鎌を持つ手が震えています。


「はい。当時僕はまだ幼かったので覚えてなかったのですが…

全部、思い出しました。」


それを聞いたおじいさんは、どこか残念そうな雰囲気を醸し出しました。


「・・・。」


しばしの沈黙の後―――


おじいさんは諦めたような表情を浮かべた後に―――


「そうか…残念じゃ。であれば…」


それがどこか吹っ切れたような表情に変わった時―――


「ええ。であればこそ、私は鬼ヶ島へ行って鬼退治に行きたいのです。」


おじいさんが紡ぎかけた言葉を桃太郎が引き継ぎました。


おじいさんの手の震えは止まっていました。



おじいさんはただ黙って桃太郎を見つめています。


おじいさんがどのような気持ちを抱いているかは、その表情からは分かりません。

でも、桃太郎にはおじいさんの気持ちが分かっているみたいに・・・


「ずっと…僕を危険な目に合わせたくなかったのですよね?

僕がこのことを思い出してしまうと、僕が鬼ヶ島に行ってしまうだろうと思って…

だからあなたは『怖いことは思い出さなくていい』と言ったのですね?」


おじいさんはただ黙って、桃太郎の口から放たれていく言葉を待ち続けています。

決して、聞き逃さないようにと。


「あの日、村が襲われた日、僕は『誰か』に助けてもらいました。その人は、僕を物置小屋に隠して…僕の事を守ってくれました。

僕は隠れたまま、その人の帰りを信じて待っていて・・・

そしたら、その人はやっぱり僕の元に帰ってきてくれたのです。

あの時僕を守ってくれた人っていうのは・・・

おじいさん。


…あなたですよね?」



するとおじいさんは暫く押し黙った後、意を決した様に答えました。



「………。



……ああ。確かにワシじゃ。

あの時、お前は幼子にも関わらず、泣かずに待っていてくれたな。」


彼は分かったのです。

自分を守るため、小屋の中に隠してくれた人物―――

その人こそがおじいさんだったのだと。



「おじいさんは、自分の事を頼りないって言ってましたが…

本当にそんな事はありませんでした。」


そして桃太郎は一つ息を吸い込むと…


「おじいさん。今度は僕がおじいさんを助ける番です。

だから、僕は、鬼退治をしに鬼ヶ島へ行きます。」


こうして、桃太郎は鬼ヶ島へ行くことに決めたのでした。


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