引っ越しの荷物は必ず確認しよう
それはとある春の晴れた日、アパートに引っ越しの荷物を片付ける一人の“少女”がいた。
「よ…い…しょっと…」
ドサッっと荷物の入った段ボールを運搬する之乃、今年から高校2年になり、新しい学校生活や一人暮らしなど未体験なことばかりになる初日に心を踊らせていた。
「んーと?これが日用品の段ボールで?これが…服の入った段ボールか…」
段ボールを一つずつ開けては片付けての繰り返し、昼には引っ越しうどんを作った。
(本当はそばっていいたいんだけど…そば粉アレルギーだからな…)
そして日用品の段ボールを片付け終わり、箪笥の前に置かれた服の入った段ボールを開けた時だった。
「………」
之乃が手に取ったのは可愛いらしいカーディガンやTシャツだった。
「………」
近くに置いてた長方形の鏡の前に立ち、Tシャツを自身の着ていたTシャツに当ててみてポーズをとる、そして一声…
「これ…女の子用のじゃねえーかぁぁぁぁぁっ!!」
持っていたTシャツを箪笥に投げつける、ちなみに之乃は外見は女の子だが、中身は健全な男の子である
「……ちょっと待て、いや…まさかね…」
即座に他の服が入った段ボールを開けてみる
「くっ…やっぱり!」
他の段ボールにはカーディガンやTシャツの他に多彩なスカートやレギンス、ジーンズ(女物)、短パンなどいろいろあった。
「確か服をまとめてたのって…」
その時、之乃は思い出した。実家で自身の荷物をまとめる時に之乃の服をまとめるのを手伝っていた人物もとい自身をこんな可愛らしい女の子に育てあげた張本人を…
「明恵姉のヤロー…おかしいと思ったよ!なんか積極的に手伝っていたし、なんか荷物が予想より多いし…」
ちなみにあとで気づいたことだが全てサイズがぴったりだったという…
「仕方ない、不本意だけどとりあえず箪笥とクローゼットに入れるしかない」
その作業は1時間ほどで終わり…
(さてと…)
之乃はおもむろにスマホを手に取る、この時間は仕事中で出やしないだろうと電話帳から電話をかけて案の定だが留守番になりコールメッセージになった瞬間に一言
「明恵姉のヴァァァァァァァァァァァァカァァァァァァァァァァッ!!」
ブチッと切った。
「あー、すっきりした」
之乃は再び部屋の片付けに入った。
それから数時間後のとある会社では
「よーし、仕事が終わった~」
「お疲れ様でーす」
「あっ、お疲れ~…ん?スマホに誰か電話…之乃ちゃん!?何だろ?寂しくなっちゃったかな?」
なんの気もなしにメッセージを聞く
『明恵姉のヴァァァァァァァァァカァァァァァァァァァァッ!!』
そのメッセージは事務所内に響く、そして…
「ニヘヘヘ…罵倒されちゃった♪あとでコレクションに保存しとこ♪」
明恵の顔が笑顔で歪むのを見た職員はというと…
「弟くん…強く生きてね…」
「見た目はモデル級なのにあれじゃ…ねえ?」
「明恵先輩…顔怖いです…」
ちなみに明恵(22歳)は市役所で働いていて重度のブラコンなのは他の職員も周知の事実である。
その頃、之乃はというと…
「へっくちっ!…誰か噂したのか…気のせい…だよな?」
夕飯の買い物の帰る途中くしゃみしていた。
ちなみに服装はというとちゃっかり姉が入れてた女の子用の服を見事に着こなしていたという…
「なんで違和感ないんだろ…、明日から学校だし、男子高校生らしく生きよう!」
明日から新しい学校生活に思いを馳せる、そしてふと之乃は思い出した。
「学校の制服、間違えないようにしよう」
制服は律儀に男子女子両方送ってきた明恵だったとさ。